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宮にはすっかり静けさが戻っていた。春の祝宴会は追放から帰還した妃宮の為の催しであり、誰もがその突然の帰還に納得し祝福した。その一日を緊張で過ごしたチェギョンには疲労の表情が現れていたが数日経っても体調は優れぬままだった。シンは事を性急に動かした事に後悔の念が走る。一刻も早く妃宮の帰還を人々に認めて欲しかった。祝宴の後の晩餐会は殆どが仲間内での集まりであった。チェギョンの弟はシンの友人ファンと意気投合し、ガンヒョンは相変わらず冷たくギョンを遇らうが其処には一方通行ではない何かがあった。ヒ
チェギョンは改めて皇帝陛下である義姉、へミョンに呼ばれ、彼女の自室にいた。皇太子のスキャンダル、妃宮と義従兄ユルとの噂、皇太子夫妻の不仲説が王室を揺るがし、廃位、廃妃問題が勃発した。義誠大君との権力争いから宮廷内での放火事件まで起き、それを収める為にチェギョンは国を出た。皇太子妃の不在の間、さぞ王室は無事に平静を取り戻しただろうと想像していた。しかし、へミョンによれば、世論の反感緩和は一筋縄ではいかなかったらしい。『考えが甘かったみたいね…貴方を国から追い出せば反省したと国民は皇室を許すだ
シンの滞在するホテルの一室。一際重厚な扉の前には物々しい雰囲気で護衛官・イギサが立つ。チェギョンにも本国では三名の女性イギサが付く。タイへの公務中のシンを訪ねたユルはかつて皇太子だった。僅か5歳の頃まで皇太子として景福宮で暮らした。父・孝烈皇太子が急逝したため第二皇位継承権の叔父が帝位に就くと皇太子の位は従兄弟であるシンへと移行した。そして、母ファヨンと共に宮廷を追われた。それさえ無ければチェギョンの許嫁は本来、義誠君と呼ばれたユルであった。そんな昔に思いを馳せながらシンは口を開いた
それは思い返せば奇妙な出来事だった。いつもの朝、いつもの風景ではあったが何処か空気が違う。シンは目覚めて感じた胸騒ぎにすぐ傍で安らかに眠るチェギョンの手を握りしめた。『…ん…シン君?どうしたの?』『いや、、何となく…寒くないか?』『大丈夫…もう少し…このままで』?『ん?』『だから、もう少しこのまんまでいたいなって…離れたくないの…』チェギョンは腰に腕を回すと顔を隠すようにシンの胸に丸くなった。『…尚宮から聞いたか?今日の午後は国立博物館の竣工パーティーがあるが…来れそうか?』
季節は移る。宮殿内を吹き抜ける風は暑さを和らげていく。かつて顔を合わせば良くない感情を互いに向け合っていた幼い皇太子夫妻は今はなく、紆余曲折の後徐々に溶け合い、今では側近達が困惑するほどの熱愛ぶりである。公務の合間を縫っては妊娠中の妻の様子を見に東宮に戻る。愛妻家の夫となったシンを内官は感慨に浸り見ていた。2人の住む洋風の建物は王朝文化からはかけ離れてはいるもののこの宮廷に新しい風を運んだ新婚夫婦らしいものだと内官は返り見ると1人頷いた。『コン内官…』硬い表情で公務を終えたシンが内官に
『改めまして本日は、この様な茶会に招いて頂き、ありがとうございます。妻、チェギョンです。この様な登場に皆様は大変驚かれたと思いますが、次代のこの国を担う子を授かり体調優れぬ中、私が一人にならぬ様に皆様に認めてもらいたい一心で参じた様です。これからも皆様の一員として宜しくお願いいたします。』シンはチェギョンを呼び寄せると、並び立つ。先程の厳しい表情とは打って変わって参加している人々が驚くほど柔らかな表情を見せた。『皆様。紹介いただきましたチェギョンです。民間から嫁ぎ、躾も乏しくそぐわぬ私を長い
天井を仰ぐチェギョンは胸が軋み、切り刻まれた様な痛みが襲っていた。紛れもなく今我が身が存在するのは、久方ぶりの【妃宮の部屋】。宮家に嫁し、東宮妃として此処に迎えられたばかりのあの頃と寸分変わりはなかった。だが、今は随分と変わって見える。ここだけでなく、目に映る全てが何処か違って見え心許ない気持ちを味わう。『他人の部屋みたいだわ…』呟くとチェギョンは孤独感を払拭するように臍より僅かに下った部分にそっと手を当て、ホッと一息の深呼吸で精神の安定を図った。シンは新婚らしい夫婦の睦みも味わう前に
