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今日は、ヨンとウンスが揃っての非番の日。朝餉を食べ終わった時ヨンは、ウンスを遠乗りに誘った。『ウンス。天気も良いことです。少し、馬に乗って出かけましょう。』「本当?でも・・・最近、あまり馬に乗ってないからそんなに速駆けはできないわよ・・・?」『急ぐ必要はありませんので、ゆっくりとで大丈夫です。』「ウフフ・・・良かった。それじゃ、すぐに支度するわね?」ウンスは、嬉しそうに微笑むとヨリに手伝いを頼んで支度を始めた。『パソン。チュホンとホンジュの支度を頼む。』ヨンは
『俺の元で、命を落とした兵たちを忘れないよう・・・此処で弔ってもらっているのです。』ヨンは、廟の中へ歩きながらウンスに告げた。「ヨン・・・」ウンスは、廟の中央に立ち、手を合わせるヨンの背中をなんとも言えない表情で見守っていた。『此処には、俺を庇ってキチョルの氷攻を受けたトルベやチュソク・・・迂達赤がいます。そして・・・国境での戦で命を落とした兵も・・・』ヨンは、苦し気な声で呟くように言った。「そう・・・トルベさんやチュソクさんも・・・」ウンスは、ヨンの隣に歩み寄り
王に呼ばれたチャン侍医が康安殿に姿を現す。チャン侍医は、呼びに来たアン・ドチ内官から王がアン・ヨンジンの病状について聞きたがっている事を聞いていた。「王様。チャン・ビンでございます。」チャン侍医は、王の前で一礼する。「侍医。上護軍から聞いたのだがアン・ヨンジンがあと三月の命だと・・・それは、まことか?」王は、単刀直入にチャン侍医に聞いた。「はい・・・それは、確かでございます・・・」チャン侍医は、俯きながら答えた。「そうか・・・ならば、これから始まる尋問・・・そ
開京を目の前にした時、ヨンの前に、一人の男が現れる。男は、ヨンの行く手を遮るようにして裏街道の真ん中に立っていた。ヨンは、男の存在に気付き、チュホンの脚をとめる。『何者だ?俺に何か用か?』「恐れながら・・・高麗軍上護軍チェ・ヨン様とお見受けしますが・・・」男の言葉に、ヨンは鬼剣を握る手に力をこめる。『人違いだ。』「さようでございますか・・・?その左手にお持ちの剣・・・かの有名な鬼剣と・・・鬼剣をお持ちになられるのはこの世でただ一人・・・」『お前・・・俺の素性
ウンスは、ゆっくりとユン・ジモンの傍へと近づく。あと数歩で、ユン・ジモンの手がウンスに触れる距離まで近づくとウンスは立ち止まった。「ユリとソヨンを放して。私が、貴方と一緒にいけばよいのでしょう?」ウンスは、ユン・ジモンの目を真っ直ぐに見て言った。ユン・ジモンは、ウンスの真っ直ぐな瞳をみてユリとソヨンを捕らえていた男に頷いた。ユリとソヨンを捕らえていた男はソヨンの背中を軽く押す。ソヨンは、男を振り返りみる。男は、行けと指図するかのように顎を動かした。ソヨンは、その仕草を
康安殿から、兵舎へと向かうヨンのもとに典医寺の医員が声をかけてきた。「上護軍様。チャン侍医様が、およびでございます。お急ぎのところ申し訳ございませんが典医寺まで、ご足労いただけませんでしょうか?」『侍医が?』「はい。お渡ししたいものがあるとの事でございます。」『わかった。後ほど、顔を出すと伝えておいてくれ。』ヨンは、使いの医員に告げるとそのまま迂達赤兵舎へと向かった。尋問場に着くと、捕らえられた男たちが蒼褪めた顔で、チュンソクを見ていた。ヨンは、静かにチュンソクに近
