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『託生、オレが浮気したらどうする?』『・・・どうするって、・・・・わからないよ』『そういう時は、オレを殺して自分も死ぬって答えるんだよ』昔、そんな話をしたっけ・・・。あの時ギイには言わなかったけど、ギイはとても素敵な人で、実際そういう誘いもあるんだと思ったし、もし他の人に気持ちが移ってしまったとしても仕方のない事だと、ぼくはそう思っていた。でも、ギイと番になって、結婚もして二人の子供を授かって、もし今、ギイに同じことを聞かれたら・・・、答えは・・・・・・。
日本での滞在期間もあと数日。週明けにはギイが出張から戻ってくる。その前にと思いついて、ぼくは三洲に電話をした。ギイが三洲はオメガの患者を担当したことがあると言っていたのを思い出したから。「ごめんね、わざわざ来てもらって」「いいさ、小さい子供と一緒に外出するのは大変だろ。こっちこそうるさいのがついてきて悪いな」うるさいのというのは、もちろん真行寺のことで、奥で望未と一緒に遊んでくれている。三洲に聞きたい話は、子供に意味なんてもちろん分からないだろうけど、望未に聞かせたい内容ではな
確かに、もうギイが抱いてくれないかもしれないと思ったら、胸が苦しくなった。だからって、そんなにはっきりと言わなくてもいいじゃないか・・・。「なぁ、どうなんだよ?」さっきまでの心配そうな顔が一変して、ギイは楽しそうにぼくを抱きしめたままゆらゆらと揺れている。「・・・したいとか、したくないじゃなくて、ギイの特別でいたいから」忌まわしい行為のはずだったのに、ギイとなら愛情を分け合う行為になった。ギイの腕の中は温かくて安心する。ずっとこの温もりに触れていたい。それはやっぱり、ギイに抱
やっとだ、2週間ぶりに託生と望未に会える。今は夜の10時を回ったところ、望未は寝てるだろうが、託生は起きて待っててくれてるよなぁ。託生は望未にあわせて規則正しい生活をしているので、朝起きるのも夜寝るのも早い。10時過ぎると、寝る気はなくても自然と眠ってしまうんだとか。オレの帰りを待っている間に寝てしまって、何度がっかりさせられたことか。空港に着いてすぐに電話をしたから、起きて待っていてくれていると思うが・・・、託生だからな。「おかえり、ギイ」オレの予想を良い方に裏切り、託生が玄
鼻歌交じりの浮かれっぷりで書類の山を片付けていく御曹司をチラリと見遣り、島岡は溜め息を洩らした。勿論、それと気取られぬ様用心深く、である。それなのに―――。「なんだよ?何か言いたいことでもあるのか?」素晴らしい目敏さで即座に突っ込まれる。全く、この勘の良さ・・・。ビジネスのあらゆるシーンで役立つのは間違いないが、こちらに向けられるとやり難いことこの上ない。「いいえ。ですが・・・随分ご機嫌ですね?日本に出発前とは別人の様です。」「しっかり託生補給してきたからな。」いいえ、と否定し
その日、帰宅したギイに事の顛末を報告した。「悪かったな、託生に全部任せて。お袋、張り切っちゃって大変だっただろう?」「うん、ちょっとね」熱心なのはとても嬉しいんだけど、ね。「きっと、葵生が大きくなったら、また大騒ぎするな」「やっぱり、そう思う?」「オレから釘を刺しておくけど、また口を出してくるようなら教えろよ」「ああ、うん。でも最後は望未の意見を尊重してくれたし、大丈夫だと思うよ。それにね・・・」帰りの車内、お義母さんは未練たっぷりで、まだ望未を説得しようとしていた。「
ベッドに入ってみたものの、一度身体に宿った熱はなかなか引いてくれず、全く眠れそうにない。託生はもう寝ただろうか?隣のベッドを見ても、頭まで布団を被っているので分からない。気まずいまま週末を過ごすのは嫌なんだけどな。明日の朝、何もなかったようにオレがおはようと言えば、きっと託生はほっとした顔をして、おはようと返してくれて、それで元に戻るはず。・・・でも、それでいいのか?オレは二人の関係をより深いものにしたい。もっと踏み込んで、託生の思いを確認した方がいいんじゃないのか?それとも
