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港へと続く坂道を登りきった高台にあるチューダー様式の貴族の別邸。港を見下ろす今は仮設病院となっているその屋敷にはサウザンプトンの街のどこよりも早く『朝の光』が届けられる。春に差し掛かる少し前の美しい冬の朝。昨日、一日中降った雨の雫が、貴婦人の宝石のようにサウザンプトンの街を彩り、港の向こうに広がる海からのぞいた幼い朝の太陽に照らされて、透明な煌めきを放ち始めていた。風に吹かれ、濡れた葉からこぼれ落ちた光の粒が、キラキラと輝いている。その朝、ベッドの中で目覚めたテリュースは、病室が明るいこと
ウィリアム・シェイクスピア、『没後300年』にあたるその年。ブロードウェイの様々な劇場で、ハムレット、マクベス、ジュリアス・シーザーなどたくさんのシェイクスピア劇が上演され、ブロードウェイは、シェイクスピア一色に染まっていた。しかし、そんな中でもスプリングガーデン劇場の『愛し合うふたりの恋物語』マイガールはヒットし、現在150回連続公演を樹立、そのまま記録をのばしているところだ。その立役者のひとり。ローズ役のソフィア・グリフィスは、最近めっきりきれいになった、とささやかれはじめた。黒曜
甘い春の風が優しくカーテンを揺らし、そばかすだらけのキャンディの頬を撫でていく。「もうすっかり、季節は春なのね。」キャンディは、アルバートさんのいなくなった部屋をぼんやりとながめながら、椅子に座ってため息をついた。あれから。アルバートさんからは、なんの連絡もない。小包が発送されていたロックスタウンの隅から隅までアルバートさんを探して歩き回ったが、手がかりは何も見つけられなかった。そもそもロックスタウンにアルバートさんがいた形跡すら、なかったのだ。まるでアルバートさんが、テリィに会わ
冬の匂いがする____。テリュースは、霧の中にぼんやりと浮かぶ暗い海に落ちていく雪を見つめていた。星の見えない夜の帳(とばり)が下りた闇の世界で、船のともすたよりなげな灯りが空と海を照らし、冷たい夜霧が流れていく。戦下の海を渡る大型客船は通常より灯りを落としているせいか、甲板も薄暗かった。あと数時間して夜が明ける頃には、大型客船シーナ・センチュリオン号はイギリスサウザンプトン港に入港する。イギリスに戻ってきた───。そして、父親に会い、正式にグランチェスター家を出ていくことを告げる。
シカゴのオフィス街に朝が訪れていた。眩しい陽光、ビルの谷間に響く鳥のさえずり、街路樹の葉が擦れあう音、埃っぽい道を駆け抜ける自動車の轟音。〈風の街〉シカゴは、アメリカの参戦によって、激動する時代の渦に否応なしに引きずり込まれ、不安や恐怖など様々な混乱を社会に抱き込んだが、それでもいつもの通りに夜は明け、清々しい朝を迎えていた。しかし、ここアードレー家の本社ビル最上階は、ひとりの男の来訪によって、かつてないほどの激震が走る『朝』となる。昨日。あれから、アーチーたちはシカゴに戻るとパティにも
テリュースが、劇団プロデューサーのブライアンから自分の部屋に来るように言われたのは、マチネ(昼公演)のすぐ後だった。「テリュース、話があるからすぐに部屋にきてくれ。」ブライアンは不機嫌な顔つきで、テリュースの耳元で囁いた。話したいこと__?今日はソワレ(夜公演)も控えているのに、いったいなんなんだ。「ソワレの後ではいけませんか?」テリュースは、精一杯平静を装って答えるが、顔には不満が表れていたのかもしれない。そんなテリュースに、「ソワレに出演できなくなるかもしれないまずい事態だ。
『ホールドアップ』低くかすれた男の声が、薄いカミソリの刃先のようにぞっとする感じがして、キャンディはごくりと唾を飲み込んだ。__強盗!素直に従うべきだと本能が囁く。キャンディは言われた通りに、手にしていたバッグごとゆっくりと両手を高く掲げ、降参を示した。男は、素早く服の上から身体検査をし、カバンの中に武器がないのを確かめる。「よし、そのまま、ゆっくり振り返れ。」キャンディはそのままの姿勢で、声の主の方を向く。すぐ目の前に立っていたのは、キャンディの知る男性たちとは全く違う、危険な雰囲
