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2020.5.17一日一季語橡の花(とちのはな)【夏―植物―初夏】天辺は県境にして栃の花浜福惠先日、足柄峠に行く機会があった。神奈川側には朝陽を反射する相模湾とそこに浮かぶ江の島、静岡側には頂きに雪を冠する富士山を見ることができる景をこの句の、県境に感じました。私が橡の花を見つけたのは、峠から下りたところで有ったが、見たばかりなので、この句が印象的に感じました。【傍題季語】栃の花(とちのはな)マロニエの花(まろにえのはな)【季語の説明
2018.05.05一日一季語朴の花(ほおのはな《ほほのはな》)【春―生活―初春】夕空のいまが火の時朴の花永田耕一郎永田耕一郎(1918~2006年)札幌の俳誌「梓」(現在終刊)を主宰した。「既成の概念、自分の固定観念で句を作らない」ということです。「俳句に観念は必要だが、観念をいかに具象化させることが大切だ。そして、物を見るときはつねに新しい目で見ないといけない」「思いは深く、しかし言葉は分かりやすく」「俳句はことがらを述べるのではなく、ことがら
2021.1.31一日一季語狐(きつね)【冬―動物―三冬】本物の狐はこんと鳴きませぬ島雅子見た目や動きなどから犬と猫の中間にも例えられるキツネ。でもその鳴き声は多種多様で、状況に応じて使い分けているそうです。童謡などでも、狐は「こんこん」と鳴くというイメージが強いです。しかし実は、猫に近い鳴き声だという。アメリカのキツネの救助団体「SaveafoxRescue」によると、おしゃべり好きなキツネたちはその外見からは想像がつかない鳴き方をするという。ただ、交
2020.4.30一日一季語母子草(ははこぐさ)【春―植物―晩春】菩提寺へ母の手を引き母子草富安風生母子草は何処にでも咲いている雑草である。菩提寺への墓参に、母の手を引いて足元を気遣っているのでしょうね。そんな足元をみると、この母子草が、春の陽を浴びて咲いている。黄色が鮮やかに見えることでしょうね。【傍題季語】鼠麴草(ほうこぐさ)、ははこ、父子草(ちちこぐさ)ほうこ、御形蓬(ごぎようよもぎ、おぎようよもぎ)【季語の説明】路傍や田畑で
2018.04.26一日一季語蔦若葉(つたわかば)【春―植物―晩春】強まりし師弟の絆蔦若葉川口襄*2018.04.24大井町にて撮影川口襄(かわぐち・じょう)爽樹俳句会代表俳号・孤舟(こしゅう)平成4年小澤克己氏に師事、俳誌「遠嶺」創刊に参加、同誌編集長、幹事長(平成22年同誌終刊)。同年俳誌「爽樹」創刊に参加、編集長。26年より代表。俳人協会会員。NHK文化センター講師。句集「王道」「マイウェイ」「蒼茫」自註現代俳句シリーズ「川口襄集」
2019.6.20梅雨の月(つゆのつき)一日一季語【夏―天文―仲夏】湯の宿の鏡のゆがみ梅雨の月鶴見董子*2019.6.17板橋区にて湯の宿というと、私は、大正ロマンを代表する抒情派の画家にして詩人、夢二を連想してしまう、夢二が最愛の恋人彦乃と過ごした湯涌温泉での時、伊香保・榛名の景色をこよなく愛し、晩年には榛名山美術研究所を建設しようとしていたことなどを連想してしまうせいかもしれません。この句の湯の宿は、和室に鏡台がある景を思い浮かべま
2020.4.25一日一季語汐干狩(しおひがり《しほひがり》)【春―生活―晩春】潮干狩遠くなりゆく夫の帽谷口知子*2016年のお台場海浜公園付近子供が汐干狩で遠くへ行ってしまうようならば平凡な句になるでしょう。ここでは、夫。童心に戻って、夢中になってしまっているのでしょう。【傍題季語】汐干貝、潮干貝(しおひがい《しほひがひ》)、潮干籠、、汐干籠(しおひかご《しほひかご》)、潮干狩(しおひがり、しほひがり)、汐干(しほぼし)、潮干船(しほひ
