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「随分と伸びましたわね・・・マヤさんの髪も。」某コスメブランドの夏のイメージキャラクターに決まったマヤのスチール写真を執務室で眺めていた真澄に、秘書の水城が珈琲を差し出しながら話しかけてきた。「肩を超えるには、まだ数ヶ月はかかるだろうな・・・」「早く伸びて欲しそうですわね。」「・・・マヤに聞いたのかい?」「ええ。」この前マヤと食事をした時に、思わず零した真澄の本音をどうやら水城はマヤから聞いたらしい。〜君の髪が肩まで伸びてから、、、なんて約束するんじゃなかった・・・君と早く一緒に暮
二月になって日本列島を寒波が襲った。ビルのガラス越しに見上げる空は昼でも暗い。強い風に舞ってガラスに叩きつけられる雨はいつもと違って雪や氷混じりだ。暗鬱とした空模様に真澄は憂鬱な溜息をついた。紫織との婚約は正式に解消できた。ビジネスへの影響は幸いにして危惧したほどではなかった。そんな大都が経営危機に陥るかもしれなかったリスクを冒してまで婚約解消を強行したのは、真澄の中のマヤの存在が誤魔化しきれないほどに大きくなって、心が窒息してしまいそうになっていたからだ。だが、何もかもが順風満帆
MorningSickness・・・昔、ハーバードに留学していた頃、学生結婚をしていた友人の奥さんが妊娠して、悪阻が酷くて大変だと、その友人が話していたことを思い出した。俺はその時、何故悪阻が"MorningSickness"と言われるのか、ピンと来なかった。ただ、当時は興味も無かったからその時の疑問は放置されたままだったのだが、今になってその意味がようやくわかった。マヤが二人目の子供を身籠った。もちろん俺の子だ。この前マヤに告白されて、感激のあまり不覚にも涙が出てしまったが
◇止まった時間あの娘ももう二十五歳・・・。今や、日本を代表する女優だ。紅天女の成功を機に、演劇界にその名を轟かせ、今ではその活躍は国内には留まらない。ちょうど彼女が二十二歳になった時、ロンドンの高名な演出家の目にとまり、シェイクスピアの舞台に立つことになった。女性版ハムレットの主演を務めたが、弱冠二十二歳にして、重厚なシェイクスピアの世界を見事演じ切った彼女に世界は驚愕し、惜しみない称賛を送った。その年のイギリスの演劇界のアワードの主演女優の賞は、日本から海を渡ってきた女優、北島マヤ
◇紡がれる未来幸せだった・・・とマヤは言った。マヤにとって俺は、最初で最後の男と決めた存在だった。きっかけはどうであれ、俺に抱かれた事で、マヤは潔く身を引く決心がついたのだと言う。そして渡英し、暫くして子を身籠った事が分かった時、マヤは何があってもこの生命が欲しいと思った。だから誰にも知られる事なく、必死に身体を守り、それでも舞台には何の影響も見せずに、ひっそりと怜を産んで、育ててきたと、マヤが教えてくれた。たった一人、世間に疎いマヤが、遠い外国の地で、必死になって俺への愛を貫き、守
一月三日・・・この日は毎年、大都グループの賀詞交換会と新年のパーティーが午後零時から帝都ホテルで催される。大都芸能からは、事業部長以上の社員と一定以上のランクの俳優タレントたちが招かれる、年中行事の事始である。紅天女の正式後継者となり、再び大都芸能とマネージメント契約を交わしたマヤにとって、今回が初めての出席だった。去年の年の暮れ、紫の薔薇の人から届いた一揃えの晴れ着。紅梅と白梅を大胆に配した古典柄の京友禅大振袖だ。帯は西陣の一点物で、格調高い文様が金糸と銀糸で織り込まれている。この
ある日、紫の薔薇の人に君から誕生日プレゼントが届いた。君が十五歳の秋のことだった。何処の誰かも、名前も歳もわからないからと、君は『紫の薔薇の人の誕生日がきたら渡して欲しい』と、その思いを聖に託してくれたんだ。その年の11月3日に届いた君からの贈り物で俺の心がどれだけ暖かくなったか、君には想像もつかないだろな。あの時のことは今でもはっきり覚えている。薄紫色のラッピングを外して出てきたのは、カシミヤの淡いベージュのマフラー。バースデーカードには、「貴方様のお誕生日がもし春や夏だったら、
