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医仙さまの身体から、はらりと絹地が落ちてきて…鞘全体を覆われてしまった。いつもなら、布が掛けられた時点で眠りに落ちるところだが、百年の時を経て精霊となったこの身の上。付喪神としての意地というものがある。睡魔に何とか競り勝った。ここからが本当の意味での勝負の分かれ目なのだ。勝ちに行くなら、柄頭だけでもこの布から逃れなくては。そ、それにしても、この布、大きすぎますって…by鬼剣@だんだん弱気に☆☆☆身体から、はらりとサリーが落ちていった。んん?ちゃん
服の袷をきゅーっと会わせるように着込み、赤い髪はきつく結ばれている。「今夜、秋夕でしょ?月がすっごく大きく見えるんだから。今度は、月の話しをしない?」一寸の隙もない装いをしたその女人(ひと)が、笑いかけるようにさりげなく、チェ・ヨンを誘った。何かあるな…直感がそう告げてくる。あの夜、目の前の女人(ひと)の唇にいきなり触れ、口移しで酔い覚ましを呑ませた。それも、何も告げずに、いきなりだ。酒は一滴も口にしていなかったから、酒神のいたずらで済むはずがない。
次の私の休みの日、ヨンは約束通り半休を取って、アン・ジェさんのお屋敷へ連れて行ってくれた。代々アン家は武人、チェ家は文人の家柄だとか……それでもお父様同士は仲良しだったから、当然アン・ジェさんとヨンも——「別に、普通でした。共に書堂に通い、剣術の稽古もして」……そういうのを幼馴染って言うのよ、ヨンァ。「へぇ。じゃあ、2人で庭の銀杏の木に登って、ギチョンに怒られたりしたの?」「……何故貴女がそれを……」「ヤダ、本当に?あはははっ!」ソニから聞いた昔話を膨らませてみたら、図星だった
天門をくぐることは二度と無い。だからこそ、ウンスはなんとしても両親に伝えたいのだ。元気でいる戻ることのない道を選んだ自分を許して、と。大問題が一つあるのよねここは、わたしが生まれて育った国じゃなくなって、簡単に行き来ができない場所になっちゃうだから開京じゃダメなのよ…なんて、あなたには言いたくないまずはこの時代の地理をちゃんと知っておくべきね知ってから、然るべき場所を探さなくちゃ!!!
こんばんは(*´∇`*)やっと週末ですね!「愛する人」時は現在に戻り、糖分高めでお送りします。(文字数が…やけに長くなりました)ではでは、いよいよ最終話!ということで、恒例の秘儀!コメ返しも致します(*^ω^*)ぜひ奮ってコメントプリーズ。笑その前に一つご連絡です。アメンバー申請くださった方、届いた申請は全て承認させていただいております。なぜか申請が届いてない方が数名いらっしゃるようで。゚(゚´ω`゚)゚。不具合なのかわかりませんが、もし申請したのに承認されていない
鴨緑江から戻り、安州軍営地へ王様を送り届けた俺は、そのままその御前に控えていた。「お話がございます。王様」そう言って頭を垂れた俺を見て、ヒジェがチュンソク達の背中を押して、人払いしながら外へ出て行く。「……どうしたのだ?改まって」ヒジェ達から目線を戻し、王様が不思議そうに俺を見る。「ご報告とお願いがございます」「何だ?」「この地に留まる事、王命をいただいておりましたが、此度は帰京のお許しをいただきたく。お戻りの供に加わりたいのです」「……それは、其方が居れば心強いが……ペ隊長が居
【少々過激と思われる表現があります】【拷問的なシーンに耐性のない方にはお勧めできません】「アン・ジェ護軍!チェ・ヨン大護軍がこちらに向かわれているそうです」「おう!ご苦労だった。お前達もう下がっていいぞ。あとは俺とチェ・ヨンの仕事だ」建屋まで言伝に来た直属の部下と牢番兵を下がらせると、俺は今から行われる糾問を見越して、鬱々とした思いで深色の冬空を仰いだ。「今夜は酒が必要になりそうだ…」城内の一角にあるこぢんまりとした建屋内には地下へと続く石階段があり、その先は石造りの地下牢へと繋
