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【Episode.1祈り】10机の残骸と砕けた花瓶が床に転がっている。数本の薔薇が床に散らばり雨風に打たれて花びらが散り散りに床に貼りつき所々どす黒い赤に変色していた。微かに木と木がひしめく合う音がした。キリコはハッと音のする方へ振り向く。ガティアが愛用していたロッキングチェアが揺れていた。かつてキリコがガティアの為に作ってやった物だ。その先に日除け布を掛けられて床に横になっているマコマが目に入った。キリコは胸が締め付けられて
悠花の覚悟が惨禍を生む。龍ノ国幻想5双飛の闇(新潮文庫nex)Amazon(アマゾン)${EVENT_LABEL_01_TEXT}序章悠花の覚悟が見て取れます。美しき彼が髪を切るって相当ですね……。一章護領衆悠火すごく湿度が高い話です。遠音の鬱屈とした心なんてマグマのようです。二章正道を従う悠花というキャラの心情を深堀する技量……。敬服するばかりです。三章美しいもの人間関係がとても複雑です。そして悠花と和気の距離が縮こまってきて
「それで?これからどうすんだ?」「なんとか衛兵隊に見つからず、王都を出ましょう」「なら一旦別行動だな」戻ってきた数々の装備を身につけパーゼルは言った。「いえいえ、パーゼル。一緒に旅する約束でしょう?」「でもお前、壁を上ったり屋根の上を走ったりできねえだろう?」「はい、出来ません。ですから一緒に通りを歩いてもらいます」「正気かよ?」「自分ではそう思っています」マニシが案外真面目そうな顔をしていたのでパーゼルは信じてみることにした。「俺がポニーを引くよ。そしたらお前のお付きっぽく
龍ノ国幻想4炎ゆ花の楔(新潮文庫nex)Amazon(アマゾン)序章悠花と結婚する予定だったとする男性が現れました。また一波乱ありそうです……。一章断罪乙名が日織の元を去るなど、日織の心労は絶えませんでした。王であるけれども彼女の人間らしい苦悩がよく描かれています。そのせいで日織の心に余裕がなくなり、「乙名が不津と繋がっているのではないか」と疑って彼を襲ってしまいました。悠花の「暴君」という言葉が重く響きますね。二章狡知と叡知遠音すごく権謀術数ですね…
「お前さんが生まれた時、わしの立場としては当然お祝いに駆け付けねばならんかった。もちろん金と銀の贈り物をたっぷり持ってのう」グラッジロックは胸元まで伸びた髭をなでた。「しかしもうすでにわしらの地下王国ではゴタゴタが始まっておってのう。わしが不在になるわけにはいかんかった」オークとドワーフが一体いつから争っているのか誰も覚えていなかった。それは時の神しか知りえないことだった。「エルフのお姫様のお祝いどころではなかったんじゃ。こうして出会えたのは女神の導きじゃ。わしは嬉しいと思うておるよ」
怒りの絶叫を響かせた魔物サペイシャに対峙して、グラッジロックは不動の構えを見せた。魔物はよく見ると、長く不気味な胴体の終端に鋭く長い針を持っていた。あれで攻撃することも可能だろう。予期せぬタイミングで使ってくるかもしれない。ドワーフ戦士は大きな斧を胸より少し下げて構えた。攻めも守りも瞬時に行える。数多の戦いを切り抜けたグラッジロックの得意とする構えだった。蠍のような左右の鋏がドワーフに襲い掛かった。続けざまに二度行われた。威力は大したものだったがドワーフは斧で弾き返した。単調な攻撃であり、
「それでね、わたしのお庭にも猫がいるの。たくさんいるわけではないのよ。6匹だけいるの。みんなとても良い子で、たくさんお話してくれるの。わたしもあの子たちににたくさんお話するの」「うむ、そうか。猫と話す、か」「ええ、そう。おじいさんは猫とどんなお話をなさるの?」グラッジロックは周囲の警戒を怠らなかった。リアの魔法のおかげで周囲は少し見渡せるようになっていた。あまり強い光があっては不用心になるため、灯火の魔法ではなく、リアの体から発せられる魔法の力だけで闇を照らしていた。長い間地下王国で生活し
