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診察の時間外、静かな待合でヒョリンの落ち着いたトーンの声が響いた。『…順を追って説明するわね。シン、いまの貴方は呆れるくらいに理性的ではないわ。。チェギョンの事だから仕方ないのかもしれないけれど』一瞬見せた寂し気な表情を今度は深呼吸とともに切り替え、凛とした目を向けた。『まず、今日の正午頃、私はインを迎えに行った空港で、すれ違い様に倒れた人がいて助けたの…それがチェギョンだった…』『倒れた?』なんの報告もなかったと無言で鋭い視線を尚宮へ投げるシン『…えぇ』『…尚宮、お前の仕事は何だ
それは思い返せば奇妙な出来事だった。いつもの朝、いつもの風景ではあったが何処か空気が違う。シンは目覚めて感じた胸騒ぎにすぐ傍で安らかに眠るチェギョンの手を握りしめた。『…ん…シン君?どうしたの?』『いや、、何となく…寒くないか?』『大丈夫…もう少し…このままで』?『ん?』『だから、もう少しこのまんまでいたいなって…離れたくないの…』チェギョンは腰に腕を回すと顔を隠すようにシンの胸に丸くなった。『…尚宮から聞いたか?今日の午後は国立博物館の竣工パーティーがあるが…来れそうか?』
『結婚しないか』ある日の午後、無人の教室の片隅で彼女に告げた。ヒョリンは瞳を丸くして、それでも冷静に答えた。『私達はまだ学生よ?』確かに彼女の言う通り、現実的に無理がある。皇族の結婚は早く黙っていれば勝手に妃を決められる。宮家の言いなりになり知らない女と結婚するのは癪に触る。皇太子という特殊な立場故に一般的な常識が皆無かまたは欠如した思考に陥りやすかった。『結婚』の発言自体、皇太子として生きてきたシンにして余りに突発的である。ヒョリンからすれば驚いて当然の申し出だった。厳しいしきた
『尚宮お姉さん…どうしよう…』肩にかかる髪が風に揺れる。俯き、拗ねたように唇を尖らせた。『どうなさいましたか?妃宮様…』従うべき主の気持ちの浮沈を敏感に感じとるのも皇太子妃に仕える尚宮の仕事。本音を隠した主人の心の機微を察知するのは至難の技である。特にイ・シンに於いてはコン内官にしか見せない心の内がある。内官の宮での信頼感はそこからも伺い知れる。しかし、チェ尚宮は平然を取り繕う。チェギョンの感情の起伏を平坦にすべく考案したのはチェギョンの悩みについて感情を入れないこ
久々の東宮殿はあの頃より増して開放感のある明るい佇まいを見せた。この空間との別れを、チェギョンは惜しむ間も与えられないまま取り急ぎ宮を去った。騒動の渦中に泡沫のように消える事を余儀なくされた。思い出の残るこの場所に再び舞い戻った。緊張した面持ちで、チェギョンはかって知ったる石畳を歩いた。『足元、気をつけろ』『分かってる!』過干渉な夫に辟易しながら辺りを見渡した。いつ何時、主である妃宮が戻ってきても良いようにと女官達が甲斐甲斐しく毎日の手入れに気遣っていた証拠が其処彼処に伺える。『妃
天井を仰ぐチェギョンは胸が軋み、切り刻まれた様な痛みが襲っていた。紛れもなく今我が身が存在するのは、久方ぶりの【妃宮の部屋】。宮家に嫁し、東宮妃として此処に迎えられたばかりのあの頃と寸分変わりはなかった。だが、今は随分と変わって見える。ここだけでなく、目に映る全てが何処か違って見え心許ない気持ちを味わう。『他人の部屋みたいだわ…』呟くとチェギョンは孤独感を払拭するように臍より僅かに下った部分にそっと手を当て、ホッと一息の深呼吸で精神の安定を図った。シンは新婚らしい夫婦の睦みも味わう前に
チェギョンは改めて皇帝陛下である義姉、へミョンに呼ばれ、彼女の自室にいた。皇太子のスキャンダル、妃宮と義従兄ユルとの噂、皇太子夫妻の不仲説が王室を揺るがし、廃位、廃妃問題が勃発した。義誠大君との権力争いから宮廷内での放火事件まで起き、それを収める為にチェギョンは国を出た。皇太子妃の不在の間、さぞ王室は無事に平静を取り戻しただろうと想像していた。しかし、へミョンによれば、世論の反感緩和は一筋縄ではいかなかったらしい。『考えが甘かったみたいね…貴方を国から追い出せば反省したと国民は皇室を許すだ