ヨンは、離れの屋根の上から、屋敷の中の様子を確認する。『1、2、3・・・見える場所で、5人か・・・侍医にアン・ヨンジンの引き留めを頼んだが・・・時もあまりないはずだ・・・』ヨンは、離れの屋根の上から、パクと《蒼い狼》、スリバンたちの配置を確認すると、策を決行する合図の指笛を鳴らした。ヨンの合図で、《蒼い狼》とスリバンたちがアン・ヨンジンの屋敷の前で一斉に動き出す。私兵たちの意識が屋敷の前に集中しだした時ヨンは、人知れず離れの中に忍び込んだ。離れの中は、薄暗く・・・全て
ヨンとウンスは、開京のはずれにあるすこし寂れた寺へと到着する。ヨンは、チュホンから降りるとウンスをホンジュから抱き下ろす。「ヨン・・・ここのお寺は・・・?」ウンスは、初めて来た寺に不思議そうにしている。『少し・・・お付き合いください・・・』ヨンは、ウンスの手を握るとゆっくりと寺の境内の中へと入って行った。境内に入っていくと、最初の印象とは違うことにウンスは気付く。それは、一見寂れているように見えるが一つ一つの造りは、丁寧で手のこんだ造りになっていた。「ヨン・・・
クッパを食べ終わりヨンとウンスは、マンボ姐の店を出てくる。見送りに出てきたマンボ姐にヨンは、ホンジュを屋敷へ送り届けるよう頼んだ。そして、チュホンにウンスを乗せるとその後ろに跨った。「ヨン?」『チュホンが、貴女を乗せたがっていましたので・・・』ヨンは、優しく囁くと、チュホンの腹を軽く蹴った。チュホンは、嬉しそうに嘶くと軽やかに歩き始めた。「ヨン・・・どこ行くの?そろそろお屋敷に帰る?」『いえ・・・まだのようですね・・・チュホンが俺たちをどこかに連れて行きたいようです
ウンスが必死で、ユン・ジモンに声をかける。ユン・ジモンは、ウンスの問いかけに躊躇いながら、冷たい素振りをとり続けていた。「ねぇ・・・こんなことしても、何の解決にもならない・・・だって・・・貴方、知っているでしょ?ヨンが、このことを知ったら貴方を地の果てまで追いかけるわ。それに・・・きっと・・・戦を覚悟で、元まで、私やユリを取り戻しにいくはず。そんなことになったら関係のない人まで血を流し・・・命を落とすことになる・・・月の満ち欠けや星の動きを研究している頭の良
「私は、大丈夫・・・ヨンが庇ってくれたから・・・あ!ユリ?!ユリは?!!」ウンスは、ヨンの傷をおさえながらユリの名前を叫んだ。泣き叫ぶウンスを抱きしめながらヨンは、立ち上がると、ユリの様子を確かめた。ユリは、ソヨンに抱かれながらジッとヨンとウンスを見ていた。ユン・ジモンは、ヨンとウンスに短銃を向けながらソヨンとユリのいる方向へと歩きはじめる。「上護軍様・・・奥方様は、諦めます。されど・・・お嬢様・・・ユリ様は、お連れ致しますので・・・お分かりかと思いますが上護
『ウンス!!チグンッ!!』突然、ヨンの声が、中庭に響いた。ウンスは、その声を聴いた瞬間、咄嗟に耳をふさぎ、その場に座り込んだ。《医仙。俺が”チグン(今)”と言ったら身を伏せてください・・・》ウンスは、ヨンの声に、二人で天門を目指し立ち寄った飯屋での出来事を思い出し咄嗟に耳をふさぎ、その場に座り込む。ウンスが座り込んだと同時にビュンという、空を切る音が静まりかえった屋敷の中庭に響いた。「うっ!」「ぐっ!!」次の瞬間、ウンスの頭上で二人の男のうめき声が聞こえた。『ウ
ユン・ジモンたちを護送し、皇宮へと戻ってきたヨンは、そのまま、ユン・ジモンたちの尋問を始めようとした。「上護軍。少々、お待ちを・・・さきほど、王様が上護軍をおよびだと康安殿の内官がこちらに・・・」戻ってきたヨンにチュンソクが告げた。『王様が・・・?』ヨンは、ユン・ジモンたちを睨みながらチュンソクに聞き返す。「恐らく、あの方のことでお話があるのではないでしょうか?」チュンソクは、ユン・ジモンたちをチラリと見ながら言った。すでに官職を退いたアン・ヨンジンが今回の謀に絡
