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お伽話の王様の宝物なら、キラキラと輝く大きな宝石の付いた王冠に、宝箱から溢れる程の金銀財宝。ドラゴンを倒した宝剣やユニコーンの角笛。そんな、誰も目にした事の無いような想像するだけでも溜め息を吐いてしまいそうな物が沢山に違いないけど、今、私がいるのはお伽の国でも無くただつまらないだけの現実。一様世界には王様と呼ばれる人はいるけれど、私には無縁だしきっと夢の様な宝物も持ってはいないはずだわ。だからきっと私の目の前にいるこの人もそんな宝物は持っていないと思う。パパとママに連れられてやって来た
私立祠堂学院は山奥にある今時にしては珍しい全寮制の男子高。麓の街への移動手段はバスのみ。空気と景色が良い意外何も無い陸の孤島だ。そんな学校に僕はこの春から音楽教師としてやって来た。それは祖父の立っての頼みだから。でなければこんな所に好き好んで来る事は無かっただろう。祖父はこの祠堂学院と姉妹校で都内にある祠堂学園の学院長。とは言っても姿を見せるのは年に数回、だから僕に白羽の矢が立った。新入生としてやって来るとある人物の密かな監視とサポートが僕の真の仕事らしい。生徒一人に何で・・と言
一日目はのんびりと観光バスに揺られながらあちらこちらを見て回るミニツアーに参加した。島の史跡を巡ったり、屋台が並ぶ市場を覗いてランチを食べたり。ギイは屋台のフードを片っ端から胃に収めとても満足そうにしていたけれど、僕はそのギイの食べっぷりをみているだけでお腹がいっぱいになってしまって、思う程食べれなかった。二日目はクルーズ。船は申し込んでおけば借りる事ができるらしくいつの間に免許を取ったのか、ギイが舵を取っている。「本当に、何をやっても似合うんだから」「お褒めに預かり光栄です」「褒
事の始まりは数日前に遡る。今年の結婚記念日はお互いに休みを取ってゆっくりする事になった。ギイが組んでくれたプランは、南の島でのんびりしよう!と言うものだった。クルーズに出かけたり、島内を散策するミニツアーがあったりするらしく、ただ海を眺めてのんびりすると言うものでもないから退屈はしないらしい。飛行機を乗り継いでやって来た南の島にはいくつものホテルが立ち並び、多くの観光客で賑わっていた。「バカンスでもないのに、凄いね」「そうだな。こんなに人がいるなら知り合いに出くわしそうだよな」ギイ
NYからのエアメイル、丁寧なアルファベットの並びに、思わず笑みが漏れる。封筒を開けると、わずかに彼の甘い香りがした。一度だけ抱きしめた細い身体を思い出して、今でも甘酸っぱい気持ちになる。便箋には久しぶりに見る日本語、これまた彼の性格を表すような優しい文字が並んでいた。「子供、生まれたんだ」内容は無事に出産したという報告だった。「しかも女の子なんて、可愛いんだろうな」葉山に似ていたら勿論可愛らしいだろうし、あの彼に似ていたとしても、それは見目麗しい赤ん坊だろうな。それにしても、葉山
昨夜突然やってきた恋人にプロポーズをされたオレは朝から、いや昨夜から出っ放しのアドレナリンのおかげでテンションが高い。どうして今なのかとか、細かい心情の確認をすることなく、時間と体力の許す限り託生と溶け合っていたオレは幾分か寝不足ではあるが、それを補うほどに今も歓喜に満ち満ちている。結果、口角は常に上向きだ。何度も視線は左手の薬指に落ちるし、そのたびに湧き上がる甘い感情を隠すことなくいるものだから、迎えの車の中はある種異様な空気。何かあったことは明白だが、運転手は何も訊ねてこない。訊い
島岡に仕事を押しつけて、半ば無理矢理退社して、いつものように急ぐ帰路。出迎えてくれたのは愛しい託生と、ミニチュア託生と言っていいくらいそっくりな望未。「おかえり。今日は随分早いんだね」「パパ、おかえり~」8時前に帰宅したオレに、望未も嬉しそうに抱きついてくる。ほら見ろ、こんなに喜んでいるじゃないか。「葵生は?」「まだ起きてるよ。着替えたら抱っこしてあげて」オレの上着を受け取る新妻のような託生を見る度に、いつも胸がキュンとする。やっぱりオレ達に倦怠期なんて存在しない。なぁ、