季節は移る。宮殿内を吹き抜ける風は暑さを和らげていく。かつて顔を合わせば良くない感情を互いに向け合っていた幼い皇太子夫妻は今はなく、紆余曲折の後徐々に溶け合い、今では側近達が困惑するほどの熱愛ぶりである。公務の合間を縫っては妊娠中の妻の様子を見に東宮に戻る。愛妻家の夫となったシンを内官は感慨に浸り見ていた。2人の住む洋風の建物は王朝文化からはかけ離れてはいるもののこの宮廷に新しい風を運んだ新婚夫婦らしいものだと内官は返り見ると1人頷いた。『コン内官…』硬い表情で公務を終えたシンが内官に
『明日ね…』『あぁ、明日…』シンとの電話を切った直後からチェギョンは言い知れぬ不安に襲われていた。『妃宮様?』無言のまま携帯を耳に付け静止した妃宮にチェ尚宮は声をかけた。『妃宮様、どうかなさいましたか?何か心配事でも…』尚宮の声に気付く気配もなくゆるやかに長い髪を不安に揺らしながら主は携帯を見つめる。それから気を取り直したように顔を上げると再び携帯を耳に当てた。『あ…もしもし…お久しぶりです・・コン内官?チェギョンです…。はい。私も尚宮も元気ですよ。え?シン君が画像を?・・ありが
温洋御用邸は昨夜からの強風から開放され穏やかな朝を迎えていた。庭の柳はしなやかに名残の風に揺れている。滴る雫が朝日に輝いていた。『ミン…ミンはいるか…あ、いや皇太后?』『どうされましたか?陛下…今朝は随分とお早いですね』虫の知らせか、邸内の空気の異変を察知した前皇帝陛下は妻を呼んだ。寝所の戸が僅かに開くと、夫を招き入れた。『あ、いや…今日はやけに外が騒がしく感じて…そう思いませんか?』『……そうでしょうか…私には何も。ただ、久方に妃宮の夢を見ました…』『妃宮の?一体どんな夢か聞か
宮は薄暗い雲に包囲されているようだった。現に後日ある一定の時間、宮の上空の雲が渦を巻いていたと世間を騒がせた。チェギョンはシンや慌ただしく消えたヨナを思い不安を覚えていた。『お前はここにいろですって。。。何よ…ヨナは私の友人よ!』意を決すると立ち上がる。シンはヨンジンなる青年に対峙していた。コン内官も然り。『君は何処からきたんだ?』『どこから…って…まぁマカオに住む前はこの辺りだけど』『先程、姉上からの連絡で分かったことだが、防犯カメラを解析した。この東宮殿へは正門からの訪問では
夜風がタイの街を駆ける。街路には国花でもあるゴールデンシャワーがひしめき咲いている。透けそうな白い茉莉花は風に揺れ夜露が香りを幾分薄め鼻腔を擽る。辺りは水気を帯びた土の香りを漂わせ、一層不可解な夜を創造する。タイ訪問の公務の最中、シンは母国を追われた従兄、ユルと再会を果たした。ホテルの一室、広いリビングに置かれた長いソファに腰かけ、窓辺に立つ従兄を静かに見つめた。『皇太后様が体調を崩されたとは…容態は大丈夫なのか?』本気で心配しているユルをシンは不思議に思う。何故、彼が叔父や叔母で
『ウッティレート医師、チェギョンが妊娠とは確かなんですか?確かだとしても何か他に病気があるわけではないのですか?頻繁に倒れるのは何か』『いえ、妊娠初期は様々な症状がでます。妃宮様の場合は典型的と言えば典型的ですが数値も著しく悪い訳ではありません、、食事が摂取出来ない事が何より心配ですがでは、殿下見てみますか?』『見てって…見れるのか?だったら是非』『妃宮様先程は見られるのはお嫌だと言われましたがどうされますか?』『だって恥ずかしいし』『何が恥ずかしいんだ!』『だって』『先生お願いし
初めてみんなでお昼ご飯を食べた日以降、毎日昼休みには裏庭に集まっていた。あの日の宣言通りに、それからのギョンはガンヒョンを見かけると突進を繰り返した。誰が見てもわかるぐらいに、好き好きオーラ全開でだ。あまりの勢いに、最初は本気で呆れていたガンヒョンも、少しづつ心を開いていく様子を見せる。そのギョンを側で笑いながら見ているシン達が、ガンヒョンの友達達と仲良くなっていくのも自然な流れだった。まわりで、シン達を憧れの眼差しで見ている女子達には、それがとても妬ましく、とても羨ましかったのだが、さ
むせるような花の香りと水気を帯びた熱い空気が辺りを包んでいた。観衆の見守る中、専用機のタラップを静かに下りる。近付いてきた一人の少女が小さな花の束を差し出す。受け取ると感謝の挨拶をする。少女ははにかみながら笑顔で手を振った。いつか見た光景と重なる。眩しく輝く太陽の下、シンは目を細めた。『殿下、この後歓迎の儀が行われ、パレード、それからホテルへと参ります』コン内官は簡単なスケジュールを伝えた。『あぁ、分かった・・』人々は大きく手を振りシンを歓迎していた。かつては皇太子としてこの国
