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様々な治療の甲斐があって、無事に妊娠されたあとも、不安は尽きないことでしょう。エコーの時、診察の時に、皆様口々に「大丈夫ですか、順調ですか」とご質問されます。実際には妊娠中の発育は個人差が大きいのですが、意外と知られていないのは、体外受精児の妊娠初期の発育は、自然妊娠のそれと比べて数日程度(筆者の個人的な主観だと3~4日)遅めに見えることが多いことです。体外受精児が小さいというよりも、週数算定上の差なのかも知れません。ちゃんととったデータではありませんが、現場の実感としては、胎嚢(G
知りたいけれど、どこかに書いていそうで書いていない内容を解説する、生殖医療解説シリーズ、今日では番外編です。「ホルモン補充周期と自然周期の凍結胚移植はどちらが妊娠率が高いか」という、永遠のテーマをお話ししようと思います。まず初めに、相当誤解が多いので、最初に用語の整理をしておきますが、ホルモン補充周期とは、エストロゲン製剤で排卵を抑え、排卵しない形にして、黄体ホルモンは全て薬で補う方法のこと、自然周期とは、ホルモン剤の有無にかかわらず、排卵を起こして排卵後〇日後という形で移植する周期
あくまでも公式ブログなので、特定の薬剤についてあれこれ書くのは禁じ手であると思ってはいるが、面白い薬なので今日はルトラールとデュファストンについて語ってみようと思います。黄体ホルモンには、投与経路の分類では、膣坐薬、筋注、内服の3種類があり、内容的には①天然型プロゲステロン製剤と、②合成黄体ホルモン類似物質に大別されます。ここで、黄体ホルモン剤については、こちらの過去ログを再掲します。①天然型黄体ホルモン(プロゲステロン)製剤基礎体温は上昇し、P4の検査結果として反映します。【膣
みなさんこんばんは。知りたいけれど、どこかに書いていそうで書いていない内容を解説する、生殖医療解説シリーズも、今日で第11回となりました。さて、昨日のお知らせで、ゴナピュールが、uFSH注用「あすか」に名称変更したとご説明しましたが、この「u」とは何か。今日は、HMG製剤についての解説です。まずは、基本的な解説ですが、卵巣の卵胞発育は、脳からのホルモンによって起こります。卵胞を育てるホルモンがFSH(卵胞刺激ホルモン)で、LH(黄体化ホルモン)と二人三脚で卵胞発育に関連します。悪者にさ
みなさんこんばんは。知りたいけれど、どこかに書いていそうで書いていない内容を解説する、生殖医療解説シリーズも、今日で第7回となりました。バックナンバーもぜひご覧ください。月経中にみられる、ある程度大きな卵胞のようなものを、「遺残卵胞」という言い方をすることがあります。今日は、この「遺残卵胞」について解説いたします。日本産科婦人科学会刊行の産科婦人科用語集には、「遺残卵胞」という言葉はありません。というのも、「月経中にみられる、ある程度大きな卵胞のようなもの」は、実際には、色々な内容の
みなさんこんばんは。知りたいけれど、どこかに書いていそうで書いていない内容を解説する生殖医療解説シリーズ、今夜も番外編です。移植の方法については、色々なクリニックや、色々な医師が、色々なことを書いています。多胎のリスクがあるから移植は絶対1個、というクリニックもあれば、許容範囲内での複数個移植に比較的寛容なクリニックもあります。2個以内の移植に限っても、バリエーションとしても初期胚1個移植、初期胚2個移植、胚盤胞1個移植、胚盤胞2個移植、2段階移植(初期胚+胚盤胞移植を中1日で2回行う
みなさんこんばんは。知りたいけれど、どこかに書いていそうで書いていない内容を解説する、生殖医療解説シリーズ、今日で第14回です、今夜はFSH調節法後編です。だいぶ引っ張ったので、皆さまのご期待の応えられる記事になったか非常に心配ですが、、、はじまりはじまり。前編では、視床下部下垂体系からの命令を卵巣が受けて働くことをご説明しました。要旨としては、卵巣は、脳の視床下部・下垂体系からの指令(主にFSHの分泌)により働く(卵胞が発育する、E2が分泌される)が、卵巣の働きが悪いと(卵胞発育不良、
