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★★★7-13「フンギャー・・フグッ・・オンギャー」どこかで泣き声がする。車内を見渡すと、いつの間にか混雑し始めていた。都市が近いからなのか、夕刻の一時的な混雑なのかは分からない。通路にも人が立ち始め、押し出されるように赤ん坊を抱いた若い夫婦がキャンディの直ぐ横に立った。「あの、この席をどうぞ」即座に立ちあがったキャンディは、テリィに肘で合図を送り通路へ出た。「え・・いいんですか?」「赤ちゃん、お腹が空いているのかしら?・・立ったままじゃ無理でしょ?どうぞ」奥に座った若い母親
★★★4-15一緒に住んで分かったことがある。テリィはかなりの読書家だ。帰宅が早い日は、夕食が済むなりカウチで読書に耽っている。「ふぁぁぁ~、・・おやすみなさい。先に休むわね」「あ、ごめん、もうこんな時間か。直ぐ行くよ、部屋で待ってろ」仕事と家事で疲労困憊のキャンディは、『直ぐ』を一秒も待てない方が多かった。雨の休演日は、ひねもす書斎に籠っていることもあるテリィ。先週は古語辞典を片手に難読そうな古書と格闘していたが、青天の今日はそんなことは無さそうだ。「テリィー!テリィー
あのひとはどっちか?『あのひと考察』の本丸です♪ファイナルを未読の人でも分かるように書きました。一緒に考えましょう物語を自分の想像力で楽しみたい人は、お控えください🙇♀️アルバートファンの方は、前ページを必ずお読みください。※公平を期すため、アルバートさんの敬称を省略させて頂きます。二人が別れてからの10年間まず、ファイナルに書かれている流れを確認します。テリィ側ハムレット役で返り咲き、スザナと婚約したらしいが、結婚しないままスザナが亡くなった。「ぼくは何
続いてその他の本文から、探っていきます二次小説を書いたからこそ気づいてしまった、原作者のテクニックです。あのひとはテリィだと言っちゃってる「あのひと」とは、言わずと知れたキャンディの愛する人の代名詞。ファイナルの帯にも書いてあります。言い換えれば、「あのひと」という名前の登場人物です。アメリカに旅立つテリィを、キャンディが馬車で追っていくシーンにこのようなセリフが登場します。「どうか、どうか、間に合いますように…。テリィに会えますように…。わたしは、まだ
★★★2-3「そろそろ本宅のばらは咲き始めたかしら」同じ頃キャンディはシカゴへ向かう列車の中にいた。アルバートが出張で長期不在になると聞き、仕事帰りにそのまま列車に乗り込み、シカゴの本宅へ向かったのだ。近況報告はもちろんだが、町の病院から交代要員の看護婦を手配してくれたお礼も言いたかった。町の病院はアードレー家の資本が入っていた。これにはキャンディが看護婦であることと、アルバートの過去の経験が深く関係している。アフリカという辺境地で行った医療活動、記憶喪失という病との戦い。医療の
これって引っ掛け?ファイナルは推理小説ではないので、素直に読むのが一番だと思っています。しかし「こんなあからさまな文は、かえって怪しい。引っ掛けにちがいない」と疑ってしまう人も少なくありません。どの部分が怪しいのか(笑)抜き出してみます。Aファンにとって引っ掛けと感じる部分①本棚にあるシェークスピア全集②エイボン川の町に住んでいる③スザナの死④テリィから手紙シェークスピア全集があるからってテリィとは限らない。どこの家にもあるよ。エイボン川は世界中にある。ス
★★★1-5「ただいま・・・」「キャンディ、まあ!びっしょりじゃない。レインコートはどうしたのっ!」「ちょっと頭が痛いの…、みんなに移しちゃうと大変だから、先に休んでいい?ご飯はいらないわ」相変わらず様子がおかしいキャンディをレイン先生は気に掛けてはいたが、思春期の子供を持つ多くの母親がそうするように、本人から何か言ってくるまでは干渉しないでおこうと決めていた。「ちゃんと体を拭いて、温かくして寝るのよ」「おやすみなさい・・・」部屋に入ると机に置かれたままの白い封筒が、これは現実なの