戦いは加速していく相も変わらず『龍ノ国幻想』はすごい内容だと思います。序章有間の過去が語られています。この時点で既に壮絶です。彼がここまで生きてきた胆力には感服します。一章亡者帰参この巻では日織ではなく有間が主人公のようです。また、壮絶な戦いの予感がします。二章吾が妻吾が夫立場上夫を取らなければならないけれど、悠花のことが忘れられない日織を心苦しかったです。僕もできれば悠花と一緒になって欲しいと思います。そして不津王がかなり粘着質です。
【Episode.1祈り】8あの日キリコは自宅から少し離れた森で自分の木人形を使役して、伐採作業をしていた。昼にさしかかった頃切り株の上に腰掛けガティアに作ってもらった弁当を食べ終わった彼は、それからしばらくしてまた伐採作業の続きにとりかかった。小一時間くらい経った頃、急に妙な胸騒ぎがした。こんなことは初めてだった。キリコは作業を早めに切り上げ木と木の合間を縫い落ち葉で滑りやすい法面を慣れた足つきで駆け抜けガティアと
「グラッジロック様?」「違うと言うとるじゃろうが」グラッジロックは懸命に記憶を探った。このエルフの少女とどこかで会った事があっただろうか?思い出せなかった。200年を超える記憶の中からたったひとりのエルフの少女を見つけ出すのは難しかった。グラッジロックは会った人々のことをいちいち覚えていないたちだった。「グラッジロック様でないとしたら、おじいさんはだあれ?」「わ、わしは」グラッジロックは答えたくなかった。答えられなかった。自分の名前を口にすることは自分の罪を告白するに等しかった。その
目の前の敵は間違いなく強敵だった。あの一撃に耐えたものは指折り数えるほどしかいない。グラッジロック自身、最後に立っていられた者の顔を覚えていなかった。ジャイアントリザードは頭から血を流してはいるが、ほとんどダメージを負っていないように見える。赤い目の邪悪さは底知れず、この怪物の飢餓そのものが妖光を発しているかのようだった。グラッジロックは距離を取った。渾身の一撃が敵を打ち負かさない以上、ドワーフの深い知恵を持って迎え撃たねばならない。この怪物はなにか他とは違うものを感じさせる。「遠慮は
それは大きな穴ではなかった。ザックを背負ったままでは入れなかった。グラッジロックは暗い森の中でひとり、あご髭を荒くこすって考え込んだ。入るべきか、入らざるべきか。フクロウの鳴く声が聴こえる。早く決めろと急かしているようだった。周囲に敵の気配は感じない。しかし決断は早い方がいい。「賭けてみるしかない、か」重く沈んだ声は彼の厚い胸板の中に溶けていくようだった。ドワーフは一度そうだと決めればどんな危険があっても行動に移す。彼らの頑固さが生み出せない悲劇・喜劇はない、という名言を遺したの
【Episode.1祈り】7キリコの住むバルティカ帝国領【ナパ】はバルティカ帝国とアラム帝国を結ぶ帝国街道から少し外れている林業が主な産業の寂れた町である。そこでマコマとガティアの新しい生活が始まった。キリコは早くに妻を亡くし二人の息子たちは、すでに独り立ちして他の町へと出て行ってしまった。それからはずっと一人でこの村で樵(きこり)を生業として静かに暮らしていた。そんなキリコは口では「面倒臭いことになった…」と愚痴をこぼ
日織の決意(あらすじ)日織(ひおり)は龍ノ原の皇位を巡る争いで、女であることを偽り皇尊(すめらみこと)となった。命懸けの「噓」は、龍の声を聞く力を持たない娘たちの命を奪う、この国の掟を自らの手で変えるためだった。ついに、新たな御代の始まりを告げる宣儀の瞬間が来た。しかし龍を呼ぶ笛が鳴らず、皇位は認められない。呼笛は何者かによってすり替えられたのか。一方、反封洲(たんのほうしゅう)の伴有間(とものありま)という男が訪れ、一原八洲(いちげんはっしゅう)の律を犯す要求を日織に突きつける。そし
