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『山田正紀・超絶ミステリコレクション#1妖鳥(ハルピュイア)』(山田正紀/徳間文庫2021年10月15日初刷)。2月18日に読了。帯には「徳間文庫41年目の本気【トクマの特選!】」。いったい、いつの間にそのような企画が展開されていたのやら。不覚である。どうやら様々な作家・幻の名作を一気に復刊する取組み。さすがに、その全てに手を出す訳にもいかず、私なりに馴染みの作家・都筑道夫と、初遭遇の作家・山田正紀の二人に絞り込んで順番に攻略を目論んでみた。さて“山田正紀・超絶ミステ
地元の新刊書店とのコラボで行われてきた“プチ古本市”には、私にとっていろいろと興味深い本があった。たとえば、主だった文庫のベストセラーや絶版・品切れリストなどを収めた『文庫一番煎じ』(500円)もそのひとつである。まあ、私は買わなかったけれど。(^^;文庫一番煎じAmazon(アマゾン)50〜10,089円これは古本マニアに特化した企画というべきか、それとも業界人需要をあてこんだものなのだろうか?1995年8月10日初版
「アダムはイヴに殺された」都筑道夫初読。私は都筑ファンですが、1冊だけ読んだことがないものがあり、これがそうです。短編集なのですが、最初の一編だけ読んだのですが、全て読むのは初めてです。昭和55年の出版ですから相当古いので、内容も古さを感じさせます。犯罪にまつわる話で、最後に思わぬ展開になるというもの。雑誌に掲載した短編が本一冊分たまったので本にしたようですが、当初「引き出さしから出てきたちびた鉛筆」というタイトルにしようとしたところ、編集者がこれらは悪女ものですね、というので「ア
均一に近い時間配分の作品は、最近見かけない。トーマス・マンのくどさはヨーロッパ人だと言うのもあるんでしょうが、順序立ち、均一の時間経過は「流行らない」が、「ベニスに死す」は、異常なまでの過剰な描写が、神話性を生んでいる。時代小説に見られる、人情、は例えば、池波正太郎の「鬼平犯科帳」には、過剰さが見受けない。時代小説でも、それが、谷崎潤一郎の「武州公秘話」「吉野葛」となると違う。「吉野葛」の描き方は司馬遼太郎では、と。等身大の主人公を据えると、人情となり、将軍家辺りを含めると、SF、ファンタジー
・街の大きな本屋で購入。・去年、『やぶにらみの時計』と『猫の舌に釘をうて』と『都筑道夫創訳ミステリ集成』を読んでいる。・奇妙な題名に惹かれて読む。・主人公の片岡直次郎はルパン三世を彷彿させるキャラクターである。・「第三問殺人狂の人質にされてエレベーターに閉じ込められた少女を救出する方法」が良い。直次郎対いわゆる「無敵の人」の駆け引きが素晴らしい。・日下三蔵氏の編者解題も良かった。都筑道夫著日下三蔵編山藤章二本文挿画『完全版吸血鬼飼育法』429㌻900円(税
『猫の舌に釘をうて』(都筑道夫/徳間文庫2022年2月15日初刷)。10月26日に読了。密かに進行(まあ、単に私が知らなかっただけのことではあるが)していた「徳間文庫41年目の本気【トクマの特選!】」の一環と思われる復刻シリーズ「都筑道夫・初期トリッキー長篇」の第2弾。読了後、法月綸太郎氏の「解説」で「1961年6月、推理小説専門の叢書としてスタートした『東都ミステリー』の5冊目として刊行された」ことを知り、それほど昔の作品だったのかと驚いた。ラストの仕掛けに気付かない
「殺人狂時代」(1967)殺し屋をめぐるブラックコメディをひさびさに観ました。監督は岡本喜八。予告編はコチラ。地球の人口最適化のために無駄な人間を殺すことを目的とした「大日本人口調節審議会」という秘密組織を率いる溝呂木(天本英世)が経営する精神病院に元ナチスのブルッケンマイヤーがやって来ます。狂人こそ真の人間だと言う溝呂木は、入院患者たちに英才教育を施して一流の殺し屋に育て上げています。ブルッケンマイヤーは電話帳からランダムに選んだ3人の殺害を依頼。まず、松葉杖の男、義眼の
