ブログ記事646件
「なるほど。では、最初に君に聞きたい」ある程度目を通し終えたサーミフが男へと視線を向ける。男はやはりつまらなそうな顔をしていた。「何故こんなことを?」王室を巻き込むというのは大胆であったが、そもそもそれがなかったとしても彼らが行ったことは悪魔の所業と言って良いものだ。やったことだけを見れば、人を人とも思わぬ残酷さがある。それをやってのけた理由はなんだと問いかければ、男は馬鹿にしたように鼻で嗤った。「何回も何回も同じことを聞いて、お前らは本当に飽きねぇな。そんなにお暇かい」あからさ
むかしむかし、おおきなおくににちいさなおとこのこがいましたかれはこのくにのおうじさまでなんでももっていましたキラキラしたきゅうでんもたくさんのめしつかいもおうじさまのためによういされるごはんはとてもごうかでおうじさまがきるふくはきぬでしたおうじさまがのぞめばてにはいらないものなんてなにもありません「殿下、到着いたしました」全ての思考を遮断するように瞼を閉じていたサーミフの耳に侍従長の静
「ずっと気を張り詰めていて疲れたのだろう。問題が無いようであれば、このまま休ませてやれ。ここは入れる者が限られているから、そう煩わされることもないだろう」妃候補として送られた女性たちはサーミフの私的空間に入ることは許されていないし、使用人にも制限をかけている。サーミフの権限が及ぶ範囲でもっとも静かな場所だと言えるだろう。その言葉に医師もひとつ頷いた。「それが良いでしょう。人間は軽視しがちですが、ストレスを侮ってはいけません」仕方がないとはいえ、この宮殿には凪の事情を知る者ばかりだ。そし
朝食を軽く摂り、そのまま凪のいる部屋へと向かう。正妃のための部屋であるのでサーミフの私室から直接赴くことができ、誰とも顔を合わせることがないのは非常に楽だ。人々の視線も、甘い声も、己の立場を理解しているからこそ許容しているが、サーミフ自身はあまり好きではない。疲れた、と思うこともある。〝サーミフ〟この宮殿の端に位置する空間は、そんなサーミフの性格を理解していた母からのプレゼントのようなものだった。「ナギ、私だ」軽くノックをして声をかける。しかし中から応えはなく、静かに近づく足音だけ
母――、その言葉にサーミフは視線を上げる。侍従長へ向けようとして、思いとどまった。きっと今、自分は何か物言いたげに瞳を揺らしているだろうから。「支度が済んだら、ナギの様子を見に行こう」何事もなかったかのようにサーミフは立ち上がる。彼の考えを理解したのだろう、もともとあまり出しゃばることのない侍従長は静かにサーミフに近づき、かつて凪がやっていたように支度を手伝った。凪に仕事を教えたのは侍従長だ。凪は真面目で、それらの動きを忠実に再現している。だから手伝う人間が変わっただけで、その動
パチッ、と夢から覚めると同時に瞼が開いた。視界に汚れひとつないシーツの波が映って、サーミフは独り小さくため息をつく。ここしばらく、穏やかな朝というものを迎えていない。「殿下、おはようございます」扉の向こうから侍従長の声がする。聞き慣れてはいるが、今この時にあっては聞き慣れぬ声だ。また小さくため息をついていれば、侍従長はサーミフの返事を待つことなく入室してきた。寝起きが悪い――有体に言えば寝汚いサーミフを知っているからこその行動であり、凪も毎朝していたものだが、サーミフは侍従長に変わってか
〝サーミフ、あなたは賢い子だわ〟そう言ったあの人は、幼きサーミフの髪をゆったりと撫でながら笑った。〝あなたは賢いから、わかってしまうのよね。国民が、王室が、周りの人々があなたに求めているものを。だからあなたはいつだって完璧だわ。まさしく多くの人が望む第二王子よ〟出来が良く、しかし兄たる王太子を上回ることはない。それを卑屈に思わず、弛まぬ努力をし、王太子を敬って出しゃばることはせず支えようとする。鷹揚に構え、些細なことに怒らず、慈悲深く、しかし厳格で正確。誰が見ても、どう見ても、完璧な二
「足を治すためにも安静にしていて欲しいが、退屈ならば何か持ってこよう。食べたいものでも良い。何かあるか?」凪は罪人ではないのだ。サーミフとて監禁したいわけではない。本でも嗜好品でも、それで気がまぎれるならと言ってみるが、凪はひどくゆっくりと首を横に振った。どことなく瞳がぼんやりしているように見えるのは、気のせいだろうか。「……いえ、何も。……お気遣いだけ、ありがたく……」ぼんやりと、凪の瞳が虚空を見つめる。思わず、サーミフの手が凪の頬に触れた。「疲れたか?」触れた頬は冷たく、温も