大役を任された父親は、迷う事なく妻に話す。「あの二人が一緒になる事は神の定めた運命だった!そして、ヨン君が明国を吹き飛ばしたときは神々しい神か仙人の様に思えた。二人離れ離れになった時はウンスは毎日星に願いを込めたと聞いた!よしっ!」父親はサラサラと名前を書いた。「まあ、お父さんさん!私は誉めた事ないけど、初めて誉めてあげるわ!素敵ね。」「なあ?母さん?そろそろだろうな?」「そうね。でも笑って送り出してあげましょう!いつでも行き来できるんだから。」「そうだよな。楽
「誰もいないかな」パーマー夫人には「ちょっとだけ散歩をしてくる」と告げて、チェギョンは以前迷い込んだ回廊に向かった。サンルームの扉を開け中を確かめると、彼女はほっと息を吐いた。一人になりたかったからだ。「じゃあ、ちょっと息抜きしちゃおう」彼女は大きく伸びをして深呼吸をした。少しずつ慣れてきた宮殿の生活。それでも時々息苦しくなることがある。ほんの少しだけ王太子妃『チェギョン妃』を脱ぎ捨てて、ただの『チェギョン・クライボーン』に戻りたいと思った時、彼女の頭に浮かんできたのはこの中庭だった。
宮廷内の庭を解放した春の祝宴会は宴もたけなわ。簡易の記者会見が終わると和やかな宴会に変わり国の要人達はシンとチェギョン夫妻に挨拶をと列が出来た。誰が見ても火を見るより明らかな歓待ぶりである。記者たちも誰が何番目に挨拶したと事細かに筆記していた。かつては孝烈皇太子の友人としてファヨンに手を貸していた記者もいた。皇室の信用を失墜させる事に加担した記者は国外へ逃亡を図る直前にシンに呼び出された。記者としての業界の信頼を無にし立場を追い、この国で一切の仕事が出来ないようにする事は造作もないが報
「シーンっ」若き王太子は自分の名を呼ぶ声がして、振り返った。白い宮殿の壁しか見ない。「シンったら、ここよ」顔を見なくとも彼にはわかった。王太子である自分を『シン』と呼ぶ女性は、この世でただ一人だけ―――彼の愛しい妻―――なのだから。王太子は手をかざして顔を上げた。彼の目に飛び込んできたのは、3階の窓から身を乗り出して自分へ手を振る妻のチェギョン妃だった。「チェギョン!危ないぞ」「大丈夫よ」―――何が大丈夫なもんか。こちらの気も知らないで。気が付くと彼は走り出していた。「シン?」
「バーニー!そんなに急がないで」チェギョンは嬉しそうに跳び跳ねながら先を急ぐ愛犬に向かって、声を張り上げた。バーニーが浮足立っている理由は、彼女と同じだ。本当に久しぶりに厩舎へ行くことができるから。バーニーは厩舎にいる馬たちとすっかり仲良くなり、もしかしたら自分も“犬ではなく馬だ”と思い込んでいるかもしれない。時々、シンが乗馬をする時にお供させてもらっていたけれども、チェギョンと一緒なのは数か月ぶり。以前のように軽やかな足取りでは進めないチェギョンだけれども、ぼこぼこした地面の感触を楽しみ
シンはちらりと掛け時計を見た。チェギョンがバスルームにこもってから、そろそろ1時間が経つ。耳を澄ますと、ドライヤーの音も聞こえるような気がする。ということは、あと少しで彼女のバスタイムが終わると言うことだろう。腰をもぞもぞ動かし、姿勢を正した。とはいえ、ここは自室なのだ。リラックスした姿でなければ変に思われてしまう。チェギョンを宮殿に泊めることは、シンにとって喜びと安心を感じることではあるが、その一方である種の忍耐の時間でもあった。彼女は純粋無垢な女性であり、シンの過去の恋人たちのように
『結婚しないか』ある日の午後、無人の教室の片隅で彼女に告げた。ヒョリンは瞳を丸くして、それでも冷静に答えた。『私達はまだ学生よ?』確かに彼女の言う通り、現実的に無理がある。皇族の結婚は早く黙っていれば勝手に妃を決められる。宮家の言いなりになり知らない女と結婚するのは癪に触る。皇太子という特殊な立場故に一般的な常識が皆無かまたは欠如した思考に陥りやすかった。『結婚』の発言自体、皇太子として生きてきたシンにして余りに突発的である。ヒョリンからすれば驚いて当然の申し出だった。厳しいしきた
ささやかな目映い光が部屋の中央まで射し込んでいる。東宮の朝は以前と同じ女官や尚宮、内官が集まり賑わいを見せていた。女官の一人が不安気な面持ちで内官へ駆け寄る。『申し上げます。』『ん?何かありましたか?』『はい…実は…』話し始めた女官を差し置き、昨夜を思い出す内官。『殿下は昨夜雨に濡れた様子であったな…風邪など召されてないといいが……。チェ尚宮、念の為お二人に薬湯を用意しておいた方が良いかも知れぬ…』チェギョンの準備に忙しい尚宮を呼び止めた。『はい。コン内官。すぐに準備させます
