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「小日向から音羽へ降りる鼠坂ねずみざかと云う坂がある。鼠でなくては上がり降りが出来ないと云う意味で附けた名だそうだ。」森鷗外の「鼠坂」という短編の冒頭の一節である。この狭く急な坂の上に建ったお屋敷の新築祝いの場。満州で一儲けして帰ってきた屋敷の主人深淵氏が招いたのは新聞記者の小川、元通訳の平山。酒を飲みながら深淵氏は大陸で小川が美しい中国人の娘に性的暴行を行い、死に至らしめた話を、嫌がる小川の目の前で平山にする。その夜、中国娘の幻を見た小川は脳溢血で命を落とす。この話は怪談に括られること
小谷野敦謎解き『八犬伝』(河出新書)著者小谷野敦(こやのあつし)は1962年生まれの東京大学文学部卒の作家であり、比較文学者です。かつてその作品が2010年と2014年の2回にわたり芥川賞候補となったこともあります。本書を読んでもその並外れた読書量をうかがい知ることができます。1990年に修士論文をもとに『八犬伝綺想』という本を書いてから二十数年たち、改めて『八犬伝』について自説をまとめておきたいと本書を執筆したとのことです。それほど『南総里見八犬伝』には深い思い入れがある文学者です。