★★★8-3「・・・このポスターを貼った頃、俺には描いていた未来があった」テリィは壁に貼られたままのロミオとジュリエットのポスターを遠い目で見つめた。「君がこの小さなキッチンで朝食を作ってくれて、『いってらっしゃい』って送り出してくれる。疲れて稽古から戻ると『お帰りなさい』って迎えてくれて、その日あった他愛もない出来事を報告し合い、あの小さなベッドで君を抱きしめながら眠りにつく。そしてまた次の朝を迎える・・。ポスターに落書きを残して君が去った後も、その幻影はなかなか消えてはくれなかった・
★★★8-4「愛の言葉をねだられることも、俺を試すような会話も幾度となく繰り返されたが、俺は応えた。言葉やキスでスザナの気持ちが落ち着くなら、こんなたやすいことはな・・・――キャンディ・・?」・・・ダーリン、まだお休みにならないの・・?マイアミのホテルで聞いたスザナの声がふと蘇り、キャンディは殆ど無意識に、ギュッと目を閉じ、固く結んだ手を胸にあてていた。覚悟していたとはいえ、テリィの口から他の女性との生活が・・――スザナとの生活が語られると、まるで一枚ずつ写真を見せられているよう
漫画の後半を読むと、確かにアルバートさんはキャンディに恋心のようなものが芽生えているようです。しかし残念なことに、旧小説やファイナルではそのくだりはバッサリと欠落し、揺れ動く微妙な男心と、プロポーズかと思わせるセリフは全てカットされています。本筋と関係ないから切り捨てることができる、という解釈もできますが、少なくとも旧小説まではページの都合上だと個人的には思います。そこでまずは漫画に登場する、アルバートさんの感情を軸に時系列にしてみました。記事内では、老眼の負担軽減の為(笑)アルバ
★★★2-14「さぁ、最後の患者を診るとしよう」「今の人で最後のはずでは?」キャンディが不思議そうに尋ねると、先生はキャンディの肘をゆっくり持ち上げ、二の腕を指した。「・・あっ、忘れてました。傷口は直ぐに水で洗いましたから平気です」「いやいや、破傷風は怖いからの。わしのバッグの中に薬が―」「私は実験台ですか?全て認可前のですよね・・?」できれば遠慮したいと引きつり笑いをするキャンディに、先生はバッグの中をあさりながら「いや、特効薬がな・・おっ、これこれ、就寝前の一杯」先生は携帯用
小説FINALSTORYに出てくる「エレノア・ベーカーへの手紙」を基にした一話完結の物語です。ファイナル、SONNET本編が未読でもご覧いただけます。※ネタバレには絡みません11年目のSONNETスピンオフハムレットの招待状★★★ごめんなさい、ミス・ベーカー。ミス・ベーカーのお気持ちは痛いほどありがたいのに。この招待券を見つめているだけで、わたしにはテリィの舞台が観え、歓声と鳴りやまぬ拍手が聞こえてくるような気がします。この招待券はわたしの宝物として大
あのひとは誰か?名木田恵子著FinalStoryを「読解」した場合、あのひとはテリィであることに向けて書かれていると思います。時系列を並び替え、追加されたエピを精査し、変更点の細部に着眼し、全体的な潮流、原作者の発言を加味すると、疑いの余地はありません。ただしこの著書は読者に結末を委ねるリドルストーリーです。曖昧な文章表現から想像力を広げ、あのひとはAともTとも読むことができます。原作者もそれを望んでいます。イマジネーションの世界において、あのひとはAでありTで
★★★2-4急病人を乗せた車は午前中の早い時間に村を離れ、病人の身体に障らない瀬戸際のスピードで北上した。町はシカゴとは全く逆方向だった。テリュースの心中は穏やかとは言い難かったが、子供の命には代えられない。マーチン先生の事前連絡の甲斐あって、町の病院は直ぐに母子を受け入れた。ここまでくれば直接旦那を捕まえられるから大丈夫とアンに言われ、多少心残りはあったものの、テリュースは直ぐさまハンドルを反転させた。「テリィ・・さん、あなたは命の恩人です・・、ありがとうございます!」去り際アン
長い考察が苦痛な人の為に、要点だけをドライにまとめた「あのひと考察・総集編」です。※2010年発行の「小説キャンディキャンディFinalstory」を「ファイナル」と表記します。はじめにファイナルでは、キャンディのパートナーは「あのひと」と平仮名で書かれ、「愛する人」の意味で使われています。但し海外版では「Thatperson」や「He」の文字が充てられているケースがあります。しかしThatPersonは「あそこにいる人」の意味なので、名木田先生が意図する「あのひと」とは