于達赤であること其の四※トクマンの野望〜逆手と順手を使いこなせるようになること〜逆手持ちとは柄頭が親指側に来て鍔元(ツバモト=切羽)付近を小指の下で握り小指の方向に刃が来る持ち方を指す順手に比べ手首関節の可動域が狭まるがその動きは圧倒的に速さを増すしかしながら、剣に力が入れ難く有利な動作以外は動きが鈍ることもしばしば「こうかな…」「それとも…こうだっけ?」「おっとっと」トクマンの手から剣がすべり落ち、ガチャンという音を
開京を出て、チェ家の本貫である鉄原(チョルオン)へ———。警戒に警戒を重ねながらの道中だったが、何事も無く、俺達一行は、無事鉄原へ到着した。ただ———街の入り口には人だかり。(俺の嫁取りを、歓迎してくれているらしい……)寺までの道すがらも、決して多くはない街の者達が、総出ではないかという程に、両脇に溜まっている。(少しは名の売れた、俺の嫁取りを歓迎して……)「こんなに人が集まっちまったら、怪しい奴が紛れててもわかんねぇよ!」護衛に加わっていたジホがボヤくのへ、「分家の皆様には、
迂達赤に稽古をつけた後、自室で身形を整えた俺は康安殿へと向かった。王様に暇を終えた報告と、北へ行く許しをいただく。王様のご様子といえば、このところ御前会議が長引いているらしい。それもそうだろう。元との関わりを今後どうしていくのか、キ皇后はどう出てくるのか……問題は山積みだ。いかさま、王様は宣仁殿(ソニンデン)からまだお戻りではなかった。出直そうと踵を返した俺に、「護軍が来たら会議の場に来るように、とのお言伝でございます」と、内官がうやうやしく言う。俺は己れにしかわからない程度に溜
サジュナが残ると言うので、頼んで、ウンスとヨンはバンとプンを抱いて帰る事にした。侍医が保育器が暖かい事に気づき「医仙様、保育器がまだ暖かいです」「たぶん、暫く暖かいと思うわでも、注意してね」と言うと王妃様が「此度のお産はバンとプンのおかげで痛みも然程なく、早く産む事ができた。誠に有難い。子供達は大丈夫かのお?」チェ尚宮も心配そうだ。「大丈夫です。充分に休ませます」ヨン、ウンス、トギ、テマンが屋敷に戻った。チソが「もうお産まれになったのですか?」「そうなのよ。バ
ここ数日降り続いた雨がいつの間にか止み、控えめな冬の日差しが顔を覗かせている。チェ・ヨンは回廊から空を仰ぎ、眩しそうにその眼を細めた。軍義に次ぐ軍義。それも、重臣とは名ばかりで、ああだこうだと己の立場を主張する者ばかり。今更だ…元では凶作が続き、統治体制そのものが揺れに揺れている。内乱の余波を浴び万が一戦ともなれば、王を案じるどころか、早々に私財をまとめ逃げる算段をするような輩達だ。「この開京が落ちることの無きよう、しっかりと守るためです」そう噛んで含めるように語彙
往診と茶話会を終え、私はトクマンくんと連れ立って、典医寺への帰路を歩いていた。「もうすぐご婚礼ですね。本当に嬉しいです。ドンジュは護衛として着いて行くそうで……いいな〜、俺も行きたいですー!」「ダメよ。王様をお守りするのが仕事でしょ、トクマナ」「はいっ、そうです。…あ〜、でもなー、行きたいなぁ〜」そう大きく独りごちるのへ、私の頬も緩む。と、トクマンくんがゆっくり笑顔を潜めて「……皆んな生きてたら……もの凄く喜んだと思います」そう、ボソリと溢した。立ち止まった私に合わせて、トクマ
「大護軍ーーー‼︎」イムジャと件(くだん)の飯屋へ向かう途中で、テマンが俺の姿を認めて走り寄ってきた。「た、大変です!すぐ幕舎へ戻ってくださ……」大慌てでやって来たのが、俺に寄り添うイムジャに気づいて、瞬時に固まる。「——うっ、医仙⁉︎」「——テマンくんっ!」イムジャが、腕を広げて駆け寄ろうとするのを阻止し、俺は手短かに聞いた。「テマナ、見ての通り医仙が戻られた。詳しい話は後だ。チュンソクが来てるのか?何があった?」口を開けたまま、声も出せずに俺とイムジャの顔を交互に見ていたテマ
天帝の怒りをかった織女と牽牛はとうとう引き離されてしまった天の川をはさみ牽牛はその東側織女はその西側果てしなく広い銀河に遮られ逢うことも、その声を聞くことさえ叶わないふたりは互いを想い泣き暮らしたという西王母の突き上げを喰らった天帝は年に一度七月七日にふたりを逢わせること約束したのだが…その逢瀬が終いを告げると牽牛と織女は別れの哀しみに大粒の涙を流し続けたその日に降る雨を、人は洒涙雨と呼ぶのだそうな🍷🍷🍷「医仙、この空