今日ご紹介する話は、以前読んだ都筑道夫氏の小説に出てきたエピソードである。あまりに上手くできた話なので、誰かに教えたくなった。はるか昔の話。一卵性双生児の兄弟がいる。ひとりは天才児で、もうひとりは障がいがある。便宜上、天才児を兄、障がい者を弟とする。兄は幼少より、弟を傀儡とし、支配している。弟は兄に唯々諾々と従うしかないわけだ。そして兄は宗教家になる。瓜二つの弟を利用し、離れたところにいきなり現れてみたり、知っているはずのないことを見てきたように話したりと、数々の奇跡を起こす。裏に
「黒い招き猫」都筑道夫ショートショートと短編が混ざったもの。おおむね、ホラーといったジャンル。どうも私は怪談とかホラーは好きではないので、この本のオチが怖いもの=不快なものになっているのが不快でした。尊敬する作家ですが、晩年のホラーも好みではない。ただキラリとした短編もあるのも事実で、この作品集では「夜のオルフェウス」がずっと気になっている作品。オチは好きではないが、神話と過去に戻るという設定がよい。オチを変えて、もっとノスタルジックな読み物にしたら代表作になったかも。ただ、これはご
「黒い天使」コーネルウールリッチ読みたい本がないので、古い本を引っ張り出すことに。先に「黒衣の花嫁」を読みかえしたので、ウールリッチの読み直し。これはかつて一回だけ読んだ作品。エッセーで都筑道夫が褒めていたので。ウールリッチはブラックシリーズというのを書いていてタイトルに「黒」がつきます。これは彼の5作目。夫が殺人容疑をかけられ、死刑までのタイムリミットがある。夫の容疑を晴らそうと動く妻の活躍を描く。夫がこっそりつきあっていた踊り子の女に会いに行く妻。しかし女は殺されていた。夫
都筑道夫『怪奇小説という題名の怪奇小説』を読みました。怪奇小説という題名の怪奇小説(集英社文庫)Amazon(アマゾン)この本、ちょっと前に読んだホラー小説の『ぼぎわんが、来る』の澤村伊智が『怪談小説という名の小説怪談』というオマージュ作品を描いてますし。それに、私のハマっている三津田信三がよく作中に登場させている『百物語という名の物語』も、なんとなく題名からしてこの本のことを意識してたっぽい。そしてこの本の解説は『向日葵の咲かない夏』の道尾秀介。色んな作家が魅了された小説らしいの
「ポケミス全解説」都筑道夫これは小説ではなく、本の解説を集めたものです。主に1950年代の作品を当時書いたものです。ミステリに興味のない人にとっては意味がないかもしれませんが、ミステリが好きな人にとっては興味深いと思います。アガサクリスティやアイリッシュなどが現役の頃で、レイモンドチャンドラーの訃報が載っていたりします。今ではとっくに伝説になっている人たちが現役の頃、あるいはデビューした当時のことを書いているのです。007のイアンフレミングなどもまだ日本に紹介されていなかった頃の
「緋の記憶」仁木悦子これは探偵三影潤シリーズの短編集。いつもはいろいろなキャラクターが寄せ集めになっているが、これは一人の探偵もので編まれている。「暗緑の時代」絵画鑑賞が好きな三影。そこで絵の盗難未遂事件を目撃。価値がない絵を盗もうとした目的は何か、依頼を受ける。話は少々人間関係が複雑で、作者が頭の中で考えたものとして煩雑すぎる気がします。この時代の推理小説というのはこんな感じなのかも知れません。論理的に解かれるが、あまり後味は良くない話となっている。「緋の記憶」過去の夢を続けて
安楽椅子探偵( ̄▽ ̄)かつては硬骨の刑事。今や恍惚の刑事になりかかった父親が、捜査一課の現職刑事である息子の家を頻々と訪れる。五人いる息子のうち唯一同じ職場を選んだ末っ子から現場の匂いを感じとりたいのだろう。その息子が目下捜査中の事件について話を始めると、父親はあれこれと突っ込みを入れ、あげく真相を引き出してしまうのだった…って事ででは早速ねこまま探偵モノ好き中でも安楽椅子探偵は大好物(人´3`*)~♪都筑さんの(宮野みゆき編)半七~をつい先日読
