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◆前回のあらすじ◆前回——事件続きの合間の、友達との再会。Grabでピザを送る顛末は、笑い話と共に「また、パロパロ認定」というオチに終わった。【「お店だけで仕事をします」】決まっていたはずの渡航が、流れた。私の仕事のスケジュールが、どうにも動かせなかった。色々と調整はしてみたものの、結局、さらに翌月に持ち越すことになった。彼女に何と伝えればいいのか、悩んだ。会いたい気持ちは、募る一方だったはずだ。それなのに、また先延ばしになる
◆前回のあらすじ◆前回——秘密の正体は「また日本の店で働く話」で、彼女はそれをNOと断った。まっとうな答え。それでも、私の中の疑いは消えない。そんな中、彼女の体調が、悪化する。【病院代】彼女の体調が、本格的に悪くなった。日本にいた頃から、不安のあった体調だった。フィリピンに帰ったら病院に行く、と言っていたのに、費用がかかるからと、行けずじまいになっていた。そして、その不調が、再発した。検査で、入院。いったん
◆前回のあらすじ◆前回——タガログ語で交わす、毎日の愛の言葉。mahalnamahalkita。関係は、海を越えて深まっていく。そんなある日、彼女が「秘密がある」と切り出した。【言えない秘密】ある時、彼女がこう切り出した。「あなたに言えない、大きな秘密がある。でも、あなたに迷惑をかけたくないし、言うつもりはない」——心臓が、静かに冷えた。言えない秘密。大きな秘密。
◆前回のあらすじ◆前回——地元でもパブで働くことを選んだG。私は「嫌だ」という感情を飲み込んだ。止める権利は、私にはない。そして、送金の話になる。【本当に、私だけなのか】送金は、少しした。初めての送金は、20000ペソ。アパート代の足しになればと思った。ただ、送る前に、私はどうしても確認したいことがあった。本当に、私だけなのか。電話で、それを聞いた。疑わしいことはないか。他に、誰かいないか。
◆前回のあらすじ◆前回——帰国したGの、残り3か月のマニラ暮らし。手元のお金はわずか。私は画面越しに宿を探し、まず「ゆっくり過ごして」と伝えた。【休むことも、できなかった】落ち着いた彼女は、好きだったレストランに出かけた。やっと一息つける。私もそう思った。ところが、料理を注文した後、彼女は頭痛に襲われた。せっかくの食事をテイクアウトにして、ホテルに戻ることになった。それから、熱と頭痛。かなり大変そうだった。
◆前回のあらすじ◆日本編は「離陸」で終わった。お揃いのナイキを履いて、私の贈ったものを全部身につけて、Gは海を渡っていった。ここからは、その先の話である。まだ、終わっていない。むしろ、ここからが本番だった。【海を渡った先】日本編が「恋の話」だったなら、フィリピン編は「現実の話」になる。そう予告した。予告した本人が、一番わかっていなかった。現実というものが、これほど次から次へと押し寄せてくるとは。ある年の7月
◆前回のあらすじ◆前回——10年学ばなかった男の、たった一つの結論。「優しさと計算は、分けられない」。今回は最終回。物語は、いよいよ海を渡る。【三足目だけが、進行形】三足目のGだけが、まだ終わっていない。彼女は今、海の向こうにいる。私はこちらにいる。同じ靴を、それぞれの街で履いている。結婚の話は、進行形で進んでいる。この恋が四足目を作らずに済むのか、それとも今までと同じ轍を踏むのか。正直、自分でもわか
◆前回のあらすじ◆前回——三足のうち二足は、行方を知らない。10年の収支と、三人への申し訳なさを書いた。今回は、そんな自分を少し引いた目で分析してみる。【我ながら、学習しない男である】しんみりした前回の直後にこれを書くのもどうかと思うが。10年で、私はほとんど成長していない。一足目で「会えない相手に送金する愚かさ」を学んだはずなのに、二足目でも似たようなことをした。一足目で「疑いの一言が全てを壊す」と知ったはずなのに、三足目
【三足の、その後】一足目のナイキは、激情に終わった。二足目のナイキは、同情に終わった。三足目のナイキは、いまも隣にある。こうして三行で並べると、まるで最初から決まっていた物語のように見える。だが、書いている本人が一番よくわかっている。これは、決まっていた物語ではない。行き当たりばったりで、みっともなくて、その都度本気で、その都度間違えた、ただの記録である。一足目のパンダは、今どこの道を歩いているのか知らない。二足目のZoomVome
◆前回のあらすじ◆前回——風除室のキスと、「mylove」。40男が自分から呼び始めた恥ずかしい呼び名を、Gは嫌がらなかった。【Gの言葉、そして「inloveしちゃう」】Gは、こんなことを言う子だった。「すぐお金お金言うフィリピン人は、嫌い」これを、フィリピン人のGが言うのである。WiFi工事代のZ、請求書のM、石鹸2万円のA——10年かけて積み上がった私の「お金と愛の見分けがつかない」問題に、まさかの当事者側からアンサーが来た