無礼講の祝宴……すなわちそれは、俺とイムジャの披露宴の事に他ならない。「王様からの、盛大に披露せよ、とのお言葉もあった故、任せておけ、と叔父上(長老)がおっしゃってな。我々がペベクを済ませている間に、皆で準備万端整えておく、とのお話であったが……」コモも、若干の不安を滲ませて言う。「気持ちは有り難いが、ただでさえ人の出入りが多いのに……無礼講の宴など、危うすぎやしないか?」「さりとて、お前達の為の宴だ。引っ込んでおる訳にもいくまい」「本音を言うと引っ込みたい」「言うな」怪しい者が
「待たれよ、護軍」振り返るとイ・セクが、小走りでやって来るのが目に入った。「先程の、もう少し、詳しく、聞かせてくれぬか」文官故に、普段駆ける事などないのだろう。二の句を繋ぐのに、随分と息を整える時が要るらしかった。「医仙は、今どちらに?」「……探しております。元に行かれたのか、高麗内に身を隠しておいでなのか、まだわかっておりませぬ」イ・セクが、俺の言葉に訝し気な目を向けた。互いが視線を外さずに沈黙する。しばらく睨み合った後、イ・セクが声を落として「……護軍」「はい」「某の
ひとつ前に“雨夜の月Versionのブレイクタイム”をアップしてます「わたし、物件を見てまわるのがとっても好きで…お部屋の中を拝見してもいいかしら?」庵の入り口を、頭を下げくぐるようにして部屋に入ると、ウンスが華やいだ声で師姉に頼み込んでいるのが聞こえてきて、ほっと安堵の息を吐く。その女人(ひと)が、袖口を掴みねじりながら、戻ろう、と言ったときには肝を冷やした。戦場でさえ、あれ程の緊張を強いられたことはなかった、と思う。きちんと話しておかねば…
この者達を捧げるために参りましたチョナ…この者達をお側に于達赤としてお召し上げくだされば皆、一騎当千必ずや、チョナをお守りし…チェ・ヨンは赤月隊テジャンの遺言により王の影となる。無論、本意ではない。メヒの楯となり、消えてゆく命を振り絞って彼の人が言ったのだ。王の影になれ。そうすることが赤月隊を守る唯一の道だ。お前が守るんだ、と。だが、ムン・チフという柱を無くした闇の部隊は、あっという間に崩壊していった。家族同様の仲間達を次々と無くし、許嫁ま
冷たい風が頰をかすめ、重たい雲が湿った雪を落し始める。一人なら何とでもなるが、女人を連れての道中、風邪でもひかせたら、とチェ・ヨンは気ばかりが焦った。「雪の中を走ったりしたら、せっかく頂いたこれとか、ダメになっちゃうわ」手にした柳の枝と小さな籠を手に、頰をふくらませたウンスがのんきなことを口にする。「しかし」「せっかく色々と盛り上がってるんだから、もうちょっとだけ…ね?」「イムジャ」「春の雪よ。きっとすぐに止んでくれるわ。それに、ここなら屋根があるもの。後もう
いつも更新を楽しみにしているh-imajinさんのなタテシマ(?)な画像に、小噺をつけさせていただきました。話しの都合上、ここ!という辺りに、リブログ記事を貼り付けました。是非ご覧下さいまし❤︎「雨が止むまでは」…(風に梳り雨に沐る)の巻燭台の灯りを僅かに浴び、降り始めた雨が銀色の針となって庭に落ちてゆく。閨の窓を少しだけ開けて雨を眺めながら、ウンスはある期待を胸に、頰を耀かせている。…降ってきたわあの男(ひと)が帰ってくる兆しの雨だといい…
木々の緑も鮮やかな、新芽の芽吹く季節になった。タムがこの世に少しだけ慣れて、私もオンマ業に少〜し慣れた頃。夜中に泣いて起きる事が、ほぼ無くなったタム。おかげで私も、朝までしっかり眠れるようになっていた。(有り難いわ〜)そこで、タムのベッドを子ども部屋から夫婦の寝室へ移し、夜も親子3人で過ごすようになってしばらく。…ふ、と目を覚ますと、じっ…と、タムのベッドを覗き込んでいる人が——「お帰りなさい、ヨンァ。いつ戻ったの?」私は寝ぼけ眼を擦りながら、帰宅した夫の側へ寄った。「少し前
それは、真冬にしては暖かだった前日の空気をそのまま引き継いだかのような陽気の、とある日の昼前の事だった。冬晴れの空は底抜けに明るく、人々は日頃の寒気から身を守るように縮こまってしまった身体を伸ばすようにして、賑やかな大通りを行き来している。そんな開京の町の中心部とも言える市に軒を連ねるマンボの薬屋兼飯屋では、日常とは少しばかりかけ離れた小さな騒動が巻き起こっていた。「だから、嫌なんだってば!」夕刻から開店する飯屋の仕込みをしていたマンボ姐と、その手伝いをしていた師叔の耳に届いたのは、女の