みなさん、こんばんは。ふと、生殖医療解説シリーズを半月も書いていないことに気づきました。最初からこのブログをお読みではない方もおられると思いますが、このブログは一定の更新頻度を守るのではなく、筆者が心から書きたいと思った題材ができた時に書き始め、納得のいく記事ができた時だけアップする、というスタイルで行きたいのです。が。半月はちょっと長いです。これでは読者離れしてしまう。どうしよう。ということで、今日はニーズな高そうな題材に挑戦してみました。過去記事でも類似記事は書きましたが、今日の題材は
着床の窓についての記事をアップしたところ、ご質問がありましたので回答します。Q)自然周期で着床の窓の検査をしてずれなしの人がホルモン補充で移植しても、やはりずれなしとなるのでしょうか?自然周期で着床の窓けんさをして、ずれがなく、自然周期で移植をし一度陽性が出ています。流産してしまいましたが、その後自然周期で何度移植しても陰性が続き、ホルモン補充の移植を試してみようかと思うのですが、その場合はまたホルモン補充の周期での着床の窓の検査をした方が良いのでしょうか?とても疑問に思いメッセージをさせてい
みなさんこんばんは。卵巣刺激法とその薬剤今日は後編です。③トリガーまず初めに、卵の核成熟についておさらいしましょう。このように、顕微鏡で形態学的に確認できる卵の成熟のことを、卵の核成熟といいます。結構勘違いしている人が多いのですが、採卵36時間前のLHサージ(トリガー)よりも前は、ほぼ全てがGV卵(超未熟卵)です。卵子の中に、核小体を持つGV(germinalvesicle、日本語訳では胚胞という)があり、顕微鏡で確認できます。卵胞が発育してくることを「卵胞が成熟」すると言っちゃっ
皆さんこんばんは。知りたいけれど、どこかに書いていそうで書いていない内容を解説する生殖医療解説シリーズ、今夜のテーマは多嚢胞性卵巣症候群です。あちこちに解説記事がたくさんありますが、どこまで興味深く切り込めるか、今夜もお楽しみください。多嚢胞性卵巣症候群(PCOS:polycysticovarysyndrome)は、月経不順や排卵障害の代表的な原因の1つであり、全女性の7%程度いると言われています(筆者の主観だともう少し少ない気もしますが)。ここで、いきなり脱線しますが、「〇〇症候群
みなさんこんばんは。知りたいけれど、どこかに書いていそうで書いていない内容を解説する、生殖医療解説シリーズも、今日で第12回となりました。こんなご時世は勉強がはかどる、今夜も「生殖医療解説シリーズ」をよろしくお願いします。まずは、おさらいですが、日本産科婦人科学会は、次のように定めています。「生殖補助医療の胚移植において、移植する胚は原則として単一とする。ただし、35歳以上の女性、または2回以上続けて妊娠不成立であった女性などについては、2胚移植を許容する。治療を受ける夫婦に対して
みなさんこんばんは。知りたいけれど、どこかに書いていそうで書いていない内容を解説する、生殖医療解説シリーズ、今日で第16回です。なお、スーパードライのネタは番外編に変更しました。私たち医師は、どのように卵巣刺激を選んでいるのか。もちろん、最終的には個人の体質や治療歴によって大きく変わりますが、今日は雰囲気だけでも分かっていただければ。そもそも、卵巣刺激には、①卵胞を育てる(卵巣刺激・排卵誘発)+②育った卵胞を排卵しないように抑える(排卵抑制)+③卵子を成熟させる(トリガー)、の3段階
みなさんこんばんは。知りたいけれど、どこかに書いていそうで書いていない内容を解説する、生殖医療解説シリーズも第21回となります。今夜は、少し大きなテーマで書いてみたいと思います。まずは用語の整理から。受精とは、卵子の中に精子が入り、融合して細胞分裂可能な状況になる(いわゆる正常受精卵になる)ことをいいます。英語では、fertilizationです。これに対して「授精」("てへん"がつく)は、文字通り精子を授けるところまでの作業のことを言います。人工授精は、子宮内に精子を授けるから人工「
みなさんこんばんは。知りたいけれど、どこかに書いていそうで書いていない内容を解説する、生殖医療解説シリーズも、今夜で第15回となりました。あんまりメジャーな話題ばかり先に出し過ぎると、誰も読んでくれなくなるかなと思って温めていた定番ネタですが、そろそろ出してみようかな、ということで、今夜も「生殖医療解説シリーズ」をよろしくお願いします。そもそも、自分で出した題名に噛みつくのもなんですが、「体外受精(IVF)と顕微授精(ICSI)は、どちらが"確率"が高いか」なんて、問題設定が曖昧です
