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バーを出た足で、キョウはドックに向かった。「もう終わったのか?」案の定、夫のヘントが、自分の機体の整備をしていた。コクピットの傍までキョウが来ると、すぐに気づいて顔を出した。「先に切り上げてきた。あなたとのこと、あんまり冷やかされるから。」キョウは照れくさそうに笑い、手すりにもたれかかった。「そこのドリンク、飲むといい。青いボトルのは、君のだ。」コクピットの中から声だけがする。作業台の隅に、青いドリンクボトルがあった。手に取ると、ひんやりとした感触が、酒でほてった体に心地よい
【#57“SHADOWPHANTOMs”/Mar.1.0088】地球連邦軍が密かに管理している、小惑星型基地の付近を、デュアル・アイの白い機体が飛ぶ。その隣には、青い機体が、寄り添うように追随している。新型機のテスト飛行だ。「悪くない。」機体各所のバーニアを細かくふかしながら、機体の向きをくるりと変えると、テストパイロットのヘント・ミューラーは満足そうに呟いた。「この調整をベースに、明日は2号機のテストだ。アンナ・ベルクに伝えておいてくれ。」小惑星基地に向けて通信を送ると、
『何考えてるの、こんなときに!』「いつだって——」シュトゥルム・ザックが、間近に迫った。そのまま、組み合う形になる。「考えているのは——君との未来のことだけだ!」叫びながら、ヘントは機体を回転させ、巴投げのように敵機を投げ飛ばした。「これだけ戦えるならもう受けられるだろう!さすがの俺ももう待てん!復命しろ、キョウ・ミヤギ!」『復命って……最悪!そのフレーズ!!』言って、ヘントの後ろにつき、敵を捌いていく。「返事は——!?」『断る理由がないでしょう!!!!』『お二人とも、回
【#56Danceyourlastdancewithme./Nov.16.0087】連中の連れていたもう1機のジムは、ヘントが撃墜した。しかし、バギー・ブッシュともう1機のシュトゥルム・ザックの追撃は、振りほどけない。MSに釘付けになっているため、艦に向かう気配がないのは幸いだが、”シラウメ”が”サクラ”に向けて、徐々に距離を詰めていた。「やば……ごめん!」アンナ・ベルクは、自機の被弾を確認して叫んだ。脚部から火を吹いてふらつく。ヘント・ミューラーが即座に、鋭角な軌道で
ミヤギからの指示は大体理解したつもりだ。真っ直ぐにマゼランに向かう。マゼラン級は艦体の側面にもブリッジがあり、死角も少ないが、ねらうとしたら艦の下方だ。艦影を有視界に捉えると、下方に潜り込むようにコースをとる。マゼランの巨体の腹に、ビームライフルを1発叩き込んだ。(ヘント……中尉から、聞いていました。若いが、聡明で腕がいい。優秀なパイロットだと。)ここまでの行軍の道すがら、涼やかな声でそう告げられると、こそばゆい気持ちになった。(頼りにしています。)その、凛としてよくとおる声を聞くと、
【#55Rebels/Nov.16.0087】『逃すくらいなら、サイド5宙域内でも撃つ。』ティターンズの馬鹿が、ようやく心を決めたらしい。ケイン・マーキュリー少佐から、全隊に通信が入る。『だが、戦闘行為は極力宙域外で行え。』EFMP第2部隊の連中は、”リボー”付近を通過して、キョウ・ミヤギと合流したらしい。今のコースから予測するに、”アガルタ”付近から宙域外に脱出するつもりに見えた。「我々は宙域内を突っ切って追撃を掛けます。」EFMP第1部隊のバギー・ブッシュ中尉が言う。
『おアツいところ申し訳ございませんがぁ〜……。』回線に、アンナ・ベルクが割り込む。『そろそろ作戦打ち合わせ、してもいいかなぁ?』アンナは、結局ブライトマンの味方をした。最後の最後、連邦本部の諜報員という立場を隠れ蓑に、ヘントとカイルの死を偽装するための芝居に協力したのだ。(いい芝居だったでしょ?退役したら、この美貌を生かして女優にでもなろうかな。)宿舎からの脱出の最中、へらへらと笑いながら、そんなことも言っていた。『心配かけてごめんね。』ミヤギに、向けて言う。「いえ、"ジュニ
