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本日は書籍紹介をいたします。今回取り上げるのはこちら、H・P・ウィルモット『大いなる聖戦・下』等松春夫監訳、国書刊行会、2018年軍事史の専門家が第二次世界大戦を全体的なスケールで描いた戦史の後半です。欧米の戦史家にありがちな、ヨーロッパ戦線に比重を大きく割いてその他が等閑視されるということがなく、何より独ソ戦を重視し、またアジア・太平洋の戦いにも注意が払われるという、バランスの取れた構成になっています。タイトルについて少し触れますと、「聖戦」と訳されている言葉は、元は「十字軍
本日は書籍紹介をいたします。今回取り上げるのはこちら、H・P・ウィルモット『大いなる聖戦・上』等松春夫監訳、国書刊行会、2018年「第二次世界大戦全史」という副題が付いた、上下巻の浩瀚な作品です。筆者のウィルモットさんは英米両国の国防大学でも学び、イギリス陸軍の特殊作戦部隊で軍務経験もあるという軍事研究家、また監訳者も防衛大学教授というガチガチの顔触れによる、第二次世界大戦の本格的な戦史です。もちろん、扱うべき事柄が膨大な範囲に渡るため、個別の戦いについて掘り下げて叙述されることは
*このシリーズの趣旨については、プロフィールを参照して下さい。前回は、H・P・ウィルモット『大いなる聖戦・第二次世界大戦全史』(国書刊行会)の訳出過程で、原文の一節と、監(閑)訳者の初校段階での修正訳を提示した(文脈については、「前回記事」参照):原文:LongaccustomedtoregardDanzigastheindicatorofGermany’sintentiontowardsthemselves,thePoles...監(
*このシリーズの趣旨については、プロフィールを参照して下さい。長らく休んでいた教養講座(?)を再開する。H・P・ウィルモット『大いなる聖戦・第二次世界大戦全史』(国書刊行会)訳出過程で、小生が訳したものを“某”大教授が監(閑)訳した折の初校・再校を基にした翻訳講座である。今回は、原文と、監(閑)訳者の初校段階での修正訳を以下にまず提示する。文脈としては、第二次大戦前夜にポーランドが、第一次大戦の結果としてポーランドに割譲した領土をドイツが返還を求めて圧力をかける中で、ソ連
*このシリーズの趣旨については、プロフィールを参照して下さい。前回は、H・P・ウィルモット『大いなる聖戦・第二次世界大戦全史』(国書刊行会)の訳出過程で、再校の段階に見られた“某”大の監(閑)訳者の誤訳検証の最初の例として、以下の原文と、監訳者の訳を提示した(今回は、問題となる箇所に下線を引いた):原文:TokyowasnotblindtoaChinesenationalismthatthreatenedJapaneseinterestsandmadei
*このシリーズの趣旨については、プロフィールを参照して下さい。久しぶりに、ブログ内の「教養講座」とも言えるシリーズである。これまで小生が手掛けた、H・P・ウィルモット『大いなる聖戦・第二次世界大戦全史』(国書刊行会)の訳本の初校を基に、“某”大教授監訳者の誤訳・不適訳の事例を分析してきたが、これからは再校に見られた同様な事例を検討することとする。以下の原文は、原著者が1920~30年代の日本の対中政策を論じた箇所である:原文:Tokyowasnotblindt
*このシリーズの趣旨については、プロフィールを参照して下さい。前回は、H・P・ウィルモット『大いなる聖戦・第二次世界大戦全史』(国書刊行会)の訳出過程、初校段階で以下の原文と、二つの訳文を提示した。(文脈については、前回記事「ウィルモット『第二次世界大戦全史』訳出過程誤訳検証(58)文脈を見て史学の知見を駆使せよ(問)」参照)その上で、「原文と二つの訳文とを照らし合わせて、各々の訳文中の問題点を指摘せよ」との問を発した。原文:...itpresentedthosewhofa