みなさんこんばんは。知りたいけれど、どこかに書いていそうで書いていない内容を解説する、生殖医療解説シリーズ、今夜もよろしくお願いします。最近、番外編が多いですが、今日も番外編です。今日は便秘についてです。女性と便秘は実は切っても切れないもの。では、どんな時に便秘になりやすいのでしょうか。答えは、「黄体ホルモンが高い時」です。排卵後、採卵後、ホルモン補充周期で黄体ホルモン開始後、黄体フィードバック法でルトラール等を内服中、妊娠後などがそれに該当します。排卵後は浮腫(むく)みやすく、水分吸
よく、採卵を早めに、遅めに、などと言ったりしますが、質問や相談、あるいは誤解もある部分なので、今日は採卵のタイミングが早い、遅いについてお話したいと思います。刺激周期(高刺激)ではしっかり排卵抑制(排卵しないように抑える薬)をしますので、排卵しやすい体質であるか、薬が効きにくい体質とか、その周期の治療がたまたま合わないとか、運が悪い周期とか、担当医がイケてない等以外は、排卵抑制を併用しながら刺激する限り、卵胞が40mmくらいまでなら、排卵させないまま刺激を続けることができます(体質やその周
みなさんこんばんは。知りたいけれど、どこかに書いていそうで書いていない内容を解説する生殖医療解説シリーズ、今夜はレギューラ編第22回、卵巣過剰刺激症候群(OvarianHyperStimulationSyndrome:OHSS)です。さて、前回の番外編で、副作用が許容範囲内である限り卵子は採れれば採れるほどよい、と解説しました。OHSSのリスクを100%完全に回避できるならば、刺激(HMG、uFSH、rFSH)の量が増えても結果的に採れた卵子の量が増えても卵子の質は下がることはなく
今日は空胞のお話です。採卵は、またの名を「卵胞吸引術」と言い、卵胞(卵子が入っていると思われる液体の袋)に針を刺して卵子と液体を一体的に吸い、その液体の中に卵子があるかどうかを顕微鏡で確認する(検卵)する一連の流れのことを言います。以前も書いたことがありますが、卵胞1個は20mm(2cm)、卵子は0.1mmですが、例えのために5倍に拡大してみると、直径10cmの水風船に0.5mmの透明タピオカを入れて、風船にストローを刺して、中の水ごと0.5mmの透明タピオカを吸引する、みたいなミッ
ジェネリック医薬品、飲んだことありますか。ジェネリックとは、後発医薬品のことで、いわゆる新薬(先発薬)の特許が切れる10年後から、特許切れの有効成分を使って発売される安価な薬のことです。以前は、10年たつと色々な薬がゾロゾロ出てくるので「ゾロ」「ゾロ薬」などと呼ばれたりもした。ジェネリックは先発薬と比べて同じ有効成分で効能・効果、用法・用量が原則として同一とされている。しかし、主成分が同じというだけで、副成分や剤型、製造方法が完全に同じとは限らないので外見も違うし、人によっては効き目が違う
4月から体外受精が保険になるらしいのですが、現場にはネットニュースレベルの情報しかおりてきていません。外来でも色々ご質問があるのですが、そもそもこんなペースで本当に4月から保険になんてできるんでしょうかね、というのが本音。もちろん、色々知ってる人は知ってるだろうし、水面下では色々準備は進めていることでしょうけれども、その全容はほとんど見えて来ません。そこで、今日は体外受精が保険になったらどうなるのかについてお話したいと思います。なおこのブログは公式ブログではありますが、本記事に関しては当ブ
みなさんこんばんは。知りたいけれど、どこかに書いていそうで書いていない内容を解説する、生殖医療解説シリーズも、今日で第8回となりました。バックナンバーもぜひご覧ください。今日は、新鮮胚移植と、それにまつわるホルモン動向についてお話しいたします。一般的に、新鮮胚移植よりも凍結融解胚移植のほうが妊娠率が高いと言われていますが、これにはいくつか理由があります。凍結すると胚のグレードがよくなるわけではなく、凍結融解胚移植のほうが、着床環境がよいことに起因します。①クロミッドの影響