【Episode.1祈り】6「マコがここへ来て、もう十年経つかのぅ…」老人はひとり呟いた。十年前のある夜古い友人が突然幼い子供を抱きかかえて老人の元へ訪れた。その友人の白髪交じりの長い髪は乱れに乱れ、もつれ合い粗末な服の上から煤けて汚げな黒いローブを身に纏っているだけ。昔の艶やかな姿とは似ても似つかぬかけ離れた姿だった。身震いするくらい鋭い目付きが当時の面影を残していたが老人は最初誰だかわからなかったばか
1人の皇子の戦いの始まり(あらすじ)海に浮かぶ央(ひさし)大地には一原八洲と呼ばれる九つの国が存在し、巨大な龍の上に存在すると信じられている。その一国・龍ノ原(たつのはら)で皇尊(すめらみこと)が崩御し、皇位の座を巡り競う三人の男がいた。その中の一人、日織皇子(ひおりのみこ)は実は女だった。この国では女は龍の声を聞く力を持つが、生まれながらにその力を持たない「遊子(ゆうし)」は命を奪われる宿命を持つ。遊子ゆえに殺された姉の復讐を果たすため、日織は国を変えるため男として皇尊を目指す。一方
【Episode.1祈り】5(7年前、おばあちゃんが亡くなったあの日の出来事を今でも時々夢にみる。その後はいつも決まって、真っ黒い闇のような泥沼にはまり足掻き藻掻き溺れる夢が続く…)(その時、手を差し伸べ救ってくれるのは不思議なことに、私…雰囲気のまるで違う、もうひとりの私…)(この夢を見るといつも自分の身体と魂が分離してしまいそうな不安定な感覚に陥る…身体が怠い…意識の彼方から私を
【Episode.1祈り】4再び稲妻が走った時椅子に座ったガティアの身体がずるりと床に転がり、マコマと対面した。苦悶の表情で見開いた眼は光を失い焦点が定まっていなかった。血の涙が皺だらけの頬を伝って流れていく。口は大きく開き、そこから涎のように血が流れ出て床を汚した…轟く雷鳴は心揺さぶり、稲光は凄惨な現実を映し出す。暴風雨は血を撒き散らした。張り詰めていた緊張が一気に弾け飛ぶ。恐怖と混乱…そして絶望と喪失
【Episode.1祈り】3マコマは居間で木人形を抱いて絵本を読んでいた。外が急に光り、木が裂ける乾いた音と共に振動が部屋にまで伝わると急に怖くなりテラスにいるはずのガティアの元へ走った。「おばあちゃーん!」テラスへ続く廊下を抜けると目が眩むようなような鋭い雷光がマコマを襲い、視界を奪った。固く閉じた目をゆっくりと開ける。次第に拡がる光景はマコマにとって生涯忘れることの出来ない出来事を
【Prologue】3それから当分の間、少女とプッペは子供達の遊び相手になっていたが雲の隙間から、次々と光りが差して辺りが明るくなった時子供のだれかが、ある雲から斜めに差す光を指差して言った。「あっ!あそこっ!てんしだっ!」その瞬間、子供達の興味はプッペから彼の指差す一条の光の中に移った。「どこに?どこ?」「そんなのうそだろ?」「ほらっ!あのひかりのなか!」「え〜?わかんないよう」「…あっ!ほんとだ!」
【Prologue】2子供達は少女の足元を四足歩行でテトテト歩く犬のような木人形に興味を惹かれたのだろう。不思議なことにその木人形は操り糸で操られているようには見えず、まるで自我を持って歩いているようだった。「木のにんぎょう?いぬ?」「どうやってうごいてるの?」「おくちとおはなが、まがってるよ?」「おもしろいかお〜へんなの〜ww」「ひたいにへんなもじ〜」子供達は不躾に少女とその木人形に話しかける。木人形は
【人形使いが旅に出る】著者ゴリラ神ご乱心挿絵ごりら神ご安心※ファンタジー小説なので、実際の団体、地名、その他諸々、一切関係ありません。無断転載禁止。【Prologue】1故郷を出立してもうどれくらい経つだろう…道の脇には雑草が雨に濡れて地面に穂先を垂れていた。昨夜から降り続けていた雨は止み道に溜まった水たまりが一人の少女を映し出していた。フードを深くか