ノーブルな空間で極上のワインと料理。そして目の前には婚約者(フィアンセ)が微笑んでいる。誰もが羨む光景の中に当然のように男もまた静かに微笑む。「真澄様・・・紫織は幸せ者ですわ。愛する殿方とあとひと月後には結ばれることができるんですもの。」「それは僕も同じですよ。」さらさらと流れるように紡がれる言葉に、躊躇いはない。自分はこの目の前の女性と結婚するのだ。その事に何の疑問も不安もありはしない。だが、どうしてか、心のどこかに感じる歪み。これは一体何なのだろう?その正体が分からない
二つの魂は、時間(とき)を超えて、海を越えて、今・・・ひとつになる。幾つもの眠れない夜を過ごして、辿りついた先にあったものは、どうしても忘れることができなかったたった一つの愛しき存在。LovingYou告げられぬ言葉が涙に変わってく散る間際の花が紅く燃える夏翼傷ついて空を飛べない小鳥のようこの街の片隅で泣いていたんだねIloveyou,Iloveyou髪を切れば忘れられるの?少女のままこぼれる涙君に贈る言葉はLovingYou三日月照らされて
薬指が痛い・・・。己の人生を鷹宮に縛り付ける結婚という名の契約の証である銀のリング。それは指だけじゃなく、真澄の心にも食い込んで、疼痛をもたらしていた。愛してもいない女とひとつのベッドに眠る苦痛は、想像以上だった。背後で息をひそめるようにして、自分を見つめる紫織の視線が痛い。どんなに遅くても、床の中で眠らずに待っている紫織の執念が、煩わしさを超えて恐ろしくもある。だから真澄はいつも、夜更けになってからしかベッドには入らない。どうしようもない程の眠気が来るまで、夫婦の寝室には行かずに
◇Prologueいつからだろう・・・これが恋と自覚したのは。紫の薔薇越しに君の笑顔を見ると、堪らなくこの胸が疼いた。その笑顔を俺に向けさせたい。君の瞳には俺だけを映し出したい。紛れも無い独占欲が俺に嫉妬という感情を押し付けてくる。君が笑いかけるもの全てを焼き尽くしてしまえば、君は俺を見てくれるのか・・・いや、愛してくれるのか。仄暗い気持ちが苦しくて、俺は人知れずに胸を押さえて喘いでいる。大都芸能の社長室。マヤはそこの主である速水真澄に呼び出された。最近はすっかりマヤがそこに
久しぶりにまとまった休みが取れる・・・とは言ってもたった三日間の休みだ。だが、大きな企業の社長職ともなれば、完全なオフなどなきに等しい。だから例え三日と言えども、速水真澄にとってはとても貴重な時間なのである。今もってなお、大都グループの総帥は速水英介となっているが、これはもう名義上の話だけであり、実質的には昨年末に株式会社大都の代表取締役社長に就任した速水真澄が大都グループの総帥としてその責務に就いていた。そしてこの休みは、真澄が大都芸能を退いてから初めての完全オフとなった。この三日の
北島マヤと速水真澄の二人が歩いてきた歳月。十年ひと昔と言うけれども、十年という歳月は人の人生において充分に長い。況してや、十代、二十代の若者たちにとっての十年は黄金にも代え難い大切な時間だ。その蒼い季節を、多くの涙に暮れながら、すれ違い、傷付けあって生きてきた二人が、やっとの思いで辿り着いた地・・・。けれど、そこは二人の安住の地ではなかった。互いの想いは確かめ合えた・・・確かにそこには愛があった。けれど、今以て二人は結ばれることは叶わない。二人の間には越すに越されぬ万里の天河が無情
今日もじゃんじゃんお薦めの「紫」(濃いピンクなどから褪色して紫ぽくなる系)でつるバラやシュラブとして使えるバラをご紹介します(^^)紫のつるバラ以外にも500品種以上ストックありますよ!↓Celestial-RosesオンラインショップニュイドゥヤンNuitsDeYoungベルベット赤~紫の小輪房咲き。名前は「ヤンの夜」の意味。その名の通り深いベルベットパープルに染まる。強健*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*
〜精密検査の結果、北島さんの病気は悪性リンパ腫と診断されます。今後、抗がん剤治療をしていきますが、北島さんの場合、初期段階の発見であり、自己骨髄の採取が可能です。抗がん剤でガン細胞を完全に死滅させたあと、自家移植といって、元気な自分の骨髄を体内に戻してやる治療法です〜紅天女の試演が終わり、後継者の座を手にしたマヤ。ある日、首の付け根に違和感を感じ、病院へいったところ、事態は思わぬ方向へと進んだ。痛みも何もなかったため、そんな生命に関わるような重病を宣告されるとは思いもよらなかった。幸
