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「姉ちゃん、潤さん、おかえりー!」驚いて見ると、翔が満面の笑みでこちらを見ている。「あ、翔。」「お。」「お久しぶりです!上がらないんすか?」「や、俺はここで。」「そっか。姉ちゃん、今日はお泊りかと思ったよ。」「はー?もういいから部屋に入りな!」翔に向かって追い払うような仕草をすると、軽く睨みつけてやる。翔はおどけた表情を見せると、駐輪場に向かって自転車を押していく。「じゃあ、俺行くね。明日一日バイトなんだけど、夜には連絡するね。」潤が明るい声を出して、駅までの道を戻ろう
「ありがとう。キレイ・・・」ようやくお礼を言うと、コーヒーテーブルを挟んで智くんと向き合った。「すごくキレイ・・・高かったでしょ。」「そんなことないよ。」私は何を話していいか分からなくて、一本一本の花を丁寧に見つめていた。ひどくドキドキしてもいた。「きいちゃん?」「ん?」「俺・・・きいちゃんが好きだよ。」のどから心臓が飛び出すかと思うような衝撃が胸にあった。耳が熱くて、異次元にでも迷い込んだみたいな視界の歪みを感じる。「あ・・・えっと。」智くんの声は落ち着いていて、
あれから数日間私は部屋に篭り、買い物さえも翔に任せきりになった。と言っても、食欲なんて無かったから食材の買い出しなんて必要なかったし、もともとそれ以外での外出なんてしなければしないでも平気だった。気力と体力と、いろいろな欲の全てが私の中から消え去ってしまったような気がした。大学にもバイトにも行かない私に、翔は何があったのかと何度か問い詰めたが、2日目には諦めたようで、ただ優しくしてくれるようになった。智くんからも何も聞いている様子はなかった。「なあ、姉ちゃん。まあ何があったのかは知
*あまりにも長いので小分けにして再掲させていただきました。以前(1)を読んでいただいた方は(4)からどうぞ。京王線の吊革につかまって、潤の肩に頭を載せていた。外が明るいうちに大学を出るのは久しぶりだった。サークルの仲間は途中で降りて飲み会の前のカラオケに行ってしまったけれど、潤と私は飲み会での合流を約束して、ずっと行こうと約束していた下北沢にあるギャラリーに向かっていた。夕方なのに、並んで座れる席が空いてないなんて珍しいけど、こうして一緒に立っているのも私は好きだった。たっ