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紅天女の本公演を1週間後に控えた日の夜。マヤは水城から稽古終了後に大都芸能本社に来るよう連絡を受けた。千秋楽の後の打ち上げパーティのことで打ち合わせをしたいとのことだった。大都芸能を訪れるのは、久しぶりである。試演前に真澄と鷹宮紫織の婚約が発表され、マヤの足は自然と大都から遠のいた。婚約披露パーティで二人の姿を見て以来、マヤは真澄を故意に避けるようになった。手に入らないものを欲しがるのは、正直つらい・・・そんな自分が嫌になる。それで綺麗さっぱり忘れられる程度の恋だったらよかったのだ
「マヤに好きな男がいる?誰だ・・・一体どこの誰だ?」水城は真澄の眼が鋭くなったのを見逃さなかった。それが何を意味するのか・・・大都芸能社長としての怒りか、それとも一人の男速水真澄としての怒りか。水城にとっては確かめるまでのことではない。所詮、本人に問い質したところで、真実の答えは返ってこない。何故なら真澄本人がまだ気づいていない・・・いや、もう流石に気づかずにはいられないだろうが、それを必死に自身に誤魔化しているのだ。仕事においては、冷酷無比なほどに沈着冷静で理論的に行動できる優秀
ある日曜日の昼下がり。マヤの仕事がオフだったこともあり、真澄もその日は休みをとって、マヤと外出していた。久しぶりのデートは、マヤへのWhiteDayを兼ねていた。先日マヤがLINEで、〜夢の中でお腹いっぱいの苺を食べて幸せだったわ♡〜なんて、お茶目なメッセージを送ってきた。もしもマヤに、本当にお腹いっぱい苺を食べさせてあげたら、どんなに可愛い笑顔を見せてくれるだろうと、真澄はバレンタインのお返しにいちご狩りに行かないかと誘ってみた。勿論、マヤがNoと言う筈もなく、トントン拍子に今
〜prologue〜マヤに初めて逢ったのは、君がまだ13歳の時だったね。月影千草に見出された天才少女・・・いずれ美しく成長して、紅天女になる逸材。俺は強烈に君に魅了された・・・女優として君を一流にすることが、俺の夢になった。そして、その日から君の元に、紫の薔薇が届けられ始めたんだ。それは俺から君への唯一つの愛の印だった・・・〜出口のない暗闇で〜真澄が速水家の養子になって十年たった時、真澄に5歳年下の義弟ができた。亡くなった母の後妻として嫁いだ女性の連れ子だった。真澄は英介に後継
紫の薔薇の人へ2月14日表参道のプラタナス通りで貴方を待っています。私の最初で最後のお願いです。この気持を直接貴方に手渡しさせて下さい。北島マヤ自宅の書斎の抽斗から取り出した一枚のカード。真澄はマヤの書いた文字を指でなぞりながら、あの日から流れてしまった二年の歳月を辿る。あの時、真澄はマヤの願いを叶えてはやれなかった。沢山の恋人達が幸せそうに行き交う真冬の舗道に一人立ち尽くすマヤの姿を遠くから見ていただけ。マヤの手には小さな手提げ袋・・・・あの日は
カシミヤの膝掛け、万年筆、舞台の写真の数々・・・。マヤがこれまで紫の薔薇の人に贈ってきた、彼の誕生日の贈り物たち。それらは全て、聖の手に託してきた。初めは分からなかった・・・贈り物の行き先など。だが、マヤはやがて、紫の薔薇の正体を知った。だからといって、真澄がその事を隠している以上、彼を想って贈り物を選ぶことはできない。もちろん彼の誕生日・・・11月3日に届ける事も叶わない。そしてそれは今年も同じだった。今年の分はもう、年の初めに聖に託していた。マヤが今年、真澄に贈ったものは、
漆黒の空に浮かび上がる横浜の赤レンガ倉庫そこに佇むひとりの女性・・・白い雪が舞い降る彼女の肩に降り積もる雪雪だと思ったそれは白い羽根となり彼女は純白のドレスの淑女(レディ)になったそして彼女の前には白い恋人がだがそれは全て夢物語本当の彼女は恋人と別れたこの街でひとり小さな掌に乗せたスノードームを見つめていた幸せは夢(ドーム)の中だけそんな彼女にも白い雪は降る・・・マヤが出演したミュージックビデオ・・・桑田佳祐の「白い恋人達」をBGMにショートドラマが繰り広げられる。会社
