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楽園の叫び〜4大袈裟ともとれる程の天上轟かす雷鳴と共に、一瞬目も眩むような真っ白な光が周囲を包んだ。それを見た瞬間、ウリエルは嫌な予感がした。周囲を包んでいた光が解かれた後、彼女の嫌な予感が的中してウンザリしてしまった。光の中から現れたのは、地獄管理界の最長官であるルシフェルであった。(何しに来たのよ!今頃になって……)ウリエルはルシフェルの部屋で受けた理不尽な叱責に対し、心の奥にいまだに根深く残っていたのだ。その地獄管理界の"帝王"ルシフェルだが、楽園にやって来る前の
アルカノとセレン〜6幸い?にベルゼブブは留守のようだった。アスタロトは「やれやれ」とホッと胸を撫でおろし、大事な私物をまとめていた。夫の手伝いをしていたウリエルは手にしたCDケースを振ってみたり、何故か匂いをかいだりしている。「アス、これなあに?」「ああ、CDっていって───」笑いを堪え説明しながらも、妻のちょっとした"ぬけた"仕草が愛おしくてたまらないアスタロトだった。一方ウリエルは、アスタロトの私物を整理してる間も、楽園の森の王セレンの事を気に掛けていた。(次は"彼
アルカノとセレン〜5まるで、巨大な氷山に閉じ込められていたような感覚だった。地獄管理界の偉大なる帝王ルシフェルの部屋から出て来たウリエルは、胸の奥まで氷漬けにされてしまったようだ。ルシフェルの容赦のない言動もそうだが、何より夫アスタロトの態度のせいでもあった。「アス、さっきはどうして───」「なあ、ウリエル───」二人が発した言葉は、殆んど同時だった。だが、その後は沈黙が続き……。沈黙を破ったのはアスタロトの方だった。「前の俺の部屋に寄っていいかな?まだ荷物残って
アルカノとセレン〜4アルカノへ"想い"と讃美歌を届けた後、ウリエルとアスタロトはルシフェルの下へ戻ったのだが。「罪人達を癒してどうするんだ!お前の勝手な愚行が、どういう影響を及ぼすのかわからぬのか!」雷の如く、ウリエルはルシフェルから怒りを買ってしまった。予想もしていなかった彼からの厳しい叱責に、ウリエルは戸惑いと反発を覚え、こう反論した。「私はアルカノの希望を叶えてあげただけです!それに、あの場所への出入りを許可したのはあなたですよ!」「入るだけだ!地獄界がどういう場所
アルカノとセレン〜3深淵の大海を支配する地獄獣へ捧げる讃美歌。ウリエルは両手をいっぱいに広げると、静かに目を閉じ、そして暗黒の海原に向かって聖なる歌声を響かせた。流れるゆく大天使の歌声は、地獄界という罪人達の巣窟を雷鳴の如く震わす。今にも地獄界の闇に覆われた空から、"父"からの聖なる光が降りてくる幻想が映し出されて来そうだ。アスタロトはそんなウリエルの姿を背後から眺めていたが、感動と共に複雑な気持ちを抱いていた。そんな気持ちに、正直自分でも驚いたが。(なんだろ、この気持ち
アルカノとセレン〜2「大丈夫か?ウリエル。ゆっくり行こう。ゆっくりでいいからな」「大丈夫よ、アス。ありがとう……」地獄獣の爪で入れた刺青のおかげとはいえ、やはりミカエル以外の天使がルシフェルの聖域である地獄界へ入る事に緊張が高まるウリエルだった。そんな彼女を心配してか、アスタロトはずっとウリエルの体を支えていた。抱き寄せていた肩から、手のひらに緊張が伝わってくる。真っ暗で大きな口を開け獲物を待つ怪魚のように、地獄界は二人と1頭を吸い込んでいった。そして、ついにウリエルは
アルカノとセレン〜1暗黒の世界へ───。ウリエルとアスタロトは地獄獣アルカノに会う為、地上の罪人蠢く地獄界へ向かった。「ねえ、ルシフェル様はあなたに何て?私の事でしょ?」"ウソはダメよ"とでも言うように、ウリエルはアスタロトの顔を覗き込んだ。「ああ、地獄獣は天使という存在に慣れてないから気をつけるように、てさ!」(ウソよ!ルシフェル様が私の事なんか心配するわけないでしょ?)「ふ〜ん……」睨んでみせるウリエル。「さ、早く行こうか!ラス達も君を心配してたし、元気な姿