「副隊長!トルベ只今戻りました。ところで、俺に用って?」隊長と共に江華島での任務を終え、今し方兵舎に着いたばかりだ。チュンソクは二日前の出来事をつぶさに語った。「条件の収集ってことは、隊長の好みを探れってことっすね」「…だろうな」「なら、まずは聴取から初めて、情報を集めれば…」はぁ〜という大きなため息が副隊長の口をつく。「…その情報を聴取する相手が誰なのかを、お前、忘れてやしないか?」「捕らえられ、どんな目にあおうとも関知しないって、隊長の動向を読んでま
“初めて恋人の実家に行って、彼の家族に会う”ただでさえ緊張するシチュエーション。ヨンのご両親は既に亡くなっているけれど、チェ家に仕える人達が何人かいるという。きっと、手裏房の皆んなみたいに、ヨンにとって家族みたいな人達なのよね。これから一緒に暮らすんだもの。私にとっても、家族になる人達なんだわ……そう思ったら、こんな私でも、ご多分に漏れず、背筋がすっと伸びた。——それなのに。「奥様っ、そんな、おやめください、痛っ、自分でやりますから」「ちょっと黙って、スンオクさん。動かないで…
@朝練が終わったばかりのウダルチ練兵場。鍛え上げた身体から白い湯気があがり、むくつけき男達が四方山話に花を咲かせている。「旨かったよな!あの医仙さまのトンジパッチュッ」「おお!身体がホカホカして温まった。さすがは医仙さまだ」「はい!医仙様々です。オレ、ウダルチになってから、初めて冬至の日に食べました」「旨いはずさ。医仙さまのお気持ちがこもってるんだ」ウダルチ烏合三人衆(チュソク、トルベ、トクマン)が盛り上がっていたところに、プジャンチュンソクが通りかかった。医仙
翌日。鉄原の皆さんにお礼とお別れを言って、私達は開京への帰路に着いた。来た時と同じように、辺りを警戒しながら、馬車のメンバーも入れ替わりながら……それでも、行きとは違って、誰もが柔らかい安堵の表情を覗かせながら、都までの道中を過ごしていた。「お帰りなさいませ!旦那様、奥様!」「ご無事でよろしゅうございました」「お疲れでございましょう。風呂が沸いております。どうぞ!」チェ家の…我が家の門前に着いた時から、ギチョン達が飛び出すように出迎えてくれて……自分でも驚いたんだけど、私は思わず泣い
薄墨を流したような重たい雨雲を、押しやるように青空が顔を覗かせていたが、辰時(7~9時)をまわると、少し風が出てきた所為か、雲の動きが心持ち速く感じる。ひと雨来るなチェ・ヨンは見上げた空に、気配を感じた。「戻りましょう。テマンが着くまでまだかかるはずです。少しでも休んでおいた方がいい」「いいわね。でも、その前にこの髪を何とかしなくちゃ。宿に着いたらお湯をもらって…そうだ!足湯に浸かるのもいいわね!暖まるし…」今朝、自らの手で結んでやった艶やかな髪が、湿った
テマンくんと連れ立って、私はヨンの待つ迂達赤(ウダルチ)の兵舎に向かっていた。すれ違う内官や女官達が、立ち止まっては頭を下げてくれる。私が会釈を返すと、皆んな一様にチラッとこっちを見ては、ヒソヒソと何やら話している。うわぁ、この感じ……見た事もない赤い髪。天界から来た華陀の弟子。訳の分からない先読みをする天人(あめびと)……以前もそうだった。常に好奇の目で見られて。感じ悪ぅ……いつの時代も同じね。その人の前で堂々と言えない事は、当の本人に伝わっちゃダメなのよ。溜め息を吐きつ
——風呂。イムジャの願いを叶えるべく部屋を出るも、階下は未だ騒ついたままだった。テマンが弱り顔で頭を掻いている。そこへ俺は再び、見るな!と一喝して、イムジャの手を引いて風呂場へと向かった。階下の奥。風呂場は、小さい中庭の通路を行った先だ。人目につく場所ではないが、風呂場の中を確認してから、俺はイムジャを振り返った。「どうぞお入りください。イムジャ」「もうあんまり時間無い?」「まぁ……程々にゆっくりで大丈夫です」「わかった」イムジャが中へ入ると、俺はそのまま扉の前に立つ。と