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映画「かぐや姫の物語」制作時に、auスマートパス会員向けスタジオジブリ公式読み物サイト「ジブリの森」において連載された「かぐや制作日誌“悲惨な日々”西村義明」(2013年4月15日~9月1日)を再録こうして、「かぐや姫の物語」は、パイロットフィルム制作に取りかかった。なぜか、ぼくはこの期間、かなり事細かに状況を記録していた。8月いっぱいは、そこから抜粋して掲載していきたいと思う。2011年1月18日(火)~22日(土)18日(火)・レイアウト作業に入って、スタジオは平穏だが、仲
映画「かぐや姫の物語」制作時に、auスマートパス会員向けスタジオジブリ公式読み物サイト「ジブリの森」において連載された「かぐや制作日誌“悲惨な日々”西村義明」(2013年4月15日~9月1日)を再録(パイロット版スタッフMTGの続き。)あの、それはね、あの、美術を男鹿さんがやってくれることになってるんですね。あ、まぁ、こないだ会ったから知ってるんだ!ハハ、一緒にやってくれる、アハハハ(笑)ごめん(笑)エヘへ(笑)もう頭がね、働かなくてすぐ忘れちゃう。(※年末、パイロット版参加ス
映画「かぐや姫の物語」制作時に、auスマートパス会員向けスタジオジブリ公式読み物サイト「ジブリの森」において連載された「かぐや制作日誌“悲惨な日々”西村義明」(2013年4月15日~9月1日)を再録(パイロット版スタッフMTGの続き。)でも、大人でもそうですね。僕がはっきり意識したのは、偶然なんですけど、「カサブランカ」っていう映画の、バーグマンっていうのが、イングリッド・バーグマンっていうのが、すごい美人ということになってるんだけど、で、代表作だろうと思うんだけど。で、それがね、
映画「かぐや姫の物語」制作時に、auスマートパス会員向けスタジオジブリ公式読み物サイト「ジブリの森」において連載された「かぐや制作日誌“悲惨な日々”西村義明」(2013年4月15日~9月1日)を再録(パイロット版スタッフMTGの続き。)で、ここにきて問題になるのは何かっていうと、それをスタイルとして思い始めた途端に、スタイルっていうのは数が増えると飽きちゃうんですね。飽きるっていうんじゃなくて、当たり前になる。せっかく一生懸命やったことが、もう普通になってしまう。たとえば、テレビで
映画「かぐや姫の物語」制作時に、auスマートパス会員向けスタジオジブリ公式読み物サイト「ジブリの森」において連載された「かぐや制作日誌“悲惨な日々”西村義明」(2013年4月15日~9月1日)を再録(パイロット版スタッフMTGの続き。)その、僕自身も少々、他のジャンルに口出ししたりして、絵画とか。そういうときに言ってたんだけど、油絵で陰影がつくとか、そういうものって、あの、平面のくせに、それを立体的に見せるっていうことは、空間を作り、そこに立体的なモノを置くってことは、平面なはずな
映画「かぐや姫の物語」制作時に、auスマートパス会員向けスタジオジブリ公式読み物サイト「ジブリの森」において連載された「かぐや制作日誌“悲惨な日々”西村義明」(2013年4月15日~9月1日)を再録パイロット版オールスタッフMTG日時:2011年1月17日(月)14:00~15:00場所:かぐや姫スタジオ参加者(敬称略):高畑勲、田辺修、橋本晋治、佐々木美和、濱田高行、西村義明、松尾明子(計7名)(以下、高畑さんの発言)もう実はその、すっかり忘れちゃって。あらゆる
映画「かぐや姫の物語」制作時に、auスマートパス会員向けスタジオジブリ公式読み物サイト「ジブリの森」において連載された「かぐや制作日誌“悲惨な日々”西村義明」(2013年4月15日~9月1日)を再録年が明けた。かぐスタの仕事始めから少し経った2011年1月17日。「かぐや姫の物語」が作画インした。作画インとは言っても、パイロットフィルム9カットの作画インだった。このパイロットフィルムをまずは作り上げ、問題点や解決法を把握し、本篇の量産へと移っていく。完成は4月末だ。ただ、絵コンテ
