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宮廷内の庭を解放した春の祝宴会は宴もたけなわ。簡易の記者会見が終わると和やかな宴会に変わり国の要人達はシンとチェギョン夫妻に挨拶をと列が出来た。誰が見ても火を見るより明らかな歓待ぶりである。記者たちも誰が何番目に挨拶したと事細かに筆記していた。かつては孝烈皇太子の友人としてファヨンに手を貸していた記者もいた。皇室の信用を失墜させる事に加担した記者は国外へ逃亡を図る直前にシンに呼び出された。記者としての業界の信頼を無にし立場を追い、この国で一切の仕事が出来ないようにする事は造作もないが報
久々の東宮殿はあの頃より増して開放感のある明るい佇まいを見せた。この空間との別れを、チェギョンは惜しむ間も与えられないまま取り急ぎ宮を去った。騒動の渦中に泡沫のように消える事を余儀なくされた。思い出の残るこの場所に再び舞い戻った。緊張した面持ちで、チェギョンはかって知ったる石畳を歩いた。『足元、気をつけろ』『分かってる!』過干渉な夫に辟易しながら辺りを見渡した。いつ何時、主である妃宮が戻ってきても良いようにと女官達が甲斐甲斐しく毎日の手入れに気遣っていた証拠が其処彼処に伺える。『妃
天井を仰ぐチェギョンは胸が軋み、切り刻まれた様な痛みが襲っていた。紛れもなく今我が身が存在するのは、久方ぶりの【妃宮の部屋】。宮家に嫁し、東宮妃として此処に迎えられたばかりのあの頃と寸分変わりはなかった。だが、今は随分と変わって見える。ここだけでなく、目に映る全てが何処か違って見え心許ない気持ちを味わう。『他人の部屋みたいだわ…』呟くとチェギョンは孤独感を払拭するように臍より僅かに下った部分にそっと手を当て、ホッと一息の深呼吸で精神の安定を図った。シンは新婚らしい夫婦の睦みも味わう前に
むせるような花の香りと水気を帯びた熱い空気が辺りを包んでいた。観衆の見守る中、専用機のタラップを静かに下りる。近付いてきた一人の少女が小さな花の束を差し出す。受け取ると感謝の挨拶をする。少女ははにかみながら笑顔で手を振った。いつか見た光景と重なる。眩しく輝く太陽の下、シンは目を細めた。『殿下、この後歓迎の儀が行われ、パレード、それからホテルへと参ります』コン内官は簡単なスケジュールを伝えた。『あぁ、分かった・・』人々は大きく手を振りシンを歓迎していた。かつては皇太子としてこの国
ようこそ♪こちら「FirstStep」は韓国ドラマ「宮~LoveinPalace」で出会った「シン君&チェギョン」こと…「チュ・ジフン君&ユン・ウネちゃん」が大好きな管理人による戯言だらけのブログです。ふたり一緒にお好きな方~どうぞお立ち寄り下さい何があっても『シン君&チェギョン』は永遠で…何があっても『ジフニウ
『昼寝』をしようと、確かに彼女はそう言った。しかし、その言葉の通りになるとは思ってもみなかった。シンは二人の大きなベッドでぐっすりと眠り込んでいるチェギョンの愛らしい顔を上から見下ろした。二人でベッドに潜り込み、妻の耳元でいつものように甘く囁きながら、1枚ずつその衣を脱がせる楽しみを味わっていたら、チェギョンの息が上がるどころか、深く胸が上下してることに気づいた。「まさか…?」妻の顔を見ると、小さく口をあけてスヤスヤと眠っているではないか。今日の仕事は彼女にとって、とても緊張を強いられ
得体の知れない不安におそわれたままのチェギョンは今しがた去っていった青年ヨナを思っていた。『他人じゃない…』単に弟に似ているだけではない。。夫シンが嫉妬心に苛まれる程、チェギョンの中でヨナという青年にはどこか近しい感覚を覚えていた。しかし、去り行く真際にチェギョンに接近した事で、チェギョンは全くあり得ない事に気付いてしまった。『そう…だってシン君に似てるのよ…似てる訳ないけど…でも似てる…』不可解で霧の峠を歩んでいるように不思議な感覚である。雲の中にいるようで、それでいて意識はハッキ