「君の無欲さは素晴らしい美徳だよ。でもな・・・。」「でも?」「君は、男心がわかってないよ。男は誰だって、惚れた女には何だってしてやりたいのさ。プレゼントだって、誰もが羨む程の最高のものを贈りたいと思うのは当然だろう。」「だからって、クリスマス、バレンタイン、誕生日ってその度にこんな高価なものいただくなんて。」「マヤ・・・君の恋人は誰だっけ?」「へっ?速水さん、何言ってるの?」「いいから答えて、マヤ。君の恋人は誰?」「は、速水真澄・・・さん、です。」「その、速水真澄という男
『大都グループ速水真澄引責辞任!鷹宮財閥の事業提携中止と令嬢縁談破棄!』いつだってマスメディアの見出しは、聴衆の興味を掻き立てるように、無責任かつセンセーショナルに書かれる。そんな事は百も承知・・・それでもマヤは週刊誌の表紙を忸怩たる思いで握りしめて、破り捨てた。世間は何もわかっていない。速水真澄という男の本当の姿を。わかって欲しいとは思わないが、興味本位で真澄について有る事無い事を実しやかに書くのは許せない。だが、それを言ったところで仕方がない事も、マヤはよくわかっていた。マヤ
幼い頃を過ごした横浜の街も、今では随分と変わった・・・。ある晴れた日の昼下がり、MM21の公園で、マヤはひとり静かに芝に腰を下ろす。横浜ベイブリッジ、インターコンチネンタルホテル、ランドマークタワー・・・あの頃にはまだなかった、様々な横浜の新しきシンボル達を眺めながら、マヤは時の流れを感じていた。「久しぶりに広い空を見たな・・・」騒めく都会の真っ只中、高層ビルの谷間の谷底のような灰色の街で、必死に生きる毎日。小さな身体が強いビル風に吹き飛ばされないようにアスファルトを踏みしめながら、小
真夜中の暗闇を走る・・・あの桜の下に君がいる・・・花が散る前に抱きしめなければ君が消えてしまう気がして・・・叶わぬ恋でも実らぬ愛でもこの気持ちは殺せない・・・この腕に君を抱きしめて夜の闇に溶けてしまおう・・・あの日から幾度となく見る夢。マヤを探して暗闇を彷徨い歩くと、夜の幻想に浮かぶ、齢(よわい)千年を超える淡墨桜の下に、彼女はいる。必死に近づいて触れようとしても、すぐに彼女は遠去かる。そして大きな幹を背に彼女を追い詰めて、やっとの思いで抱きしめても、温もりは留まることなく
Hijri'seyes...彼の方が、マヤ様を見初められて早十年の月日が経ちました。私は彼の方の代わりに、マヤ様に何度も紫の薔薇の花束や数々の贈り物をお届けしてきました。時に、マヤ様から彼の方のへの贈り物をお届けしたこともありましたね。その贈り物たちは、今も伊豆の別荘の彼の方の書斎に大切に保管されているはずです。凡そ、金で買えるものであれば、手に入れられないものはないであろう彼の方が、何よりも大切にしていらっしゃるのが、マヤ様からの贈り物なのです。私はずっと、お二人の片想いを側で見
焦れていた・・・。仕事のこと以外でこんなにジリジリと唇を噛むような思いなど、これまではした事なかったのに。マヤの二度目の海外公演・・・場所はベルギー王国ブリュッセル。以前、ベルギー王室の皇太子が来日した際、マヤの紅天女を観劇され、たいそう感激されて、「いつか我が国で海外公演を・・・」と言われて、それが実現したのだ。王室からの招聘で実現した今回の公演は、ヨーロッパでも話題となった。すでに大都にはヨーロッパの他の国から公演のオファーがいくつも来ている。数年後には欧州ツアーが実現するかもし
大都芸能社長室に、重苦しい溜め息が落ちる。溜め息の主はもちろん、この部屋の主人である速水真澄その人だった。今からほんの五分程前に、この部屋の扉を叩きつけるように閉めて出ていった彼女。長い黒髪を激しく揺らめかせ、飛び出していったその後姿が目に焼き付いている。近頃はすっかり彼女も大人びて、ぎこちなさは残るものの、二人の間には穏やかな空気が流れていたはずだった。真澄の若気の至りが引き起こした北島マヤの実母の悲劇の影が消えて無くなったわけではない。だが、マヤも大人になるにつれ、真澄ひとりに全
