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鎌倉から金沢へと通じる街道。その道端の石に腰をおろし、ひとりの浪人がじっと行列を待っていた。深くかぶった編み笠。その下からのぞく顔は――犬山道節。いや、今は寂蒔道人剣竜と名乗る男である。やがて、街道の向こうから一行が近づいてきた。関東管領、扇谷定正の行列である。道節は、やおら手にした刀を膝に押し立てた。そして、あたりに聞こえるように、大声で叫んだ。「この世に二つとない名刀だというのに……」道節は、刀を見つめながら、さらに声を張り上げる。「だれも、この刀の価値
**シン八犬伝第15回「信乃、母の願いと“孝”の珠」**伏姫が富山の奥で息を引き取ってから、十五年。時は流れ、舞台は武蔵の国・大塚──今の東京。ひとつの小さな家に、父母と子の三人が住んでいた。働けど働けど暮らしは苦しく、ついに母・手束(たつか)は過労で倒れてしまう。看病するのは、十五歳の少年・犬塚信乃。この物語の、主人公八犬士のひとりである。■母の「秘密の願い」「信乃……。お前に、どうしても伝えておきたいことがあるの。」病床の手束は、かすれた声で語り始め