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はじめに物語の設定はこちらから♪【語り:ヘンリー】僕がケートにその気がないことがわかって安心したのか、スティーブは嬉しそうにスキップまで始めた。そんなにケートのことが気に入ったんだ…確かに、どうしようもなく心惹かれる相手に出会ってしまったら、もうその気持ちは誰にも止められない。今のスティーブはまさにそんな感じだった。表情や態度、身体の動きのすべてがそれを表していた。そして、僕はそのことをひどく羨ましく感じた。それはおそらく僕には一生叶わない夢だから。エマ…*******
はじめに物語の設定はこちらから♪【語り:ヘンリー】終点の駅のホームに降りると、目の前に父さんが立っていた。頭の上には、“新1年生はここに集合”という煙の魔法文字が浮かべてある。「父さん。」「やぁ、ヘンリー。無事にここまで自分たちだけでこれたか。安心したぞ。」そう言って、父さんが僕の肩をぽんぽんと軽く叩いた。「ところで、エマは一緒じゃないのか?」「すぐ来るよ。新しくできた友達と話しながらきてるから。」「そうか。」“友達ができた”という言葉に、父さんが嬉しそうに目を細めた。
はじめに物語の設定はこちらから♪【語り:ヘンリー】僕とエマにとって、列車の同室になったスティーブとケートはお互い初対面だったにもかかわらず、ホークアイ魔法学校に着くまでの時間を会話に困ることなく過ごせる相手だった。というよりはむしろ、初めて会った4人とは思えないほど話がよくはずんだ。それはきっと、スティーブもケートも明るくてとても話しやすいタイプのふたりだったからだと思う。特にスティーブは出会った瞬間からよくしゃべって、正直最初は少しチャラチャラしたやつという印象を受けたけれど、しばら
はじめに物語の設定はこちらから♪【語り:エマ】窓側の席に座っていたその男の子は、ヘンリーと私に気がつくと勢いよく立ち上がり、人懐こい笑みを浮かべてこちらへ近づいてきた。「やぁ、おたくらここの席?よかった!オレ、時間よりずっと早く着いちゃってさ、もう誰もこないんじゃないかって不安になってたとこ。」そう言うとその子は、握手をしようとヘンリーの前に右手を差し出した。「オレ、スティーブ・マクレーン。よろしく。」「ヘンリー・バーンズ。こっちは、エマ・リード。よろしく。」ヘンリーとスティーブが
最初に物語の設定はこちらから♪【語り:エマ】朝がきた。「ねぇ、ヘンリー起きて。朝よ。」「…うん。」ヘンリーの目が覚めたことを確認すると、「私、朝ごはん作ってる途中だから。ちゃんと起きてきてね。」私は、またすぐ1階の台所の方へ戻った。「おはよう。」ヘンリーが目をこすりながらやってきて、食卓の椅子に座った。目の前に、今出来上がったばかりの朝食を出す。「わぁ、フレンチ・トースト?これ、エマが作ったの?」「他に誰が作るっていうのよ。」そう言いながら、私もヘンリーの向かいの椅子に
最初に物語の設定はこちらから♪【語り:エマ】ヘンリーと夕食に、デリバリーのピザを食べていると急にいつもの気配がしてきた。あれ?「あれ?」ヘンリーも気がついたみたい。ピザの方へ伸ばしていた手を止めて、気配のする方を見ている。すると次の瞬間、ふわっとかすかな風が吹いて、目の前に私のパパのジャックと、ヘンリーのパパのハリーが現れた。「パパ!ハリー!今日は帰ってこられないんじゃなかったの?」私は少し驚いてふたりの方へ駆け寄る。ヘンリーの両親であるハリーとリリー、そして私の両親であるジ
最初に物語の設定はこちらから♪【語り:ヘンリー】目を閉じて頭についたシャンプーを洗い流していると、ふと今朝の川辺で、エマが真面目な顔をしながらティボルトの真似をしたことを思い出した。『だってティボルトってスカッとするじゃない。』可笑しくて、また笑ってしまう。バスルームから出て台所の方へ行くと、先にお風呂から上がっていたエマが、テーブルの椅子に座って本を読んでいた。僕は食器棚から透明のガラスのコップを手に取ると、そのまま水道の水をコップに注いで一口飲んだ。そしてテーブルの方へ行き、エ