ささやかな目映い光が部屋の中央まで射し込んでいる。東宮の朝は以前と同じ女官や尚宮、内官が集まり賑わいを見せていた。女官の一人が不安気な面持ちで内官へ駆け寄る。『申し上げます。』『ん?何かありましたか?』『はい…実は…』話し始めた女官を差し置き、昨夜を思い出す内官。『殿下は昨夜雨に濡れた様子であったな…風邪など召されてないといいが……。チェ尚宮、念の為お二人に薬湯を用意しておいた方が良いかも知れぬ…』チェギョンの準備に忙しい尚宮を呼び止めた。『はい。コン内官。すぐに準備させます
深い眠りから覚めたチェギョンは、目を開けた時に広がる風景に戸惑った。―――ここはどこ?見慣れない壁紙と見慣れない家具。それだけではない。目に映る風景だけではなく、嗅覚までも「何かが違う」と訴えてきた。自分の香りとは違う、青草のような爽やかな香りとわずかな男らしい汗の匂いを感じた。―――そう言えば昨日、私…。チェギョンの頭は一気に覚醒した。夫となったばかりのシンの大きなベッドに横たえられ、逞しい腕に抱きよせられた瞬間、一日の疲れが重くのしかかり、あっという間に夢の中へ入ってい
ツンデレ、ラブコメです中国ドラマ、『蝶の夢~ロマンスは唇から~』2020年(全36話)を観ました。相関図をお借りしてきました。彼氏に振られたシャオヌアン(温小暖/シュー・ハオ)。酔っ払って初対面の男性にキスをしてしまいます(꒪ȏ꒪)ε`○)その相手は、なんと業界トップの芸能プロダクション安寧文化の社長フェイモー(葉非墨/ローレンス・ウォン)。フェイモーは、キスの感覚からある出
温洋御用邸は昨夜からの強風から開放され穏やかな朝を迎えていた。庭の柳はしなやかに名残の風に揺れている。滴る雫が朝日に輝いていた。『ミン…ミンはいるか…あ、いや皇太后?』『どうされましたか?陛下…今朝は随分とお早いですね』虫の知らせか、邸内の空気の異変を察知した前皇帝陛下は妻を呼んだ。寝所の戸が僅かに開くと、夫を招き入れた。『あ、いや…今日はやけに外が騒がしく感じて…そう思いませんか?』『……そうでしょうか…私には何も。ただ、久方に妃宮の夢を見ました…』『妃宮の?一体どんな夢か聞か
へミョン女皇帝や太皇太后の住む景福宮は朝から慌ただしかった。それは昨夜のコン内官からの報告が発端で、太皇太后、へミョン女皇帝は元より、宮殿内は大騒ぎしていた。『お、お祖母様!!太皇太后陛下!シンとチェギョンに…赤ちゃんが!』朝一番に祖母に挨拶にきた孫娘であり女皇帝でもあるシンの姉へミョンは祖母に駆け寄る。『慌てるでないへミョン…いえ、女皇帝陛下。まずは二人をすぐに呼び戻すのだ……首を長くして待っておったがやはりマカオでのあれは懐妊の兆しだったのだな』太皇太后はチェギョンの異変に心当た
チェギョンは改めて皇帝陛下である義姉、へミョンに呼ばれ、彼女の自室にいた。皇太子のスキャンダル、妃宮と義従兄ユルとの噂、皇太子夫妻の不仲説が王室を揺るがし、廃位、廃妃問題が勃発した。義誠大君との権力争いから宮廷内での放火事件まで起き、それを収める為にチェギョンは国を出た。皇太子妃の不在の間、さぞ王室は無事に平静を取り戻しただろうと想像していた。しかし、へミョンによれば、世論の反感緩和は一筋縄ではいかなかったらしい。『考えが甘かったみたいね…貴方を国から追い出せば反省したと国民は皇室を許すだ
今更ですが…私の中では韓ドラ語るうえでこれは外せないなぁあと前々から思っていたので、思い切って書き始めました。韓国ドラマ「宮(クン)~Loveinpalace~」韓流ドラマを好きな方にとってはホントに今更って感じですね。たぶん韓ドラのラブコメ部門では「冬ソナ」並みの知名度です。何しろ、2006年のドラマですから、今からかれこれ10年以上も前のドラマ。台湾版のイタキスと同じぐらい前ですね。でも、シーンのほとんどが宮中の様子なので、服装などは時代背景あまり感じない感じになってるかな?