映画「かぐや姫の物語」制作時に、auスマートパス会員向けスタジオジブリ公式読み物サイト「ジブリの森」において連載された「かぐや制作日誌“悲惨な日々”西村義明」(2013年4月15日~9月1日)を再録2010年12月29日(水)14時。前回と同じ参加者で、再びパイロットフィルムの予算等々の打ち合わせが行われた。この日は、2010年のジブリの仕事納めの日で、大掃除と忘年会が行われる日だった。そんな日に無理やり打ち合わせを入れさせてもらい、みんなに集まってもらったのだ。この打ち合わせの場で
映画「かぐや姫の物語」制作時に、auスマートパス会員向けスタジオジブリ公式読み物サイト「ジブリの森」において連載された「かぐや制作日誌“悲惨な日々”西村義明」(2013年4月15日~9月1日)を再録西村「ぼく、鈴木さんにひとつ嘘を付いているんです。」鈴木さん「こんどは、なに?」西村「いや、なんというか、ぼく、鈴木さんにTさんから手紙を渡してもらって、鈴木さんに面接してもらって、ジブリに入れてもらったじゃないですか。あの手紙がきっかけで。で、Tさんは、自分が凄くお世話になった人の息子
映画「かぐや姫の物語」制作時に、auスマートパス会員向けスタジオジブリ公式読み物サイト「ジブリの森」において連載された「かぐや制作日誌“悲惨な日々”西村義明」(2013年4月15日~9月1日)を再録西村「これから話すことは、お世辞とかじゃないです。真面目に話します。ぼくは、ようやく分かったんですよ。鈴木さんが何をしてきたのか。」鈴木さん「は?」西村「日本一プロデューサーと言われて、鈴木さんに憧れる若い人も多い。ぼくの周りにも居ます。でも、彼らが憧れる鈴木敏夫と言うのは、映画を大ヒッ
映画「かぐや姫の物語」制作時に、auスマートパス会員向けスタジオジブリ公式読み物サイト「ジブリの森」において連載された「かぐや制作日誌“悲惨な日々”西村義明」(2013年4月15日~9月1日)を再録2010年12月24日22時。クリスマス・イブ。恵比寿のれんが屋で、鈴木さんと僕のふたりだった。街はクリスマスで浮かれていたけれど、マンションの一室のレンガ屋にクリスマス・ムードはなかった。鈴木さんはクリスマスなんて何とも思っていない様子だし、こちらはこちらで状況が状況だったから。コの字型
映画「かぐや姫の物語」制作時に、auスマートパス会員向けスタジオジブリ公式読み物サイト「ジブリの森」において連載された「かぐや制作日誌“悲惨な日々”西村義明」(2013年4月15日~9月1日)を再録「喫茶モーゼ」で制作部長の渡辺さんに愚痴を聞いてもらうが、渡辺さんの言うことは、ひとつだった。渡辺さん「鈴木さんと手を握れる方法はないのか。」西村「いや、もう、無理だと思うんです。」しかし、渡辺さんは、4回も、5回も、「手を握れ」と言ってくる。でも僕は、手を握る方法はない、という。で
映画「かぐや姫の物語」制作時に、auスマートパス会員向けスタジオジブリ公式読み物サイト「ジブリの森」において連載された「かぐや制作日誌“悲惨な日々”西村義明」(2013年4月15日~9月1日)を再録「かぐや姫の物語」で八方塞がりになることは多々あったが、ぼくは都度、色々な方に相談しつつ、愚痴を聞いてもらいつつ、切り抜けてきた。パイロットフィルムの制作すら危うくなったあの時、ぼくが相談したのは、当時のスタジオジブリ制作部長・渡辺さんだった。渡辺さんには、あの頃、本当にお世話になっていた
映画「かぐや姫の物語」制作時に、auスマートパス会員向けスタジオジブリ公式読み物サイト「ジブリの森」において連載された「かぐや制作日誌“悲惨な日々”西村義明」(2013年4月15日~9月1日)を再録2010年12月22日(水)14時@ジブリ鈴木さん執務室。参加者は、鈴木さん、星野社長、財務の玉川さんと伊藤さん、経営企画室の稲城さん、そして僕。議案は、①「かぐや姫」パイロット版制作費に関して②パイロット完成後の支出及び予算概要に関して。みなが集まり、席に着いた。僕は、予算書を配り終え、
映画「かぐや姫の物語」制作時に、auスマートパス会員向けスタジオジブリ公式読み物サイト「ジブリの森」において連載された「かぐや制作日誌“悲惨な日々”西村義明」(2013年4月15日~9月1日)を再録お金を出してもらうべく、ぼくは必死で抗弁するが、大人対子どもだった。それは先の日誌を見れば明らかだが、何せ、目算は立たないけど、ひとまずお金は出して欲しい。そうすれば目算が立ちやすくなる、たぶん、と言っているだけだから話にもならない。玉川さん「あのさ、西村が知っているジブリじゃないん