*このシリーズの趣旨については、プロフィールを参照して下さい。久しぶりに、H・P・ウィルモット『大いなる聖戦・第二次世界大戦全史』(国書刊行会)訳出過程、初校段階での監(閑)訳者による誤訳を基にした翻訳講座である。以下に、原文と二つの訳文を提示する。ポツダム宣言の受諾の可否をめぐって意見が割れた日本の指導部について原著者が記した箇所である。もっと具体的に言えば、天皇の大権への変更の有無について連合国に問い合わせ、それに対して「天皇及び日本国政府の国家統治の権限は連合軍最高司令
*このシリーズの趣旨については、プロフィールを参照して下さい。H・P・ウィルモット『大いなる聖戦・第二次世界大戦全史』(国書刊行会)訳出過程での誤訳検証を兼ねての翻訳講座。前回発した設問の解答編を御届けする。前回は、以下の原文と訳文とを提示した。(文脈については、前回記事参照)。因みに、「訳文①」として掲げたのは、某大監(閑)訳者による初校段階での修正訳である。原文:TheSovietarmiesmusteredsome28,000guns,5,550tank
*このシリーズの趣旨については、プロフィールを参照して下さい。H・P・ウィルモット『大いなる聖戦・第二次世界大戦全史』(国書刊行会)訳出過程での誤訳検証を兼ねての翻訳講座を御届けする。原文と訳文を以下に提示する。文脈としては、ソ連が昭和20年8月に当時まだ有効であった日ソ中立条約を一方的に破棄して満洲に侵攻した際、ソ連軍がどのように作戦を準備したかを記した部分である。原文:TheSovietarmiesmusteredsome28,000guns,5,550t
*このシリーズの趣旨については、プロフィールを参照して下さい。H・P・ウィルモット『大いなる聖戦・第二次世界大戦全史』(国書刊行会)訳出過程での、誤訳検証の一環として前回は、以下の原文と二つの訳文を提示した。原文:TherewereotheraspectsoftheSovietconductofoperationsin1945thatshowedsimilarqualitativeimprovements,mostobviouslytheva
*このシリーズの趣旨については、プロフィールを参照して下さい。H・P・ウィルモット『大いなる聖戦・第二次世界大戦全史』(国書刊行会)訳出過程での、誤訳検証を続ける。まず、原文を提示する。文脈は、原著者が一九四五年当時の東部戦線でのソ連軍の作戦態様をそれ以前と比較して論じた部分である。:TherewereotheraspectsoftheSovietconductofoperationsin1945thatshowedsimilarqualitat
*このシリーズの趣旨については、プロフィールを参照して下さい。H・P・ウィルモット『大いなる聖戦・第二次世界大戦全史』(国書刊行会)の初校段階での誤訳検証の一環として「前回」は、「原文と訳文とを較べて、訳文の中で修正すべき点を指摘せよ」との問を発し、「見出しの後半がヒント」としておいた:原文:...theAmericanshadusedtheeighty-fivemilesoftheArdennessectorasanareainwhichto
*このシリーズの趣旨については、プロフィールを参照して下さい。H・P・ウィルモット『大いなる聖戦・第二次世界大戦全史』(国書刊行会)の初校段階での誤訳検証を続ける。原文の一部と、“某大”監(閑)訳者による修正訳を以下に掲げる。文脈としては、俗に「バルジ大作戦」と呼ばれるドイツ軍のアルデンヌ攻勢の前段について述べた部分である。原文:...theAmericanshadusedtheeighty-fivemilesoftheArdennessector
*当シリーズの趣旨については、プロフィールを参照して下さい。前回は、H・P・ウィルモット『大いなる聖戦・第二次世界大戦全史』(国書刊行会)訳出過程、初校段階に於ける誤訳検証の一環として、以下の原文、及び二つの訳文を掲げた(文脈としては、敗戦に向うドイツ指導部、取り分けヒトラーについて著者が記している箇所である):原文:Withthecertaintyofdefeatcametheescapefromreality,yetatthesametime