★★★4-9稽古が早く終わり、夕刻帰宅したテリィは、馬小屋にセオドラがいない事に気が付いた。まだキャンディも帰宅していないようだ。「―おや、セオドラを連れてご出勤でしたか」やれやれ、と思いながらセオドラを迎えに川沿いの小道をゆっくりと歩き始めた。キャンディが届けてくれた脚本。確かにあの脚本でずっと稽古はしていたが、新しい脚本を渡され、劇もほぼ完成した今となっては、絶対必要という代物ではなくなっていた。「これからはキャンディに無茶をさせないように、きちんと話さないといけないな―・・俺も
★★★1-3テリィの演じるハムレットは瞬く間に評判になり、劇団創立以来の大ヒットを記録した。秋の公演に続き冬の公演、春の公演と延長が決まり、役者として順調にステータスを築き上げていく様が、手に取る様に分かった。大人びた顔つきや一回り大きくなった体格からは自信も垣間見えた。テリィのお芝居を観ることが決して叶わない夢だと分かっていても、自分が応援団長にでもなったかのようにテリィの活躍が嬉しくて、記事を目にする度心が躍った。ハムレットの初演から一年あまりが過ぎた頃、世界を巻き込んだ戦争が
★★★3-16これは幻なのか。あんなに遠くにいた君が、俺の腕の中にいる。俺は君の中にいる。・・これはうたかたの夢か・・?・・・テリィ・・まだ・・そこにいて・・キャンディ・・。いるよ・・――心音がすごく速いわ苦しい・・?・・じきに落ち着くきみの鼓動も感じる・・あぁ・・俺たちは生きているのか――・・・テリュース私はここよここにいるわスザナ―・・?・・どこにいる・・?さあ帰りましょう・・・わたしたちの家に・・・「・・スザナ・・・おれは、キャンディを」いやよ、テリュ
7章の中書き7章、お読みいただきありがとうございました。🙇♀️レ・ミゼラブルを出したのは、あのひとの本棚にフランスの文学書があったからです。ブロードウェーミュージカルでロングラン公演になるのは、ず~と後世ですが、その前身になる舞台で、エレノア・ベーカーも関わってるといいな、というブログ主の願いも込めて。ポニーの家の子がよそへ引き取られる際に、新しいパジャマを持たせるというエピソードは、アニメオリジナルのものです。巣立つ子供への先生たちの愛情がよく表現され、じ~んと
※2024年5月7日内容を更新しました。小説キャンディキャンディFINALSTORY復刊を目指しています活動をご存知ない方はこちらを『ファイナル・ストーリーを復刻させよう!』諦めていませんか・・・?3万円出せないと。。。。何がってこれです!!諦めるのはまだ早~い!!※つい昨日まで諦めていたのは誰?こちらのブログ…ameblo.jpフリマで超~高額で取引されてるこの本遥か昔の記憶がかろうじて残っているそこのあなた
★★★5-17取材が立て込み劇場を出るのが遅れたテリィは、ジャスティンと入れ替わる様に病院の前に車を止めた。もちろんプレゼントなどは積んでいなかったが、ドライブでもしようかと迎えに来たのだ。女性はサプライズに弱いと言うジャスティンの助言が、少なからず頭に残っていた。いや、単にキャンディの白衣姿が見たかっただけかもしれない。「・・もう帰っちまったかな・・」どこにいるかも分からない一人の看護婦を直ぐに探しあてられるほど、この病院は小さくなかった。同じ制服を着た看護婦一人一人を目で追うが
★★★2-13テリュースはやり遂げた満足感でいっぱいだった。観客の中にキャンディがいなかったのは残念ではあったが、それよりも今は無事が確認できただけで十分だった。最低限の安堵感を得た事で、演技に集中する事が出来たのだ。しかし、舞台を降りた瞬間から、脇に寄せていた焦燥感が津波の様にどっと押し寄せてきた。(ケガは大丈夫だろうか・・・あの町に留まっているだろうか)町に向かう途中に再び立ち寄った事故現場では、夜通し作業が行われていた。作業にあたる関係者から、患者が搬送された複数の病院の住所と