公務を終え帰路に着いたシンは静かな筈の東宮の奥から聞こえる不自然な音に不審を感じながら更に歩みを進めた。この広い宮殿の中でも二人の新居となった東宮は珍しく洋風に造られている。周辺は父が帝位についたと同時に入宮し、幼き頃より慣れ親しんだ景色。当然ながら建造物はどれも歴史的な価値がある。丹青の彩と白い砂、赤松、柳、ハンノキ…深き緑に普段なら癒される。妃宮との安らぎの場所でもある。中央のパティオから左右に夫妻のそれぞれの部屋がある。一先ずは原因を突き止めようと妻の部屋に向かう。『!!』入り
シンが学校に到着し、車を降りるといつものメンバーが迎えてくれる。前は御曹司達だけだったのだが、最近はギョンが無理やり引っ張って来る形で、ガンヒョン達も一緒にいる様になった。朝からチェギョンに会い挨拶をすると、今日一日のヤル気が湧いて来るので、シンはとても楽しみにしているのだが、チェギョンは寝坊して遅れて来ることも多かった。そういう時は無意識になのだが、チェギョンが来るまで雑談をしながらも、その場を離れない。仲間もわかっているので何も言わずに付き合ってくれる。今日もそんな一日の始まりだっ
ようこそ♪こちら「FirstStep」は韓国ドラマ「宮~LoveinPalace」で出会った「シン君&チェギョン」こと…「チュ・ジフン君&ユン・ウネちゃん」が大好きな管理人による戯言だらけのブログです。ふたり一緒にお好きな方~どうぞお立ち寄り下さい何があっても『シン君&チェギョン』は永遠で…何があっても『ジフニウ
宮にはすっかり静けさが戻っていた。春の祝宴会は追放から帰還した妃宮の為の催しであり、誰もがその突然の帰還に納得し祝福した。その一日を緊張で過ごしたチェギョンには疲労の表情が現れていたが数日経っても体調は優れぬままだった。シンは事を性急に動かした事に後悔の念が走る。一刻も早く妃宮の帰還を人々に認めて欲しかった。祝宴の後の晩餐会は殆どが仲間内での集まりであった。チェギョンの弟はシンの友人ファンと意気投合し、ガンヒョンは相変わらず冷たくギョンを遇らうが其処には一方通行ではない何かがあった。ヒ
登校するために公用車に乗り込むと、チェギョンからメールが届いた。〈シン君、アンニョン。今日は、いつもより早起きをして登校したの。これから、ガンヒョン達に、シン君との話しをするね。隠していたことになるから、少しだけドキドキするよー(>_<)ちゃんと伝わるかな?〉〈おはようチェギョン。随分早いな。俺は登校中の車の中だ。大丈夫、彼女達ならきっと理解してくれるよ。今日からお昼を一緒にとるから、その時に俺からも詳しく話すよ〉〈うん、シン君ありがとう。じゃあ頑張ってきまーす(^o^)/〉昨日からずっ
日の落ちた東宮殿は女官や内官が慌ただしく行き交う。『いたか?』厳しい口調で女官の一人を呼び止め、女官は思わず肩を竦めた。『いえ…殿下申し訳ありません…』女官は深々と頭を下げる。『……』自室を右往左往し、更に思いついた様に突然チェギョンの部屋へ向かうシン。大きな音を立て扉を開く『…何処に行った!』シンは立ち止まるとチェギョンのベッドへ腰を下ろす。天井、カーテン、部屋の様子を見渡すと溜息を漏らした。彼女が帰還した途端に色彩を取り戻した妃宮の部屋に改めて妻の存在感を知る。『…チ
いつもより随分早い時間に学校に着いた。昨日はなかなか寝付けず、朝も目覚まし時計が鳴る前に目が覚めた。思っても見なかった展開に、心も体も少しパニック状態なのだろう。このまま二度寝をしてしまうと、遅刻するのは必須なので、そのまま早めに登校をした。ガンヒョンはクラスでも一番ぐらいに登校が早い。ヒスンとスニョンは、毎朝シン君のお出迎えをするために、これまた早い。せっかくの早起きを無駄にしないためにも、“HR前にシン君との話しをしよう”と思い家を出た。季節がいいので、自転車を漕ぐ足取りも軽い。ド
なんだか憂いを忘れ、いつも以上に楽しくお弁当を食べた。チェギョン「ふあー、ごちそうさまでした。美味しかったね。でも、さすがにちょっと食べ過ぎたかも」スニョン「全員のお弁当のおかずを取っちゃうんだもん。明らかに食べ過ぎだよ」ガンヒョン「お腹を壊しても知らないわよ」チェギョン「へへへっ」お弁当を片付け終わったギョンがいきなり立ち上がり頭を下げる。ギョン「チェギョンごめん。ガンヒョンからのメールに〈殿下には内緒に〉って書いてたのに迂闊にもシンの前で読み上げちゃって内容をバラして
