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みなさんこんばんは。知りたいけれど、どこかに書いていそうで書いていない内容を解説する、生殖医療解説シリーズも、今日で第7回となりました。バックナンバーもぜひご覧ください。月経中にみられる、ある程度大きな卵胞のようなものを、「遺残卵胞」という言い方をすることがあります。今日は、この「遺残卵胞」について解説いたします。日本産科婦人科学会刊行の産科婦人科用語集には、「遺残卵胞」という言葉はありません。というのも、「月経中にみられる、ある程度大きな卵胞のようなもの」は、実際には、色々な内容の
今日は、主に採卵の周期の1周期前(卵巣刺激開始前)(以下、前周期)には何が一番よいのかについてお話したいと思います。前周期に薬剤を使うかどうかは、各個人の体質に合わせながら計画するクリニックは少数派で、多くのクリニックではクリニックの基本方針によって決まっており、個人の体質で使ったり使わなかったりというよりも、前周期をどうするのかについての基本方針がクリニックごとにあり、それに沿って診療が行われることが多いです。それ自体は特に問題があることではありません。なぜなら、卵巣機能や月経周期が正常で特
「生理が来ない」というのは、一般婦人科で最もよくある質問の1つです。無月経とは、通常、おおむね3ヶ月生理が来ないことを言います。婦人科学的には、生理が遅れることはさほど珍しいことではなく、最終月経から3ヶ月以内の場合は生理が遅れているだけで病的とまでは言えない、、、のですが、とは言え、生理が遅れれば、どうしたらよいだろう、どうしてだろうと心配になるものです。私たちは、生理が遅れたという患者さんを診た場合、まず最初に妊娠しているか否かの判断を行います。私たちが産婦人科医になって最初に厳
前稿では、卵子の成熟の一般論についてお話しいたしました。では、穿刺卵胞あたりの卵回収率や、卵の成熟率がよくない場合は、どうしたらよいのでしょうか。卵胞があり、きちんと穿刺できたのにもかかわらず、卵子が回収できないことを「空胞」といいます。ここで注意したいのは、空胞とは、あたかも「卵子がなかったので取れなかった(カラだった)」という表現に聞こえますが、超音波では卵子があったかなかったか判断することはできませんので、「卵子があったが、何らかの事情で取れなかった」も「卵子がなかったので取れな
みなさんこんばんは。知りたいけれど、どこかに書いていそうで書いていない内容を解説する、生殖医療解説シリーズも、今日で第12回となりました。こんなご時世は勉強がはかどる、今夜も「生殖医療解説シリーズ」をよろしくお願いします。まずは、おさらいですが、日本産科婦人科学会は、次のように定めています。「生殖補助医療の胚移植において、移植する胚は原則として単一とする。ただし、35歳以上の女性、または2回以上続けて妊娠不成立であった女性などについては、2胚移植を許容する。治療を受ける夫婦に対して
みなさん、こんばんは。今日は新しいシリーズ「よくある質問」シリーズです。当院では、ホルモン補充周期の場合、初回来院は月経2-5日目、その次は、11-16日目に来ていただいております。初回来院の時に、「次は11-16日目のいつ来ていただいても結構です」と説明すると、それなりに高頻度で、「それはどういうことですか」「本当にいつでもいいんですか?」「いつが一番とか本当はあるんでしょう」という質問とともに、「着床の窓とか聞くんですが、それでもいつでもいいんですか」という質問があります。着
みなさんこんばんは。知りたいけれど、どこかに書いていそうで書いていない内容を解説する、生殖医療解説シリーズ、今夜もよろしくお願いします。最近、番外編が多いですが、今日も番外編です。今日は便秘についてです。女性と便秘は実は切っても切れないもの。では、どんな時に便秘になりやすいのでしょうか。答えは、「黄体ホルモンが高い時」です。排卵後、採卵後、ホルモン補充周期で黄体ホルモン開始後、黄体フィードバック法でルトラール等を内服中、妊娠後などがそれに該当します。排卵後は浮腫(むく)みやすく、水分吸