★★★3-10何か所かロンドンの名所を案内してくれたテリィは、大きな寺院の前に車を停めた。「ここで待ってて」と言い残し、何やら受付窓口の人と話をしている。戻ってくると「中を見学できるよ」とキャンディに声を掛け、車から二つのトランクケースを下ろした。「君はこっちを持ってくれる?」テリィからシルバーのトランクケースを渡され、「なんで持ち歩く必要があるのよっ」と、不可解だったので訊いてみたが、「大切な衣装だから」と言われれば反論の余地はない。車上あらしにでも遭えば、最悪の場合公演延期にもな
手紙に前文がある?この手紙は一部に過ぎない、という見方もあるようです。通常、手紙は『キャンディへ』であり、一行あけて「変わりはないか」の本文に入ります。しかしテリィの手紙は「キャンディ」「変わりはないか?」の二文が連続し、まるで全体の一部を抜粋したかのような入り方になっています。向って左がテリィからの手紙・右がアルバートさんからの手紙ファイナルに登場する手紙は「一行空ける形式」を守っているので、このテリィの手紙は例外です。・・・という事は、ここにも原作者の意図があるので
考察前のつぶやき「あのひとのことは、はじめから曖昧にしようと決めていました」下巻336これはファイナルのあとがきに書かれている、原作者名木田先生の言葉です。これを『どちらともとれるように書いた』と解釈する人がいるようです。そう思いますか?この言葉だけ見ると、そうかもしれません。なので「文脈」を見てみます。後に続く言葉を紹介します「あのひとが誰かをきちんと描くには、長い物語が必要なのです。あのひとを明かしてしまうと、長年の読者たちの夢を奪うことになるか
★★★1-11草木も眠る真夜中、けだるいエンジン音がこの家の門前で止まった。暗闇で目の自由がきかない。冷たいポストに手を伸ばす。小ぶりだが厚めの封筒が一通だけ入っている感触に突き当たる。無理して帰ってきた甲斐があったと思ったのはその時だ。そこからは、先ほどと同一人物とは思えないほど俊敏な行動を見せた。勢いよくエンジンを再点火させると、深くクラッチとアクセルを踏み込んで敷地内に侵入し、急いで部屋の灯りをつける。差出人の名を確認するとようやく夢ではないことを実感し、笑みがこぼれた。
★★★5-6髪を結んだその姿に一瞬別人かと思ったが、その声と威圧感は先日のハムレットそのもの。「な、なんでお前がいきなり登場するんだよっ、、!」テリィに高い位置から見下され、ジャスティンは思わずたじろいだ。「悪いね、ここは私有地だ。・・気づかずに入ってくるネズミがたまにいるが」「私有地?」一瞬意味が分からなかった。この森は公園の予定地か何かと思って深く考えたことはなかったからだ。(・・ここが敷地だとでも?)貴族の圧倒的な財力を目の当たりにし、思わず喉がゴクリと鳴る。「テリィ、
★★★8-17「どうされましたか?ウィリアム様」運転席のジョルジュは、笑いをこらえているようなアルバートの声に気付き、後部座席にちらっと目を向けた。「いやぁ~、この設定はすごいよ。キャンディは住み込みの看護婦で、テリィがマーロウ家に入り浸っていたのはそのせいだって。ゴシップのプロの発想はすごいな。そんな筋書き、僕には思いつかない」ニューヨークで調達した新聞を見て、アルバートはしきりに感心していた。「グランチェスター様はインタビューに応じたようですね。その記事、どうなさるおつもりです?」
『あのひと』とは関係がない、ファイナルと漫画の相違点をご紹介しますまずはテリィ編キャンディをかばう為に礼拝へきたテリィ?イライザの策略で合同礼拝に灰色の制服で来てしまったキャンディ。礼拝が始まった直後、テリィが乱入してきた時の描写です。あまりに印象的ですね。いよっ、石原裕次郎!!テリィの型破りぶりを印象付ける為のエピソードなのかと思っていました。「え、そうでしょ?」と思ったあなた。甘いっ!次の文をお読みください。「テリュースは脱いでいた灰色の上着をわざとらし
句読点から読み取る論より証拠。下巻174~175の2ページをご覧ください。これはアメリカに戻ってきたキャンディが、テリィを想って書いた手紙です。テリィに恋をしている頃ですね。「テリィ……」の表現は4回です。では、テリィと別れてから書いた『出さなかった手紙』に出てくる「テリィ……」はどうかというと、下巻274~277の4ページで4回です。テリィに対して、依然として切ない恋心を抱いたまま、と感じます。それを対比されるような使い方が「アルバートさん」です。