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「うぅーーー。さぶっ。」車の外に出ると、いよいよ冬の風に身を切られるようだ。「でも、空がめちゃくちゃ青くてキレイだぞ。」俺は雅紀の後について歩いた。「清水家之墓」と書かれた墓石の前。墓石をキレイに拭いて、持ってきた花を活けてお線香に火を点けた。「じーじ、今日は翔を連れて来たよ。」そう言って、雅紀が手を合わせる。俺も手を合わせながら、心の中で「初めまして」と挨拶をした。「三郎さんって言うんだ。」墓碑を見て話す。「そうそう
Still…〜再会〜★★★「いつか…」それが彼があたしに言った最後の言葉だった。忘れそうなその言葉を、あたしはふと思い出していた。『本当にいつかなんて来るの?』泣きながらそう言ったあたしに、彼はさみしそうに笑って背を向け歩き出した。YESとも、NOとも言わずに。たぶん、あの時あたしたちは、互いに違う道を歩き出したんだ。もう…彼に逢わなくなって、一体どれくらいの時間が経ったんだろう…そんな事さえ、もう思い出せない。この数年、本当に色んな事があった。世の中は変わり季
君の風景は僕の風景Landscape.42今度こそ、お願い。わかってる、もう間違いはしないよ。昔の恋人ってそんなに忘れられないもの、なんですかね。店を出て、櫻井さんが呼んでくれたタクシーに乗り込み、軽く会釈をし、ドアが閉まった事を確認すると運転手に行き先を告げた。俺の頭の中で確実に今のこの三人の関係性が理解できた今、軽々しい行動は控えるべきだと思ったから、仕事のペースを切り上げて、早くあいつを連れて、海外へ、、、、本当ならば、俺なんかよりきっと彼の方が
注、櫻葉小説です。sideS雅紀と、一緒に月が見たい、、、見れたら、あの時間は取り戻せないけど、見れたら、新しくスタート出来るような気がした。「あいばくんの、願いは?」「翔ちゃんと、二人でお酒、飲みたい!」迷わず口にする雅紀。そっか、20歳になって、初めて一緒に飲みに行く約束、、、それは叶えてあげられなかったけど、、、一緒に、、、お酒飲む、、、って、いいな!自然に笑顔がこぼれた。「じゃあ、、、用意しよ!」「うんっ!」そこからは、なぜか、二人して、、、、、
世界の果てに。secret.3「入る、よ」コクンコクンと弱々しく頭を振る黒髪をもう一度だけ優しく撫でて、グッと腰を下ろせば、相変わらず白く、だけどほんのり汗ばんだ背中は少し緊張したあと、しなやかに甘い声と同時に………………仰反る。十分慣らしたナカは案の定俺に絡みつき、前に前にとその身体を揺らせばその具合は強くなる。若かりし頃とは違うリズムでその身体の反応を見ながら刻むと焦ら、さないでよなんて、シーツを握りながら言うあたり、本当に可愛くて可愛くて。「焦らしてねえよ」「う
俺とカズが自分たちの母校で働き始めたのは、本当に偶然だった。俺は、俺の母親が、学校の給食室で働いていて、学校でも母親の味をずっと食べていたから、大学で別の学校に入った時、その学食の味にビックリした。あまりにもまずくて・・・母親の影響で食に興味があった俺は、別の大学に編入して管理栄養士の資格を取って、母親と入れ替わるような形で母校に就職した。うちの学校は、給食が美味しいってこともウリの一つだ。そして、それを定着させたのは母親だったから。母親の味を継いでいければ・・・なんてことも思っ
「よしっ!こんなもんかな!!」「主任!こちらも終わりました!!」「お疲れ様!終わったら帰っていいよ!」「はい、じゃ、お先に失礼します。」「お疲れ様。また来週からよろしくね!」「こちらこそよろしくお願いします。」ふぅーっ。ピカピカになった給食室。気持ちいい。来週からまたここで給食を作る毎日が始まるけれど、そのことが待ち遠しい。給食室に鍵をかけたところで。「相葉くん!」「あ!松本先生!お疲れ様です。」「お疲れー。何?給食室の清掃?」
4月。始業式の前に、新任の先生や僕たち職員の顔合わせがある。俺はそこで、あのキレイな人と再会することができた。櫻井先生・・・。櫻井翔先生っていうんだ。今日もキレイ。キレイな白い肌。大きな二重の目。整った鼻筋。少し厚めの唇。俺の席からは遠くてちょっと分からないけれど、きっと今日も香しい香りなんだろう。うん、古文の先生っていうのがピッタリ。ちょっと憂いがかった表情で。これから櫻井先生と学校で会えると思うと、俺はついニヤけそうになる顔を必死で押し殺した。「相葉くん。」