みなさんこんばんは。知りたいけれど、どこかに書いていそうで書いていない内容を解説する、生殖医療解説シリーズ、今日で第16回です。なお、スーパードライのネタは番外編に変更しました。私たち医師は、どのように卵巣刺激を選んでいるのか。もちろん、最終的には個人の体質や治療歴によって大きく変わりますが、今日は雰囲気だけでも分かっていただければ。そもそも、卵巣刺激には、①卵胞を育てる(卵巣刺激・排卵誘発)+②育った卵胞を排卵しないように抑える(排卵抑制)+③卵子を成熟させる(トリガー)、の3段階
みなさん、こんにちは。知りたいけれど、どこかに書いていそうで書いていない内容を解説する、生殖医療解説シリーズ、今日も番外編です。体外受精においては、自然周期、低刺激、高刺激等の方針があります。中には完全自然周期とか中刺激という用語を使う場合もあります。意外かもしれませんが、これらは、各クリニックあるいは医師が独自に表現・分類しているだけで、「こういうものを低刺激といいましょう」とか、「こういうのを中刺激といいます」という共通の明確な定義はありません。例えば、クロミッドだけを内服
様々な治療の甲斐があって、無事に妊娠されたあとも、不安は尽きないことでしょう。エコーの時、診察の時に、皆様口々に「大丈夫ですか、順調ですか」とご質問されます。実際には妊娠中の発育は個人差が大きいのですが、意外と知られていないのは、体外受精児の妊娠初期の発育は、自然妊娠のそれと比べて数日程度(筆者の個人的な主観だと3~4日)遅めに見えることが多いことです。体外受精児が小さいというよりも、週数算定上の差なのかも知れません。ちゃんととったデータではありませんが、現場の実感としては、胎嚢(G
今日は、採卵あれこれについてお話しようと思います。一般論と、リプロダクションクリニック固有の準備を混ぜてお話しますが、どの施設も似たようなことはしていると思いますので、上手にお読みください。さて、患者さんにとって採卵は排卵誘発剤の使用(卵巣刺激)に始まり、採卵2日前の夜のトリガー(点鼻薬やhCG、オビドレル)、そして採卵日を迎えます。採卵日が決定すると、システムに採卵決定者が続々と登録されてきます。稀に採卵が前日決定することもありますが、基本的には採卵は2日前の夕方に人数等が出そろいます
連続投稿頑張ってます♪こんばんは、めーたんです(・ω・)今日は採卵2日前のHCG注射の日です。<HCG注射とは>採卵までにため込んだ卵胞を成熟させるための大事な注射(トリガー)で、採卵の要となる注射。絶対に忘れてはいけない。採卵2日前の22~23時指定で行われます。HCG注射はいつものことなのですが、今回、お薬の種類が違ったのでご紹介しますね。リプロ大阪では今年の5月くらいから使っているそうです。東京では最近変えたのかな?
卵巣機能が低下している場合に何かできることはありませんか、という質問は毎日のように外来であります。様々な選択枝の中には、医学的根拠は比較的あるもの、乏しいもの、賛否があるもの、特定の人が推奨しているだけで賛否があるとさえ到底言えないようなもの、完全な詐欺デタラメ、など様々なものがあります。各クリニックには各クリニック独自の推奨基準があることが通例ですが、クリニックごとに言うことが違う上、それに加えてサプリメント関連会社、漢方専門薬剤師、鍼灸師、その他自称専門家が、色々なことを吹き込んでくる
今日は、甲状腺機能低下症や、潜在性甲状腺機能低下症の際に使うチラーヂンSについて、豆知識をまとめてみたいと思います。(以前の記事の再掲(パクリ)もあります)甲状腺刺激ホルモン(TSH)は、妊娠を希望する女性は2.5μIU/mL未満であることが望ましいとされています。なお、「妊娠を希望する女性ではない人」は、4.0もしくは5.0μIU/mL未満であれば大丈夫です。「もしくは」ってなんじゃ、という話ですが、実は甲状腺測定装置(測定方法)により同じ血液でも異なった検査値が出ることが広く知られ
今日は空胞のお話です。採卵は、またの名を「卵胞吸引術」と言い、卵胞(卵子が入っていると思われる液体の袋)に針を刺して卵子と液体を一体的に吸い、その液体の中に卵子があるかどうかを顕微鏡で確認する(検卵)する一連の流れのことを言います。以前も書いたことがありますが、卵胞1個は20mm(2cm)、卵子は0.1mmですが、例えのために5倍に拡大してみると、直径10cmの水風船に0.5mmの透明タピオカを入れて、風船にストローを刺して、中の水ごと0.5mmの透明タピオカを吸引する、みたいなミッ