晩夏といいながら、まだその陽射しは肌を焼くように熱い。ぎらつく太陽を覆うのは真っ黒な雷雲。昔は「夕立ち」という風情ある古風な名で呼ばれていたそれは、今ではゲリラ豪雨と言われて、情緒の欠片もありはしない。今日は午後二時くらいからそのゲリラ豪雨に見舞われ、執務室のガラスに滝のように雨水が打ちつけられ、流れていた。その間も真澄は、外の嵐などには目もくれず、黙々と仕事をこなしていた。今の真澄にとって、仕事意外に心血を注げるものは何もない。義父の言うがままに鷹宮紫織との政略結婚とも言うべき婚姻
これから秋本番を迎える九月。半年前に大都グループ総帥となった速水真澄は、女優北島マヤと結婚をして三ヶ月の新婚真っ只中でありながら、結婚前と何ひとつ変わらぬ多忙な日々を送っていた。大都の総帥となればそれも致し方無しではある。一方マヤの方も、結婚の直後から連ドラの主演作の撮影が始まり、撮影もいよいよ佳境に入ってきていた。10月の番組改変期に最終回が2時間枠のスペシャルで放送されるが、今はそれを絶賛撮影中といったところだ。平均睡眠時間は4時間程度で、少しでも長く睡眠時間を確保するため、撮影現
梅の花薫る2月吉日。その日は、北島マヤ独立事務所立ち上げ披露と速水真澄との婚約披露パーティー。来る6月の株主総会での承認をもって正式に、大都グループの総帥となる速水真澄が引き続きマヤのマネジメントに携わるために設立された、北島マヤの独立事務所。公私ともに速水真澄と北島マヤが唯一無二のパートナーであることを世間に知らしめるためのセレモニー。この日を真澄はどれほど待ち望んだことだろう。叶わぬ夢と諦めた時もあった。挙句の果てに心神喪失状態になり、生きることさえ放棄しかけた真澄をマヤが救って
心に闇を抱える者は、そこに光を齎らす者に出逢った時・・・地獄で踠き苦む餓鬼に垂らされた釈迦の蜘蛛の糸の如く、それを己の手にしようとする。正義に抗い、時に人を傷つけ、最後は己までも傷つけて・・・。政略結婚で結婚して半年が経とうとしていた。結婚という名ばかりの無言劇を演じている真澄と紫織。紫織のたっての希望で、成城に居を構え、鷹宮家から遣わされている何人もの使用人に囲まれて暮らす毎日。息することすら煩わしくなる陰鬱とした朝を迎える真澄は、結婚に際して、全て紫織の希望を受け入れた。ただひと
愛するマヤが大好きな花・・・もちろんそれは俺が贈る紫の薔薇だ。マヤの舞台の千秋楽の日には必ず紫の薔薇の花束を持っていく。そして今日も。「速水さん、ありがとう。」マヤの満面の笑みが俺には何よりのお返しだ。「まだ夕食には少し早いが、出かけようか。」一ヶ月の公演の労を労う為に、俺はマヤを食事に誘う。「嬉しい・・・」予約した店に向かう途中、マヤが少し歩きたいと言い出した。「雨降ってるぞ。」できればこのまま車で済ませたい俺は後部座席のウィンドウから空を見上げて、マヤに言う。「だから歩
この胸の焔は、あの火の粉舞い散る炎よりも熱く、激しく燃えている・・・たとえひと夏で終わる恋だとしても・・・紅天女で彗星の如く日本の演劇界に衝撃を与えた北島マヤの、女優としての確固たる地位を築く事になった作品は一本の映画だった。許されぬ男との叶わぬ恋を描いた、“日本映画界の巨匠“伍代秀紀監督の『篝火(かがりび)』。その主演にマヤは抜擢された。足かけ二年の撮影期間の間、全てにおいて妥協を許さない伍代監督の要求に見事に応えたマヤ。業界関係者の間では、クランクアップを迎える前から、この伍代
私の愛する夫、速水真澄(真澄さん)は日本の最高学府を優秀な成績で卒業しています。そしてハーバードでMBAを取得して、今では大都のCEO。そんな超エリートの旦那様が私の横で、あんなにも緊張していたなんて、、、。時は遡り昨年の秋。私達の長男の怜が某名門の附属小学校の受験に挑戦した。小学校受験は親の受験とも比喩され、面接は本人だけの時間と両親を交えての時間がある。その時の真澄さんのあの緊張に満ちた横顔が今も忘れられないわ。どんな時でも沈着冷静でクレバーな彼ですが、私や子供のことになると時々
舞台・・・それはマヤにとっては日常の空間。様々な衣装を纏い、様々な人間の生き様を表現する。これまでもこれからもこうして自分は生きてゆくのだろうと信じて疑わない。今夜も黒沼のスタジオで舞台の稽古に励む。昨日から寒の戻りの花冷えで外は寒いのに、このスタジオの中は熱い。黒沼の情熱とマヤの情熱がぶつかり合い、ほかの役者達と情熱をもヒートアップさせてゆく。マヤの気迫と飛び散る汗は真夏の太陽のように眩しかった。午後6時。いつもならば、ここからが本番とばかりにより熱を帯びてゆく筈の黒沼の檄がピタ