【#54Beforethestormoftheuniverse/Nov.16.0087】「連中、何かを待っている……それとも、探している?」EFMP第1部隊の母艦”シラウメ”のブリッジで、バギー・ブッシュ中尉が言う。反乱を起こした第2部隊との交戦を中断したのは、連中が”サクラ”の艦内で拘束した親ティターンズ派の兵士を、カーゴに乗せて放流したせいた。カーゴを回収しているうちに、距離を取られた。月あたりに向かって逃げるのかと思ったが、再びサイド5の宙域内に侵入していった。
整備兵どもが、突如、牙をむいた。「殺すつもりはない!」あの、愛嬌のある小男が指揮している。「こ、殺さないでぇ~!」サイラスとか言う、黒髪眼鏡の技術者が人質のような格好になっている。芝居のようにもみえるが、本当に怯えているようにも見える。どちらでもいい。今は、生き延びねば。アランは、物陰に身を潜めながら、ミヤギのいるコンパートメントの方に向かった。廊下では既に、”ブルーウイング”の仲間がバリケードを設置して、防御を固めていた。「よし、それでいい。」仲間たちに声を掛け、アランは
【#53ThedayofDakar/Nov.16.0087】「君に乗せてもらうことにして、よかったと思っている。今のままではすぐに墜とされる。」コクピットに上るリフトの上で、金髪碧眼の美しい男は呟いた。だが、その美しい色をした瞳は、真っ黒なサングラスに隠されている。その男の佇まいは、堂々としており、人の前に立つものであることを周囲に自然に納得させる雰囲気がある。美しいが、鋭い目つきと、額のものものしい切り傷の跡が、その男が戦士であることを示しているようだった。言葉もはっきり
「元気?」ヘントが収容されている小さなコンパートメントを、アンナ・ベルク少尉が訪ねてきた。「1班の面々は実質の軟禁状態と聞いていたのだがな。」ヘントは、椅子に拘束されてアンナに”歓迎の言葉”を述べる。「……とっくに知ってんでしょ、あたしが何なのか。」ヘントは応えない。その様子に、アンナは、好い奴だなあ、と、ため息をつく。「拘束されてるなら大丈夫。たぶん、二人きりなら、もう少し話してくれると思う。」小銃を構えた見張りの二人を振り返り、アンナが言う。「ちょっと、席を外して。セク
【#52“DerProcess”/Nov.3.0087】U.C.008711月2日。エゥーゴとカラバによる、キリマンジャロ基地襲撃が開始された。キリマンジャロ。地球におけるティターンズの一大拠点と言える。1年戦争におけるオデッサ作戦、あるいは、ジオンによるジャブロー空襲——そういう、歴史の潮目とも言うべき戦いになる。この一報に触れた者は、誰もがそう思った。もちろん、ラッキー・ブライトマン中佐麾下のキアヌ・ファーブル少尉もだ。キアヌ少尉は、報告文書を抱え、執務室に
ミヤギに殺到する敵機の、激しい憎悪と敵意が、ヘントにも確かに感じられた。これは、まずい。ミヤギがまた、戦闘不能に陥ってしまう。敵機は、あの時の獣のような黒い機体だ。あの性能では、行動不能の機体は一瞬で屠られる。そこまで、一瞬で思考する。ヘントは、敵機とミヤギの間に割って入ろうと、機体を動かしたが、同時に、ミヤギのジムもバーニアを噴射させた。(動いた——自分で……!?)ミヤギは、向かってくる敵機の脇腹に潜り込むと、イギーのように体当たりを喰らわせた。いや、違う。砂漠で、二人で出
【#51MIYAGI’scounterattack–3/Oct.25.0087】(見つけた、キョウ・ミヤギ!)戦場にそぐわない、明るい調子の、女の声だった。(あなたは……?)(ジンは、まだあなたにこだわっている。)ジン?ジン・サナダのことか?(ジンはまだ、あなたのことを愛しているんだ!!)(何……?)ジン・サナダが、自分を、愛している——ミヤギにとって、そのフレーズはこの世で最も不快で嫌悪感のある響きを持っている。(ジンはあなたを欲しがっているし、壊したがって
4機は模擬戦のスタート地点で、円を描くようにグルリと一度回ると、散開した。ハイザック・カスタムは、狙撃用らしきロングライフルを装備している。散開と同時に、みるみる後方に下がっていく。「向こうも狙撃が十八番か……!」呟いてから、ヘントは通信機に呼び掛ける。「キョウ、下がれ!」言うなり、ビームが飛んできた。2人は即座に散開してかわすが、前線に残ったバーザムが、ミヤギのジムに殺到する。ヘントのキャバルリーがバーザムに組み付き、ミヤギ機へ到達するのを阻止する。ミヤギは、ビームを掃射し