「此度の件は簡単なものが入り混じって複雑になっている。すべてを知るにはまだ時間がかかるだろう。だが、事情を聞くことはあってもナギや第三夫人が疑われることはない。閣下もできる限りの協力はしてくださるそうだ。だから今は、何も心配せず休め。お前にはそれが許される」あえて、サーミフは閣下が何に対して協力してくれるのかは言わなかった。解決方法が見つかっていない今、凪にあの毒の話をするのは愚策だろう。確かに凪も霧を吸っているのだ。当事者には間違いないが、それ以上に夫人は原液を幾度も摂取している。凪もそれ
「ヒバリ殿は特殊な存在だ。公の存在であり、公ではない存在でもある。閣下が隠すと決められれば、少なくともセランネはヒバリ殿に何かあったのだと把握することは不可能だろう。……ゆえに、ディーディアはナギに感謝しなければならない立場だ。罪に問うことなど、尚更できはしない」元々罪に問う気は無かったが、凪が納得できないと言うのであればこうして断言すれば良い。このディーディアにあって、罪科の裁量を握っているのはサーミフなのだから。(それに、全ては事実だからな)サーミフはその場限りの慰めや出鱈目を言っ
「しかし……」「ヒバリ殿の件に関しては、すべては私が命じたこと。そこに私情が入っていようと責める気はない。ある程度の危険は予測できた。予測できた上でナギに命じた。ヒバリ殿の側にいろと。ならば、その行動も結果も、全ては私に責任がある。幸いなことに、閣下は我々に対して責任を問う気はないようだ。今はそれをありがたく受け取っておこう。むしろ――」真っ直ぐにこちらを見てきた閣下の瞳を思い出す。「むしろ、閣下はナギがヒバリ殿の行動の一部を私に報告しなかった気遣いに感謝されていた。それゆえに目を瞑られ
語られない限り、凪の本心はどこにあるかサーミフにはわからない。本当は人々の噂するように悔しく思っているのかもしれない。けれど、彼が心の奥でどう思っていようと、その瞳の純粋さは変わらない。同じように、深淵を見てきた。それが王族の宿命だとサーミフは諦めていたし、受け入れてもいた。けれどサーミフは、あれほど美しい瞳を持つことは、できなかった。見てきた苦しみが違うのだから当たり前だろうと人々は言うだろう。その通りでもある。けれどあの瞳を見た瞬間に、自分が戻ることのできないかつての光景を見たよう
「私はもう大人です。ディーディア人から見れば小さく子供のような見た目かもしれませんが、とうに成人を超えました。そう、何度も何度も言ってきました。ならば大人として、私は認めるべきでしょう。私が夢想する方法の何一つとして、私や母を生かすことはできなかったのだと」母に、ヒバリに、サーミフに、守られて生きてきたのだと。「ですから、殿下がどれほど私を疑われようと、それは関係のないこと。ヒバリ様に関しては私が一方的に嫌いだと思っているだけです。それもまた、本当は認めたくなくてヒバリ様を嫌いだと言うこと
「あの時ああしていれば良かった。こうしていたら良かった。幾つも思い浮かぶものですが、そのどれもが綺麗事で苦しい側面を見ないふりしているにすぎないものばかりです。現実的ではないし、実行に移せばきっと〝こんなはずじゃなかった〟と嘆くでしょう。それがわかりきっている。そんな無駄な妄想を何度したことか。でも、ある時ふと思ったのです」何度も何度も、考えずにはいられなかった。過去は変えられないと自分に言い聞かせるのに、頭は勝手にこうしていれば、ああしていればと妄想を繰り広げる。それを繰り返しながら歳を重
「でも、それでも」忘れていたほうが良い。今更なにを思ったところで過去は変えられない。煩わされるだけだ。わかっている。結局は捕らわれているのだと。それでも、「それでも、いただいた恩は、忘れません」あなたへの恩も、ヒバリ様への恩も。真っ直ぐに、ただひたすらそう告げる凪の瞳にサーミフは息を呑んだ。とんだ綺麗事だというのに、笑い飛ばせないほど純粋で。「……なぜ」ポツリと、こぼれ落ちる。「嫌だったというのなら、それは恩にはならないはずだ。だというのに、なぜ……」なぜ、そんなにも大
