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赤いカード……。数年前、世間を席巻した連続殺人事件。現場に残されていた赤いカードが特徴で、そこに描かれていたのが椅子の絵とSiriusという文字。この事件は不可思議なことが多く、被害者たちの接点も皆無。ただ共通するのは、赤いカードが残されていたという一点のみ。この赤いカードがミステリー好きを刺激し、警察が隠したにもかかわらず、どこからか出回り、カードのみが拡散していった。もうだいぶ風化した事件ではあったが、カードを見れば、誰もが思い出す程度に事件は連日、新聞紙面を賑わせた。そ
め、めずらしい……。あたしはコーヒーカップで顔を半分隠しながら、ボックス席を歩く店長を見つめる。こんな時間から店長がいるなんて、見たことない。しかも、その店長の仕事を、心配そうに見守る4人……。あれじゃ、仕事にならないんじゃない?店長は呑気な感じでニコニコしてるけど……。あ……声をかけられた。あぁ……すかさずショウ君が割って入った!あっ……店長の肘がメニューに当たってる……。あ、あ、メニューが落ちちゃう!うぁっ!……誰かの手がメニューを掴んだ!……さすが、抜群の反射神経!
つづきです兄さんにとって、大切な人。そして、相葉さんにとっても…そんな相手と巡り合えた二人を、素直に羨ましいと思えた。…悩み、苦しんだことを決して無駄だとは思わない。オレにとって、必要な時間だったんだ。自分と兄さんと向き合ってやっと…余計なものを脱ぎ捨て、真っ白になれた気がする。オレはどうしたい?……会いたい。会いたい、よ。「…兄さん、相葉さん。ありがとう。オレ…帰るわ」「は?え、ちょ…かず?!」またね、と2人に微笑みを残し、小さなカバンを肩にかけた。「あ!そうだ
つづきです「あのさ…今日は兄さんのところに泊まったことにしといてくれる?」「え?…あ〜うん、わかった」「よろしく」「あ!かず」じゃあねと手を上げたオレに反対方向に乗るなよ、とか乗り換えの駅を間違えないように、とか挙げ句の果てには、知らない人について行くなよなんて。小学生じゃないっつーの。笑…それでも、なんだか胸の奥がほんのりと温かくて。熱くなっている耳を手で隠した。「もう。わかったから////」「それと…」改札に入ろうとしたオレに、紙袋を握らせた。「…何よ、これ
つづきです書き置きくらいしてくれば良かったかな。これだって、黙って持ってきちゃったし…手の中のキャップをじっと見つめた。「かずくん、どうかした?」急に黙ってしまったオレを、相葉さんが心配そうに覗き込む。「あ、ううん…何でもない」言葉と一緒に飲み込んだコーヒーは少し、苦かった。…ず?かず!!しばらくすると、部屋の中からでも聞こえるくらいの音量でオレを呼ぶ声が聞こえてきた。いやいや、近所迷惑でしょ。小さく息を吐き出して、オレは玄関のドアを開けた。バンッ!!外側に開いたドア
つづきですふわり澄んだ香りに包まれ抱きしめられる背中。相葉さんの腕の中は…とても温かかった。「雅紀…?え、何で…どうして?」「…翔ちゃん、また何か…難しく考えてるの?」ピン…と張り詰めていた糸が、相葉さんの一言で緩んだ。空気が柔らかく動く。「………」固く握られた兄さんの手にぽたりと雫が落ちた。物心ついた頃から聡明で、絶対的に正しかった。そんな…弱みなど見せたことのなかった兄が、オレの目の前で弱々しく泣いていることが信じられなくて。戸惑っているオレとは対照的に、相葉さ
つづきです"彼"だ。ドアに背中をつけたまま固まってしまったオレを、まぁるい瞳が覗き込む。にこっ太陽みたいに笑うから…オレも、つられて笑ってしまった。「あれ、翔ちゃん留守なの?オレもいると思って来たんだけど…」スマホを取り出すと、メッセージを確認している。あぁっ、と小さな悲鳴を上げてオレに画面を見せた。「急にバイトが入ったって。夕方には戻るみたい」もう片方の手に下げたスーパーの袋が、ガサッと音を立てた。入っているたくさんの食材は、昼ごはんを作るつもりだったんだろう。彼
つづきです「はい、どうぞ」「あ」黄色赤緑テーブルに置かれた色鮮やかな皿の上はまるで絵本を広げたようだった。「相葉さん、これ…」「え、もしかして嫌いだった?」ごめん、と慌てて皿を下げようとするからオレも慌てて頭を横に振った。「違うの。オレも…ね、好きだよ」ケチャップのかかったオムライス添えられたブロッコリー…久しぶりに、兄さんの好きなものを思い出した。母さんが『今日何が食べたい?』って聞くと、必ずオムライスをリクエストしていた兄さん。小さな頃はほっぺたにケチャッ
つづきですブブ…震えたスマホの画面。表示された名前に、固まった。でもすぐに通話のマークに触れる。聞こえてきたのは…『…もしもし、かず?お前どこにいるんだ?』「え、アパートにいるけど」『アパートって。そんな、風邪ひくと大変だから、どこか…駅まで戻ってマックでも入ってろよ!』「いや、腹いっぱいだし、べつに寒くないよ。兄さんが帰ってくるまでここで待ってるから」『じゃ、じゃあ、もう少ししたら帰れるから待ってろ』プツっと一方的に通話が切れた。相葉さんと二人顔を見合わせる。「めっちゃ