「でさ、今度の勧誘だけど。・・・ちょっと、翔。聞いてる?」「・・・ん?ああ、ごめん。勧誘?」「そう。今まで通りやっても、それなりに集まるだろうけど、ちょっとつまらないから変えてみようかと。」「うん。そういうのは、潤が得意だろ。任せるわ。」「じゃ、好きなようにやっちゃうよ。いいの?会長!」「だから任せるってば、副会長!!」「・・・って、さっきから、何やってんの。」「どうしても、この問題が解けないんだよ。」潤が、どれどれ?と言いながら、俺の後ろから
「翔ちゃん、なんかずっとポリポリしてるけど、カユいの?虫刺され?」「んー。なんだろ。なんかのアレルギーかなぁ。」「病院行った?」「いや、大丈夫だろ、別に。たまにあるし。」「ダメだよ!ちゃんと病院行かなくちゃ!!!」相葉くんの剣幕に、周りがちょっとビックリする。「ん。少し経ってダメだったら行ってみるわ。」「そのほうがいいよ。なんなら俺、一緒に行こうか?」「あはははは!子どもじゃないんだし、大丈夫だよ。お前だって忙しいんだし、休める時に休まないと。」「ありがとう。翔ちゃん、優しいね
ちょっとお久しぶりの翔さんのご実家。この重厚なドアの前に立つと、微妙に緊張する。「何、固まってんだよ。」翔さんにポンと背中を軽くたたかれた。「いや、何となく。」「何度も来てるだろ。」「そうなんだけど。」「そういえば、あれ、小学校の時だっけ?友達が遊びに来るって約束してたのに門のところのインターホンの位置が分からず帰っちゃったことあったよな。」「あー、あったあった。」「ほらー、だからそれだけの家なんだってば。」とゴチャゴチャやってたら。内か
ふぅー。俺はPC用の眼鏡を外して、首を回した。昼間は、話声や電話の音、ファックスやコピー機の音で騒々しいくらいなのに。今は俺が打つキーボードの音がガランとしたフロアに響く。軽く100m走ができると思われるフロアを見回しても、ポツポツとしか人がいない。俺の部署には、俺一人だ。その時、窓の外がブワァっと明るくなった。なんだ?!続いて「ドーーーーーン!!」と腹の底に響く音。あぁ、花火か。そういえば、今日は近くの花火大会の日だったっけ。同僚が行くとか行かない
このあと、フランス側主催のパーティに出ることになっていたから着替えようと、一度ホテルにもどった。「翔・・・いつまで見てんの。」「だって・・・雅紀のスーツ姿、初めて見た!!!!!」「俺だって、最初は会社勤めだったし、こういうときのためにスーツくらい持ってるよ。結構レセプションとかに呼ばれることも多いんだよ。」「それは知ってたけどさ。でも!めちゃくちゃカッコイイんだけど!!ちょっと、どうしよう!!」「どうしよう、って、何、それ。」雅紀がおかしそうにクスクス
クリスマスマーケットのイルミネーションが輝く中、広場は人で溢れかえっていた。どの顔も期待でワクワクしている。俺は脇の方で、時計を確認した。秒針が、19時ジャストを差したとき。ドン!と大太鼓の音が響く。ワァっ!とあがった歓声が、一瞬にして鎮まりかえった。しばらくは太鼓の音だけが鳴り響く。時に繊細に、時にダイナミックに。みんな、太鼓の音に引きずり込まれていく。そして。太鼓の音が鳴り止んで。ドーーン!と、夜空に大輪の花が咲いた。最初の花火は、
いよいよ、パリでの本番まで1週間となった。花火は無事にパリについて、現在、税関で通関中。大太鼓1つ、中くらいの太鼓が2つ、小さ目の太鼓が4つ。こちらは、本日の航空便で一足先に旅立った。俺たちは明後日にパリへ出発する。うちの会社からは、今回のチームメンバーに副社長と部長が同席してくれることとなった。野上さんたち太鼓メンバーに、大野さんたち花火メンバー。当然、藤ヶ谷さんのお父さんも一緒だ。家で雅紀と一緒に荷造りをしていた。「やっぱ、パリって寒いよねぇ?」「冬本番ではな
「やっぱ、こういうのがパリって感じするねー!!」「ちょっとさみぃけどな。」ホテル近くのカフェのテラスで、ベタにカフェオレとパンとサラダを食べていた。「昨日の酔いが醒めてちょうどいいよ。」「昨日は酷かったなー。」「でもさ、別に二日酔いで気持ち悪いとかじゃないんだよね。」「うん。高級な酒ばっかだったもんな。」「みんな無事かなぁ・・・。」「さっき松潤に連絡取ったら大丈夫だったみたい。松潤と藤ヶ谷さんは、俺たちより早く出かけたらしいぞ。」「マジで?さ