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大野さんは僕を見つめたり、ちょっと照れたように目をそらしたりしながら、穏やかな声で話し続ける。「友達としてどっかにいて、助けてって言われて飛んでいくのもいいけど、やっぱり俺は櫻井さんのそばにいてあんなのもう起こらなくて済むように支えたいなって。そんなことできるものなのか分からないけど。でももっと心も体も近くにいたいなって。」「心も、体も・・・。」「ふふふ。変な意味でじゃないですよ?まあ、別にそういう意味でも俺は構わないんですけど。ふふふ。」「っははは。お、俺だ
コーヒーがいい香りを放って、僕は滅多に使わないトレイにコーヒーカップを2つ並べる。松本が来ても出したことのないお揃いのカップだ。いつか恋人と・・・と夢見ていたもの。それだけで鼻がツンとしそうなくらい感動している僕はもうどうしょうもないけれど。「チョコレートまだあった気がすんな・・・」仕事中たまに口にするカカオ65%のチョコレートをパントリーに見つけて、出張先で手に入れた焼き物の小皿に適当に割って乗せる。美しい群青色にこげ茶が映える。大人な色合いだ。
「次は何か決まってるんですか?」大野さんは休日を使う相手が他にいるのかと聞いたことを忘れたかのように、しばらく僕の仕事についての質問をした。誤魔化している雰囲気は不思議となく、どうしても興味があるから知りたいのだという姿勢だから、僕もそのまま流されてしまった。「はい。宇都宮の大谷資料館って知ってます?採石場の跡地にあって、カフェとかも併設されてるところで。」「いえ。採石って石を採る?」「そうです。大谷石っていうのがあって。昔火山が噴火した時の灰が海水中で固
結局、僕らはコンビニでお酒とおつまみを買い込んで家飲みをすることにした。そうすれば僕が潰れても楽ちんだという松本のアイデアだ。僕にも異論はなかった。悪酔いしてしまう確率もなきにしもあらずだから。もちろんすべて僕が払った。「相葉さんのパートナー!?狭い世界だなー。え、そんで諦めようと思ってるってことですか。」松本にだいたいのことを打ち明ける。真剣に、でも重たくならないような雰囲気を作りつつ、しっかりと聞いてくれている。「それは相手が相葉さんだから
松本との電話を切ってから、大野さんに夜改めて返事をすると連絡した。大野さんからはそれから1時間ほどして返信があった。短く「分かりました。お待ちしています」とだけあった。それからが長かった。書きかけの原稿を前に姿勢を正すも、どうしても集中できない。今朝のコーヒーの効果はすぐに消えた。頭の中は大野さんでいっぱいだったし、そうかと思えば居眠りをしたりした。「これ逆に脳みそフル回転して疲れてんのかな・・・。」昼過ぎになって、もう一度コーヒーを淹れる
気持ちは落ち着いたけど、やっぱり朝は辛かった。「飲みすぎたぁ・・・。」光がちょうどよく差し込んでいて、いつの間にか松本がカーテンを開けておいてくれたのだと気づく。どこまでも気の利く男だ。ベッドの上で一度ギュッと体を縮める。それから開放するように大の字になる。所々がピリピリ痺れたようになる。体中に血が行き渡る感覚。少し頭が痛いけれど、これはコーヒーで癒やされる類のものだ。コーヒーを淹れにキッチンに立つ自分を想像する。寝癖もパジャマ代わりの
こんあいばー!!いやぁ、「WheneverYouCall」、最高ですなぁ…嵐、ヴォーカルグループとしての魅力が、過去最高!メンバーそれぞれの歌声はもちろんですが、今宵は"ハーモニー"に注目したい!「WheneverYouCall」は、イントロから、メロ、サビにいたるまで、曲全体に嵐5人の美しいハーモニーがちりばめられていますよねしかも、あれだけガッツリ踊りながら、こんなにハモって魅せてくる…!こんな嵐が観れるなんて、本当
「全く、無茶しないでくださいよ。」「ん、悪い。」「もうマネージャーつけたほうがいいんじゃないですか?どうせ一人で全部片付けようとしてるんでしょ?」「できると思ったんだけどな。」「充分稼げてるでしょ?相葉さんとかにちょっと頼むだけでもいいじゃないですか。」松本がこんな風に不服そうな声を出すのは、僕を心底心配してくれているからだ。添えられた手は温かいし、僕を見る瞳は優しい。「歩けますか?おんぶ?」「はは。歩けるよ。だいぶ落ち着いたから。」
こんにちは!本日2つめの記事です。1つ前の記事へも、お帰りにお立ち寄りいただけると嬉しいです。いつも、読んでくださって、本当にありがとうございます。Thisis嵐LIVEへのわたしのつたない感想へも、優しいコメントに感謝しかありません。本当に嬉しいです。ありがとうございます。薔薇の花の写真はフリー素材から拾ってきているので小さくしちゃってありますがこれでよろしければ、愛でてあげてくださいませ。。5色並べると、すごーくきれいですね!