Prologue「もう打合せは終わったんだろう?俺も今日はこれで上がるつもりだったんだ。久しぶりに夕食でもどうだ、おチビちゃん?」大都本社に打合せに来たマヤを秘書の水城が気を利かせて、俺のところまで連れて来てくれた。久しぶりにマヤと二人で話せる・・・。このチャンスは・・・逃せないよな。チャンスだと思っていた夜に、人生最大のピンチを迎えることになるとは、この時の俺は、まだ知らなかった・・・。水城にしてみれば、鷹宮令嬢との婚約破棄までしたにもかかわらず、未だマヤに想いを伝えられないで
大都芸能社長室に、重苦しい溜め息が落ちる。溜め息の主はもちろん、この部屋の主人である速水真澄その人だった。今からほんの五分程前に、この部屋の扉を叩きつけるように閉めて出ていった彼女。長い黒髪を激しく揺らめかせ、飛び出していったその後姿が目に焼き付いている。近頃はすっかり彼女も大人びて、ぎこちなさは残るものの、二人の間には穏やかな空気が流れていたはずだった。真澄の若気の至りが引き起こした北島マヤの実母の悲劇の影が消えて無くなったわけではない。だが、マヤも大人になるにつれ、真澄ひとりに全
◇Prologueいつからだろう・・・これが恋と自覚したのは。紫の薔薇越しに君の笑顔を見ると、堪らなくこの胸が疼いた。その笑顔を俺に向けさせたい。君の瞳には俺だけを映し出したい。紛れも無い独占欲が俺に嫉妬という感情を押し付けてくる。君が笑いかけるもの全てを焼き尽くしてしまえば、君は俺を見てくれるのか・・・いや、愛してくれるのか。仄暗い気持ちが苦しくて、俺は人知れずに胸を押さえて喘いでいる。大都芸能の社長室。マヤはそこの主である速水真澄に呼び出された。最近はすっかりマヤがそこに
「お疲れですね・・・」そう言って秘書の水城が出してくれたのは、いつものブルーマウンテンではなく、ダンデライオンのハーブティだった。「今回の年末年始はハードだったからな。」ため息混じりに真澄は応えて、ティーカップを手にする。年末の数々の接待に続いて、年始は年始で財界の重鎮達宅への挨拶回りと、株式会社大都の代表取締役となって初めての正月行事に流石の真澄もやや疲れ気味であった。「マヤさんとは?」水城は何気無く、マヤとの事を尋ねてみた。「大晦日の夜と元日は一緒に過ごしたが、向こうは向こうで
『紅天女北島マヤ、突然の休養宣言!』ワイドショーや週刊誌の見出しが、マヤの名前で賑う。デスクに置かれた数冊の週刊誌を忌々しい気持ちで睨むのは、大都芸能代表取締役の速水真澄だった。突然の休養宣言と紅天女次回公演の無期延期・・・その理由に関して、様々な憶測が飛び交っている。北島マヤ本人が、メディアの前で真実を語れたらよかったが、今の彼女にそんな事をさせるわけにはいかない。「水城君・・・マヤの様子はどうだ?藤堂君からは何か報告はあったか?」コーヒーを持ってきた秘書の水城に真澄が尋ねる。
一月三日・・・この日は毎年、大都グループの賀詞交換会と新年のパーティーが午後零時から帝都ホテルで催される。大都芸能からは、事業部長以上の社員と一定以上のランクの俳優タレントたちが招かれる、年中行事の事始である。紅天女の正式後継者となり、再び大都芸能とマネージメント契約を交わしたマヤにとって、今回が初めての出席だった。去年の年の暮れ、紫の薔薇の人から届いた一揃えの晴れ着。紅梅と白梅を大胆に配した古典柄の京友禅大振袖だ。帯は西陣の一点物で、格調高い文様が金糸と銀糸で織り込まれている。この
「今、天女さまにスパダリ達が夢中!」大都株式会社代表取締役社長の執務室のデスクの上に置かれた、その場にはあまりに不似合いなメンズ向け雑誌。速水真澄が定期的に購読するビジネス誌に混ざって、それが一番上に置いてあった。大都芸能の社長を退いてからも、ある女優の動向だけは欠かさず追っている。何故なら、真澄はその女優から紅天女の上演権を受託し、その総合プロデュースに携わることを速水真澄個人として契約しているからだ。しかし、真澄がその女優を追いかける真の理由は、他にある。確かに以前の真澄は、紅
焦れていた・・・。仕事のこと以外でこんなにジリジリと唇を噛むような思いなど、これまではした事なかったのに。マヤの二度目の海外公演・・・場所はベルギー王国ブリュッセル。以前、ベルギー王室の皇太子が来日した際、マヤの紅天女を観劇され、たいそう感激されて、「いつか我が国で海外公演を・・・」と言われて、それが実現したのだ。王室からの招聘で実現した今回の公演は、ヨーロッパでも話題となった。すでに大都にはヨーロッパの他の国から公演のオファーがいくつも来ている。数年後には欧州ツアーが実現するかもし