◆前回のあらすじ◆前回——店の前に置いた一枚のトレーナー。料金の発生しない場所から始まった、初めての恋。【風除室のキス】半月ほど経った頃、会いに行った。その夜が、Gを初めて指名した夜だった。泥酔した会議の夜——つまり出会いの一回目は、そもそも指名などしていない(できるわけがない、記憶がないのだから)。二回目に会いに行ったこの夜、私は初めてGを指名した。以降、Gが帰るまで、私は毎回彼女を指名し続けることになる。ただ、この
◆前回のあらすじ◆前回——10年間「kuya」と呼ばれてきた男が、来日2日目のGから「chan」と呼ばれた。ドキッとした自分を、40男は今日ここで初めて申告している。【店の前のトレーナー】そこから、毎日連絡を取るようになった。内容は、たわいもないことばかりである。ごはん、仕事、眠い、寒い。恋の駆け引きも営業の匂いもない、ただの日常の交換。それが、心地よかった。春先の日本は、フィリピン育ちには寒い。ある冷えた日
◆前回のあらすじ◆前回——泥酔した会議の夜。地元の店の新人とLINEを交換した記憶だけがうっすらあった男に、翌朝から連絡が来る。ぬるく始まった、最終部の物語。【「chan」】Gの話をしよう。Gは来日したばかりだった。私と会ったのは、日本に来てまだ2日目である。LINEを知っている日本人は、おそらく私一人だった。そしてGは、私を「◯◯chan」と呼んだ。これがどれだけ珍しいか、説明させてほし
◆前回のあらすじ◆幕間のあらすじ——Z、A、Mのすべてを消した男は、羽を畳もうと決めた。理由はただ一つ、たった一人の女性のためだった。最終部の舞台は、意外にも地元の、通い慣れた店である。【泥酔の男、記憶のない出会い】2026年、春。会議の日だった。会議の日というのは、つまり飲む日である。私はその夜、泥酔していた。どのくらい泥酔していたかというと、その夜のことをほぼ覚えていないくらいである。ただ、LINEを交換した
◆前回のあらすじ◆前回——帰国便のラウンジで、Aからの電話。「私は待っていたのに」。閉め出した女性の、待っていたという告白。【全削除】この後まもなく、私はZとAとMの、すべてを消すことになる。トーク履歴も、写真も、LINEの友達登録も、全部。Zの時のような怒りの削除ではない。Aの時のようななし崩しでもない。理由はただ一つ、たった一人の女性のためだった。私はタガログ語で「パロパロ」と呼ばれる
◆前回のあらすじ◆前回——閉ざされた扉の代わりに、現れたのはMだった。責めずに、隣にいてくれた。3年目にして初めての、店の外の関係。【お金の話】帰る間際になって、お金の話が始まった。具体的な中身は書かない。書かないが、それは「察してくれ」ではなく、はっきりとした要求の形をしていた。帰国してからも、お金の話は続いた。お土産もねだられた。自分の分だけでなく、友達の分まで。急激に、冷めた。
◆前回のあらすじ◆前回——Aに閉め出された男の航空券は、宙に浮いた。並行してMと連絡が続いていた男は、Mに会う男として着陸した。【ずっと一緒にいてくれた】Mは、滞在中ずっと一緒にいてくれた。観光に付き合い、飯に付き合い、夜にも付き合ってくれた。ええ、そういうことも、あった。この連載で初めての、店の外の、大人の関係である。第1部から数えて3年目にして初めて、と書くと、この世界の恋の燃費の悪さがわ
◆前回のあらすじ◆前回——3年ぶりのMが、宿題として細く繋がっていた。そして私は、Aに会うために航空券を取った。【初めてのフィリピン】フェードアウトした、と第2部の最後に書いた。あれは、嘘ではない。連絡は薄くなり、既読は遅くなり、私たちの間の温度は確かに下がっていった。ただ——下がりきる前に、私の中で妙な火がついた。このまま消えていくのは、違うんじゃないか。Zは自分から終わらせた。Aとは、終わらせてすらいない。
◆前回のあらすじ◆第2部のあらすじ——成田から一時間の街で出会ったA。オリジナルの衣装と、お土産のZoomVomero5。フェードアウトしていく彼女に会いに、私は初めてフィリピンへ飛ぶ。だが幕間の主役は、Aではない。【Mという宿題】この幕間の主役Mの話をするには、時計を第1部の頃まで巻き戻す必要がある。Zに通っていたあの時期、私は地元の店にも顔を出していた。そこにいたのがMだった。Mとは、キスもした。その先の
◆前回のあらすじ◆前回——手書きのラブレターと、Aが選んだ衣装と、お土産のZoomVomero5。三人のサヨナラの夜、オリジナル衣装を着ていたのはAだけだった。【鉄格子の家】帰国後のAとは、しばらく連絡が続いた。送金も、何回かした(学ばない男である。ただし今回は工事代ではなかった、とだけ言っておく)。毎月連絡すると言っていたのに、ある時からぷつりと途絶えて、3ヶ月音沙汰がなくなった。3ヶ月後、ふいに連絡が来て