泉の視線が気になったけど、これ以上望未を待たせるわけにもいかないので、授乳を始めた。泉はぼくらの前に座り、望未がおっぱいを飲んでいる様子をじっと見ている。その視線にいやらしさはなく、ぼくもだんだん気にならなくなってきた。「可愛いね」「うん」「僕って、この美貌だろ?」「・・・あ、うん」急に、どうしたんだろう。「親がオメガじゃないかって疑って、小さい頃検査受けたらしいんだけど、オメガじゃなかったんだ」「ふ~ん」泉くらい可愛かったらうなずける。オメガは幼少の頃から容姿端麗な子が多
じゃあ、また明日、と。部屋の前で岡田と別れて、ひっそりと静まった自室へと帰る。ほんとは。ほんのちょっぴり期待していたんだ。全然連絡のないギイだけど。もしかしたら、って。でも、やっぱりそこにギイはいなくて。密かに期待していただけに、がっかりも大きくなる。リビングのチェストの上にちょこんと乗った可愛らしいサイズのクリスマスツリー。前にギイが来た時に楽しそうに出していった。「ツリーのライトは今度俺が来た時に一緒に点けような。」僕は別にクリスマスなんて大して楽しくもないけど、ギイが
なくとなく目が覚めたのは明るすぎる陽射しのせい、ベッドボードの時計はそろそろ13時になろうとしている。LCCの狭い座席があんなに窮屈で疲労がたまるものだとは思ってなかったし(いつもはギイが手配してくれるから有難くビジネスシートを利用させて貰っている)、テンションが上がったギイに好きにされることも分かっていたけど、まさかほぼ朝までとか。「幾つだよ、ホント」若くもなければ年老いているわけでもない中途半端な年齢だというのに。ベッドの下に落ちていたバスローブを羽織って、ノロノロと寝室の続きにある
「たく・・・み?」絞めていたタイを緩めながら降りたエレベーター、部屋の前に佇む良く知るシルエットに驚きと困惑の声が出る。「あ、お帰りギイ。遅くまでお疲れ様」いつからそうしていたのか、平時は日本にいる愛しい恋人はいつもと変わらない柔らかな笑みを浮かべて見せる。「あぁ・・・いや、どうして?」どうしてここ(ニューヨーク)に居るのか、直近のやり取りでは来るとも何とも言っていなかったはずだ。「ん?ん~ちょっと、ね。ギイの顔が見たくなったから」「それなら連絡の一つでもくれれば良かっただろ?それ
確かに、もうギイが抱いてくれないかもしれないと思ったら、胸が苦しくなった。だからって、そんなにはっきりと言わなくてもいいじゃないか・・・。「なぁ、どうなんだよ?」さっきまでの心配そうな顔が一変して、ギイは楽しそうにぼくを抱きしめたままゆらゆらと揺れている。「・・・したいとか、したくないじゃなくて、ギイの特別でいたいから」忌まわしい行為のはずだったのに、ギイとなら愛情を分け合う行為になった。ギイの腕の中は温かくて安心する。ずっとこの温もりに触れていたい。それはやっぱり、ギイに抱
午後一で来た彼らが帰ったのは、夜の9時過ぎ。途中から同窓会は宴会にかわり、ギイが用意したお酒は次々と空になっていった。「ギイ、飲み過ぎたんじゃない?大丈夫?」何度シャンパンで乾杯していたことか。ちなみに、ぼくは授乳中なので、アルコールは一切飲んでいない。「ああ、平気。シャワー浴びたらすっきりした。それにしても、あいつらよく飲むよな」「もう仕事も休みに入ったって言ってたから、忘年会みたいなのりだったね」望未はシッターさんに見てもらって、ぼくも久しぶりに楽しませてもらった。「そういえ
「ただいま」いつもは玄関で出迎えてくれる託生がいつまでたっても出てこない。明かりがついているリビングルームに入ると、託生はソファでうたた寝をしている。ソファの側に置いてあるベビーベッドを覗くと、望未がパッチリ目を開けて起きていた。「ママは疲れてるから、大人しく待ってたのか?お前は良い子だな」抱き上げると、優しい顔で笑う。託生は笑った顔がオレに似ていると言うけれど、オレから見たら、顔立ちも何もかもが託生そっくりだ。「いっぱいおっぱいもらってるからか?望未、少し重たくなったんじゃないか
国とか都市間の移動とか、なんなら街中へ出ることも憚られ先の見えない状況に、僕の中で"このままじゃダメだ"と言う気持ちが日々大きくなっていった。今日の平和が、平穏が当たり前じゃないとしっかりと認識してしまった僕は、ギイとの今の関係も実はかなり不安定で、何か一つのきっかけで突然に終わってしまうものだど今更に気が付いてしまったのだ。フリーで仕事をしているから住む場所も国もどこでも出来る。でも日本じゃ法的に僕らの関係は保障も保証も無い。なら、法的に認められている地域に行けば良い。何となくの感覚