◇Prologue慌しい年の瀬の中、迎えた新年も早くも一月半ば。街は新春モードもすっかり消え去り、デパートや各ショップはバレンタイン商戦に突入した。そんな中、大都芸能社長秘書である水城は、鬼の形相でスケジュールの調整に勤しんでいる。もちろん2月14日の速水真澄のスケジュール・・・ではない。もういい加減に、2月14日のアフターファイブのスケジュールをしてやりたいものだと思うが、上司の速水真澄は相変わらずで、今年もまた極ありふれた普通の一日になりそうだ。「普通の一日ではないわね、厄介な一
マヤへの想いが抑えきれない・・・。どれだけ仕事をしても、どんな難しい案件に向き合っていても、心の何処かでマヤの事を考えている自分を無視できないでいる。未練を断ち切るための政略結婚も結局はマヤへの想いの強さを再認識させられただけだった。それは何の意味もなく、ただ徒らに自分や周囲を苦しめただけの愚かな選択でしかなかった。ただひとつの救いがあるとするならば、本当に引き返せない過ちを冒す寸前で、紫織と別れられたことだけだろう。24時間365日、時と場所を選ばず、真澄の心はマヤに囚われていた。
もう何も信じたくない・・・。マヤはかつてない絶望感に苛まれていた。鷹宮紫織から聞かされた真澄の話を疑うべくもなく信じるマヤの素直な気性は、マヤ自身を時に酷く傷付ける。何よりも大切だった紫の薔薇・・・けれど今は一番見たくない花になってしまっている。とにかく苦しくて哀しくて、何も考えられなくなってしまう。こんな状態で、紅天女の試演に望むことなんて無理だ。マヤは憔悴した表情で、稽古場を後にした。「マヤちゃん・・・」「水城さん?」水城はマヤをアパートまで送っていき、そのまま部屋に上げて
Saeko&Shuka'seyes...「貴女とこうしてゆっくり呑むの久しぶりね、冴子。」二人の行きつけのホテルのラウンジ。大都芸能代表取締役社長の水城冴子と北島プロジェクトの総責任者である藤堂朱夏は、久しぶりにゆっくりとボトルを開けて、語らいの時間を持っている。最近、(といってもなかなかこうしてゆっくり二人でここを訪れる事は滅多にないのだが、、、)ここに来ると、マスターが心得たとばかりに、オーダーもしないのに、5大シャトーのファーストを持ってきては、デキャンタージュを始める。そ
梅の花薫る2月吉日。その日は、北島マヤ独立事務所立ち上げ披露と速水真澄との婚約披露パーティー。来る6月の株主総会での承認をもって正式に、大都グループの総帥となる速水真澄が引き続きマヤのマネジメントに携わるために設立された、北島マヤの独立事務所。公私ともに速水真澄と北島マヤが唯一無二のパートナーであることを世間に知らしめるためのセレモニー。この日を真澄はどれほど待ち望んだことだろう。叶わぬ夢と諦めた時もあった。挙句の果てに心神喪失状態になり、生きることさえ放棄しかけた真澄をマヤが救って
二月になって日本列島を寒波が襲った。ビルのガラス越しに見上げる空は昼でも暗い。強い風に舞ってガラスに叩きつけられる雨はいつもと違って雪や氷混じりだ。暗鬱とした空模様に真澄は憂鬱な溜息をついた。紫織との婚約は正式に解消できた。ビジネスへの影響は幸いにして危惧したほどではなかった。そんな大都が経営危機に陥るかもしれなかったリスクを冒してまで婚約解消を強行したのは、真澄の中のマヤの存在が誤魔化しきれないほどに大きくなって、心が窒息してしまいそうになっていたからだ。だが、何もかもが順風満帆
prologue吾輩は猫である。名前はもうある。(でも今はまだ明かさない。)どこで生まれたかは知らないが、ボクのパパとママはロシアンブルーの世界じゃあ、ちょっと知れた猫(ひと)達で、いわゆる血統書付きのお坊ちゃん、お嬢ちゃんなんだって。ボクはそんな事気にしないんだけど、ボクが預けられたお店ではそれがとっても大切らしいんだ。ペットショップ店員のお姉さんが、ボクはきっとセレブなお客様に可愛がってもらえるって、毎日のように言ってたな。セレブな人ってボクにはよくわかんないんだけど、どうやら