「……お前は、知っていたと言っていたな。私が引き取ると言ったその時から、私の考えを知っていたと。……聞かせてはもらえないか?なぜ、わかっていながら献身を貫いた。なぜ、あれほどに嫌悪していたというのに、私に疑われるというリスクを負いながらもヒバリ殿の行動を報告しなかった」母親と自分の身だけを考えるなら、それなりで良かったはずだ。今こうしてサーミフを責めるだけの理由ができたのだから、何かを要求したってよかった。少なくともこうしてサーミフを慰めたり肯定したりする必要はない。ヒバリがガラスを砕いた
「殿下はきっと、ご自分を〝私情で疑い続けた冷血漢〟と思っていらっしゃるのでしょう。けれど、私にとっては違います。こうして私の頬に触れてくださる殿下の温もりは、今も昔も変わりません」たとえそれが、偽りの姿だったとしても。凪を油断させるためのお芝居だったとしても。「この温もりが、どれほど私の心を宥めてくれたことか」あなたはきっと、もう忘れているだろう。そんなことをポツリと凪は思う。この国に来て初めて熱を出した時、独り寝ている自分を見舞いに来てくれたことを。誰もが自分を放っておく中で、水
十は超えていたとはいえ、まだまだ親に甘えたい幼子だったというのに、仕事こそ成人してからさせたものの、サーミフはそんな幼い子供から母親を奪ったに等しい。そして目一杯の愛情を注ぐどころか、側近にしてもなお気を許さず、疑い、怪しくなればそれ見た事かと信じた。確かにサーミフにとって凪と過ごした自分は偽りであったけれど、それでも、自分を偽るだけでなく、何一つとして凪の本質を見ていなかったという事に他ならない。謝って、それで全てがなかった事になるなんて、そんなことを考えることはない。過去をやり直すこと
「――ッッ!?」一国の王子が、たかだか使用人に――それも失態を犯した使用人に膝をつき、頭を下げた。その光景はとても信じられるものではなく、否、信じてはいけないもので、凪は咄嗟に身体を起こそうとする。しかしそれはサーミフの上げた手に止められた。彼の手は僅かも凪に触れていないというのに、凪はピクリとも身体を動かすことができない。呑まれる。まさにそれこそが正しい表現だろう。「世の中には王族たる者、過ちがあろうと決して頭を下げてはならないという者がいる。それを否定する気はない。だが、私は人とし
贋金の件が公になろうと、夫人が狙われていようと、宮殿には澱みなく穏やかな時間が流れる。それが表に見せるべき姿で、内情はどうであれ揺らいではならない。それを面倒だと思いつつも、守るものを考えればそれもまた必要なことと理解しているから、気は進まないでもサーミフは夕食を摂り、食後の執務を終えた。そして大凡の者たちが公を忘れてゆったりと過ごすであろう時間になると、ゆっくりと立ち上がる。そして唯一私室に繋がっている妃のための部屋へと向かった。「ナギ、起きているか?」本来であれば子供以外は皆が起きて
「……殿下にとって、私は良い母親とは思えないのでしょう。私も、自分を良い母親だったと、胸を張って言うことはできません」いつだってそうだ。大きなことから小さなことまで、振り返っては後悔ばかりしている。「私は愚かですが、殿下のお立場も、自分の立場も、それくらいは理解しているつもりです。殿下が私の言動すべてを信用できないと断じても、私は仕方のないことと思いましょう。ですが殿下、ただひとつ、これだけは信じて欲しいものが私にはあります」自信などない。胸を張って正しかったのだとも言えない。けれど、
こんばんは読んでいただきありがとうございます公式サイトの更新情報チェックしてなかったハピエン、12月までの対象外日更新されています公式サイトから画像お借りしました。詳しくはこちらhttps://www.tokyodisneyresort.jp/hotel/topics/info/happy_entry.html12月は対象外日ありませんでしたディズニーホテルにお泊まりしてハピエン利用される予定の方はチェックしておいてくださいね東京ディズニーシー・ファンタジースプリングスホテル
「殿下ッ!」我が子を助けて。そう願う母親を、サーミフはそっと見つめる。ゆっくりと瞼を閉ざした。「……ディーディアは決して大国ではないが、それなりに豊かな国だ。そのディーディアにやってきて、国王の目に留まり、寵愛され、娘も生まれ、誰もが羨む暮らしと地位を手に入れた。今この時にあっても、その立場は微塵も揺らがないだろう。私が何を糾弾したところで、国王が全力で守るはずだ。あなたは、すべてを手に入れた。――それでも、あなたはナギの母親なのですね」切り捨てようと思えば、容易く切り捨てられただろう