【#50Returnofthevalkyria/Oct.25.0087】7機のジムと、7機のSFS、その完璧な連携が、一段と、冴える。航空宇宙祭は、予定どおり挙行された。EFMP第1部隊が、サイド3を"追い出されて"きたのは、この情勢で航空宇宙祭を実施することに、かえって追い風になった。第1部隊は、予備機を含んだ6機を展開して警備に当たっている。"ティターンズ"、EFMP第1部隊、第2部隊2班、"イーグルス"……サイド5領空ギリギリの宙域は、かなりものものしい警備体制が敷
「未確認の艦艇及びMSは武装している。十分に警戒しろ。」接敵予定地点に近づいてきたので、キャバルリーを3機とも、カタパルト上に上げる。『ミノフスキー粒子の濃度が、上がっていますね。』カイル・ルーカス曹長が応える。先程から、通信にわずかなノイズが入る。この先は、ミノフスキー粒子が戦闘濃度で散布されていることが明らかだ。『いつでも仕掛けられるってこと、ね。』アンナ・ベルク少尉も、珍しく真剣な声を出す。『でも、できればやりあいたくないなぁ。』実戦は疲れるしぃ、と、やはり、すぐに
【#49TheborderbetweenWHITEandBLACK/Oct.18.0087】U.C.0087、5月、地球で軟禁状態だったアムロ・レイが、脱出していたらしい。地上のエゥーゴ支援組織、カラバに合流して、MS隊を指揮しているようだ。同月のジャブローへの核攻撃も、エゥーゴの仕業と世間に知らされているが、どうやらティターンズによる自爆のようだ。他にも、エゥーゴの代表であるブレックス・フォーラ准将の暗殺。月へのコロニー落とし未遂、コロニーへの毒ガス攻撃未遂……最後の
「そうですね、中尉のおっしゃるとおり、回復の傾向と見ていいかもしれません。」”サクラ”艦内、医務室前の廊下で、チタが言う。「明日は、ヘント中尉も非番でしょうから、”ブルーウイング”だけでやってみるのもいいかもしれません。」だけど、と、チタは伏し目がちになり、ためらうように言葉を途切れさせた。代わりに、ヘントが言葉を継いだ。「回復は、彼女の身を危険に晒す。」チタは、うつむいたままコクリと頷いた。回復はしている。毎日一番近くで彼女を見てきたチタは、この数年、確かにそれを感じて
【#48Theconsiderationforrecovery/Oct.15.0087】ラッキー・ブライトマン中佐からの、急でふざけた提案は、半分握りつぶした。なぜ、”イーグルス”ごときに所属している、凡夫のロートルと、自分が組まねばならいのか。ケイン・マーキュリー少佐は、新型MSバーザムと、自分のハイザック・カスタムのお披露目を理由に、”イーグルス”とのタッグは解消した。そもそも、奴らの使うジムでは、旧式すぎる。突如”乱入”してきたEFMPのキャバルリーは、まがいなりに
ヘントとの久しぶりの作戦打合せに、胸が躍ったのは確かだ。ティターンズの将校は、明らかに自分に敵意を向けている。そのねちっこい感覚が、ただただ不快で、この模擬線や、狙撃ショーの提案も、まったく乗り気ではなかった。だが、おかげさまと言うべきか、こういう機会に恵まれた。「本当に、大丈夫なのか?」淹れたてのコーヒーを差し出しながら、ヘントがミヤギに訊ねる。先ほどの座を解散した後、何となく、二人で、ヘントの宿舎のコンパートメントまでまできた。隣室のアンナは、朝まで飲んでくるから、と、にやにやし
【#47Theshieldofvalkyria/Oct.4.0087】”ブルーウイング”の、宇宙での展示飛行用の機体、”ドラゴンフライ”と呼ばれるSFSが、滑るように機動を伸ばしていく。背面に寝そべっていたMS、ジム・スナイパーⅡはゆっくりと立ち上がる。背面を思い切り蹴って、鋭い機動で前に飛び出す。地上では、重力の制限があるぶん技術の妙が光ったが、宇宙では、MSが3次元的で自由な機動が取れるため、さらに華々しい飛行になる。「今日もキレっキレだな、うちの隊長は。」一際