ダンスホールに向かう楽しげなキャンディとレオン、ふたりの後ろ姿を見つめながら、針のように鋭い痛みが、アルバートの身体の中をかけめぐった。『心』と呼ばれるところに走る激しい痛み。若い男女がパーティーで腕を組む。別に特別なことではない。よくある風景だ。キャンディは、アーチーともよくそんな風に親しげにふるまっている。もちろん、アルバート自身にも。それなのに、なぜ?こんな気持ちになるのだろう?いや、違う___。『自分に嘘をつくな、アルバート。』別の声がこだまする。『お前はもう気づいている
初めて、小説キャンディキャンディファイルストーリーを読んだ時。アンソニーには違和感がなくて、漫画の世界のアンソニーをそのまま、より深く感じられたのだけれど、テリィには少し、違和感を感じたの。あ、もちろん、嫌な感じではなく、「新鮮なテリィ」を。だけど、正直、漫画のテリィとファイナルストーリーのテリィは、少し違う、と思った。と、言うのは。私の、漫画キャンディキャンディのテリィは、女子に関心がないから?なのか、女子慣れしているから?なのか、割りとぞんざいに女子を扱っているイメージがあって。
スプリングガーデン劇場。「マイガール」2幕目は___。チェスター侯爵家に嫁いでいる異母妹マリアの厳しい「紳士教育」によって、めきめきと、生まれながらの貴族のように立派になっていく、カイル・レイン・カーライル伯爵。周りも、カイルが跡継ぎであることを認めはじめるが、そのかわり亡くなった異母兄ケヴィンの婚約者ジュリアと結婚することを強いられる。ヘンリー・カーライル伯爵に、『爵位を継いでジュリアと結婚するように』と詰め寄られているカイルを見てしまったローズは、自ら身を引く決心をして、カイルの前か
「『みなさん、僕がウィリアム・アルバート・アードレーです。』って、あのキメ台詞と突然の登場の仕方、ものすごくカッコよかったですよ、アルバートさん。」アーチーが、ニールとキャンディの婚約パーティーにいきなり現れたアルバートの登場シーンを少し皮肉っぽく真似してみせると「キメ台詞って・・・いや、かなわないな・・・。」とアルバートは苦笑いした。「本当にそうよね。すっごくかっこよかったわ。」すでにアルバートが大おじさまであることを知っていたキャンディは、屈託なくその時のシーンを思い出して嬉しそう
甲板から聞こえた声にすぐに反応したレオンが、操舵室から出て下を見おろすとそこには既にふたりの警官の姿があった。「よぉ!レオン。元気そうだな。」そのうちのひとりがレオンを見上げて、ぶっきらぼうだが親しげに声をかける。ついでに立ち寄ったからといった風情で、物々しい雰囲気はない。「やぁ、クラークさん。」レオンは下に向かって叫び返した後、不安げなキャンディを振り返ると安心させるように『心配いらない。知り合いの警官だから。』と低くささやいた。そして、操
高い塀に囲まれたどこか殺伐とした雰囲気が漂うNY屈指の大病院、聖マリア総合病院。吐血したスザナを運び込んだその病院で、すぐに応急措置といくつかの検査がなされた後、スザナの両親とテリュースが医師に呼ばれたのはかなり時間がたってからだった。一緒に病院にかけつけたロバートをはじめ、幹部や団員たちは明日の公演を考えて、いったん引き上げていた。立ち話では終わらないほどの難しい話になるからと、3人が通されたカンファレンスルーム。そこで、医師からスザナについての聞き取りと今わかる範囲のスザナの病状、そし
永遠のジュリエットvol.33を更新しました💕↓永遠のジュリエットvol.33〈キャンディキャンディ二次小説〉|キャンディキャンディ二次小説『永遠のジュリエット』茜色に染まる冬の街道を駆ける馬車。キャンディは、通りすぎていく窓の外の景色を見ていた。派遣されたトゥールーズの病院で、www.candycandy.site貴重なみなさまのお時間の中で、拙い私の物語へご訪問くださり、ありがとうございます。深く深く感謝しています。この二次小説を書く時、いつも心にあるのは、『少女の頃に、な
冬はまだ始まったばかりだというのに、ブロードウェイは秋の衣を脱ぎ捨て、純白の雪の衣裳をまとうようにたたずんでいる、そんな寒い日だった。昨日までの暖かさが嘘のような。ブロードウェイからそれほど遠くないホテル『ザ・ヴァルハラ』元は迎賓館だった建物をオーナーが改築した豪華なホテルに、その日正式に婚約を発表するストラスフォード劇団のテリュース・グレアムとスザナ・マーロウの姿があった。通常は決して許可がおりないその格式高いホテルの一角で、宿泊客をそのエリアからすべて排除して、ふたりのポートレート撮