*当シリーズの趣旨については、プロフィールを参照して下さい。H・P・ウィルモット『大いなる聖戦・第二次世界大戦全史』(国書刊行会)訳出過程での初校段階に於ける誤訳検証を続ける。まず、原文を掲げる。文脈としては、敗戦に向うドイツ指導部、取り分けヒトラーについて著者が記している箇所である:Withthecertaintyofdefeatcametheescapefromreality,yetatthesametimeHitler’sconduct
*当シリーズの趣旨については、プロフィールを参照して下さい。前回は、H・P・ウィルモット『大いなる聖戦・第二次世界大戦全史』(国書刊行会)訳出過程での初校段階に於ける誤訳検証の一環として、以下の原文、及び、某大教授の監(閑)訳者による初校段階での修正訳を掲げた(文脈としては、一九四五年の初春頃、米軍の日本本土空襲が激化すると共に、日本の防空態勢が崩壊していった過程を記した箇所である):原文:...theAmericansachievedsurpriseando
*当シリーズの趣旨については、プロフィールを参照して下さい。H・P・ウィルモット『大いなる聖戦・第二次世界大戦全史』(国書刊行会)訳出過程での初校段階に於ける誤訳検証を続ける。まず、原文を提示する。文脈としては、一九四五年の初春頃、米軍の日本本土空襲が激化すると共に、日本の防空態勢が崩壊していった過程を記した箇所である:...theAmericansachievedsurpriseandoverwhelmedairandanti-aircraftdef
*当シリーズの趣旨については、プロフィールを参照して下さい。H・P・ウィルモット『大いなる聖戦・第二次世界大戦全史』(国書刊行会)訳出過程での初校段階に於ける誤訳検証の一環として前回は、以下の原文と監訳者の修正訳を提示しておいた(原文の文脈については、前回記事を参照のこと):原文:Thisraisestwoquiteseparateissues:ontheonehanditinvitesconsiderationoftherelativevalue
*当シリーズの趣旨については、プロフィールを参照して下さい。H・P・ウィルモット『大いなる聖戦・第二次世界大戦全史』(国書刊行会)訳出過程での初校段階に於ける誤訳検証を続ける。今回問題とする原文は、文脈としては、フィリピン奪回に際して米軍が投入した兵力や払った代償に言及した著者が、フィリピン戦やルソン島攻略作戦について評価している箇所である。冒頭のThisは、フィリピン戦への米軍の投入兵力や蒙った損害が大きかったことを指す:Thisraisestwoquitesepa
*このシリーズの趣旨については、プロフィールを参照して下さい。ウィルモット『大いなる聖戦・第二次世界大戦全史』(国書刊行会)翻訳過程での初校段階での誤訳検証の一つとして前回は、以下の一文と監訳者の修正訳を提示し、設問を発した:原文:AtenaciousdefenceofLeyteforcedtheAmericanstocommitapeakcombatstrengthofabout202,000menontheislandatthe
*このシリーズの趣旨については、プロフィールを参照して下さい。ウィルモット『大いなる聖戦・第二次世界大戦全史』(国書刊行会)翻訳過程での初校段階での誤訳検証を続ける。今回取り上げる以下の一文は、読んで明らかな通り、一九四四年秋のレイテ島での戦況に関するものである:AtenaciousdefenceofLeyteforcedtheAmericanstocommitapeakcombatstrengthofabout202,000menont
*このシリーズの趣旨については、プロフィールを参照して下さい。長文を切って訳す時には要注意:原文にある単語を無視し、ない単語を訳文に盛り込むのは危険H・P・ウィルモット『大いなる聖戦・第二次世界大戦全史』(国書刊行会)訳出過程での、主に監訳者が犯した誤訳の検証、前回の設問への解答篇である。以下の原文と訳文とを提示して、「原文と照らし合わせて、訳文の中で不適当な部分を指摘し、何故不適当かを説明し、修正せよ」との設問を発しておいた。今回は、問題となる部分に下線を引いた:原文