友人達はそれぞれに昔語りを始める。春の庭は開放され時折冷たい風が邸内を駆け巡る。『あのさ、妃宮様。。』『ファン君?』『あー、、えっと…こないだシンに電話かけさせたの俺。最近発掘した新人女優…まぁけど…ごめんな。知らなくて。そんな事になってるとは…ただ本当にアイツ…シンが元気なかったのは気になったからさ。』非礼を詫びに来たシンの友人にチェギョンは微笑んだ。『…私が居なくても。シン君には大事な友達もいるし。大丈夫かと思ってた』『なになに?シンの話?』ギョンとインもやって来る。『そう
不二家のお菓子を購入しました今回、買ったのはこちら「カントリーマアムシン・チビじわーるバター」税込151円実売価格・税込151円2024年4月6日購入↑セブン-イレブンのホームページに情報が掲載されていて…近所のセブンで購入しました裏面43g入りで1袋当たり209kcal、秦野工場の製造です〝じわーるくん〟の散歩についてきてしまった〝チビじわーる〟も進化して〝真〟の姿になってしまったらしい…開封するとバターのいい香り、8個入っていました小さくてもしっかりとホ
日の落ちた東宮殿は女官や内官が慌ただしく行き交う。『いたか?』厳しい口調で女官の一人を呼び止め、女官は思わず肩を竦めた。『いえ…殿下申し訳ありません…』女官は深々と頭を下げる。『……』自室を右往左往し、更に思いついた様に突然チェギョンの部屋へ向かうシン。大きな音を立て扉を開く『…何処に行った!』シンは立ち止まるとチェギョンのベッドへ腰を下ろす。天井、カーテン、部屋の様子を見渡すと溜息を漏らした。彼女が帰還した途端に色彩を取り戻した妃宮の部屋に改めて妻の存在感を知る。『…チ
朝から上機嫌のチェギョン。それはシンからお土産で貰ったネックレスを付けているから。朝の挨拶で目敏くそれを見つけたのはヘミョンだった。「あら!どうしたの?素敵なネックレスね、チェギョン」「ありがとうございます!シン君から頂いたんです!」一気に視線がシンに集中する。「どういう事?え?お土産?私達には?え?ないの?嘘でしょ?出しなさいよ!ホラ!!」ヘミョンの尋問は恐ろしいもので、親であっても中々止めに入る事ができなかった。お土産だと言ってしまったチェギョンも、言
【ずっと君だけを】より待ち合わせのホテルの一室で、夫のシンの後姿を見たチェギョンは、小走りに彼に近寄りその背中に抱き付いた。「シン君」「早かったね」「だって、シンクンに早く会いたかった」夫が身をよじりながら、チェギョンを胸に抱いてくれた。「朝、玄関で別れただけだろう?」「うぅぅんっ、それでも会いたいの。意地悪言わないで」チェギョンが口を尖らすと、シンが優しくキスをしてくれた。「早く会いたくて急いで支度したのよ。バーバラ夫人が『まだ早すぎますよ』ってストップかけたから、3
らぶばなです。BANANAFISH〈4〉マックス・ロボの手記のレビューもとうとう最終です。やんわりネタバレ&個人的な意見や驚いたことなどを語っていますのでご注意下さい。お付き合いいただければ幸いです。アニメが終わり、アッシュロス、バナナロスで凹んでいる方には、ぜひ手記を読んでもらいたいなと強く願っています。BANANAFISH〈4〉マックス・ロボの手記まずはじめに、バナナフィッシュ事件後マックスの人間関係が変わったことが書かれています。原作ではほとんど接点のなかった「ある
最初の最初から、シーンゆえ、こちらから、飛んでください…。あ、ちなみに、すごく久しぶりに、オリジナルブログのほうも、エリーナ&ブラッドの話を更新していますいつか振り向いて8(シンチェversion)-シン&チェギョンversionシンの体が強くチェギョンを突き上げた後、彼は震えそれから妻の体に倒れ込んできた。チェギョンは夫の汗ばんだ大きな体に押され、マットレスに深く沈み込みながら、ひどく満足している自分に気が付いた。シンが経験豊かな夫だからだ。彼に対してよい感情を自分が持っ