崎家の皆様にはそれぞれSPが数名ついている。ご子息である義一様と結婚された託生様にも、例に漏れずSPがつくこととなった。他のご家族と違うのは、ご本人様に気づかれずに護衛すること。「託生様は今日もナンパされているな」「あの容姿だ。仕方ないだろう」「いつものことながら、相手の男もしつこい。そろそろ追い払いに行くか」このように日々の業務は、ナンパ男を追い払う、ナンパしそうな男を事前に排除すること。毎度毎度タイミング良く現れる通りがかりの人に助けられることを、託生様は何も疑問に思っていない
“今度ギイが来たら時間とるように言って。みんなで会おう。”政貴の言葉に少し複雑な貌を見せた託生。祠堂の仲間たちとの再会は懐かしいだけでは済まないことを察しているのだろう。突然消えてしまったギイ。みんなそれぞれ思うところがある。何故一言相談してくれなかったのか。自分だけではなく、みんな。想いはきっとこの一語に尽きてしまうのではないか。“うん、わかった。伝えとくね。”少し前の複雑な貌を引っ込めて、力強く応えた託生。その表情に政貴ははっとさせられた。―――すごく綺麗だったから。
望未が3歳になる年の初夏、待望の第二子が誕生した。望未と同じ濃いブラウンの髪と瞳、顔立ちはギイによく似た男の子。6月に生まれたので、葵生-あおい-と名付けた。ぼくとギイにとって6月は特別な月。死にたくなるほどの絶望を味わって、全てを諦めたあの日から、毎年6月が来るたびに憂鬱になった。でも、ギイの愛を信じて受け入れたのも6月だった。その時からぼくの世界は一変した。兄の墓参りにも行けたし、兄と両親を許すこともできた。何のために自分は生まれてきたのかと、生まれてこなければよかったと
降り立ったケネディ国際空港、到着ゲートで待っていたのは、満面の笑みを浮かべたギイと、申し訳なさそうな顔で隣に寄り添っている葉山。二人に会ったら言ってやろうと思っていた苦情の数々は、痩せて一回り小さくなったような葉山を見たら、引っ込んでしまった。「よお、相棒。随分強引な手を使ってくれたな」それでもギイには小言の一つでも言ってやらないと気が済まない。ギイの笑みが気まずいものへの変わったところを見ると、無茶なことをしているという自覚はあるらしい。「ごめんね、赤池くん。わざわざこっちに来てもら
空港を出て、ギイの運転する車に乗り、程なくして葉山はすやすやと寝てしまった。葉山はシートベルトをすると気持ち悪くなるからと後部座席で横になり、僕は助手席に座っている。「疲れやすいみたいで、家でもよく昼寝してるよ」「葉山、全然食べないのか?」「食べることは食べるんだが、食べる量が少ないうえに、もどすことも多いし・・・、本人は頑張って食べようとしてるんだけどな」バックミラーで葉山を確認するギイのまなざしは優しい。「それでどうにもならなくなって、僕を呼んだわけだ?」「託生に何が食べたいか
マンション前で車を降りて。運転手への労いの言葉もそこそこに、エントランスへと駆け込んだ。少し前から降りだした雪は、その質量を増していって。これは積もるだろう。寒さにめっきり弱い恋人は、今ごろ震えているかもしれない。はやく!と焦れながらエレベーターが最上階へ着くのをじりじりと待つ。急く心のままに足早に歩み寄った託生の部屋のドア。その前でもう一度、時間を確認する。日付が変わるまであと10分。滅多に使わない合鍵で扉を開けると、しん、とした静寂が俺を迎えた。託生が起きている気配はない
「島岡、オレ、幸せすぎて怖いよ」「急になんですか?」「毎日、幸せのMAXを更新してるんだ」「はぁ・・・」「託生と想いが通じ合って恋人になれた時、これ以上の幸せはないと思った」「そうでしょうね。あの時の義一さんの浮かれようといったら・・・」「でもさぁ、その後しばらくプラトニックな関係が続いて・・・、結構辛かったんだよな。託生と同じ部屋で寝起きしてて、手を出せないなんて、よく2か月も我慢したよ。我ながら感心する」「・・・でしょうね」「それで、託生がオレに全てを委ねてくれた時は、ああ、
葉山託生、バイオリン科の一年生。彼の存在を知ったのは、特待交換留学生を決める選考会だった。線の細い涼し気な立ち姿、きめの細かい白い肌とそれに対比する綺麗な黒髪、少し潤んだ黒い大きな瞳が印象的で、男相手に見とれたのは生まれて初めてだった。物静かで、風が吹けば簡単に飛ばされてしまいそうな繊細な印象は、弓を握ると一変した。「・・・すごい」「誰だよ、あいつ?」「一年らしいぞ」恋などしたこともないような清楚な容貌は、バイオリンを奏でると妖艶な色を纏い、その姿と音色に誰もが目を奪われた。俺も