僕の部屋には何もなかった。部屋として、生活の場として機能するためのものはもちろん揃っている。だけど、そのどれもが僕を慰めるのには役立たない。鼻をかんでは投げるティッシュがゴミ箱の周りに散乱して、帰ってきて脱ぎ捨てた春物のジャケットが床でくったりと寝そべるように落ちている。テーブルに置いたスマホは一度も震えないし、カーテンを開けたままの窓からも光は差し込まない。暗いのに点ける気も起きない間接照明も、もしお腹が空いても何も入っていない冷蔵庫も、深く体を預けて体温が伝わっ
「うそだあ・・・。」大野さんは眉間に入っていた力を抜くと、弱々しい声で言う。「俺のこと可哀想だと思ってます?マサキと別れたこと聞いたとか?」「可哀想だなんてそんなっ。」僕は顔の前で手をブンブンと振り回して否定するけど、大野さんはまだ訝しんでいる。「あ、別れたっていうのはついさっき松本から聞きました。でも、違うんです。ちゃんと全部話すんで。」「・・・はい。」僕は順を追って大野さんに説明する。いつからかははっきりしないけど、大野
「もちろんですよ。まあライバル会社のものは堂々とはできないですけど。うちを通してできるところのものは、こちらも大歓迎なんで。」僕は松本に言われた通り、担当編集の相葉さんに軽いマネージメントの依頼をした。「助かります。」「もともとこっちにもいくつも来てんです。少し落ち着いたら翔さんと相談しながら片付けようと思ってて。」「そうなんだ。」「なんで、メール、転送してくれて構わないんで。」「いやー、それ本当に助かります。俺分からないことも多いから。」相葉さんはニコニコして頷いてい
「臨海公園か。行ったことないな。ここで散歩?11時ってことは昼一緒に食うよな・・・。」待ち合わせ場所を検索しながら、なんだかデートスポットのようにも見えるなあ、なんて思ったりして。だけど、期待に胸が膨らみかける度に自分を制することも忘れていない。ただ会うだけ。それだけ。「お待たせしちゃってすいません!」「ふふ。大丈夫です。ここ気持ちいいから。」待ってないとは言わずに、でも本当に平気そうに大野さんが応える。「すぐに分かりました?