託生の柔らかな唇と甘い舌がギイの理性を溶かしていく。このまま何もかもを忘れて溺れてしまいたい―――。押し流されそうになるギイを辛うじて踏み留めさせたのは、罪の意識と自分自身への嫌悪の念。―――こんな俺が触れれば、託生が汚れてしまう。そんな思いが心を掠めて。後ろへと引けてしまったギイの躯を、託生の腕がぎゅっと強く抱き締める。「・・・逃げないでっ、」必死の色の浮かんだ黒い瞳が淡く潤んでいて、ギイの躯はジンと痺れる。「ギイ、何も考えないで。・・・僕だけ見てて。」更にくちづけを深めなが
日本に、託生の元へやって来れたのは五ヶ月ぶり。間、なんだかんだとイレギュラーな事ばかりで何度か予定をドタキャンしてしまった。その都度託生は仕方がないよね、と少し残念そうに笑っているだけ。決してオレを責めたりはしない。だから、少しでも託生を喜ばせようとこれから行く事は連絡していない。この時間なら出掛けてもいないだろうから、そう思って向かった託生のマンション。フロントガラスの向こう、エントランスから出て来た人影に目が止まる。「何処かに行くのか?」いつものボディバッグを掛け託生は何処かへ
車が止まったのは街中のコインパーキング。託生と一緒に降りて来たのは、男。歳はオレ達と同じか少し上、託生よりも全体的に一回り程大きなその男がさりげなくエスコートをしながら歩いて行く。オレも同じパーキングに車を止めて二人を追う。会話の内容は分からないが、笑顔で男を見つめる託生から親密さが見て取れる。残念ながら多分オレはその男の話を託生から訊いた覚えがない。信号が青に変わり歩き出す託生の腰にさり気なく回る手に視線は当然厳しくなる。そんなオレの事など知りもしない託生はその手を嫌がる事もなく
今更だけど、僕の通っている高校は男子校だ。よって右を見ても左を見ても前も後ろも男しかいない。ごく稀に、可愛らしい人だなぁ~とか、素敵な人だなぁ~なんて目が止まったとしてもその人達も男なのだ。その可愛い&素敵な部類の男子がここには複数人存在していて、僕を含めた一般の平々凡々とした生徒達の羨望を集めている。その一人は間違いなく僕へロクでもない宣言をしてみせた崎である。あの日以来、僕の側には崎がいるものだから彼に集まっている眼差しがついでに僕を捉えてしまう。そして一様に「なぜ?」と首を傾げ声
多分、いや、もしかしたらコレは独り善がりにそう思っているだけなのかもしれないけれど、彼は僕に好意を持ってくれていると思う。そしてそれは僕も同じく。彼に特別な好意を持っている。でも、それを口にはしない。友達だとは言い切れない気持ちは胸のうちに秘めておく。気持ちを告げてもきっと困らせてしまうから。優しい彼を困らせてしまうのは本意では無いから。友人の範疇から飛び出る事はしないでおく。「いった、」「大丈夫か?」小さく躓き体勢を崩した僕に当たり前の様に大きな手が差し出される。「うん、
ベッドに入ってみたものの、一度身体に宿った熱はなかなか引いてくれず、全く眠れそうにない。託生はもう寝ただろうか?隣のベッドを見ても、頭まで布団を被っているので分からない。気まずいまま週末を過ごすのは嫌なんだけどな。明日の朝、何もなかったようにオレがおはようと言えば、きっと託生はほっとした顔をして、おはようと返してくれて、それで元に戻るはず。・・・でも、それでいいのか?オレは二人の関係をより深いものにしたい。もっと踏み込んで、託生の思いを確認した方がいいんじゃないのか?それとも
写真のフレームをそっと愛しげに撫でた託生。コトリ、ともとの棚に載せた。横にはもうひとつの写真立て。その中にはギイと託生、二人並んで笑顔の写真。すっかり大人になった自分たちの姿。―――ギイの隣で自分はこんな風に笑っているのか・・・。この写真を撮ってくれたのは誰だったか。祠堂の仲間たち、その誰かであることは間違いない。ギイと祠堂のみんなの再会は、懐かしい思いを楽しめるだけのものでは決してなかったけれども。(矢倉は殴りかかる寸前だったし、三洲なんて顔を出しもしなかったのだから。)それ