※『黄泉のツガイ1』『黄泉のツガイ2』『黄泉のツガイ3』『黄泉のツガイ4』東村が襲われ、壊滅的な打撃を受けました。そして、ある者は自発的に山を下り、ある者は強制的に村を連れ出されます。ハナは、自宅に帰りつき、デラに話しかけます。<ハナ(これ昨日の夕飯に用意した鍋の材料?食べなかったんスか?)デラ(うんハナちゃんが帰って来たら食おうと思って俺らはてきとうに余り物食った)ハナ(私にかまわず食べちゃってよかったのに)デラ(ユルが鍋は皆
これはまだ神も人間も混沌としていた頃、世界で各民族が国を建て始めた時代に始まったお話し。狩猟と採取の民であったホウラデス族は狩猟神オライオンを祀り、部族合議文化の下に暮らしていた。ファミリーの集合体としてのホウラデスは貧富の差もなく、獲物を分け与えあい老若男女全てが平等な社会で暮らしていた。しかし狩猟と採取に支えられた暮らしは、いつしか農耕という文明の波に飲まれ始め、ホウラデスの運命を狂わせ始めていた。ホウラデスの周辺にも次々と国家が現れ、彼等の暮らしと衝突を繰り返し、争いは激化の一途を
『虚空の旅人』以前、北の大陸で知られていた国は、新ヨゴ皇国(おうこく)、カンバル王国、ロタ王国であった。これら三国にサンガル王国を加えて、四国どうしで、人の行き来はあり、お互いのことはかなり知られていた。しかし、それ以外の、その外の世界についての知識はほとんどなかった。知ろうとする姿勢すらなかった。呪術については、特定の人々に依存するのみで、より積極的に知識を蓄積する姿勢は見えなかった。新ヨゴ皇国に至っては、呪術を排除しようとさえしていた。四つの国は自足していた。これまで
新ヨゴ皇国(おうこく)では、タンダやトロガイが、カンバル王国では、<山の王>の民であり、牧童の最長老であるトト長老が、この世界と重なる世界の異変の波が、カンバルと新ヨゴを揺さぶることを予見し、憂慮している。そして、カンバル王たちが、バルサが、チャグムが知る。チャグムはカンバル王に会い、ロタ王国との同盟を結ばせなければならなかった。だが、まずはカンバルまで行きつかなくてはならない。多くの困難が彼らの道を拒む。吹雪に邪魔されて、ウサル渓谷への道筋で、チャグムは焦っていた。チャグム
新ヨゴ皇国は鎖国した。国外にいた者は非公式な道を辿って帰国する以外に無い。バルサはその帰国を手伝っていた。他方、シュガは、宮廷の中で、誰がタルシュ帝国に通じているのか気づく。だが既に、自分が限りなく孤立していることを強く意識した。さらには、呪術師タンダは、天変地異が起こる予兆を感じながらも、実家の徴兵の責を引き受けざるを得なくなっていた。不安が世界を覆っていた。チャグムの安否についての知らせがバルサに届き、直ちにロタ王国に向かった。手掛かりは少なかった。バルサがチャグ
これは新ヨゴ皇国(おうこく)の皇太子チャグムが帝国というものに、初めて触れた時の物語である。チャグムがこれまで知っていたのは、故国を含めすべて王国であった。外交は、王国の間に成り立つものとして、あった。それらの国の間には、圧倒的な力の差がない、という意味では、本質的な違いはない。その時々の外交の結果がどうであれ、結局は妥協の産物である。では帝国とは?例として、ローマ帝国を考えてみる。ローマは、条件さえ満たせば他都市の者にも市民権を与えた。ローマ法を整備した。一都市国家であっ
みなさん、こんばんは。とし総子です。秋の夜長にどうでしょうか?な、作品紹介のお時間です。みなさん、映画は好きですか?どんな映画がが好きですか?私はハイファンタジーの映画が好きです。幼い頃に見た『ネバーエンディングストーリー』は原作者の方や、ファンのひとには不評だったと知っているのですが、内気な少年が本の中に入って本当の勇気をみつける物語は、今見てもとても感動してしまいます。(これは2の話ですね。3までありますが、私は2が一番好きです!)ネバーエンディング・スト