「だめだめ、酒と料理はいいけど、好い男がいない。」アンナ・ベルク少尉が、なみなみと酒を注いだ大きめのグラスを握って言った。「何をしにきたんだ、君は。」壁の花になっていたヘント・ミューラー少尉は、呆れた表情で応答する。「何って、そりゃ、良いお酒を飲みにきたんでしょうが。」へらへらと笑いながら、好い男がいれば、文句ないじゃないの、と付け加える。「"ブルーウイング"のパイロットに、すごくハンサムな人がいるじゃないですか。ほら、あそこに。」カイル・ルーカス曹長が、目線を送る先では、面長
【#46Reunionnight/Oct.1.0087】1年戦争が終結すると、”ガンダム”はすぐに回収された。代わりに配備された機体は、ガンダムと比べても、遜色のない性能を有していた。しかし、再び配属されたアフリカでは、戦闘らしい戦闘にもならないまま、一年が経った。いや、散発的な戦闘はあったのだ。だが、第22遊撃MS部隊は、積極的に前線に出されなかった。自分のせいだ、と、キョウ・ミヤギ少尉は感じていた。(お荷物だ、これでは……。)22部隊の解隊を告げられたのは、そんな焦燥に身を
【#45Theeveofreunion/Sep.30.0087】「早いな、もう戻ってきたのか。」執務室宛に起案した戦闘報告書に、印が押されて戻ってきた。新サイド5周辺宙域を航行中の、マゼラン級宇宙戦艦の無重力ブロックの廊下で、その書類を受け取り、感心した声をあげたのは、ティターンズのマイク少尉だ。その様子を見て、同僚のトム少尉は苦笑を浮かべていた。「しかし、なんでわざわざ起案に押印なんだ。旧世紀じゃあるまいし……。」「読んでないからだよ。戻りが早いのも、ハンコを押すのも。」
※この記事は過去記事の再構成です諸君、ご壮健かな。機動戦士Ζガンダム。アムロ・レイとシャア・アズナブルが一年戦争を終え、大人の落ち着きを持ち始めた、グリプス戦役という内戦の時代の話。その登場人物。カツ・コバヤシ。一年戦争で孤児としてホワイトベースに避難し、のちにハヤト・コバヤシとフラウ・ボウの養子となる少年だ。彼はアムロ・レイに憧れ、しかし実際のアムロの不完全さに失望し自らパイロットになる。ニュータイプとして目覚めつつある彼は、出撃したくてたまらない。しかし、自軍・エゥーゴの機体
こちらは、ガンダムファン必見の『ガンダムベース限定HG1/144ゼータガンダム/百式/ガンダムMk-II(エゥーゴ仕様)セット』です。グリプス戦役スペシャルカラーで、魅力的な見た目が特徴。仕事の合間に気軽に楽しめるプラモデルとして、ちょっとしたストレス解消に最適です。休日には、友人と一緒に組み立てを楽しみながら、懐かしい「機動戦士Zガンダム」の世界に浸ることができます。初心者にも優しい設計なので、子供から大人まで手軽に挑戦でき、完成後は飾って自慢できるアイテムです。思い出の名シーンを再現で
こんにちは。今日の佐渡はトライアスロンの為ノーカーデーです島暮らしの場合、島を挙げたイベントで島民の行動の自由が制限されることが往々にしてあるので、島暮らしの悪いところのひとつですなさて、こういう時は、天気が良くても支払いや通帳記帳などは後回しにして引き籠もるのが吉道の様子がいつもと違うので、下手に外出すると事故のもとですからねということで、おたちゅうで以前買った積みのパラスアテネを製作しました大型MSだけあってパーツ数多い&ホイルシール多用でさすがに
予約していた『特装版機動戦士ZガンダムDefineシャア・アズナブルグリプス戦役』20巻が先日届いていたのを読み終えました。特装版は「豪華カバーイラスト小冊子」ということで、過去のコミック表紙に使われたイラストのみの画集みたいな小冊子です。今回から「赤の分水嶺」というサブタイトルが「シャア・アズナブルグリプス戦役」となってます。20巻は表紙も裏表紙もカバーの背景色が特装版は濃緑になってますが、通常版は黒のようですね。気になったので調べてみたら「赤の分水嶺」は13
製作後記仮組みを行わず、完成後に全体のシルエットを見た感想は意外にシャープだったことでした。頭部は確かにエイのような異形ですが、全体としてはやっぱり人型MSなんだと感じます。今回チャレンジした組み立てながら2段階の工程でパーツの合わせ目消しを行う作業はなかなか難易度の高いものでした。マーキングは当初抑え気味の点数で行う予定でしたが、合わせ目の隠ぺいのためにやや多めの点数となりました。また、異例の5個配置したモノアイはモノアイレールの影に沈んで思うような輝きを得ることは出来ませんでした。