こんにちは。あおさきこです。いくつかシリーズも出来て、完結したり、続き話を書いていたり、自分で設定を確認する意味も込めまして、こんな話ですっていう説明を作ってみました。初めてお越しの方もこちらをご参照ください。※更新しました(2016/10/16)こちらでは、私の愛する『タクミくんシリーズ』の『ギイタク話』を取り扱っております。この単語の意味が分からない方はご遠慮ください。ギイタクonly、他のカップリングは今のところ興味がありません。設定はパラレル、ほとんどが祠堂と関係ないとこ
「ギイ、僕・・・・・キス、された・・・。」ギイの胸に額を預け、消え入りそうな程に小さく呟かれた託生の言葉は、だが、ギイには驚くほどハッキリと聞き取れた。ギリギリで押さえ付けていた嫉妬がその言葉に反応して頭をもたげてくる。が、託生の傷付いた瞳を、震える躯を。思い出して、渾身の自制心で堪える。誰からも―――俺からも。もう、傷つけさせない。抱き締める腕に力が籠った。けど。「・・・僕は、ギイがいい。ギイじゃないと、やだ。」続いた言葉に、その自制心も脆く崩れ去る。ギイの胸に貌を埋める
祠堂のみんなに会う前に。ギイと寄り道をした。よく知っている道。「ギイ、どうして・・・?」小高い丘の白い建物。その裏手にある墓地の群れから少し離れた墓石を前に託生は訝しげに呟いた。ここに寄るとは前以ては聞かされていなかったから。辿る道筋からもしかして・・・?と、薄々思ってはいたけれども。何故、ここに?ギイは手にした花束を墓の前に供えた。「俺、約束、破っちまったからさ。」約束?「ここに一緒に来た時、約束しただろ?"来年も、再来年も、それから先も、ずっと、毎年オレはお前とここに
100話のお祝いコメント、ありがとうございました(*^o^*)昨夜はアップした後、すぐに寝てしまったので、朝起きて気づきました。このシリーズ、私もお気に入りなので、子供たちの成長とともに話を続けていきたいなと思ってます♪できれば、望未の嫁入りくらいまで・・・。ギイが荒れそうだなぁ。なかなか結婚を許さないんだろうな(´艸`)◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇※後日談です次の日、ギイは早速デートをしようか、なんて言ってきたけど、望未がギイにべったりで、とても二人で出掛けられそ
「託生、今日一日オレのシャツとお前のシャツ、交換しないか?」起きたばかりで、半分眠ったままの頭では、言われた言葉を理解するのに時間がかかった。「・・・シャツって、制服のシャツ?」「そう」ぼくのクローゼットを開けて何をしてるのかと思ったら、シャツを交換して着るって?「嫌だよ。みんなに気づかれたら何を言われるか・・・」うちには鬼の風紀委員がいるんだ。すぐにばれそうじゃないか。「それに、そのシャツまだ洗ってないから汚いよ」慌ててギイからシャツを奪い取ろうとしたが、それよりも先にギイがシ
頭まで布団を被って息を殺してギイの気配を探っていると、ギイは自分のベッドに入ったようだった。・・・どうしよう。これじゃあ、ぼくが嫌がって断ったみたいだ。そんなんじゃないのに。今すぐギイのベッドに行って謝れば、続きをしてくれるだろうか。それともこのまま別々に寝ても、明日の朝、ギイはいつものように優しい笑顔で、おはようとぼくに言ってくれるだろうか。・・・でも、そうしたら、もう求めてもらえないかもしれない。あの温もりにもう触れられないのかと思ったら、無性に悲しくなった。一度
♭君と一緒にタクミくん音大卒業後、助手三年目の設定で書いてます。“タクミくんの音をみんなに聴いて貰いたい”と“二人を幸せに”を目標に勝手に未来捏造していくオリキャラ満載のシリーズです。→♪1(1~2)完タクミくん、一念発起でコンクール出場を決意します。→♪2(1~4)完大学での佐智さんとタクミくん。オリキャラ関くん登場。→♪2のおまけ(1~3)完関くん視点での♪2。オリキャラ、門下生の皆さん登場。→3(1~4)完託生くんとの出会いから現在までを佐智さん視点で。黒佐
法定速度を忠実に守り、所要時間四十分程で連れて来られたのは見るからに別荘な一軒家。周囲に他の家屋は見当たらないから別荘地と言う訳でもなさそうだ。「はぁ~」エンジンを切り肩の力を抜くように息を吐いたその唇を尽かさず塞げは苦情も無くすんなりも受け入れらる。「キス・・やっと出来た」本当は駅前で会った時にしたかったが、いくら人気が無いとはいえうっかりと誰かに見られてもヤバいからそこはぐっと我慢をした。「はいはい。寝室は二階だから、腕力に余力があるならついでに食料も中に運んでくれる?」「食料