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ミナちゃんとヤスハちゃんの公園デビューは、東京都下にある井の頭公園に行くことが決まった。そこで、まだ人出の少ない土曜日の早朝に行き、中央にある大きな池の周りを散歩することにしたのだ。当日は、河合が自分の車に新AIを乗せて出発し、途中で井上とAIを同乗させて公園まで向かった。「やあ、井上。今日は面白いことになりそうじゃないか」「僕もそう願っているよ。だから、ミナちゃんたちが歩き易い道であって欲しいよ」公園の近くにある駐車場に着くと、まだ早い時間だったおかげですぐに車を止めるこ
河合が新AIの『ヤスハちゃん』と暮らし始めてから一ヶ月近くが過ぎていた。「トモ君、お早うございます。急がないと会社に遅刻しますよ!」「ヤスハちゃん、オレはもう会社に行かなくても良いのだよ…」河合はベッドの上で体を丸め、薄いかけ布団の中にかくれてしまった。「トモ君、駄目ですよ。アッ君とミナちゃんとの約束になっているはずですよ」「まいったなあ…。あの二人は少し真面目すぎるよ。もう給料なんていらないはずなのに…」「トモ君、今の状況はいつ破綻しても仕方がないから、しっかりと社会的
井上の勤める食品会社では、今年度の売り上げが思いのほか伸びていないので、新商品を開発して売り上げのテコ入れをしようという事案が決まっていた。これに伴い、井上の所属する開発企画部には新商品の案を早急に出せと言う命令が下されていたのである。そこで、ここ数日の間は開発企画部の社員が集まっていろいろと案を出し合ってきたが、なかなか良いアイデアが思い付かないでいた。その上、井上には係長としてこの新商品の企画を発案する担当が任されていたのだ。この課題の出口が見えないまま一日が終わった井上は、不安
井上と河合には、特許で儲けたお金の使い道を紹介する外部からの接触が絶えず続いていた。井上は、この対応のすべてをAIに任せていたので、二日に一度の割合でその報告をAIから聞くだけになっていた。そもそも、このような投資話には基本的に耳を傾けないことにしていたのだ。ところが、一方の河合には、手が空いたときには今でも絶えず投資話に耳を傾けている疑いがあることがわかった。そのため、このまま放っておくと前と同じような事件が再び河合に起こってしまう、という心配が出てきたのである。そこで、井上はA
井上たちが電子申請した特許の内容は次のようなものであった。『新しく発見された金属と白金を貼り合わせると、白金が触媒となってその金属は高エネルギーの電子を放出してエネルギーレベルの低い物質に変わろうとする性質が見つかった。これより、貼り合わせた触媒の白金とその金属から導線を引き出し、その間に電気機器をつなぐと、その金属から白金に向かって電子が移動することでこの回路に電気が流れるのである。電気機器を通って電位の低くなった電子がその金属にもどることでこの反応は継続し、その金属がエネルギーレベ