2019.6.27一日一季語結葉(むすびば)【夏―植物―初夏】祝・春燈800号結葉や脈々と継ぐ師の余情小局昭夫歴史有る句誌の一つ、「春燈」の800号(平成25年7月号)に対する挨拶句。季語の持つ、力強い生命力が結社の繁栄をと継続をたたえている。「春燈」は、安住敦(あずみ・あつし)と大町糺(おおまち・ただす)が、久保田万太郎(くぼた・まんたろう)を擁立し、戦後の混乱のさなかの昭和21年1月1日に創刊されました。久保田万太郎、安住敦、成
2020.4.10一日一季語躑躅(つつじ)【春―植物―晩春】湖を象り燃ゆる山躑躅堀北久子湖を象(かたちど)る、この句のヤマツツジの色は朱色で鮮やかなものでしょう。花の形は、径3-4cmの漏斗形で5中裂するという。この形の湖なのか、躑躅を刈り込んだ形が湖と同じような形なのか。それでは違うように思います。湖の形のようになって咲いているという意味ではなく、湖をくつきりと浮き上がらせる、このような意味になるのかと解釈しました。2020.4.7三
2020.5.5一日一季語こどもの日(こどものひ)【夏―行事―初夏】竹細工教室混みぬ子供の日都筑智子こどもの日の遊びでは、紙兜をかぶった子がみんなを追いかける役。誰かにタッチしたら頭の兜を渡して交代する。鬼ごっこのような遊び、新聞紙を縦に丸めて筒状にしたのを刀にみたててのチャンバラごっこなど、書かれているものがあります。元気な成長を祈る。もともとは、男の子が強く育つように祈りを込める日なので、こうした遊びが似合います。この句の竹細工については、こうした子供
2019.2.19一日一季語鶯(うぐいす《うぐひす》)【春―動物―初春】鶯や香焚くひとの眉静か西島麦南仏教では、香を焚くと不浄を払い心識を清浄にするとされ、供養の基本としている(「香華を手向ける」という言葉がある)そうです。茶道でも、お客様を招く際に、香を焚くことが基本なのだとか。この句の作者も、改まった気持ちで、香を焚いているのでしょう。そんな心が落ち着いた所へ、鶯の初音が聞こえてきたのだと思います。眉静かの表現で、こんな心の内が見えてくる。静寂、
2019.6.28一日一季語葉柳(はやなぎ)【夏―植物―三夏】幇間の向う鉢巻夏柳広渡敬雄夏柳の美しく葉の茂った景。風に靡く姿が目に浮かびます。このようななびく姿を、幇間に投影し、お客さんのご機嫌を取る姿を想像させてくれます、幇間HOUKANとは太鼓持ち。お座敷において間を取り持つのが主な仕事。職業としての幇間は、江戸初期1650年代あたりでは、歌舞伎役者が兼ねていたということです。昭和10年頃には全国に470人近く幇間がいた
2018.04.20一日一季語楓の花(かえでのはな《かへでのはな》)【春―植物―晩春】一切経堂開け放たれて花楓稲富義明(稲富義明)(いなとみよしあき)(1932~1998)佐賀県出身。第二十八回角川俳句賞受賞作品「かささぎ」【傍題季語】花楓(はなかえで《はなかへで》)【季語の説明】楓類は新葉が開きかかる頃、暗紅色の花をひっそりとつける。*楓の種です【例句】仏足
2020.5.28一日一季語花茣蓙(はなござ)【夏―生活―三夏】花茣蓙に息もらしたる魔法瓶辻桃子*2018年浅草駒形どぜうにて日本に魔法瓶が輸入されたのは1907年(明治40)9月。1907年(明治40)10月22日付の東京朝日新聞で、東京帝国大学理学博士の飯島魁(いさお)が記者との対談で初めて「魔法瓶」と表現した、とされている。飲み物の温度を長時間キープできる「魔法瓶」。お湯を大量に沸かして魔法瓶に入れておけば、再度お湯が必要となった際
2020.2.27一日一季語霞(かすみ)【春―天文―三春】霞より漁船の帰る下田港赤羽正行*2020.2.26伊東付近霞というのは、霧・靄・煙霧などで遠くの景色がぼやけている(=かすんでいる)様。やや文学的な表現で、気象学用語ではないのだそうです。霧に包まれた海の中から、漁船がぬっと現れたような驚きを感じました。【傍題季語】春霞(はるがすみ)朝霞(あさがすみ)夕霞(ゆうがすみ《ゆふがすみ》)遠霞(とおがすみ《とほがすみ》)薄