最初に物語の設定はこちらから♪【語り:エマ】それから私たちはジュースを飲みながら少し話をして、ママが用意してくれていたサンドイッチで朝食を済ますと、二人で近所を散歩へ行くことにした。明日はいよいよ、ホークアイ魔法学校の入学式。この辺りともしばらくお別れだ。そして、明日から6年間の寮生活が始まる。生まれてから12年間を過ごしたこの町は、ちょうど“魔法使い”と“人間”が住む境界に位置している。ヘンリーと私はその魔法使い側の、静かな住宅街の少しはずれのところに立っている家で育った。家族
最初に物語の設定はこちらから♪【語り:エマ】1階からの物音で目が覚めた。ヘンリーが起きているのかな。窓の方に目をやる。外はまだ真っ暗だ。何時なんだろう。枕元の目覚まし時計に腕を伸ばす。針は午前4時過ぎをさしていた。まだ4時か…私はもう一眠りしようと思って布団をかぶり直したけれど、喉が渇いていることに気づいてベッドを出た。一階の台所に下りていくと、バスローブ姿で冷蔵庫の中を覗いていたヘンリーが顔を上げた。暖炉には火がついている。「エマ…ごめん、起こしちゃった?」「別に。それ
最初に物語の設定はこちらから♪【語り:ヘンリー】夢を見ていた。真っ暗で、多分服には血がこびりついている。べっとりと、重い。でも本当はこれが夢ではないと気づいている。ここは、僕の心の中だ。日頃は閉じ込めている、本当の“僕自身”そのもの。僕はため息をついてゆっくりと立ち上がった。頭を振ってみる。ここではいつも何か嫌なことが起きる気がするけど、それが何なのか、今は思い出せない。僕はもう一度ため息をついて歩き出した。暗闇で足元は見えないけれど、僕の履いている靴と床が、ゴムがこすれるよ
はじめまして!趣味で『ヘンリーとエマの恋物語』という物語を書いている、リリーと申します。今日は簡単な物語の背景を説明しようと思います。物語の主人公は、ヘンリーとエマという魔法使いの血を引く幼馴染みの男女です。2人はヘンリーとエマの両親である、・ハリー・バーンズ〜ヘンリーの父親で、飛行術の教師。性格は真面目であたたかい。リリーとヘンリーのことを心から愛している。・リリー・バーンズ〜ヘンリーの母親で、変身術の教師。ヘンリーと同じく純血の結界術師の血が流れていて、その美しさはどんな宝石にも例
こんにちは!40章まできたので、最初からまた手を加えたいと思います^_^まずは次のブログで登場人物の紹介から〜
【語り:ケート】「わかった。じゃあ、私ちょっと頑張ってみようかな。」私がそう言うと、ヘンリーは一瞬黙って、それから少し困ったような顔で笑った。その笑顔に、またギュッと胸が締め付けられる。ヘンリーと出会ったのはつい昨日のことだけれど、私は彼のその完璧な姿に、もうすでに夢中になっていた…*****************「…ってな感じ。ねぇ、エマどう思う?」私は告白した時のことをエマに話した。「…うん。」エマは腕を組むと、真面目な顔をして何やら考え出した。でもすぐに顔を上げると、
【語り:ケート】みんなが私の方を見ていた。ヘンリーとも目が合う。私は慌てて目をそらすと、隣にいるエマに話しかけた。「あっ、ごめん、エマ。なに?」「うん…ケート、大丈夫?気分でも悪いの?」「ううん。ちょっと考え事してただけよ。ごめんね。」「なら、いいんだけど。ヘンリーたちね、寮の代表選手に選ばれたんだって。」「選手って、年末にあるサッカーの?すごいじゃない!」「だろ、ケートちゃん!1年生で選ばれたのは俺とヘンリーだけなんだぜ。」スティーブが自慢げに答える。「それはすごいわね!」
【語り:ケート】ホークアイに入学して初めての期末試験が終わった。みんなここ数週間の重圧から解放されて、晴れやかな表情をしている。私もホッとして、一息吐いた。「ふぅ!」「終わったね。」そう声をかけられて振り向くと、隣で試験を受けていたヘンリーが微笑んでいた。その笑顔に、思わず心臓がドキリと高鳴る。「う、うん。ほっとしちゃった。ヘンリーはどうだった、試験?」「うん、まぁまぁかな。」「とか言って、ヘンリーこれまでどの試験も全部必ず5位以内に入ってるじゃない。しかも飛行術の試験なんか1