ヨンは、濃紺の衣に着替え、市井へと紛れ込む。チュモが残した印を、テマンが見つけヨンに耳うつ。ヨンは、顎をひき頷いてみせた。『テマン・・・屋敷の様子は・・・?』ヨンは、テマンにウンスと子供たちの様子を確かめた。「はい。落ち着いていらっしゃいました。でも・・・奥方様は、どこか心配そうにしていて・・・」『そうか・・・今、屋敷には・・・?』「シウルとジホ、それに白い男がついてます。シウルとジホが、ウォンソン様の遊び相手を白い男が、奥方様のお傍でお話相手をしています。」テ
ヨンは、ウンスとユリを、屋敷の中へと連れて行く。ユリは、ソヨンの腕の中で、何事もなかったかのように眠っていた。「あら・・・ユリったら・・・ウフフ」ヨンの腕の中で、少し落ち着きを取り戻したウンスが眠るユリの姿に笑みをこぼした。『ウンス。俺は、ユン・ジモンの尋問をするためこれから皇宮へ戻らねばなりません・・・』ヨンは、騒ぎの直後故、ウンスの傍を離れたくなかった。「大丈夫よ・・・大人しく、此処で待ってるから・・・」『出来るだけ、早く戻ります。迂達赤を1人のこしていきます
ユン・ソンヨンとユン・ジモンにアン・ヨンジンの死が伝えられたのは翌日のことだった。ユン・ソンヨンは、弱った身体を癒す為に修医堂で治療を受けていた。アン・ヨンジンが死の間際、離縁状を認めていたことを聞きユン・ソンヨンは、声もなく泣いた。「ソンヨンさん・・・」ウンスは、声もなくソンヨンの隣に座り優しく背を撫でる。「すべて・・・私と・・・娘の為に・・・私があの時ヨンジン様に嫁がなければこのようなことには・・・」ソンヨンは涙ながらに言葉を漏らす。「それは・・・確かに
「ねぇ・・・ヨン・・・?このお寺にどなたかが・・・?」『はい・・・ウンスも懐かしく思えるお方が・・・此方です、参りましょう。』ヨンは、再びウンスの手をひくと本堂の前を通り過ぎ、寺の裏へと歩み出した。寺の裏。人など、滅多に来ないような寂しい場所。しかし、そこに、名前のない墓がひっそりと作られていた。墓の傍には、桜の樹が植えてあり、春には、満開の花を咲かせているのがわかる。「ヨン・・・ここは・・・」ウンスは、名前のない小さな墓の前でヨンに聞いた。『はい・・・慶昌君様
ヨンは、身支度を整えると屋敷の裏側にある、隠し扉から皇宮へと向かった。桜の木の丘の隠し通路は使わずヨンしか知らない通路を使って康安殿へとしのびこんだ。『王様・・・』ヨンは、静かに声をかける。「早かったな・・・非番の日に呼び出してすまぬ。」王は、ヨンの声に振り向かずに答えた。『いえ・・・皇宮に賊が侵入したと・・・ご無事で何よりでございます。』ヨンは、足音も立てずに王の前に跪いた。「その賊の事だが・・・どうやら、皇宮内を、熟知しているようだ。」『そのようでございま
『・・・それから・・・ユン・ソンヨン殿との離縁状も認められていた。』ヨンは、アン・ヨンジンの死に狼狽えるユン・ジモンに、その事実を告げた。「離縁・・・状・・・まさか・・・そんな・・・では、ソンヨンは・・・どうなるのです?実家にも帰ることはできません・・・」ユン・ジモンは、ソンヨンのこれからを案じながら聞いた。『ユン・ソンヨン殿に何一つ罪はない・・・それ故、身体が回復されればユン・ソンヨン殿が望まれる場所で暮らしていくことになる。』「そうですか・・・上護軍・・・一