◆前回のあらすじ◆前回——初めての同伴。待ち合わせで一輪のバラを渡し、若いお姫様のような私服のAに再会した。【熱があっても来る女性】Aとの同伴は、結局3回の予定が組まれた。1回は普通に楽しく終わった。1回は、Aは体調を崩していたのに、無理をして来てくれた。そして1回は、ドタキャンだった。どの順番だったか、実はもう正確に思い出せない。記憶とはいい加減なものである。ただ、覚えていることがある。熱のある顔で現れた
◆前回のあらすじ◆前回——優しさが請求書に切り替わり、男は急激に冷めた。そして、帰国の日。【「私は待っていたのに」】帰国便の日。出発ロビーのラウンジで、私は一人、飲み物を前に総括をしていた。Aに会いに来た旅で、Mに会って帰る男の、一人総括である。ため息と、それ以上のなにか。スマホが鳴ったのは、その時だった。Aだった。「なんで連絡くれなかったの?私は待っていたのに。他の女
◆前回のあらすじ◆前回——7月7日、七夕の再訪。1ヶ月前に30分接客しただけの客を、Aが覚えているはずがない——そう自分に言い聞かせて席についた。【「日本は初めて」】Aは33歳。マニラの近くの出身だと言った。そして「日本は初めて」だと言った。初めてにしては、日本語がうまかった。妙にうまかった。接客の言い回しがこなれていて、客あしらいに年季があった。ふうん、初めてなんだ、と私は思うことにした。この世界
◆前回のあらすじ◆前回——旅行中、頭の中はAでいっぱいだった。そして致命的な事実に気づく。LINEを交換していない。【「覚えてるよ」】店に入って、Aを指名した。1ヶ月前に、30分接客しただけの客である。向こうは商売で、毎晩何十人と客を見ている。覚えているわけがない。忘れられていて当然。そこから始めればいい。そう自分に言い聞かせて、隣に座ったAに探りを入れた。覚えていた。そ
◆前回のあらすじ◆前回——3ターン目までは動かなかった心が、4ターン目に来たAで動いた。ぽっちゃりで柔らかな笑顔の、圧倒的な30分。【痛恨のミス】旅行のことは、ほとんど覚えていない。名物を食べた気がする。観光もした気がする。何を見ても、頭の中には4ターン目の30分がリピート再生されていた。旅行中、頭の中はAでいっぱいだった。そして私は、致命的な事実に気づく。LINEを交換していない。
◆前回のあらすじ◆前回——写真を消して2ヶ月後。前泊した街のホテルで、友達がまた「ちょっと、行きたくなってきた」と言い出す。【4ターン目の女性】某店に入った。初めての街、初めての店。指名はしない。知っている子など一人もいないのだから当然である。こういう場合、店は30分ごとに女の子を回してくれる。回転寿司ならぬ回転タレントである(この表現で店に怒られたら謝ります)。1ターン目。感じのいい子だった。
◆前回のあらすじ◆第1部のあらすじ——高速90分先の店のZに2年通い、誕生日にパンダを贈り、桜の帰り道の一言ですべてを失った男。一足目のナイキは、激情に終わった。写真を全部消して2ヶ月後、物語は再開する。【行く気はなかった】Zの写真を消してから、2ヶ月が経っていた。2025年6月。友達と旅行に行くことになった。成田発の早朝便。前泊しようという話になり、空港から1時間ほどの街のホテルを取った。それだけの話だった。それ
◆前回のあらすじ◆前回——2回目のサヨナラの夜、駐車場で見てしまった。「一歩の隙間」は、駐車場の数だけあった。【桜】それでも、である。私はZに謝った。見てしまった側の私が、謝ったのだ。理由は単純で、それでも好きだったからだ。この恋の力関係のすべてが、この一行に詰まっている。読者諸君は呆れていい。書いている本人が一番呆れている。仲直りして、たまに連絡を取る関係に戻った。2025年3月、
◆前回のあらすじ◆前回——8ヶ月かけて冷ました気持ちは、Zの顔を見て3秒で蒸発した。また毎週、高速90分の日々が始まった。【見てはいけないもの】再開してからの日々を、少しだけ書いておく。同伴は、何度もした。ニンジャが消えた時代の恋は、店公認のデートを重ねるしかない。待ち合わせて、食べて、そのまま店に入って、閉店まで。以前より通う頻度は少し減った。それでも、ほぼ毎週出かけた。90分の高速は相変わらずで、財布の軽くなる速度
◆前回のあらすじ◆前回——帰国したZからの連絡は、写真一枚と、お金の話。気づけば20万円ほど送っていた。【「冷たいな、あなた」】2024年4月、Zが日本に戻ってくることになった。再来日の前にはマニラでダンスと歌の研修があるらしい。恋の相手が「戻ってくる」のではなく「研修を受けて再派遣される」のだと知った時、私は自分が産業の仕組みの中で恋をしていたことを、初めてうっすら理解した。彼女たちは季節労働者で、店は職場で、私は——客だった。