映画「かぐや姫の物語」制作時に、auスマートパス会員向けスタジオジブリ公式読み物サイト「ジブリの森」において連載された「かぐや制作日誌“悲惨な日々”西村義明」(2013年4月15日~9月1日)を再録パイロットフィルムを制作するには、もちろんお金がかかる。ぼくは制作予算書を作成し、そのお金を出してもらうべく、ジブリの星野社長と財務の玉川さんに提出した。しかし、そこは金庫番である。「パイロットフィルム後も続けて制作を続行する」という"危険思想"は、あっさりと見抜かれ、そこを突かれた。玉
映画「かぐや姫の物語」制作時に、auスマートパス会員向けスタジオジブリ公式読み物サイト「ジブリの森」において連載された「かぐや制作日誌“悲惨な日々”西村義明」(2013年4月15日~9月1日)を再録本日は、西村プロデューサーがお疲れのため、筆休め企画をお送りします。題して不定期連載企画「○○はこうして生まれた。」です。「かぐや姫の物語」に関連する様々な物が、どのように作られたのかについて、わたくし、新人制作スタッフ(日誌の挿絵も担当)の岡田がご紹介します。記念すべき第1回目は……、
映画「かぐや姫の物語」制作時に、auスマートパス会員向けスタジオジブリ公式読み物サイト「ジブリの森」において連載された「かぐや制作日誌“悲惨な日々”西村義明」(2013年4月15日~9月1日)を再録2010年秋。高畑さんが、頻繁に「憂鬱だ」と話していた時期がある。高畑さん曰く、原因は「禁煙」したことだ。集中力がわかないし、なんか憂鬱なんだそうだ。そうなると決まって高畑さんは「日本人という鬱病」(人文書院)という本を紹介する。日本人は何かをしてもらうと、恩返しをしなければと思う国民だ。
映画「かぐや姫の物語」制作時に、auスマートパス会員向けスタジオジブリ公式読み物サイト「ジブリの森」において連載された「かぐや制作日誌“悲惨な日々”西村義明」(2013年4月15日~9月1日)を再録あの頃のことを、色々と書くのは難しい。制作中に起きたことは記録してきたが、自分の頭の中で起きたことは記録していたわけじゃないから。ただ、パイロットフィルム制作準備段階で、ぼくは、公開日を2012年≪夏≫という無謀なスケジュールから、2013年≪夏≫へと改めていた。2013年の夏は、宮崎さん
映画「かぐや姫の物語」制作時に、auスマートパス会員向けスタジオジブリ公式読み物サイト「ジブリの森」において連載された「かぐや制作日誌“悲惨な日々”西村義明」(2013年4月15日~9月1日)を再録今日の日誌は、パイロットフィルム制作に向けてスタッフを集めた話。監督は高畑さん。演出は田辺修さん。作画監督は小西賢一さんだが、他社作品に参加中なので、小西さん不在のまま制作する。作画監督の仕事(絵の統一)は田辺さんが担当する。原画スタッフも集める必要がある。が!これがなかなか順調に行か
映画「かぐや姫の物語」制作時に、auスマートパス会員向けスタジオジブリ公式読み物サイト「ジブリの森」において連載された「かぐや制作日誌“悲惨な日々”西村義明」(2013年4月15日~9月1日)を再録高畑さんが眠る会議テーブルで、僕は高畑さんの顔の前のイスに腰をかけた。僕の顔と高畑さんの寝顔との距離は、30センチくらいしかない。そんな至近距離で、ぼくは高畑さんに話しかけた。西村「高畑さん……」高畑さん「(眉間に皺を寄せ、目を閉じたまま)……はい……」西村「ちょっと困ったことがあり
映画「かぐや姫の物語」制作時に、auスマートパス会員向けスタジオジブリ公式読み物サイト「ジブリの森」において連載された「かぐや制作日誌“悲惨な日々”西村義明」(2013年4月15日~9月1日)を再録あれは、2010年10月のことだったろうと思う。いつものごとく、ぼくは鈴木さんに、毎月定例の進捗報告をした。出来上がった絵コンテは、本編の約1/4。作業ペースは相変わらず遅いものの、設定や考証で難しさを抱えていたパートは潜り抜けた。全くの手付かずだったその他のキャラクターも目処が立ちつ
