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人の心には誰しも獣がいる言わずと知れた日本文学の名作です。高校の現代文の授業で知った方もおられるのではないでしょうか。僕は青空文庫で改めて読んでみましたが、格調高い文章で書かれていてとても惹きこまれました。人としての心を失っていく李徴を「古い宮殿の礎が次第に土砂に埋没していく」という表現する等、比喩も上手かったですし、「時に、残月冷やかに、白露は地に滋く、樹間を渡る冷風は既に暁の近きを告げていた」といった風に情景の描写の仕方も素晴らしかったです。この作品のテーマは、「人間は誰しも心に
前回からの続きです。今日は、『山月記』の中に出てくる漢詩について、お話しします。ご存じの方も多いと思いますが、『山月記』は、『人虎伝』という、中国の小説を基にして書かれています。(『人虎伝』の成立年代等については諸説あるようです。)小説中の漢詩は、この『人虎伝』に出てくるものです。かつての親友袁傪に出会った李徴は、自らは岩陰に身を隠しながら袁傪と会話を交わします。その中で、人間であった頃に作った漢詩を袁傪に朗誦して聞かせ、伝録してほしいと頼みます。最
偶因狂疾成殊類/偶ゝ狂疾に因つて殊類と成る災患相仍不可逃/災患相仍つて逃るべからず今日爪牙誰敢敵/今日は爪牙誰か敢へて敵せんや当時声跡共相高/当時は声跡共に相高かりき我為異物蓬茅下/我は異物と為りて蓬茅の下にあれども君已乗軺気勢豪/君は已に軺に乗りて気勢豪なり此夕渓山対明月/此の夕べ渓山明月に対し不成長嘯但成嘷/長嘯を成さずして但だ嘷を成すのみ明治書
「本は読まないわけではないですけれど、一般的に名作と呼ばれるものはあまり読んでいないと思います」母親が新しくできた洋菓子店で評判になっているワッフルを買ってきたというので居間に入った私の耳に、聞き覚えのある声が飛び込んできた。映画の宣伝の番組にタクが原作者として出演していた。ミーハーな母親は主演をする若手の俳優がお気に入りらしく、番組に間に合うように家に帰ってきたようだった。「高校の国語の教科書で『山月記』を読んだ時も、虎に変身する男ということで『タイガーマスク』が頭の中を走り回ってい
私は中島敦が大好きです。『山月記』『名人』『弟子』『李陵』などの小説を書いた作家です。NHK「ラジオ深夜便」の『絶望名言』でも紹介し、それが書籍化された『絶望名言2』(飛鳥新社)にもそれが収録されました。その『絶望名言2』を、なんと、中島敦のご長男の中島桓(たけし)さん(87歳)の妻の中島敏枝さん(86歳)がお読みくださって、私宛にお便りをくださいました。とても感激しました!そのお便りの中には、桓さんへの聞き取りによって作成された、貴重な資料も入ってお
『山月記』は、日本の小説家・中島敦によって書かれた文学作品であり、江戸時代の文化や人間関係を描いた作品です。この作品は、作者自身の経験をもとにしたとされており、自然の美や人間の心情を繊細に描き出しています。まず、本作品では自然が豊かに描かれています。著者は山岳地帯の美しさや四季折々の風物詩を鮮やかに表現し、読者に自然の美の素晴らしさを伝えています。特に、「山月」という言葉がタイトルに冠されていることからも分かるように、夜空に輝く月の美しさが作品全体に影響を与えています。また、登場人物
過去記事2011年夢枕漠の「忘竿堂日記」が新連載されたようだ。彼は釣り人なのかと、フフンと思った。第一話は、私の好きな「中島敦」の山月記と名人伝の二人の主人公について語られていた。「おそらく、人は、紀昌のようにはなれないであろう。しかし、李徴のように夢破れて虎になる」の一節に納得してしまうのだ。少年時代に衝撃を受けた中島敦…変り者の私の決定打とも云うべきインパクトだ