【語り:ヘンリー】エマと一緒に図書室に入ると、本の貸し出しカウンターに座っていたメグが顔を上げた。「おはよう、エマ。あら、この時間にヘンリーも一緒なのは珍しいわね。」「おはよう、ママ!今日は朝の仕事なかったの?」「ええ、昨日ちょうど全部終わったの。それに、今朝はなんだかエマが来る気がして。」そう言うとメグは貸し出しカウンターから出てきて、スッと両手をエマの方へ伸ばした。エマも嬉しそうにメグの方に寄っていって、ふたりはお互いにハグをする。「エマ。」メグはエマの顔を見ながら、にっこりと
【語り:エマ】ヘンリーはいつも穏やかだ。それに比べてすぐカッとなりやすい私は、よく近くにいるヘンリーに八つ当たりしてしまうことも多いのだけれど、でも、ヘンリーはいつも笑って、“エマらしいね。”と言ってくれる。『考えてみれば、結構な人格者よね。』早朝の、1時間目の授業も、朝食の時間もまだの図書室への廊下を歩きながら、私は誰に話しかけるでもなくつぶやいた。朝のこの時間、図書室で過ごすのが私は大好き。誰にも邪魔されず、ひとりでただ本の世界に浸れるから。うーん。今日はどんな本を借りようか
【語り:エマ】「…イビル。」私がヘンリーの隣に行こうとすると、「エマはそこにいて。」とヘンリーがこちらに背を向けたまま言った。ヘンリーはあの事件以来、私とイビルが接触するのを極端に嫌がる。でも私はその言葉を無視して歩いていくと、ヘンリーの隣に立った。「いやよ、私も戦うわ。」ヘンリーはチラッと横目で私を見ると、小さくため息をついて、でもそれ以上はなにも言わなかった。よく見るとイビルの隣には、先月図書室で私に嫌味を言ってきた、パープル生の女子のうちの一人が一緒にいた。「あっ、ヘン
【語り:エマ】夕食を済ませた後、ヘンリーと図書室への道を歩いていた。本当はケートとスティーブも一緒に来ていたのだけど、途中ケートにバレンタインデーの花束を渡してきたブルー生の2年生がいて、ボディーガードを気取ったスティーブと一緒に、ふたりはその場に残ったのだ。「あっ、そういえばヘンリー。」「なに?」「スティーブって、パパがいないんだって。知ってた?」「いや…知らなかった。そう言えばお姉さんがいるってのは聞いたことある気がするけど。」「へぇ。ヘンリーにはお姉さんのこと話したことあった
【語り:ヘンリー】「ヘンリー。ヘンリー…」誰かに名前を呼ばれて目が覚めた。「…スティーブ。」「よっ。ヘンリーお前…大丈夫か?なんかうなされてたぜ。」「…あぁ。そっか。」そうだった。外にいると今日はバレンタインデーで、女子にちらちら見られたり話しかけられたりするから、寮のベッドに戻って本を読んでいたんだ。それがいつの間にか眠って、夢を見ていたようだ。「下でケートたち待ってるけど、来るか?なんなら、まだ寝ててもいいぜ。俺、ふたりに…」「いや、行くよ。ちょっと…汗かいたから着替えてく
【語り:ヘンリー】集合時間のお昼が近づいてきていたので、私とケートは、一緒に待ち合わせ場所に向かっていた。「あっ、スティーブがいた。ハーイ、スティーブ!」話しながら歩いていると、ケートがスティーブを見つけて手を振った。するとスティーブもこっちに気がついて、ひょいと手をあげる。「よぉ、遅かったな。待ちくたびれたぜ。」私たちがスティーブのところにやってくると、彼はオーバーにため息をついてみせた。その様子にケートがクスクス可笑しそうに笑った。そして、ふと気がついたように辺りをキョロキョロ
【語り:ヘンリー】『当たり前でしょ。』5年前のバレンタインデーのことを思い出していた。あの時、エマはそう言ってくれたけど、僕はいまだに…「なぁ、ヘンリー。エマって可愛いよな。」「うん。」「…」「…急になんだよ?」考え事をしていたせいで、スティーブの言ったことが頭に響くのに時間がかかってしまった。見るとスティーブがニヤニヤしてこっちを見ている。「なんだよ?」「ふーん。」「だからなんだよ!」「ヘンリーってさ…エマラブ?」「…」バシッ!思い切り殴ってやった。「いって!