みなさんこんばんは。知りたいけれど、どこかに書いていそうで書いていない内容を解説する、生殖医療解説シリーズレギュラー編としては第22回となります(トータルでは38編目)。過去ログもぜひご覧ください。さて、今日は受精について解説いたします。受精というと、本当は、減数分裂の起こり方など何回読んでもいまいちよく分からない部分を避けて通れないのですが、生殖医療解説シリーズは実践重視なので、敢えてそこは避けて通り、結局、よく見るあの記号は何を意味するのか、どういう受精結果だと結局どうなのかという
現在、NIPTは、認可施設、無認可施設で行われています。認可施設は、日本産科婦人科学会の規制内での検査施設、無認可施設はそれ以外の施設です。認可のNIPT施設は、良くも悪くも原則として30分以上のカウンセリング、施設側にも様々な制約が課され、ハードルは高い上、検査項目や検査施設も限られますが(基本的には13、18、21トリソミーのみ検査可能)、結果説明は対面で行われ、十分な知識を有する専門スタッフによるカウンセリングが保証しています。無認可施設の開設者は、そもそも産婦人科医や小児科医ではない
このブログをお読みの方でAMHを知らない方は恐らくほぼおられないと思いますが、このAMH(抗ミューラー管ホルモン)が、実は性分化と密接な関連があることをご存じの方は多くないかもしれません。ヒトの性別は性染色体により決定されます。染色体は全部で46本あり、1~22番が2本ずつ(合計44本)の「常染色体」に加えて、性染色体2本が「XX」だと女性、「XY」だと男性です。いきなり脱線しますが、染色体の表現は46,XX、46,XYと書きますが、これは、46本に加えてXXで合計48本という意味ではなく
以下のような質問をコメントでいただきました。【質問】「いつも拝読し勉強させてもらっています。お聞きしたいのですが、クロミッドは未破裂卵胞ができやすいということはありますか?私はクロミッドのみの低刺激で採卵していますが、採卵後、次のD3で巨大な卵胞があってキャンセルということが2回ありまして…(42㍉でE2が1200/30㍉でE2が900)。たとえばレトロゾールに変えたら出なくなりますか?」【回答】俗にいう「遺残卵胞」に関するご質問です。自分で言葉を出しておいてなんですが、「遺残卵
「ベストの時に治療したいんです」と、外来でよく言われる。もちろん医師もそのつもりで治療を提供しているが、時としてこれがなかなか難しい。そもそも、治療は予想通り行くものなのか。例えば人工授精。今まで4回やったが結果出ず、今回5回目の人工授精、ところが、今まであんなによかった精液所見が今回は全くいいところなし、内膜も今一つ、今回はだめかな・・・と言っていたら妊娠ということが時々ある。もちろん、データ上は、精液所見が良い方が人工授精の妊娠率も良いのは間違いないとしても、たまたま何かの運命の
みなさん、こんばんは。今日は妊活と食事についてお話しします。巷には、〇〇が妊娠にいい、〇〇がダイエットにいい、という情報が溢れていますが、食べ物に限らず、情報の取捨選択は本当に難しい。まず第一に、その情報の信憑性自体が疑われる場合があります。例えば、ある栄養素を絶賛し、様々な角度から根拠を示したかのように見えるサイトがあったとしても、一番下に、「でも食べ物から取るのは大変、そんなあなたに、〇〇社の△△サプリ!今なら1ヶ月分無料進呈!」とか書いてあったら、まあ一応ウソではないんでしょ
みなさん、こんばんは。少しお久しぶりになりますが、今日は、月経中に見えた卵胞を採卵することの是非についてお話してみようと思います。卵巣機能が正常で月経不順がなければ、通常は月経中には育っている卵胞はありません(10mm未満が正常)。月経周期が短い場合(おおむね26日未満の場合)、月経3日目ごろにはすでに11~12mmくらいの卵胞が見えることもありますが、この程度であればあまり大きな問題にはなりません。しかし、月経3日目ごろに、18mm~20数mmの「卵胞のようなもの」が見えることがあります