港から帰ってきたキャンディは、まっすぐに屋敷の母屋にある大広間にむかった。屋敷で一番広いその部屋は仮設病院の病室として使われていて、年齢や怪我の度合いが異なる男性患者たちが収容されている。患者たちは、怪我の痛みや事故のショックで眠れない日々を過ごしていたが、今、目にするその病室は優しい午後の雰囲気に包まれていて、キャンディは思わず微笑んだ。ボランティア看護師たちは夕食作りの前に休憩をとるのが日課になっていて姿がなかったが、部屋にはDr.トーマスと看護師ふたりがいて、患者を交えて皆でワイワイお
インタビューする相手の本音を聞き出すためには、幾つかの「技(わざ)」がある。それを使えばある程度簡単に人の心の中をのぞくことができる。その老練な新聞記者は腹の中でそう考えていた。彼がよく使う手口。ひとつは、相手が潜在的に誉められたいと思っているところを鋭く嗅ぎわけ、上手にそこをくすぐり、おだててこの人間は自分をわかってくれる、自分の味方だと思わせる。するとインタビューされる相手は驚くほど饒舌に語り出す。もうひとつの奥の手は、相手の急所や触れられたくないところをえぐり、わざと本気で怒らせる。
私たち、永遠の(自称)乙女の大好きな少女漫画のパターンって💕ヒロインは、絶世の美女とかではなくて、ちょっとからかわれるポイントがあるくらいのフツーの女子がいて。あら、私と似てるわ💕なんて読者に思わせるタイプ。性格は、明るくて前向き思考、元気が良くて、ちょっとおっちょこちょいテイストあり、気づかいのできる優しい女子。でも実は、正義感が強くて、一途な頑張り屋さん。そこも、読者に、あら私と似てるかも💕なんて思わせる(笑)*間違っても美人を見て、嫉妬にかられたり、日がな一日ダラダラしていたり
レイクウッドへ___。大おじさまに会ったらなんて言おう!まっさきにニールのことを取り消してもらわなきゃ。そして、そして。今までのお礼をたくさん。感謝をこめて。キャンディは、大おじさまに何から話そうか、何を尋ねようか、道中ずっと考えていた。話したいことも尋ねたいことも山盛りで、頭の中はぐちゃぐちゃ、まだ何も決まっていない。でも・・・。ふと・・・。本当に大おじさまに会えるのだろうか?そんな不安がわき、キャンディはレイクウッドが近付くにつれ、もうすぐ夢にまで見た大おじさまに会えるとい
アーチーの愛車"デューセンバーグ・モデルZ"は、シカゴからインディアナポリスに向かってのびるハイウェイを南にひた走っていた。「お願い、アーチー。もっと急げない?いつもよりスピードが遅い気がするの。」ずっと押し黙ったままのふたりだったが、突然アニーが口を開いてそう訴えるとハンドルを握っていたアーチーが緊張した面持ちをフッとゆるめた。「アニー、いつもはもっとゆっくり走ってくれっていうじゃないか。」そう言って、アーチーは頬にかかる髪をかき上げながら隣にいるアニーをチラリと見て苦笑した。その瞬間
どこに質問していいか分からないちょっと話したい愚痴をこぼしたいキャンディネタに縛られずご自由にお使いくださいレイクウッドのサンルームをイメージSONNETの目次∻☆…∻☆・明日(2024年3月1日)からしばらくの間、「井戸端会議」のコメント欄はオフとさせて頂きます。また、「いいね」などのフォロー活動も当分の間控えさせて頂きます。🙇♀️※他のコメント欄は開けておきますありがとうご
早朝、少しやつれたテリュースが、それでも柔らかな微笑みをたたえながら、スザナの寝室の窓辺に立った時、彼女はまだ夢の続きをみているのだと思った。彼女の夢の中のテリュースは、いつも幸せそうに微笑んでいて、その微笑みを受け止めると、幸福ではち切れそうな気持ちになる。しかし、夢からさめ、恋しいテリュースの姿を探すとそこには、どこか遠くを見ているように虚ろな眼をした横顔があるだけ。うつし身はここにあっても、心はあの人のいる彼方に飛んでゆく恋人。そんなテリュースだが、スザナが話しかけると、どんな時でも