マホガニーの重厚なデスクの奥に、黒い革張りのプレジデントチェアにその長い脚を優雅に組んで座っている男・・・。紺色に極細のストライプを施したイタリアンメイドの生地を使い、戦後昭和の時代から続くテイラーの生粋の職人が手塩にかけて仕立て上げた高級スーツをまるで空気を纏うように極自然に着こなしている。そして腕時計にベルトに靴といった小物もシンプルでありながらそのどれもが世界の超一流の職人が手がけるブランドの逸品である。そんな完璧に包まれた男・・・大都株式会社代表取締役社長の速水真澄を慈愛の
MorningSickness・・・昔、ハーバードに留学していた頃、学生結婚をしていた友人の奥さんが妊娠して、悪阻が酷くて大変だと、その友人が話していたことを思い出した。俺はその時、何故悪阻が"MorningSickness"と言われるのか、ピンと来なかった。ただ、当時は興味も無かったからその時の疑問は放置されたままだったのだが、今になってその意味がようやくわかった。マヤが二人目の子供を身籠った。もちろん俺の子だ。この前マヤに告白されて、感激のあまり不覚にも涙が出てしまったが
まだ季節は真冬の音楽の都ウィーン。G20の日本合同視察団の一員に加わった速水真澄は、全ての日程を終えると、一行からは離団し、ひとりウィーンの滞在を延ばした。真澄がpatronをしている日本人ピアニストに会うためだ。彼から今後の活動について前から相談を受けていて、その結論を出すためだった。「ずっと僕の中で拘り続けていたコンクール活動に区切りをつけたいと思っています。」彼の目にも言葉にも迷いはない。「そうか。でもいいのかい?ショパンを獲らないまま、コンクールから離れてしまって。」返っ
Hijri'seyes...彼の方が、マヤ様を見初められて早十年の月日が経ちました。私は彼の方の代わりに、マヤ様に何度も紫の薔薇の花束や数々の贈り物をお届けしてきました。時に、マヤ様から彼の方のへの贈り物をお届けしたこともありましたね。その贈り物たちは、今も伊豆の別荘の彼の方の書斎に大切に保管されているはずです。凡そ、金で買えるものであれば、手に入れられないものはないであろう彼の方が、何よりも大切にしていらっしゃるのが、マヤ様からの贈り物なのです。私はずっと、お二人の片想いを側で見
ある如月の小春日和の日。既に立春も過ぎて、暦の上ではもう春だ。マヤはいつも通り朝6時には起床して、マンションに設えられたひとつ下のフロアにあるジムでウォーキングとストレッチを1時間程度こなした後、部屋に戻りシャワーを浴びて、朝食を摂り、その後、発声練習を行うといった、日々のルーチンを黙々とこなした。今日は久しぶりの終日のオフであったが、怠惰に朝寝をしようなどという考えはマヤの中にはない。人は自分の事をストイックというが、昔に比べたらとんでもないとマヤは思う。大都が用意してくれたこのマン
秋の釣瓶落とし・・・就業時間の定時を迎える頃は、もうすっかり日も暮れて、街は夜の帳に包まれる。これからの季節は秋の夜長。心静かに自身を振り返るにはいい。しかし、今の俺は自分の心を見つめ直すのが怖い。それをした時、行き着く先は見えているから。どうしても打ち消せないたったひとつの願いがある。けれど、その願いはどうにも叶わない。叶えようとしたその時に、俺のたったひとつのその夢が壊れてしまうだろう。完全な袋小路に陥っている自分。だから、何も考えなくて済むように、俺は現実から目を背けて
薬指が痛い・・・。己の人生を鷹宮に縛り付ける結婚という名の契約の証である銀のリング。それは指だけじゃなく、真澄の心にも食い込んで、疼痛をもたらしていた。愛してもいない女とひとつのベッドに眠る苦痛は、想像以上だった。背後で息をひそめるようにして、自分を見つめる紫織の視線が痛い。どんなに遅くても、床の中で眠らずに待っている紫織の執念が、煩わしさを超えて恐ろしくもある。だから真澄はいつも、夜更けになってからしかベッドには入らない。どうしようもない程の眠気が来るまで、夫婦の寝室には行かずに
この前、マツコの知らない世界でバラに魅了されたマダムがバラの世界の話してましたね~香りの例で出されたのがイングリッシュローズばかりでした(そのうち我が家にあるのはフルーティな香りの代表として紹介されてたレディエマハミルトンのみ)今日は久々に太陽を拝めましたねしかも蒸し暑かったこういうのを本州以南では梅雨の晴れ間って言うのかなぁ?久々の好天だったし、白い恋人パークと雪印種苗園芸センターのバラ見本園に行って来ました園内のバラもそれぞれ見頃を迎