三洲の言うサービス・・・、三洲は真行寺にどんなことをしているのか、知りたくてうずうずしていたぼくにチャンス到来。三洲の携帯に母親から電話が入り、三洲はちょっと外す、と部屋を出て行った。その隙にと、ぼくは真行寺に真偽を確かめるべく近寄った。「ねぇねぇ、真行寺くん」「葉山さん、もう話終わったんですか?あれ、新さんは?」「今家から電話がきて、廊下で話してるみたいだよ」「望未ちゃん、めっちゃ可愛いですね。ミニチュアの葉山さん。崎先輩も可愛くて仕方ないだろうなぁ」うっすらと額に汗を浮かべ
細い身体を抱きしめたら、甘い香りに包まれて、身体の奥に熱が灯る。固くなった下半身を押しつけたら、葉山の身体が震えた。葉山を恋人にすることが無理でも、一度だけでも抱いてみたい。熱にうかされた葉山の姿が見たい。「・・・こんなことをして、何の意味があるんですか?」感情のない声、俺を見る冷たい視線。「意味?俺にとっては十分意味があるよ。君は恋人に夢中みたいだけど、この一瞬だけでも君を手に入れられればそれでいい」葉山とセックスしたら、俺もあの情熱を手に入れられる。あんな風に聴く者を魅了する
尚人と別れて家に連れてきたはいいが、託生はさっきからポカンと口を開けて、家を見ているだけで何も話さない。「託生?」「・・・ここが、ギイの家?・・・すごいね」引いてるな。セキュリティを重視して、外から家が見えないように、塀と高い庭木、敷地の半分が庭園で、ゲートを抜けてからしばらく車で走る。一般家庭よりは広いだろうな。「オレの家って言うか、親父の持ち物だけどな」フォローのつもりで言った言葉は、託生の耳に届いているのかいないのか。家の中に入ると、出迎える使用人を見て、更に固まってし
『私のせいで託生さんにまで迷惑をかけて申し訳ございません』「いえ、そんな・・・。でも、本当に島岡さんが貰った名刺なんですか?ギイをかばってるとかじゃなくて?」『ええ、あれは私がプライベートで貰ったものです』さらりと言われてしまっては、これ以上聞くこともできない。「そう、なんですか・・・」『私も男ですから、夜遊びくらいするんですよ』ギイとは違う渋い男の色気を含んだ低い声に、なんだかドキリとしてしまった。「なに顔赤くしてるんだよ!」隣で聞き耳を立てていたギイが途端
葉山はもてる。それは男女問わずに。やはり葉山に惹かれるオレの美的感覚はおかしいわけじゃない。一年で唯一最終選考まで残ったこともあり、学内で葉山は目立つ存在になり、よく噂話をきくようになった。どんな美男美女に声を掛けられようとも、誰の誘いにも応じない。告白されても、間髪入れずに断る。断り文句は決まって、―――恋人がいるから―――恋人の影など全く感じさせない葉山に、皆バイオリンが恋人という意味じゃないかと言うようになった。・・・でも俺は知っている。葉山が密かに部屋に招き入れてい
お風呂はいいとして、人の身体のマッサージなんて、ぼくはしたことがない。どうしようかなぁ。「ねぇ、真行寺くん、ちょっとマッサージさせてもらえる?」「ええ!俺ですか?」「そのまま座っててくれればいいから」ソファに座る真行寺の後ろに回って、両肩を触ってみる。「どの辺が凝ってるの?」押してみても、筋肉なのか懲りなのか判別不能。「固いのが凝りだろ?」「葉山さん、もっと強く押しても大丈夫です」「そう?」結構力がいるな。・・・あ、良いこと思いついた。「ちょっと三洲くんも触ってみてよ。
国とか都市間の移動とか、なんなら街中へ出ることも憚られ先の見えない状況に、僕の中で"このままじゃダメだ"と言う気持ちが日々大きくなっていった。今日の平和が、平穏が当たり前じゃないとしっかりと認識してしまった僕は、ギイとの今の関係も実はかなり不安定で、何か一つのきっかけで突然に終わってしまうものだど今更に気が付いてしまったのだ。フリーで仕事をしているから住む場所も国もどこでも出来る。でも日本じゃ法的に僕らの関係は保障も保証も無い。なら、法的に認められている地域に行けば良い。何となくの感覚
ギイがちゃんと首を支えろだとか、顔を近づけるなとかうるさく言うから、遠慮して誰も望未を抱いてくれない。望未は望未で、この騒がしい中うとうとしたり、次々とのぞき込んでくる見知らぬ顔を見ても泣かないし、興味深げにじ~っと見返したり、案外楽しんでるのかも。「それにしても、見事に葉山にそっくりだな」「本当に、可愛いよね」矢倉と八津、それに政貴と章三がベビーベッドを囲んでいる。「葉山そっくりで、しかも女の子。望未ちゃん、年頃になったら大変だな」「ああ、確かに・・・」矢倉の言葉に、みんな望未の