全国500万人のキャンディキャンディファンの同志のみなさま💕えんも君さまの『テリィ』が完成したようです💕色んな方々がテリィを描いていらっしゃいますし、以前私はいがらし先生ご自身のイラストと思いこんだくらいのクオリティの二次作家さんもいて(大ファンになってしまいました💕)世界中に素晴らしい様々なテリィがいますが、でも『男性が描くテリィ』を見たことがないですし、見てみたくて、勇気を出して、えんも君さまにお願いをしたんです✨えんも君さまは、いつも温かな愛と鋭い視点でそれぞれの漫画やアニメを語って
『永遠のジュリエットvol.36』アップいたしました💕↓永遠のジュリエットvol.36〈キャンディキャンディ二次小説〉|キャンディキャンディ二次小説『永遠のジュリエット』───開演の"2ベル"が響いた。客席の明かりがすっと消える。熱気を帯びた客席のざわめきが、ゆっくりと静まっていく。www.candycandy.siteみなさまの貴重なお時間の中で私の拙い物語を読んで下さって、ありがとうございます💕深く深く感謝しています💕今回は、初めて短いボリュームでアップさせていただき
「ねぇ、キャンディ、ものすごく顔が赤いわ。なんで、そんなに真っ赤になるの?」アニーが長い睫に縁取られた美しい瞳で、まじまじとキャンディを見つめた。キャンディは無意識に両手で頬を隠す。「アルバートさんは、いつ南米から帰ってくるの?って尋ねたのよ。そんなに真っ赤になるような質問じゃないでしょ。変なキャンディ!」ポニーの家の暖炉の部屋。幼い子供たちをお昼寝させてからのティータイム。ポニー先生とレイン先生は、村の婦人の集いに出かけていた。「もしかして。」アニーがわかったわ、と言うようにいたずら
いつも拙い私の物語を読んで下さって、ありがとうございます💕深く深く感謝しています💕💕💕遅くなりましたが、『永遠のジュリエットvol.34』をアップさせていただきました。↓永遠のジュリエットvol.34〈キャンディキャンディ二次小説〉|キャンディキャンディ二次小説『永遠のジュリエット』冬晴れの空の下、キャンディがアメリカ行きの船に乗ったのは、テリュースが病院からいなくなってから五日後のことだった。傍らにwww.candycandy.site今回の永遠のジュリエットvol.34は、いつ
今日は、®️18で書かせていただきます💕17歳以下の良い子のみんなは読まないでね💕🤣生粋の『妄想族』のわたし。ここ最近は、妄想の塊🤣『永遠のジュリエット』という二次小説を紡がせていただいているのですが、漫画とファイナルストーリー(FS)で設定が違っていて「えー⁉️どっちなの?」と悩むことがちょくちょくあります。どっちに寄せるべき??と。例えば。(月刊なかよしと単行本キャンディキャンディではまた違いがあったりします💦)*登場人物の年齢*ポニーの家の場所*スザナがキャンディの手紙を抜
ご無沙汰しています💕りんです。今日は愚痴らせてください~🤣最近。むちゃくちゃ、グランチェスター公爵夫人の気持ちがわかるわたし。と言うのが。最近、うちのアンソニー🤣(息子)がどんどん『テリィ化』しているから。*残念ながら見た目は違います🤣パターン①↓「それ以上そこにいたらブタのような顔がもっと醜くなるぜ。」↑こんなの日常茶飯事🤣最近、アンソニー🤣は、(乏しいボキャブラリーの中から)『わる~い』言葉を私に投げかけてくる。オバ◯ャン、とかさ💢わかるわぁ~🤣グランチェスター公
はじめまして。ジゼルです。いつも私のつたない物語を読んで下さって、本当にありがとうございます。深く深く、心から感謝しています。「永遠のジュリエット」を読んでくださるのは、朝ご出勤の電車の中でしょうか?お昼やすみのひとときなのでしょうか?家事が一段落した昼下がりですか?夜ベッドの中に入り、まどろむ時間でしょうか?いつもどんな方が、読んで下さっているのだろう♡と思いめぐらせています。そして、ブログの向こう側にいらっしゃるみなさまのことをいつも感じております♡いつもありがとうございます
今さら・でも―キャンディキャンディいつもアクセスいただきありがとうございますブログを最初から読む二次小説を最初から読む11年目のSONNET目次Finalstoryの考察を読む草ネタを読むDearforeignCCfansアメンバー限定記事を読むアメンバー募集はこちら★ブログ主の日常ブログ「井戸端会議場」はココをポチ※井戸端会議はお休み中です表紙につき、このページのコメント欄は閉じ