こんばんは。今宵、第三弾をお送り致します。金田歩美です。多くの方々に読んでいただけて感謝ばかりです。コメントのみでなく、診察などでもお声がけいただきありがとうございます。この場をお借りしてお礼申し上げます。🐧先生もあたたかいコメント頂戴し大変喜んでおりました(最近少しスリムになられました!お気づきになられた方はいらっしゃいますか?)。本日は、ぼんちゃんこと大原康弘先生です。先日の夕食は松林先生と餃子の王将、餃子にビール🍺!くうううぅ・・・・といいたいところですが、烏龍茶。彼はお酒が一滴も飲
みなさんこんばんは。知りたいけれど、どこかに書いていそうで書いていない内容を解説する生殖医療解説シリーズ、今夜も番外編です。移植の方法については、色々なクリニックや、色々な医師が、色々なことを書いています。多胎のリスクがあるから移植は絶対1個、というクリニックもあれば、許容範囲内での複数個移植に比較的寛容なクリニックもあります。2個以内の移植に限っても、バリエーションとしても初期胚1個移植、初期胚2個移植、胚盤胞1個移植、胚盤胞2個移植、2段階移植(初期胚+胚盤胞移植を中1日で2回行う
前回の採卵では無事に凍結胚ができましたが今周期は調子がイマイチなので移植は見送り。お休み周期です万全な体調で移植に臨みたいですもんね移植に際して、近頃、リプロ患者さんのブログでよく目にするラクトフェリンなにそれ?私にも関係あるの?ないのラクトフェリンは糖タンパク。鉄を含んで赤っぽく見えることから赤いたんぱく質などと呼ばれる。母乳などにも含まれる成分で、私たちはサプリで効率よく取ることができます。では、何のために取るのか?子宮内フ
松林医師のブログや、他の医師ブログで解説されているこの記事ですが、以前よりこうしたデータはありましたが、なかなか信じていただけません。少し解説を加えていきたいと思います。『☆胚移植の技術:新人vs.ベテラン』本論文は、胚移植の技術について新人とベテランの成功率(妊娠率)についての報告です。FertilSteril2022;117:115(米国)doi:…ameblo.jp胚移植は、技術的には卵管造影や人工授精と同じで、子宮内にチューブを入れるだけです。経腹あるいは経腟
よくあるご希望に、「(胚移植において)2個移植はできますか」というものがあります。特に日本においては、単一胚移植を是とする流れが強い傾向にあります。体外受精が始まったばかりの黎明期において、凍結技術がまだなかったり、あっても未熟だった頃は、技術的に未熟で妊娠率も高くなかった時代的背景と移植も凍結もできない胚は廃棄するしかなかったこともあり、2個はもちろん、3個、4個移植などは当たり前のように行われていました。筆者が産科で研修をしていたころは、ふたご、三つ子、四つ子、五つ子の妊婦さんが
これから採卵の時、あるいは判定陰性時に、「何かできることはないでしょうか」とよく質問されます。他院は分かりませんが、少なくとも当院では、ある程度のことは初診時から着々と検査を進めておりますので、実際には、質問があった時点で、さらに何か残っていることがさほどあるわけではないのですが、馬鹿正直に「大体対策していますので、特に新しいものはないです」と答えるのもイケてないし、かといって、質問された段になって急にあれこれ説明し始めるのも何か違うわけで、気の利いたことを一言二言コメントして、最後に励ま
こんばんは。今日は、月経中に、いわゆる「遺残卵胞」がある場合や、小卵胞数が少ない場合についてお話します。遺残卵胞とは正式な用語ではなく俗語であり、様々な場合があり、1つの状態を示すわけではありません。そして、それぞれについて対応が異なることはすでに何度か解説してきました。(正式な用語ではないため、""あるいは「」で囲ったり、いわゆる、と断り書きをつけたりしています)『「遺残卵胞」(生殖医療解説シリーズ7)』みなさんこんばんは。知りたいけれど、どこかに書いていそうで書いていない内容
みなさん、こんばんは。今日は、採卵計画の全容の続編です。(過去ログは、採卵計画の全容、月経前の調整はE2製剤かピルかカウフマンか、それとも何もなしか)の続編です。ちょっと飛んで今日は排卵抑制についてお話します。以前にも書いた通り、卵巣刺激には、①採卵周期開始前②採卵周期開始の時期(方法)③卵巣刺激④排卵抑制⑤トリガーの5つの柱があります。低刺激とか刺激周期(高刺激)とか自然周期とかいうのは③の区別です。ランダムスタート法や遅延スタート法は②の区別です。これに対し