もうひとつの翼〜9───初めてあなたから舞踏会のパートナーの申し込みを受けた日、本当はとても嬉しかったのよ。「ええ!喜んでお受けするわ!」って、あなたの瞳に向かって飛びっきりの笑顔を送りたかったの。でもね、私のプライドが邪魔させたの。「ええ、別にいいけど」意地悪したくて、つい素っ気ない態度をとってしまったわ。ふん!今さらなによ!ってね。私が"OK"を出したとたん、あなたったら、大きな喜びの叫び声をあげて!ふふっ。素直じゃない私はここでも「もういい?私、忙しいんだけど」
もうひとつの翼〜8───あの時の私は、「悲しさ」と「怒り」に"支配"されていたのかも。涙を流したあの舞踏会後も、ウリエルはアスタロトからデートに誘われた。まるで何事もなかったかのような彼の振る舞いにウリエルはイラつき、ついに自分でも分からぬ怒りを爆発させてしまった。まるで、太陽のプロミネンスのように。「ウリちゃん、デートしよ!ほら、君の好きそうな飲み物もあるよ」それは生クリームたっぷりのアイスカフェラテだった。「ほら!」と調子良く、彼女の鼻先に差し出したのだが。「いい
もうひとつの翼〜7さらにウリエルは、夢の深淵部へと漂うように落ちていく───。ねえ、あなたはどうして天使界ではなく、地獄管理界を選んだの───?地獄管理界の最長官ルシフェルの下へウリエルは、天使界でまとめられた罪人達の書類や巻物を届ける任務を続けていた。腰まであった長い金色の髪は、地獄界の任務の頃から胸のあたりまで短くなっていた。相変わらずアスタロトはというと憧れの彼女の姿を見つけては、「ねえウリエルちゃん、デートしよ!」と誘う毎日。「いやよ!」「いいじゃん!ね?
もうひとつの翼〜6初めてだった───。今まで経験した事のない気持ち。ウリエルは否定したかったが、もう一人の彼女自身が「認めよ」と囁く。また、ある日の事だった。いつものように彼はウリエルの後を追い、彼女を笑わせようと必死だった。徹底的に無視を決め込む彼女に、「ウリちゃん、聞いてる?」と顔を覗き込む。神秘的な青い瞳が目の前にあった。ミカエルの鋭い青い瞳とも違う、森の奥深く眠る緑を帯びた神秘の湖のような青い瞳。再び胸の奥がドキリとする。だが今回は、頬が熱くなる"おまけ"付き
もうひとつの翼〜5神秘的なコバルトブルーの夢の深淵部へと、さらに沈んでゆくウリエル。いつものように監視隊のパートナーであり親友であるジョフィエルとパトロールしていると、なにやらブリブリ腹を立てているラグエルに出くわした。半透明の翼を持ち、金髪のショートヘアーをきちんと撫で付けている。彼もまたウリエルと同様、楽園内を監視している大天使であった。「どうされました?ラグエル様」「どうもこうもありませんよ、ウリエル殿!」猫を思わせる目が、怒りでますます吊り上がってる。「アスタロト
もうひとつの翼〜4大天使ウリエルのシンボルである太陽が今まさに沈み行くような淡いコバルトブルーの中、ウリエルは懐かしくも切ない微睡みの波を漂っていた。夫アスタロトによって、右肩に翼の刺青を入れた後だった。刺青の翼はまるで今にも羽ばたきそうな程緻密で、妖しい美しさを放っていた。そしてアスタロトは、彼女の為に、もうひとつ「特別」を加えた。それは、黄金のインクを少し使用し、彼女の翼を再現してみせたのだ。動く度、太陽の天使の翼が躍動し輝きを増す。まさしく「もうひとつの翼」だ。そ
もうひとつの翼〜3夫アスタロトが自室へ行った後ウリエルは、天窓の外の神々しい程に眩しい青空を見つめていた。天使である自分の肌に、"しるし"を入れる意味を今一度自身に問うてみる。───父よ、お許しを。私は四大天使として、楽園の者達すべてを守らねばならぬと信じてます。そして静かに瞳を閉じ、天の主へ祈りを捧げた。一方アスタロトはというと、コバルトブルー染まる間接照明の部屋の中、落ち着きなくウロウロしだした。アッシュブロンドのミディアムヘアを、何度も何度もかきあげている。「おい
もうひとつの翼〜2「ちょっと待ってくれよ、ウリエル!」ルシフェルの部屋を出、先を行くウリエルにアスタロトは"刺青"を何とか思い止まらせようとした。「あなたがダメと言っても、私は一人でも"しるし"を入れてくれる方の所へ行くわ。住民の方に口止めしても無駄よ!」───ああ、大天使というヤツは本当に頑固だな!「ああ、そうだウリエル!ベルゼブブに結婚の報告まだだったよな?彼んとこ行こう!な?」だが、そんな事には無視しズンズン進むウリエル。(何言ってんだ!俺は……)「ねえ、アス…