無事に7年とちょっと越しのその後物語を書き終える事ができ、非常にスッキリした気持ちです。思えば、宮を見終えてからが始まりでした。2周、3周する内に、続きが見たいと願うようになりました。その後物語はラストだけが頭に浮かんでいてそこに向かって書き出したわけです。最終的な終着はここに。。それだけを念頭に書き始めておいて気付けばあちこちのドラマにうつつを抜かし、寄り道しまくりでなかなか進めなくなり、そうこうしている内に内容を忘れてしまったという救いようがないパボな私が悪い訳ですが…今思えば必
『昼寝』をしようと、確かに彼女はそう言った。しかし、その言葉の通りになるとは思ってもみなかった。シンは二人の大きなベッドでぐっすりと眠り込んでいるチェギョンの愛らしい顔を上から見下ろした。二人でベッドに潜り込み、妻の耳元でいつものように甘く囁きながら、1枚ずつその衣を脱がせる楽しみを味わっていたら、チェギョンの息が上がるどころか、深く胸が上下してることに気づいた。「まさか…?」妻の顔を見ると、小さく口をあけてスヤスヤと眠っているではないか。今日の仕事は彼女にとって、とても緊張を強いられ
不二家のお菓子を購入しました今回、買ったのはこちら「107gカントリーマアムシン・じわるバターミドルパック」オープンプライス実売価格・税込267円2024年3月26日購入近所のスーパーに大量に並んでいたのを購入しました以前に記事にしている「カントリーマアムじわるバター」にチョコチップが入り〝真〟の姿になったじわるバターとのこと(笑)庵野監督ばりに〝シン〟の文字が追加されています裏面1袋当たり107g(標準11枚)入りで1枚当たり47kcal、製造は神奈川県の秦野
どれほど眠ったのだろうか。目が覚めれば周りは薄暗くなっていた。「あ。起きた?調子はどう?」声のする方に顔を向けると、そこにはユルがいた。「来てたのか…」「うん、ついさっきね。チェギョンも戻ってるよ。今は妃教育に行ってる」ユルから“チェギョン”という言葉を聞いただけで眉間にチカラが入った。ユルもそれを見逃さない。「ねぇ、シン。病人に対して今こんな事言うのも申し訳ないんだけどさ…」「何だよ」「どうしてヒョリンにあんな事言ったのさ」「あんな事?」「そう。チェ
ドラマのその後物語を書く時は大体検証もやるんですが、今回の宮Loveinpalaceその後の場合は、物語と検証込みでやってます。例えば、ユルの本音やあの時にシンの行動をユルや私たち(視聴者)からどんなふうに見えていたか、その行動はなぜ起こしたのか。などを語らせてます。14話の終わりにシンは自分の中でチェギョンとヒョリンの違いや恋や愛についての疑問が生まれました。15話ではその答えを検証しながら描いています。宮の面白さは2周目からです。まず1周目から本質が見抜ける人はかなりclever
邢菲シン・フェイ【2020/05/31UP】※2023/09/19ドラマ追記邢菲(XingFei)シン・フェイ国:中国生年月日:October1,1994年齢:28(2022.10.01現在)まだ観れていない『あったかいロマンス』。なんでDATVだったのさぁ。。。どう頑張ってもスカパープレミアムは対応してない家だから、DVDレンタル待ちです。ワタシが観た&観たい彼女の出演ドラマ恶魔少爷别吻我第一季(MasterDevilDoNotKissMe/
チェギョンには本当に分からないのだろう。駆け引きでそう言っているのではないことは、彼女の表情で一目瞭然だった。彼女の優しい眉は下がり、大きな瞳は潤んでいるようにも見える。「答え方が分からない?それとも、他の理由?」シンは掴んだままの彼女の手をミルク色のドレスに乗せ、上から包み込むように自分の手をかぶせた。フルフルと頭を振る彼女。「あなたのことばかり頭に浮かぶの」ぽつりと彼女が小さく零した。ドキンと彼の胸が跳ねた。希望がジワリと広がっていく。「それなのに、あなたの姿を見たら、胸が苦しく
深い眠りから覚めたチェギョンは、目を開けた時に広がる風景に戸惑った。―――ここはどこ?見慣れない壁紙と見慣れない家具。それだけではない。目に映る風景だけではなく、嗅覚までも「何かが違う」と訴えてきた。自分の香りとは違う、青草のような爽やかな香りとわずかな男らしい汗の匂いを感じた。―――そう言えば昨日、私…。チェギョンの頭は一気に覚醒した。夫となったばかりのシンの大きなベッドに横たえられ、逞しい腕に抱きよせられた瞬間、一日の疲れが重くのしかかり、あっという間に夢の中へ入ってい