今年のパーティ会場は、天気に恵まれたこともあり、皇室リゾートの中央にある中庭でのガーデンパーティとなった。参加する人のほとんどがソウルから移動してくることを考慮し、開始時刻は2時スタートで、終了時間に関してははっきりと決まっていない。毎年、参加者のほとんどが宿泊をするし、パーティの間は皇室リゾート全体を解放しているため、各自が思い思いに楽しんでいる。ただ、その際にも皇室専用の施設に関しては解放されておらず、シンは毎年息が詰まると皇室専用の施設に逃げ込み一息つくのが常であった。チェギョン達が
校長「では、1時間目を使い講堂にて全校集会を開きます。その後、彼らはクラスの変わる生徒と担任に引き合わせ、新しいクラスに移動してもらいます。ご両親はここでお帰り頂いて結構です。ご足労ありがとうございました。」両親達「「「「どうかよろしくお願いします。」」」」チェギョン「オッパはどうするの?私たちの保護者がわりなんでしょ(笑)」ジノン「姫、いい加減にしろよ。もう大丈夫だろうから、ここで失礼するよ。そろそろ会社にも顔を出さないといけないし、こっちの始末もあるからな。」チェギョン「こ
得体の知れない不安におそわれたままのチェギョンは今しがた去っていった青年ヨナを思っていた。『他人じゃない…』単に弟に似ているだけではない。。夫シンが嫉妬心に苛まれる程、チェギョンの中でヨナという青年にはどこか近しい感覚を覚えていた。しかし、去り行く真際にチェギョンに接近した事で、チェギョンは全くあり得ない事に気付いてしまった。『そう…だってシン君に似てるのよ…似てる訳ないけど…でも似てる…』不可解で霧の峠を歩んでいるように不思議な感覚である。雲の中にいるようで、それでいて意識はハッキ
1人東宮殿で残されたチェギョンは除け者にされた様で時間の経過と共に苛立ちが増加していた。『大体、ヨナは私の友達よ?なんでシン君がつれてくのよ…』半ば開き直りで友人を救出に向かう気持ちで邸を後にした。『妃宮様、お出掛けでしたらお車で…私どももお供致します』ボディガードであるイギサの1人がチェギョンの足を止めた。『……ええ。お願いするわ。車回してください』『はい。ただ今』『とりあえず待ってるから早くしてね。あ、それから、私の部屋にある赤い箱を持ってきて貰いたいの』『赤い箱ですか?』
それからのシンは、自習や実習、お昼休みなど、時間ができるとあの空き教室に向かっていた。“課題の絵はできるだけ見て描きたい”とチェギョンが言っていたので、姿を見かけることができるかもと思っての行動だ。ギョン達もシンに付き合って、空き教室にいることが多くなった。ただ、切なげに見つめるだけのシンに何か出来ないかと模索していた。ある日のお昼休み、チェギョンが絵を描いている横には何時ものように友達がいた。急に突風が吹き、きゃあきゃあと大騒ぎしている。その中の一人、ロングヘアーの子が眼鏡を外し埃を
スニョン「ねえ、おじさんの会社は?どうなったの?」チェギョン「それも返ってくるみたい。借金返済中に騙されて取り上げられた物だから、こちらに非はないんだし、お金もね、本来払うべき人が逃げていたのを見つけてくれて、その人が返済していくんだって。だから、今までアッパが払っていた分がほとんど返ってきそうなの。せっせと払ってた分が返ってくるから、一気にお金持ちになっちゃうかも」ガンヒョン「尹申(ゆしん)食品のキムチ、おじさんが手放してから味が変わっちゃったもの。また、美味しくなるね」チェギョン「ふふ
チェギョンは頬を膨らませ、プリプリ怒りながら戻ってきた。まるでシンの不機嫌がチェギョンに伝染したみたいだ。「シン、すごく機嫌が悪かったみたいだけど、何の用だったの?」「全く…どうもこうもないわよ。あの横暴王子ったら何て言ったと思う?『お前は皇太子妃なんだぞ。俺以外の男とベタベタ馴れ馴れしくするな!二人きりになるな!』だって。」「本当にシンがそう言ったの?」まさか…嘘だろ?あの能面みたいな奴がそんなこと…「そうよ。馬っ鹿みたい…だって俺以外ってユル君だよ?