昭和が終わり、平成が始まったばかりの頃の話である。海上技術学校を卒業し、俺は船会社に就職した。仕事で北海道に上陸したとき、何気なく手に取った一冊のボクシング雑誌。ページをめくるうちに、不思議と胸がざわついた。――プロボクサーになりたい。それは突然、頭の中に浮かんだ“憧れ”であり、“夢”だった。その気持ちは消えるどころか、時間が経つほどに強くなっていった。やがて船は千葉へ入港した。本来なら、何事もなかったように仕事を続けるはずだった。だが――俺は、そのまま船を降りた。夜逃げ同然。何の準備も、計画も