今日は子宮内膜についてです。以前にも子宮内膜について書いておりますので、もしまだの方はぜひご一読ください。子宮内膜(生殖医療解説シリーズ番外編12)さて、今日は子宮内膜が薄い時についてです。一言で子宮内膜が薄いといっても色々な場合があります。では、どういう時にどういう対処をすればよいのでしょうか。①子宮内膜を薄くする状況がないか確認新鮮胚移植を予定しているのに長期多量のクロミッドを使っているような場合は見直します。②E2製剤の増量ホルモン補充周期で移植している場合、
昨日は大原先生の記事をアップしたが、大原先生が書くといつもいっぱいいいね!が来る上、アクセスも増えるんですよね。いいなあ。「皆様の癒しはなんでしょうか」なんて書いてましたが、私たちの癒しは、大原先生、あなたです。これからもずっとずっと、笑顔が素敵で、いつも優しくて、でもすっごく頭が良くて、とっても頼りになる大原先生でいてくださいね!このくらい持ち上げておけば、また1か月後くらいにはもう1本記事かいてくれるかな。では本題に。今日は昨日の続きでAMHや卵巣機能についてです。外来でよくある質
みなさんこんばんは。知りたいけれど、どこかに書いていそうで書いていない内容を解説する、生殖医療解説シリーズレギュラー編としては第22回となります(トータルでは38編目)。過去ログもぜひご覧ください。さて、今日は受精について解説いたします。受精というと、本当は、減数分裂の起こり方など何回読んでもいまいちよく分からない部分を避けて通れないのですが、生殖医療解説シリーズは実践重視なので、敢えてそこは避けて通り、結局、よく見るあの記号は何を意味するのか、どういう受精結果だと結局どうなのかという
冬になるとよくある質問が「基礎体温が低い、上がらない」というもの。え、冬になるとってなんじゃい、と思うなかれ、ちなみに春になるとこういった質問はパタっと減ります。考えてみてください。お好みにもよりますが、夏と冬で寝室の温度なんて下手すりゃ10℃近く違うんですから、口の中の温度が影響受けないわけないです。そもそも、黄体期不全(黄体機能不全)って信用できるのか。もちろん、排卵後のP4の値が低い方はいるし、体温上がらない方もいるけど、そもそも季節によって体温違う方も少なくないし、P4は、基
以前のブログで、理論上ではこうであるというようなことは必ずしも実測統計と一致しない(理論が実態を忠実に示すとは限らない)、ということを説明しました。理論的にはこうなるはずなんだけど、実際にには、そうではない、ということは医療に限らず世の中いくらでもあります。もちろん、実測統計も、その統計の取り方によって簡単に結論がフラフラしますので、実測統計が常に真実というわけでもありません。例えば、吉野家と松屋はどっちが美味しいか、セブンイレブンとファミマはどっちが人気があるか、スーパードライと一
みなさん、こんばんは。今日は妊活と食事についてお話しします。巷には、〇〇が妊娠にいい、〇〇がダイエットにいい、という情報が溢れていますが、食べ物に限らず、情報の取捨選択は本当に難しい。まず第一に、その情報の信憑性自体が疑われる場合があります。例えば、ある栄養素を絶賛し、様々な角度から根拠を示したかのように見えるサイトがあったとしても、一番下に、「でも食べ物から取るのは大変、そんなあなたに、〇〇社の△△サプリ!今なら1ヶ月分無料進呈!」とか書いてあったら、まあ一応ウソではないんでしょ
現在、NIPTは、認可施設、無認可施設で行われています。認可施設は、日本産科婦人科学会の規制内での検査施設、無認可施設はそれ以外の施設です。認可のNIPT施設は、良くも悪くも原則として30分以上のカウンセリング、施設側にも様々な制約が課され、ハードルは高い上、検査項目や検査施設も限られますが(基本的には13、18、21トリソミーのみ検査可能)、結果説明は対面で行われ、十分な知識を有する専門スタッフによるカウンセリングが保証しています。無認可施設の開設者は、そもそも産婦人科医や小児科医ではない
皆さんこんばんは。よくある質問は、生殖医療解説シリーズ番外編に分類していましたが、独立したテーマとして書いていきたいと思います。Q7)採卵周期中に出血がありました。生理でしょうか、大丈夫でしょうかA7)採卵周期中の出血は、①ホルモン剤の筋肉注射(プロギノンデポー、ペラニンデポー)を打ったあと②エストロゲン製剤を使っていたがやめた③卵胞がなかなか育たないまま2週間以上たったのいずれかであることが多いのですが、そもそも卵巣と子宮は別臓器であり、卵巣とは別の子宮からの出血は、全て、