もうひとつの翼〜1「(天使が)地獄界へ入る方法が、一つだけあるが」悔しさと怒りを胸に、ウリエルとアスタロトが退室しようとした時だった。氷が張りついたような無愛想な声そのままに、ルシフェルは二人の背中にぶつけた。「それは……本当ですか?」その声に振り向いたウリエルの表情には、希望と疑いの間のようなものが浮かんでいた。「ルシフェル様、本当ですか?───お願いです!それは何です?教えていただけますか?」「今さら何を言ってるんです?僕の妻を迷わせるのなら───」「地獄管理
老天使界の思惑〜14ルシフェルの鏡に映された惨たらしい光景に、アスタロトは驚愕した。「ひでえな……」(ん、たく……反吐が出る!)「これ程までにするなんて、いったい老天使達は何を目論んでるんだ?これが天の使い、それも高位の者のやる事なのか!」サマエルもアスタロトに同調したのか、険しい表情で首を振る。「ルシフェル様───」ウリエルは抱き止めていた夫の腕を優しくほどくと、「さきほども言いましたが、お願いです!セレンを助けて下さい!」とルシフェルに懇願した。だが、彼の灰
老天使界の思惑〜13『もう一度セレンの森へ行ってみるわ』そうウリエルは言っていたが。アスタロトはウリエルを見送った後、自分の書斎で(といっても、殆んどリスニングルームみたいな部屋だったが)部下からの書類等をまとめていた。普段大好きなクイーン等の曲が派手に轟かせている高級オーディオシステムだが、今は沈黙し無愛想に鎮座していた。いずれは元いた部屋の私物を取りに行かねば、と思っていたアスタロトだったが、何せ苦手なベルゼブブがいるかもと思うとなかなか足が向かなかった。(ウリエルの
老天使界の思惑〜9凍てつく地獄の世界。大天使をも拒む、深い深い闇と静寂の世界。その入口、サーとベン、ラスの3頭の番犬が門番とする牢獄棟の前にウリエルは降り立っていた。「もう一度セレンの森へ行ってみるわ」夫に嘘をついてしまった。"天使は嘘をついてはいけない"(仕方ないわ……)「"父"よ、お許しを……。これもセレンと聖霊獣達を守る為なのです」こう自身に言い聞かせ、無理にでも納得させた。アスタロトの何かを隠してる様子に疑問を感じ、自身もアルカノに会おうと決心したのだ。『
老天使界の思惑〜8柔らかな春の日差しと花園の香りを乗せた風は、コバルトブルーのカーテンを優しく揺らしていた。花園の香りを感じながら、アスタロトは手にしていたムリエルの羽根を見つめていた。「ムリエルが、これを君に渡したのかい?」「いえ、そうじゃないんだけど」ウリエルは楽園での事と、「主天使の間」での事を話した。セレンの守る聖霊獣達の森に結界が張られてしまい、その酷い有り様に、ウリエルはハシュマエルへの怒りを再燃させていた。「私は何とかその結界を破壊しようとしたわ。でも、炎の
老天使界の思惑〜7アスタロトが去った後、地獄管理界の最長官であるルシフェルは、再び彼の書記官サマエルの前に霧のように現れ出でた。「ルシフェル様、先程はアスタロト殿に対しての叱責をお許しを」スキンヘッドの頭を深々と垂れるサマエル。「サマエル、わたしは慈悲のかけらも持たぬ者か?」「……そうなのですか?」「質問を質問で返すでない」「申し訳ございません」ルシフェルは水晶の大広間の片隅に置かれた、巨大な鏡の前に立った。巨大な鏡の縁は黄金で縁取られていて、ロダンの「地獄の門」にも
老天使界の思惑〜6地獄界の獣王の願い───それは、自分の為に捧げられた大天使ウリエルの讃美歌。『アスタロト様、是非自分の願いを聞き入れて欲しいと、彼は伝えてきています。ならば、貴殿の申し入れも受けよう、と』「ダメだダメだ!ウリエルは……天使達はここには入れないんだ!この場所が天使達にとって、どんなに過酷な場所なのか、彼女が身をもって経験しているんだ。俺は彼女に、そんな辛い事なんかさせられない。アルカノ!勝手言って悪いが、この話しは無かった事にしてくれ!」仕方のない事だ