夫人は深く、深く頭を垂れる。その姿に、サーミフはそっとため息をついた。〝可愛いサーミフ〟耳の奥に、懐かしい声が蘇る。「……いいえ。ディーディアの司法が裁くのは本人のみ。たとえ誰にどんな血が流れていようと関わりのないこと」それが血の繋がった親子であっても、関係のないこと。そう断言するサーミフに、夫人はホッと小さく息をつく。だがサーミフは残酷な言葉を続けた。「しかし、今のあなたと同じように、ナギもまた私に懇願しました。すべての罪を自分が背負うから、母は許してくださいと」ピクリと夫
「このままでは一家破滅どころか、何も知らない凪までもが罪に問われてしまう。貴族の位も、何もかも、凪の命と平穏には変えられません。だから、逃げて、逃げて、逃げて。なのに、結局私があの子を危険に巻き込んでしまった」そうとは、今の今になるまで気付かずに。「逃げたつもりでいただけで、結局、逃げられてなどいなかった。そうでしょう?殿下」贋金の件も、あの薬の件も、そうとは知らず望月家は関わっている。確信の籠った瞳に、サーミフは静かに頷いた。その瞬間、夫人の瞳から涙が一筋こぼれ落ちる。「……やは
「殿下、私は……知っていました。望月が、よからぬことをしていると。もちろん、それが他国に及ぶものだとは思ってもいませんでしたが、少なくとも、望月が破滅の道を辿ろうとしていることは、知っていました」知ったのは偶然だった。きっと夫人は書斎に入ってはこないだろうと油断したのか、あるいは知られたとてかまわないと思っていたのか、今となってはわからないが。夫人はあの日、見てしまった。机の上に置かれたままの書類。そこに、良くない噂を持つ貴族の署名が入った、契約書を。「望月は、良い人です。良い人ですが、そ
「よかった……」零れ落ちたそれはひどくか細かった。何度も、何度も噛み締めるように息をする。そしてどれくらい経っただろう。夫人は瞼を閉じてゆっくりと深呼吸した。そっと、その場に膝をつく。「本来ならば私にそのようなことは許されないと百も承知で、それでもお願い申し上げます。知らなかったとはいえ、罪は罪。しかしこの件に関して凪もナイーマも何も知りません。罪があるは、私ただ一人。ですからどうか、子供達をお守りください」形だけを見れば、国王にも王子達にも内密に、いち夫人が勝手に武器弾薬を用意し戦を
大満足なハピエンミラコスタに泊まったら絶対つかいたいシーのハッピーエントリーこんにちは。カルビーから、チケットは届きませんでした。結構凹んでます。『ミラコスタを満喫したい!!』プール憧れのミラコスタせっかく夏季に泊まったのならプールに入りたい!!『ミラコスタ泊まってきました!!!』最高すぎたやっと人生で初ミラコスタ泊まったブログ…ameblo.jp↑つづき!ミラコスタ予約時点ではまだ発表なかったのですが…7月から夏期間のみミラコスタ・ファンタジースプリングスホテル以外のホ
「……何用でしょう。あなたは今、ナイーマと共に父から部屋での療養を命じられているのでは?」流石にサーミフが閣下を訪っていた時間で診察は終わっているだろうが、そもそも現時点で誰も解毒剤の作り方を知らないのだ。すでに存在していたとしても、今のディーディアには無い。そんな状態で愛しい夫人と可愛い娘をベッドから出すことはないだろうと、サーミフは報告を受けた時の父王を思い出していた。そしてその予想は当たっていたのだろう、ピクリと夫人の肩が小さく跳ねる。「処罰は謹んでお受けいたします。しかし、休んでい
捕らえた者達から一度は話を聞きたいところではあるが、今はまだ残党がいないかなどの尋問を行なっているようだから邪魔はできない。そう思ったサーミフはどこへ寄ることもなく真っ直ぐに宮殿へ帰った。とはいえ、閣下の屋敷は宮殿から少し離れたところにあり、帰った時にはすでに夕食の時間が迫ろうとしていた。凪の立場と性格上、食事をしているのであれば終わった頃に様子を見に行く方が良いだろうかと考えながら回廊を歩く。いつもであれば殿下、殿下と何も事情を知らない美女達が姿を見せるなり囲うようにして寄ってくるのだが、今