*このシリーズの趣旨については、プロフィールを参照して下さい。長文を切って訳す時には要注意:原文にある単語を無視し、ない単語を訳文に盛り込むのは危険H・P・ウィルモット『大いなる聖戦・第二次世界大戦全史』(国書刊行会)訳出過程での、主に上級国民の監訳者が犯した誤訳の検証を続ける。少し長い文章の原文と訳文を提示する。文脈としては、一九四四年当時、ビルマ戦線で日本軍がインパール作戦を行っていた折に、英軍が日本軍の後方撹乱を狙って実施したチンディット作戦を著者が論評した部分である:
*このシリーズの趣旨については、プロフィールを参照して下さい。名詞を名詞として訳す必要はない前回は、H・P・ウィルモット『大いなる聖戦・第二次世界大戦全史』(国書刊行会)の訳出過程で生じた誤訳検証の一環として、次の原文を提示した(文脈については、前回記事「ウィルモット『第二次世界大戦全史』誤訳検証(49):常に名詞を名詞として訳すか?(問)」参照):Romania,whichevenunderAntonescuhadsoughttermsbothcollec
*このシリーズの趣旨については、プロフィールを参照して下さい。名詞を名詞として訳す必要はないH・P・ウィルモット『大いなる聖戦・第二次世界大戦全史』(国書刊行会)訳出過程で生じた誤訳の検証を続ける。今回は原文のみを提示する。文脈としては、東部戦線でソ連軍が西進してくる中で、それまでドイツの属国のような立場にあった同盟国が離反の動きを見せる場面で、その中のルーマニアの情勢を記した箇所である。比較的平易な文章であると言えよう:Romania,whichevenunde
*当シリーズの趣旨については、プロフィールを参照して下さい。長い文章を切って訳す時に要注意:前後の脈絡が通るようにせよウィルモット『大いなる聖戦・第二次世界大戦全史』(国書刊行会)訳出過程に於ける誤訳検証の一環として前回は、以下の原文と二つの訳文を提示した(文脈と原文への注については、前回の「ウィルモット『第二次世界大戦全史』誤訳検証(48):長文訳の際の留意点(問)」を参照のこと):原文:Withonly450,000menavailableforthis
*当シリーズの趣旨については、プロフィールを参照して下さい。長い文章を切って訳す時に要注意:前後の脈絡が通るようにせよ久しぶりに、ウィルモット『大いなる聖戦・第二次世界大戦全史』(国書刊行会)訳出過程での誤訳検証を行う。まず、原文を提示する。文脈としては、1944年当時の東部戦線の北部に於いて、フィンランド軍とドイツ軍に対してソ連軍が攻勢を企図・実施した態様を記述したものである:Withonly450,000menavailableforthisof
*このシリーズの趣旨については、プロフィールを参照してください。原語だけでなく文脈も考えて訳せ:今一つのdefeatの訳(答)ウィルモット『大いなる聖戦・第二次世界大戦全史』(国書刊行会)の訳出段階での誤訳検証の一つとして、前回は、一九四四年当時の東部戦線の戦況を記した箇所に登場してくる以下の見出しを取り上げた:DEFEATOFARMYGROUPCENTRE文脈としては、ArmyGroupCentreが東部戦線に展開されていたドイツ軍の中で最大規模の兵
*このシリーズの趣旨については、プロフィールを参照してください。原語だけでなく文脈も考えて訳せ:今一つのdefeatの訳(問)ウィルモット『大いなる聖戦・第二次世界大戦全史』(国書刊行会)の訳出段階での誤訳検証を続ける。このシリーズの前々回「ウィルモット『第二次世界大戦全史』訳出過程誤訳検証(46):defeat(問)」及び前回「ウィルモット『第二次世界大戦全史』訳出過程誤訳検証(46):defeat(答)」で、defeatという単語の訳し方について論じたが、今回も同じ単語を