写真集が発売になって、思いもよらない反響があった。仕事用に使っているメールアドレスを最後のページに載せていた。そこに仕事のオファーがどんどん舞い込んでくる。僕はすべてを独りでやっているから、あまり色々なものに手を出すことはしてこなかった。数本の長く続けられるものをそれぞれ丁寧にが信条になりつつあった。だけど、提案される企画はどれもとても興味深いものばかりで。あれもこれも、と検討しては返信する。ひとまずはお断りの分を電話で連絡する。そのほうが僕の気持ちまで伝わり
「櫻井さん・・・?」「大野さんっ!?」「櫻井さん、え、あの、櫻井さん・・・」「大野さん、どーして?」「櫻井さんこそ・・・。」2人してキョロキョロと視線を動かしながら、お互いがここにいることを不思議に思っている。「ん、ははは!」僕はお互い名前を呼ぶだけの会話が可笑しくなって笑ってしまう。「ふふふ。」大野さんもその変な感じに気づいて表情を崩す。僕は荷物を片手に持ち直して、少しキャップのツバを持ち上げる。「こんにちは。」
別にすぐまた会おうなんて思ってたわけじゃない。そんな話もしてないし、カズにも言われてない。でも、2週間連絡がないってどうなんだろう。僕ならもう少し積極的に・・・。って言っても、僕も自分からしようなんて思ってもいないのだから偉そうには言えないか。「なんか翔さん不機嫌?」松本が僕の顔を覗き込んで言う。「明日発売だよ?もっとテンション上がってるかと思った。」「ん?んー。まあ嬉しいよりは不安だよね。」「売れるかなーって?」「うん。
「翔さん?翔さん?」「あ、うん。ごめんなさい。ん、悪いけどコーヒーのお代わりもらってもいい?」軽く頭痛がする。相葉さんの知らなかった一面を知ることが、結果大野さんの一面も知ることになるとは。しかも、やっぱり知りたくはなかった。「大丈夫ですか?疲れが出てるんでしょう。ちょっと待っててください。」相葉さんはさっと立ち上がって自らコーヒーのお代わりを入れに行ってくれる。なかなかのベテランで後輩もたくさんいるけど、こういうのを人に頼んでいるのを見たことが
10、いや15分くらいは経ったのだろうか。呼吸も落ち着いてようやく目を開くと、プランターだろうか、色とりどりの花が視界に飛び込んでくる。「う・・・」「眩しすぎないですか?」「色が・・・多い」そう言うと、大野さんが僕の目の前に手のひらをかざしてくれる。「刺激が強すぎましたね。」「はは。なにからなにまで。」「座ってるだけですよ?」「長い時間背中も頭も、全部助かりました。」背中を伸ばしてみる。バキバキといろいろな関節が元
「やっぱり、冷蔵庫にしまった方が・・・。」「え・・・?」「買ったもの・・・。」僕の意識はまったく別のところにあって、大野さんが言っていることがしばらく理解できなかった。大野さんから目線を外して、キョロキョロとフォーカスの合わない地面に目線を走らせる。買ったもの・・・。そうだった。「悪くなっちゃうともったいないし、お腹痛くなっちゃうし。」大野さんが心配そうな顔でまた言って、僕は完全に言葉の意味を飲み込む。「そ、そうだ、そうだ。えっと
こんなにまっすぐ誰かに見つめられるのは初めてかもしれない。恥ずかしいというよりなんだか申し訳ないような。もう少しちゃんとお肌の手入れをしてくれば良かった。彼の視線を避けるように窓の外に目をやると、風で微かに揺れるチューリップが見える。しっかりとした太めの茎は大きなピンク色の花を支えて、周りには黄色の鮮やかな水仙の群れ。なぜあのチューリップは一本だけあそこで咲いているのだろう。水仙の花が少し頭を垂れている分だけ、ピンクの頭をピンと持ち上げるチューリップが凛として見える。
約束の時間が近づいて、僕はなんとなくソワソワしていた。約束のカフェレストランはもう目と鼻の先だ。あの日助けてもらってから、僕からは連絡していない。お礼をもう一度と思ったけど、なんだか押し付けがましくなりそうでやめた。そうしたら理由がなくなってしまったのだ。久しぶりの3度目をどう始めていいかが分からない。待ち合わせ場所を右に控えて、歩道の右端に移動しようとしたとき、突然後ろから左腕を強く引かれる。僕の体はバランスを崩して大きく左に傾く。「おわ