映画「かぐや姫の物語」制作時に、auスマートパス会員向けスタジオジブリ公式読み物サイト「ジブリの森」において連載された「かぐや制作日誌“悲惨な日々”西村義明」(2013年4月15日~9月1日)を再録ある日のこと、僕はお昼から2つ、3つ打ち合わせがあって、ジブリの第一スタジオで打ち合わせをしていた。すると、打ち合わせ中に僕の携帯電話がなった。打ち合わせ中だから出られないでいると、またブルブルとバイブ音である。画面を見ると、「かぐや姫スタジオ」との表示だ。僕は電話に出た。松尾さん「西村
映画「かぐや姫の物語」制作時に、auスマートパス会員向けスタジオジブリ公式読み物サイト「ジブリの森」において連載された「かぐや制作日誌“悲惨な日々”西村義明」(2013年4月15日~9月1日)を再録嘘のようだが、2008年から2012年の計5年間くらい、ぼくは寝ているとき、高畑さんの夢しかみなかった。これ、恐ろしいことに本当の話なのだ。起きているときは高畑さんと始終一緒にいて、ああでもない、こうでもないとやり、時にぶつかり、時に怒られ、週6日、毎日10時間以上を共にする。疲れて帰って
映画「かぐや姫の物語」制作時に、auスマートパス会員向けスタジオジブリ公式読み物サイト「ジブリの森」において連載された「かぐや制作日誌“悲惨な日々”西村義明」(2013年4月15日~9月1日)を再録アニメータ-の佐々木美和さんが原画を描き、田辺さんが手を入れ、泉津井さんが、ペイントやら撮影やらマルチに仕事をこなし、テストカットは進んで行った。そして、テストカット「クルクル翁(おきな)」が出来上がった。平安装束である狩衣(かりぎぬ)を着て、その場で忙しなく円を描いてクルクル歩いているお
映画「かぐや姫の物語」制作時に、auスマートパス会員向けスタジオジブリ公式読み物サイト「ジブリの森」において連載された「かぐや制作日誌“悲惨な日々”西村義明」(2013年4月15日~9月1日)を再録2010年6月24日、米林宏昌監督の映画「借りぐらしのアリエッティ」が完成した。高畑さん、田辺さん、佐々木さんと僕は、四人で五反田にあるイマジカへ初号試写を見に行った。映画を見終えた後、ぼくらはイマジカを出て、散歩がてら目黒川沿いを歩き、こじゃれた喫茶店で珈琲を飲んだ。四人で色々と感想
映画「かぐや姫の物語」制作時に、auスマートパス会員向けスタジオジブリ公式読み物サイト「ジブリの森」において連載された「かぐや制作日誌“悲惨な日々”西村義明」(2013年4月15日~9月1日)を再録ジブリから外に出て「かぐスタ」を開設し、狭いながら10人ほどのアニメーターが作業できる場所は確保した。あとはスタッフだ。監督はいる。演出はいる。美術監督は決まった。作画監督は、出て行ってしまったが、また戻ってきてくれるはず。そろそろ、それ以外のメインスタッフと、原画スタッフの確保に向けて動
映画「かぐや姫の物語」制作時に、auスマートパス会員向けスタジオジブリ公式読み物サイト「ジブリの森」において連載された「かぐや制作日誌“悲惨な日々”西村義明」(2013年4月15日~9月1日)を再録絵コンテ作業を地道に進める傍ら、高畑さんと画面スタイルの話をすることが多くなっていた。高畑さん「日本のセルアニメーション、特に宮さんがやってきたようなのは、背景が緻密で空間があって、やたらリアルでしょ。そのくせ、キャラクターは単純な線で描かれていてペタっとしてる。一枚絵で見れば一目
映画「かぐや姫の物語」制作時に、auスマートパス会員向けスタジオジブリ公式読み物サイト「ジブリの森」において連載された「かぐや制作日誌“悲惨な日々”西村義明」(2013年4月15日~9月1日)を再録2010年7月2日、高畑さんは、スペイン旅行に出かけた。あの頃、日本テレビの故・氏家齊一郎会長と、高畑さん、宮崎さん、鈴木さんは、年に一度、4人一緒に海外旅行に行くのが恒例となっていた。仲良し4人組だ。前年は確かイタリア旅行だった。そして2010年はスペイン。氏家さんは、映画「かぐや姫の物
映画「かぐや姫の物語」制作時に、auスマートパス会員向けスタジオジブリ公式読み物サイト「ジブリの森」において連載された「かぐや制作日誌“悲惨な日々”西村義明」(2013年4月15日~9月1日)を再録こうして「かぐや姫スタジオ」(通称:かぐスタ)が稼動した。さぁ、ここから気持ち新たに、という時なのに、田辺さんが一週間の休暇を申し出た。毎年、この時期に実家の田植えを手伝いに帰っていて、来年は行けないだろうから是非、最後に行かせて欲しいというのだ。農繁休暇である。今は米を作っている場合じゃ