「ギイ、もういいだろ?帰ろうよ」「まだ肝心なことを聞いてないんだよ」ここに来てかれこれ15分、Dr.に貰った20分という時間を、ギイは目一杯使うつもりみたいだ。なんとなく、ギイの聞きたいことが分かるから、もう帰りたいんだよ!「じゃあ、産道についてですが、ここも適度に広げて慣らした方がいいんですよね?」やっぱり、そのことだよね・・・。「まぁ、そうですね。慣らしておかないと、出産の時辛いですから」「それは大変だ。託生、やっぱり普段から慣らしておかないと駄目みたいだな」「・・・・・」
「ふぅ~」少し熱めの湯。オレの好みに調節してくれる、ちょっとした気遣いが嬉しい。出張中はシャワーばかりで、こうしてゆっくり風呂に入るのも久しぶりだ。どうやら自分で思ったよりも気を張っていたらしい。こうして家族のいる東京の本宅に帰って来て、身体の力が抜けていくのが分かる。「ギイ、入るよ」託生の声がして、人影が目の端に映る。随分早く来たな。いつもは10分くらいして、身体や髪を洗っているタイミングで入ってくるのに。まさか、オレの背中だけ洗って、先に寝るつもりか?今夜は、と淡い
100話のお祝いコメント、ありがとうございました(*^o^*)昨夜はアップした後、すぐに寝てしまったので、朝起きて気づきました。このシリーズ、私もお気に入りなので、子供たちの成長とともに話を続けていきたいなと思ってます♪できれば、望未の嫁入りくらいまで・・・。ギイが荒れそうだなぁ。なかなか結婚を許さないんだろうな(´艸`)◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇※後日談です次の日、ギイは早速デートをしようか、なんて言ってきたけど、望未がギイにべったりで、とても二人で出掛けられそ
赤池くんのおかげで、辛い悪阻も乗り越えて、最近ではお腹も少し目立つようになってきた。膨らんできたお腹がこんなに愛おしいと思うなんて・・・。結局赤池くんは1ヵ月滞在して、4パターンの子供部屋のデザインを完成させたら、逃げるように帰国してしまった。誕生日は二人で過ごせなんて言ってたけど、バレンタインも近かったし、案外奈美ちゃんと約束があったのかもしれない。「あ、そうだ。ギイに電話する約束だった」今日は検診の日で、終わったら電話をと言われていたことを思い出した。病院を出たところで携帯と取り
今すぐに帰りたいというオレの申し出は、島岡に却下され、イライラしながら仕事を片づけていると、SPから連絡が入った。たまたま近くにいた絵利子が駆けつけ、すぐに車に乗せたので、事なきを得たようだ。しばらくすると絵利子からも電話が入った。『どうして託生さんはノーブラで生活してるの?』「悪い、オレも全然気づかなくて」一般的に見たら託生の胸は大きくない。というか、むしろ小さい。ブラが必要だとは、正直思わなかった。「で、託生は?一緒なんだろう?」『今ブラの試着をしているところ』ブラの試着・
託生様と望未様の護身術のレッスンは、週1~2回のペースで行われている。そして今日も・・・。「それでは次は、相手の後ろに回り込む動きです」私ともう一人のSPが見本を見せる。「え?え?え?」途端に託生様は混乱されたご様子。「もう一度、ゆっくりしてもらってもいいですか?」今のも十分スローでしたつもりでしたが・・・。さらにスローにして見せても、いまいちピンときていないようです。「おっ、やってるな」「ギイ、どうしたの?」「パパ!」「忘れ物を取りに来たんだ」部屋に入って来ら
妊娠によってぼくの身体は変化した。身体の奥に子宮ができて、赤ちゃんが育っている。悪阻もあったし、お腹も少しずつ大きくなってきた。そして、妊娠と同時に胸も少しずつ膨らんできた。順調に大きくなれば母乳も出るようになるとか。そしてもう一つ、産道ができていて、子宮からここを通って赤ちゃんが出てくる、らしい。診察の時にこの説明を受けたけど、途中からぼくはパニック状態で、あまり内容を覚えていない。情事の後、ギイにあれこれ聞かれたけど、久しぶりの行為でぼくは疲れ切っていたし、そもそも覚えていない