『改めまして本日は、この様な茶会に招いて頂き、ありがとうございます。妻、チェギョンです。この様な登場に皆様は大変驚かれたと思いますが、次代のこの国を担う子を授かり体調優れぬ中、私が一人にならぬ様に皆様に認めてもらいたい一心で参じた様です。これからも皆様の一員として宜しくお願いいたします。』シンはチェギョンを呼び寄せると、並び立つ。先程の厳しい表情とは打って変わって参加している人々が驚くほど柔らかな表情を見せた。『皆様。紹介いただきましたチェギョンです。民間から嫁ぎ、躾も乏しくそぐわぬ私を長い
シンの滞在するホテルの一室。一際重厚な扉の前には物々しい雰囲気で護衛官・イギサが立つ。チェギョンにも本国では三名の女性イギサが付く。タイへの公務中のシンを訪ねたユルはかつて皇太子だった。僅か5歳の頃まで皇太子として景福宮で暮らした。父・孝烈皇太子が急逝したため第二皇位継承権の叔父が帝位に就くと皇太子の位は従兄弟であるシンへと移行した。そして、母ファヨンと共に宮廷を追われた。それさえ無ければチェギョンの許嫁は本来、義誠君と呼ばれたユルであった。そんな昔に思いを馳せながらシンは口を開いた
―――これで良かったの…?閉められた窓の外から聞こえる歓声のざわめきを感じながら、チェギョンはその小さな胸にもう何千回と問いかけた事柄を、再び取り出し、繰り返した。例え、答えが『NO』だとしても、引き戻すことなど不可能だと彼女には分かっていたけれども。「用意はできたかな?」男らしい声が聞こえ、チェギョンは振り返った。チェギョンが考えていたよりずっと近くに、シン王子が花婿らしい黒と白の完璧な装いで立っていた。「ええ、殿下」長く豊かな睫毛が、チェギョンの美しい薄茶色の瞳を覆い隠してしま
友人達はそれぞれに昔語りを始める。春の庭は開放され時折冷たい風が邸内を駆け巡る。『あのさ、妃宮様。。』『ファン君?』『あー、、えっと…こないだシンに電話かけさせたの俺。最近発掘した新人女優…まぁけど…ごめんな。知らなくて。そんな事になってるとは…ただ本当にアイツ…シンが元気なかったのは気になったからさ。』非礼を詫びに来たシンの友人にチェギョンは微笑んだ。『…私が居なくても。シン君には大事な友達もいるし。大丈夫かと思ってた』『なになに?シンの話?』ギョンとインもやって来る。『そう
『シン!チェギョンっ!』女皇帝陛下になった筈のへミョンは二人に駆け寄った。つい二、三日前に公務に赴く前の挨拶をかわした無表情な弟よりも、久方の義妹、チェギョンに飛び付いた。『女皇帝陛下!陛下がそんな事でどうしますかっ?』柱の影から皇太后が顔を出す。『わ、母上じゃなくて皇太后陛下いいじゃない姉妹の久々の再会よ?ここは家族の部屋なんだから!さぁ、入ってシンも母上とあれ?父上は?妃宮知ってる?』『あ、、はい。あれ?先程までこちらまでご一緒して・・』妃宮はいつの間にか消えてしまった舅を
『尚宮お姉さん…どうしよう…』肩にかかる髪が風に揺れる。俯き、拗ねたように唇を尖らせた。『どうなさいましたか?妃宮様…』従うべき主の気持ちの浮沈を敏感に感じとるのも皇太子妃に仕える尚宮の仕事。本音を隠した主人の心の機微を察知するのは至難の技である。特にイ・シンに於いてはコン内官にしか見せない心の内がある。内官の宮での信頼感はそこからも伺い知れる。しかし、チェ尚宮は平然を取り繕う。チェギョンの感情の起伏を平坦にすべく考案したのはチェギョンの悩みについて感情を入れないこ
シンとチェギョンはいつもの朝を迎えていた。先に目覚めたシンは傍らの妻を眺めている。『ん…。』覚醒しそうな妻をその胸に抱き寄せた。額にかかる前髪を指で流し、むきだしになった丸みに口付けてみるが肝心のチェギョンは微動だにせず。しかしてどういう訳か日々愛しさに拍車がかかり止まる事を知らない。『まずいな…好きになりすぎる。。』呟いた。『シン…くんもっと……たい』腕の中のチェギョンが絡みついて来るので更に目が覚める『ん?!』何の夢を見ているのだろうか、それにしても押し付けるはだけた胸
『結婚しないか』ある日の午後、無人の教室の片隅で彼女に告げた。ヒョリンは瞳を丸くして、それでも冷静に答えた。『私達はまだ学生よ?』確かに彼女の言う通り、現実的に無理がある。皇族の結婚は早く黙っていれば勝手に妃を決められる。宮家の言いなりになり知らない女と結婚するのは癪に触る。皇太子という特殊な立場故に一般的な常識が皆無かまたは欠如した思考に陥りやすかった。『結婚』の発言自体、皇太子として生きてきたシンにして余りに突発的である。ヒョリンからすれば驚いて当然の申し出だった。厳しいしきた