「またもやご迷惑を・・・。」なんとか呼吸を整えつつ僕は大野さんに頭を下げる。「迷惑なんかじゃないですから。もっとゆっくり息して?」「・・・はい。」大野さんに支えられてしゃがんだ僕は、肺に呼吸を取り込むために背筋を伸ばそうとする。でもやっぱりまだ上手く行かない。吐き気は去ったけど、まだ少し目眩が残っている。汗をたくさんかいたからジャケットを脱ぐと体を冷やしてしまうだろうか。でも暑いんだよな。「これ脱げます?」大野さんが僕のジャケットに手をかける。「腕だけ抜
光が筋のように差し込む小さな林を抜けて、少し開けた景色は鮮やかな色で溢れていた。「おー!まだ普通に咲いてますね!」「本当だ。良かった。キレイですねえ。」「すごいな。何本くらいあるんだろう。」「さっき見たのは16万とかって・・・。」「まじですか!?すげえ!」「ふふふ。」あまりの景色に興奮してしまった。大野さんの笑顔は嬉しそうなもので、興奮しすぎた僕を嘲笑ったものではないけど、なんとなく恥ずかしい。「真ん中歩きたいですね。寝っ
大野さんから連絡が入った。週末体調が良ければ、少し気晴らしの散歩に付き合っていただけませんかと書いてあった。僕は返事を迷っていた。気持ちを断ち切ってしまいたいのと、相葉さんに会えばいいのにと少しいじけた気持ちからだった。でも会いたい。それが一番正直な気持ちだと、僕は分かっている。そんな時、松本からも連絡が入る。この間の話をしたいから日程を相談させてくれと言う。僕は賭けをすることにした。松本が僕の誘導なしに週末を提案してきたら、大野さんを断る。平
『だから、相葉さん、別れたって言ってました。』「ま・・・」『まじです。』「あ、ありがと。へえ、ああ、ふうん、あ、そう。」『大丈夫ですか?』「んん。大丈夫。え、待って、もう一回言ってもらっていい?」ちょっと何言ってるか分からない。『相葉さん、大野さんと別れたそうですよ。』松本は必要以上にゆっくりと「別れた」の部分を強調する。『良かったですね、翔さん。あとは翔さんが気持ち伝えればいいだけですよ?』「つ・・・そ、そうか。い
『翔ちゃん、昨日どうだった?』「どうだったって・・・。緊張したよ。」『あの人相手に?くくく。一番緊張しないでしょ。』「したよ。俺ら初対面だからね?」『ふうん。ま、いいや。そんで次回なんだけど。』「次回?え、次回?」カズが電話越しにクスクス笑っているのが聞こえる。僕に聞こえないように少し口を離しているようだけどなんの役にも立っていない。『今なんで2回聞いたの?』「いや、だって。昨日全然会話弾まなかったし、連絡先の交換もしなかったし?」
「ごめん、ミーティングが長引いて。」『大丈夫だよ。俺らは仕事して待ってるから。』「ん。でも悪いけどリスケさせて?俺ちょっと疲れちゃってて。」『体調悪いの?』「悪くなりそうな予感がしてる。」カズはなんとなくだけど僕の事情を知っている。長く休んで自分と向き合った後、僕は自分の体調と心の状態に敏感になった。こうした急な予定変更もカズには何度か許してもらっている。『んじゃ、帰って休みな。こっちは俺に任せてさ。』「悪い。よろしく伝えて。」
「想像してたのよりキレイです。」部屋に入ってすぐレースのカーテンも開ける。今日は遠くまで見えるから気持ちいい。「ははは。どんなの想像してたんですか。」「ふふ。なんとなく、忙しいだろうし家事してる姿とか浮かばなくて。」「しますよぉ。まあ、最低限ですけど。見れば分かるように。」僕は恥ずかしくてほんのちらりとだけ大野さんを見る。大野さんはなんとも幸せそうな表情で、でも遠慮がちに目をキョロキョロさせている。僕はもうキュンが止まらない。こんな
「俺ちょっとトイレ。」「あ、はいよ。」大野さんが言って、カズが大野さんのために一度立ち上がる。2人の背丈がほぼ同じなのを見て、なにか分からないけど感情が動く。大野さんがトイレに向かって、カズが奥の席に座ると、ハンバーグのプレートと飲み物を動かす。「また立つの面倒だからね。」「はは。」「で、どう思う?」「ん?」「あの人、今日話してみてどんな?」「ねえ、それってなんなの?これってなんか、お見合いみたいな感じなの?」「ふ
『翔さん、おはようございます。』「おはよう、松本。どした?こんなに早く。」『すいません、起こしちゃって。実はちょっと急いで意見を聞きたい写真があって。今日のミーティングで見せる3枚にどうしても入れたいんですけど。』「ん、起きてたからいいよ。それって、この間決めたやつ以外にってこと?」『はい。昨日見直してたらいいの見つけちゃって。俺すごい好きで。』「勝手に入れたって構わなかったのに。俺は松本を信頼してるよ?」『分かってます。でもちょっと趣向が違うっていう