2020.2.20一日一季語ミモザ【春―植物―初春】花ミモザ聖母は永遠に子を抱きて荒井千佐代*2020.2.17伊豆にてイタリアでは三月八日の「国際女性デー」の時期に咲くミモザの花をシンボルとして、男性が女性にミモザの花を贈ることが習慣になっているという。女性の日に相応しい花であり、聖母にも相応しい。作者を、沖、時代から存じているが、敬虔なキリスト信者です。【傍題季語】花ミモザ(はなみもざ)【季語の説明】マメ科の常緑高
2021.3.22一日一季語花の雨(はなのあめ)【春―植物―仲春】人形を叱る子供や花の雨岡田史乃3月21日は全国的に雨。今年は桜の開花宣言が全国的に早く、今日の天気は花の雨となった。花の雨で思い出したのがこの句。岡田史乃氏は、「篠」(すず)創刊・主宰。2019年3月23日没。四ッ谷にあるカトリック麹町聖イグナチオ教会での通夜は4月1日だった。JR飯田橋駅から四ツ谷駅までの沿線に約2kmにわたって続く満開の桜並木。通夜当日は付近の入学式がおこなれたり、まずまずの
2020.5.15一日一季語鉄線花(てっせんか《てつせんくわ》)【夏―植物―初夏】白衿にとほす生涯鉄線花岡本差知子「留袖・振袖・訪問着」などのフォーマルの着物では白半衿が正式となるのだという。句に出てくる白襟は、格式や、外見をキチンと正している作者の生き方が表現されているようにも感じます。鉄線花は、室町時代には日本に中国から渡来したとされています。洋風な見た目から感じにくいですが、約400年もの長い間、たくさんの人々に親しまれてきた植物です。この句の芯の太い生き方、伝統
2019.4.10一日一季語杉菜(すぎな)【春―植物―晩春】つくづくさびしいと杉菜見てゐる人北原白秋童謡「からたちの花」などで有名な北原白秋(きたはらはくしゅう)は、童謡以外の詩、短歌、校歌、新民謡、それに俳句でも多くの作品を残しています。俳句について白秋は室生犀星を相手に、次のように語っているそうです。「発句は形が短いだけに中身も児童の純真が欠かせない。発句にはそれと同時に音律の厳しさがある。七五律はちょっと甘い。五七律をこころみてみたい」。白秋の
2019.5.27一日一季語目高(めだか)【夏―動物―三夏】一匹となりし目高に水を足す増田幸子*2019.5.23茨城県道の駅にて近くの小川などで採ってきた目高。水槽で飼っていたのでしょうけど、日に日に死んでしまい、ついには、最後の一匹となってしまった。水槽の水をすべて入れ替えると、金魚なども好ましくないようです。飼育水は飼育開始時から、飼育開始の時間の経過とともにどんどん水質が変化していきますし、水道水を足す(もちろんカルキを
2019.12.19一日一季語アロエの花(あろえのはな)【冬―植物―初冬】アロエ咲く島のくらしに富士一つ行方克己今日は伊豆、富士市へと出張をした。海岸線には松の木が、街路樹として植えられていたのと、松の木の根元には、アロエの花が盛りだった。雪を被った富士の白さと、アロエの花のオレンジ色がいい対比でした。【傍題季語】花アロエ(はなあろえ)、アロエ咲く(あろえさく)*花アロエは、別の種類の植物があるので、使い方には気をつける必要がありそう
2021.3.15一日一季語蓬(よもぎ)【春―植物―三春】日にまみれ土のにほひの蓬摘む原和三日本全国の日当たりのよい河原や野原、道ばたに自生しています。春になると身近な場所に生えてくる雑草で、よもぎ餅の原材料でもあります。この句の表現がピッタリとしているように思います。よもぎは太古の昔から試し確かめられ「何にでもよく効く」といわれ、日本だけでなく、世界各地で薬草として使われてきました。よもぎ属の学名「Artemisia(アルテミシア)」は、ギリシャ神話