『ウッティレート医師、チェギョンが妊娠とは確かなんですか?確かだとしても何か他に病気があるわけではないのですか?頻繁に倒れるのは何か』『いえ、妊娠初期は様々な症状がでます。妃宮様の場合は典型的と言えば典型的ですが数値も著しく悪い訳ではありません、、食事が摂取出来ない事が何より心配ですがでは、殿下見てみますか?』『見てって…見れるのか?だったら是非』『妃宮様先程は見られるのはお嫌だと言われましたがどうされますか?』『だって恥ずかしいし』『何が恥ずかしいんだ!』『だって』『先生お願いし
無事に7年とちょっと越しのその後物語を書き終える事ができ、非常にスッキリした気持ちです。思えば、宮を見終えてからが始まりでした。2周、3周する内に、続きが見たいと願うようになりました。その後物語はラストだけが頭に浮かんでいてそこに向かって書き出したわけです。最終的な終着はここに。。それだけを念頭に書き始めておいて気付けばあちこちのドラマにうつつを抜かし、寄り道しまくりでなかなか進めなくなり、そうこうしている内に内容を忘れてしまったという救いようがないパボな私が悪い訳ですが…今思えば必
「ねえ」妻のチェギョンが、シンの耳元で小さく囁いた。珍しく何も予定のない休日。使用人たちも、「今日はのんびりするように」と臨時の休暇を与えた。ブランチをシェフに作り置きをしてもらい、自分たち夫婦の寝室へ運んだ。妙に静まり返った家で、シンは愛用のソファに腰を下ろし、前から読みたかった本を開いていた。すると、ほっそりとした腕が彼の背後から伸びてきて、背中に妻の重みを感じた。シンは口の端をあげて微笑んだ。そろそろ可愛い妻が甘えてくるだろと踏んでいたのだ。彼の思った通りの行動をするチェギョンが、
診察の時間外、静かな待合でヒョリンの落ち着いたトーンの声が響いた。『…順を追って説明するわね。シン、いまの貴方は呆れるくらいに理性的ではないわ。。チェギョンの事だから仕方ないのかもしれないけれど』一瞬見せた寂し気な表情を今度は深呼吸とともに切り替え、凛とした目を向けた。『まず、今日の正午頃、私はインを迎えに行った空港で、すれ違い様に倒れた人がいて助けたの…それがチェギョンだった…』『倒れた?』なんの報告もなかったと無言で鋭い視線を尚宮へ投げるシン『…えぇ』『…尚宮、お前の仕事は何だ
夜風がタイの街を駆ける。街路には国花でもあるゴールデンシャワーがひしめき咲いている。透けそうな白い茉莉花は風に揺れ夜露が香りを幾分薄め鼻腔を擽る。辺りは水気を帯びた土の香りを漂わせ、一層不可解な夜を創造する。タイ訪問の公務の最中、シンは母国を追われた従兄、ユルと再会を果たした。ホテルの一室、広いリビングに置かれた長いソファに腰かけ、窓辺に立つ従兄を静かに見つめた。『皇太后様が体調を崩されたとは…容態は大丈夫なのか?』本気で心配しているユルをシンは不思議に思う。何故、彼が叔父や叔母で
『陛下…申し訳ございません。今少し宜しいですか?』束の間、机上の家族写真を眺めながらシンは一息ついていた。コン内官が声を掛ける寸前迄脳裏に影が蠢くのを何の予感だろうかと考えあぐねいていた。コレはチェギョンの危機の際に起きるサインの様なもので、神の啓示にも思える。【嫌な予感】はこれまで大抵当たってきた。陰謀に巻き込まれそうな時、現代から彼女の存在が一時的に消える前。脳裏に黒い霞がかかるのだ。『ん、なんだ内官。一息ついていたから大丈夫だ。私からも聞きたい事がある』『はっ、何かございましたか
チェギョンは頬を膨らませ、プリプリ怒りながら戻ってきた。まるでシンの不機嫌がチェギョンに伝染したみたいだ。「シン、すごく機嫌が悪かったみたいだけど、何の用だったの?」「全く…どうもこうもないわよ。あの横暴王子ったら何て言ったと思う?『お前は皇太子妃なんだぞ。俺以外の男とベタベタ馴れ馴れしくするな!二人きりになるな!』だって。」「本当にシンがそう言ったの?」まさか…嘘だろ?あの能面みたいな奴がそんなこと…「そうよ。馬っ鹿みたい…だって俺以外ってユル君だよ?
宮にはすっかり静けさが戻っていた。春の祝宴会は追放から帰還した妃宮の為の催しであり、誰もがその突然の帰還に納得し祝福した。その一日を緊張で過ごしたチェギョンには疲労の表情が現れていたが数日経っても体調は優れぬままだった。シンは事を性急に動かした事に後悔の念が走る。一刻も早く妃宮の帰還を人々に認めて欲しかった。祝宴の後の晩餐会は殆どが仲間内での集まりであった。チェギョンの弟はシンの友人ファンと意気投合し、ガンヒョンは相変わらず冷たくギョンを遇らうが其処には一方通行ではない何かがあった。ヒ