老天使界の思惑〜5「なあ、ラス。もっと早く歩けないか?」地獄界の大海の支配者アルカノへの恐れもあるが、アスタロトからウリエルとの結婚を聞いた途端にラスは元気を無くしたようだ。大好きなウリエルが、アスタロトの妻になった事にちょっぴりショックを受けたようだ。『すみません、アスタロト様……。ちょっと心の整理が……』(何が"心の整理"だよ!)アスタロトが情けない地獄の番犬に呆れているうちに、例のアルカノが支配する暗黒の大海原の出入口に着いた。アスタロトは手すりから身を乗り出
みなさんこんばんは!インストゥルメンタリスト囁稀です( ̄▽ ̄)今宵は‥これだー☝️魔夜峰央先生の『翔んで埼玉』は実写化されていますが、個人的には『パタリロ』特に‥番外編として‥『魔界編』の実写化を、熱望します!( ̄▽ ̄)☝️アスタロト役には‥この人を( ̄▽ ̄)☝️櫻井敦司さん‼️そして‥犬猿の仲かつ‥天敵役として‥ベールゼブブ役には‥この人を( ̄▽ ̄)☝️遠藤遼一さん‼️見応え充分な作品になること‥間違いなし‼️と‥個人的には‥感じています( ̄
老天使界の思惑〜4暗黒の大海を征する者───正にその名が相応しき主が現れようとしていた。その主に貪り食われまいと哀れな罪人どもは、耳をつんざく咆哮を繰り返している。何度も何度も未知の獣に食われ続ける感覚など、勿論亡者には失っていたはずだが、地獄の獣王はそれを許さなかった。情け容赦無い苦痛が、永遠続くのだ。正に地獄の世界である。アスタロトは、その獣王に叫んだ。「アルカノ、俺の声が聞こえるか!お前に話しがある!姿を見せてくれ!」すると、おぞましき"いにしえ"の者が───。
老天使界の思惑〜3ウリエルが老天使界へと飛び立って行った後、アスタロトは地獄獣であるアルカノに会う為、すぐさま地獄界へ向かった。ウリエルの夫として、彼女の為にも、じっとしてはいられなかったのだ。どんな暗闇をも吸い込むであろう、禍々しい世界が広がる地獄界。そこは、ルシフェルの"帝国"と呼ばれている聖域内に位置していた。「つい最近までいたのに、何だか懐かしいな」地獄管理界の四大長官のうちであるアスタロトは、最近までルシフェルの聖域内に住んでいた。正面奥には、聖域の"帝王"の部屋
王の秘密〜17果てしなく続く暗黒の海原。不気味なまでに静寂の世界が広がる海原の空には、凄まじいまでの、だが音無き稲妻が蜘蛛の巣の如く張り巡らせていた。その静寂の海原の遥か向こうには、憤怒で怒り狂うように、噴煙上げる荘厳なる火山が連なっている。そんな恐ろしくもあり美しくもある聖域「地獄界」を、大天使ルシフェルの灰色の瞳は、満足そうに輝いていた。「よいか?哀れな蛇よ。ここが、お前の王国となる場所だ。この『地獄界』の王となり、堕ちた人間どもを思う存分裁くがいい。お前を残忍な方法で
王の秘密〜16アダムに殺された蛇の頭部を手に、"父"の下へと去ってゆくルシフェル。尾だけになってしまった蛇の亡骸を振り返り見た彼の瞳には、同じ楽園に棲まう動物達が集まる光景が映っていた。殺され身体の一部だけが残る憐れな仲間に、慈悲を捧げるかのように集まる動物達は、次第に一つの光の固まりと化し、その亡骸を覆っていった。「それ以前に、ルシフェル殿は"父"から重大な任務を授かっていたんだ。ウリエル、お前よりもっと前からな」(重大な任務……)「もうわかってるな?」「『地獄界』
王の秘密〜15天の偉大なる主の創造せし輝ける世界。「聖なるかな」と響かせ舞う天使達の楽園の下、主からの愛情を受け誕生した人間アダムとイブが日々を謳歌していた。そんなある日の事───。「なんて美しい果実なのでしょう!」一人で森へと出掛けたイブは、一本の太く背の低い樹木を見つけた。その木には、ルビー色の美しい実が成っていた。他の木にも果実が成っていたが、イブが見つけたその実は格段に美しく、みずみずしく美味しそうだった。(あれは、もしや主が警告していた実?『決して食してはな
王の秘密〜14普段は静かな空間の中、巻物上を走るペンの音だけが響くベリアルの書斎。だがウリエルがやって来ると、決まってベリアルだけの静寂の世界が破られ、その度彼の眉間の皺が深くなる。今もそうなのだが、今回ばかりは彼女のせいではないのだ。暴挙とも言えるハシュマエルの計画について話すウリエルの声は、次第に怒りのせいで熱を帯び始めた。「彼のやろうとしてる事は明らかに間違いよ!こんな事許されるはずないわ!動物達の安らぎ場所である森も、楽園の一部よ。"父"が造り上げた、大切な一部