2020.6.8一日一季語栗の花(くりのはな)【夏―植物―仲夏】山門や栗の花散る右左寺田寅彦*2020.6月板橋区にていかにも俳句らしい、写生の句。「天災は忘れたころにやってく」といったのは寺田寅彦さんです。言わずと知れた物理学で多くの業績を残された科学者です。俳句との出会いは、熊本の五高に在学中(明治32年、卒業)に英語の講師として赴任してきた夏目漱石と出会い、漱石から俳句を学んだことからだという。寺田寅彦の俳句は独自の世界を持つ独創的な情緒溢れる句
2017.07.16一日一季語ほたて‐がい【帆立貝】【夏―動物―三夏】帆立貝焼くストーブにゐて旅にあり勝又一透勝又一透19992.22没91歳【傍題季語】海扇(ほたてがい)【季語の説明】イタヤガイ科。北海道や東北地方の海に棲む二枚貝。貝柱を賞味する。貝殻は扇のような美しい形をしているため、細工物にも多く使われる。大形で殻長20センチメートルに達する。左殻は扁平で紫褐色、右殻はやや膨れ白色。殻を帆のように立てて水
2020.5.23一日一季語蛇苺(へびいちご)【夏―植物―初夏】汚名着て雨に耐へゐる蛇苺曽根久順*2020.5.22御殿場にて沖風という、沖の結社内の句風を表現する言葉があった。この句には、沖の精神が宿っている。能村登四郞の師である、秋櫻子の自然詠中心で「きれい寂び」と呼ばれた美意識に、俳句は生活そのものとする波郷の人間くささを加えた登四郎独自の世界。年齢と共に変幻自在の句風を確立した登四郞の俳句の世界。自分自身に引きつけて俳句を詠む。季語との取り
2019.4.29一日一季語昭和の日(しょうわのひ《せうわのひ》)【春―行事―晩春】男らが乳母車押し昭和の日出口善子平成19年になってから、名称が変わった季語。そのせいか、例句、歳時記の掲載などが極めて少ない。この句では、乳母車という表現になっているが、この言葉自体が、昭和を感じる。現代では、ベビーカーであろう。男らが押す景は、現代の景でもあるようだ。【季語の説明】四月二十九日。昭和天皇の誕生日だったが、平成元年に「みどりの日」に変わり、平
2019.7.11一日一季語夏薊(なつあざみ)【夏―植物―仲夏】山姥の通ひし道や夏薊堀江恵子昨日見事に咲いている夏薊を見つけたのは、埼玉県は熊谷の山近くの遊休地。人が入ることの無い、敷地内には、雑草が生い茂り、虻や蜂も飛んでいました。この句の、山姥の通ひし道。やはり、人里離れたところなのでしょう。【季語の説明】「夏-植物」の季語薊はキク科アザミ属の総称。薊は種類が多く春から秋にかけて花が咲いているが、夏に咲く薊を夏薊と呼んでい
2020.5.11一日一季語著莪の花(しゃがのはな《しやがのはな》)【夏―植物―初夏】著莪の花塵ひとつなき平林寺齋藤朋子*2020.5.8静岡県平和公園にて平林寺境内林は、武蔵野の面影を残す雑木林として、1968年(昭和43年)国指定天然記念物になっています。道向かいの「睡足軒の森」を含め、約43ヘクタールもの広さがあります。元は乾いた荒れ地だった武蔵野台地が、玉川上水や野火止用水の整備によって潤ったということです。塵一つ無きという措辞から
2021.2.22一日一季語蕗の薹(ふきのとう《ふきのたう》)【春―植物―初春】アルプスの雪のつきたる蕗の薹武井美代子雪解けを待たずに顔を出す春の使者。一番早くでてくる山菜です。この句のアルプスの雪を実際につけて売られていたわけではなく、俳句特有の誇張とは思いますが、説得力のある表現に思います。虚ばかりでは無い説得力のある表現だと思います。⇒画像をクリックするとブログ記事が読めます。*2018年3月勝浦にて【傍題季語】蕗の芽(ふきのめ)蕗の
2019.5.20一日一季語緋鯉(ひごい《ひごひ》)【夏―動物―三夏】ゆたかにも水の濁りて緋鯉かな大木あまり緋鯉や錦鯉など、金魚と同様に涼味を呼ぶことから夏の季語となっています。緋鯉の力強く振る尾に、池の底の泥が舞い上がり、水を濁らしたのでしょうか。ゆたかの言葉に、緋鯉の大きさもそれとなくわかる気がします。池や、用水路などに放たれている緋鯉、錦鯉は、目を和ませてくれます。【傍題季語】色鯉(いろごい《いろごひ》)白鯉(しろごい《しろごひ》)