【語り:エマ】涙と鼻水が止まらない。何度読んでも、『ロミオとジュリエット』の最後はあまりに悲しすぎる。パタンと本を閉じて、表紙を裏返したところで、部屋のドアをノックする音が聞こえた。「エマ。入るよ。」ヘンリーの声だ。号泣していて顔がぐちゃぐちゃだったから、私は慌てて叫んだ。「もう!ちょっと待って!」「わっ、ごめん。着替えてた?」ヘンリーが開けかけていたドアを慌てて閉める。私はとりあえずティッシュで顔を拭いて、ドアの外で待つヘンリーに声をかけた。「もういいわよ。」ヘンリーがドア
【語り:エマ】街に着いたのは、午前9時半をまわった頃だった。「じゃあ、お昼前頃にまたここに集合でいい?」「昼前って、まだ2時間半もあるぜ。そんなに何するんだよ。」スティーブが腕時計を見ながら、ケートに言った。「なにって、2時間半じゃ足りないくらいよ。エマは本屋さんに行きたいだろうし、私は洋服屋さんを見てまわりたいもの。本当は1日くらいほしいわ。ね、エマ。」「うん。洋服は1時間もあればじゅうぶんだけど、本屋さんなら1日中いられるわ。」私が答えると、ヘンリーがおかしそうにクスクスと笑っ
【語り:ヘンリー】大広間でいつものように4人で朝食をとっていると、エマが急に視線を上げて僕の後ろの方を見た。「エマ?」「あー、ヘンリー、今年も始まったみたいよ。」「えっ?」エマのその言葉の意味が頭に響くのとほぼ同時に、後ろから名前を呼ばれた。『ヘンリー!』振り向くと、そこには3人のイエロー生が立っていた。胸のバッジを見ると、1つ上の2年生だ。手にはそれぞれは花束が握られている。「ヘンリー、これ、私たちの気持ちよ。受け取ってくれる?」「これは私から。」「私も!」…ここは素直
【語り:ヘンリー】入学式から1ヶ月が過ぎた。今日はバレンタインデーだ。バレンタインデー。しかも、日曜日の。今までの経験から、これから起こる1日のことを考えると気が重い。でも今日はバレンタインデー。エマにプレゼントを渡したい。それに、スティーブと午後から街に買い物に行く約束もしている。朝の7時になった。スティーブの枕元の目覚まし時計が鳴る。「んがぁ。」今日はバレンタインデー。スティーブがめずらしく、目覚ましのベルの1発目で起きた。「よぉ、ヘンリーくん!おはよう!今日は待ちに待っ
【語り:エマ】朝から騒がしい雰囲気に目が覚めた。なんだろう、このいつもと違う感じ。枕元の目覚まし時計に手を伸ばす。朝の6時32分。あれ、今朝は目覚ましセットし忘れてたっけ?「エマ、おはよう!」ケートが女子寮の洗面所の方からやってきて、挨拶をした。手にはブラシやら髪飾りが握られている。ケートの姿を見ていてピンときた。「あっ、そうか。今日はバレンタインデーか。」「あれ、エマ忘れてたの?昨日も話ししたじゃない。」「うん。でも今朝起きて、ケートの姿見るまで忘れてた。」私が眠い目をこすり
【語り:エマ】ヘンリーとケートが行った後、スティーブと話しながら寮の方へ帰っていた。スティーブといると、適当に面白いことを言ってくれるので、一緒にいて気兼ねなく過ごしていられる。ヘンリー以外の男の子と過ごすのはどちらかというと苦手だから、スティーブは珍しい相手かも。「へぇ、じゃあヘンリーとエマって、ほんと気づいたらいつも一緒にいたって感じなんだな。」「そう。もうきょうだいみたいなものなのよ。小さい頃なんて、一緒にお風呂に入ったり、同じベッドで寝たりしてたし。」「ほぉ!いいなぁ、俺も女
【語り:ヘンリー】ケートに腕を引かれて、寮への帰り道を進んでいた。エマやスティーブと別れてから、ケートは黙っている。「あー…ケート?」「なぁに。ヘンリー?」ケートはやはり振り向かずに返事をした。「…なんか…怒ってる?」「ふふふ。どうして?」「いや、わからないけど…なんとなく。」そこでやっとケートは立ち止まって、僕の方を振り返った。「ねぇ、ヘンリー。まだ出会って2日だけど、エマと私の共通点ってなんだと思う?」「えっ?」エマとケートの共通点?なんだろう。二人は全く違うタイプに
【語り:エマ】「おい、女のひがみはみっともねぇぜ。」スティーブはそう言うと、ヘンリーと一緒にこっちにやってきた。ヘンリーが私の肩に両手を乗せて、目の奥をじっと覗き込んでくる。「エマ、大丈夫?」余計な心配はかけたくないから、ぐっとあごを引いて、私もまっすぐヘンリーの目を見つめ返した。「平気よ。」それを聞いてヘンリーは少しさみしそうな顔で微笑んだ。ほら、私のこととなるとすぐそんな顔をする。「スティーブ、行こう。」ヘンリーはそうスティーブに合図すると、私の背中を押して、5人組のパープ