最近、読みたいと思う本がないので、本棚の都筑道夫ばかり読み返していました。・・・日下圭介の未読を読みたいけれど、彼の作品はムラがあり、歴史ものなどは苦手なのでなんとなく手が出ない。再読となると、読後の印象から、あまり読み返そうと思わせない。彼は古いフランス映画の「フィルムノワール」に魅かれていた部分もあり、敢えてダークな作品を書いていたからでもあります。仁木悦子も未読のものを読んでみたい。文庫ではなくハードカバーを探しても、当時からあまり出ていなかったようで、後に編まれたものは現
3月19日日曜日〜その44時に休む。7時50分、目覚める。ねじめびわ茶、キリンのやわらか天然水、のむヨーグルトプレーンで喉を潤す。8時10分から11時まで二度寝。坪内祐三著『古本的』を読む。P175には、都筑道夫の本について書かれている。(写真)20〜40代の頃、古書店で都筑氏の著書に出会うと必ず買い求めました。河内音頭の外題の下敷となるネタの宝庫です。
「推理作家の出来るまで下」都筑道夫の自伝。高い本なのでこれまで図書館で拾い読みしていたのですが、この度通読。彼がつきあっていた恋人との関係、といってもプラトニックなもので、彼が結婚したあとも一方的な恋が続いていた話や、早逝した落語家の彼のお兄さんの話。戦後の出版界の話など、興味深く読めます。上巻では戦中戦後の日本、東京の情景が描かれ、下巻では出版界を垣間見せます。有名な作家や、よく見る翻訳家の名前なども出てきます。都筑道夫が師事していた作家は松岡容(いるる)と大坪砂夫。そし
「ベッドディテクティブ」都筑道夫。この作品は1998年に文庫化されたもので、私が彼の作品の中で読んだことのない数冊の1つでした。物語はソープ嬢が起こる事件の謎を解くというもの。すなわち、作者はソープ嬢を探偵としたわけです。シリーズは2冊。時代背景は昭和の頃で、いわゆるソープランドというのは当時トルコ風呂と呼ばれており、トルコ人からクレームが入り、名称が変えられることに。小説のタイトルも一作目は「トルコ嬢シルビアの・・・」から文庫化で「泡姫シルビアの」となり、本作も「泡姫シルビア・・・
【2023年6冊目】枚方バンダム「お話、聞きます」(再)私が「聴き屋」を始めたきっかけの一冊。【2023年7冊目】向田邦子「思い出トランプ」(再)これももう何度も読んでいる一冊。直木賞受賞作。向田さんの小説は人間の暗部をえぐり出す。かなりホラーだ。【2023年8冊目】都筑道夫「紙の罠」(再)おそらく30年以上ぶりに再読しました。都筑ワールド全開のドタバタ活劇。そして、あっと驚くどんでん返し。【2023年9冊目】小篠綾子「コシノ洋装店ものがたり」NHK朝ドラ史
過日、岐阜市柳ケ瀬のロイヤル劇場にて『100発100中』を鑑賞しました。1962年に製作された映画『007は殺しの番号』(『007ドクター・ノォ』)は世界中で大ヒットし、世にスパイ映画ブームを巻き起こしました。『007』シリーズに影響を受けた、或いは模倣した作品が世界各国で製作され、世界各地にスパイが溢れ返る事態となりました。『100発100中』が公開された1965年は、日本に於いてもスパイ映画ブームがピークを迎えつつあった時期です。本家シリーズ第4作『007サンダーボール作戦』が、
2022年読書評16都筑道夫とフロスト|預言者のコラム3:ヤシャス|note「都筑道夫名探偵全集2」都筑道夫のシリーズキャラクターから抜粋した短編集。私はもちろん彼の本のほとんどを(全てではない)を読んでいますから、この本も読んでいますが、違うエディションだと違う印象では、と思い読んでみました。登場人物たちは近藤庸三コミカルアクション小説のキャラクター。日本人を娯楽小説の主人公にできるのは都筑道夫くらいだろう。片…note.com「都筑道夫名探偵全集2」都筑
ツイッター単文をまとめ改行今月購入した本の一冊は名前はよく聞く批評家のアントニイ・バウチャー(H・H・ホームズ)氏の作品だけど、翻訳者の名前(高橋泰邦さん)をみて復刊なのかなと思ったけれどそのあたりの説明や初出データといったものがなくて首をかしげていたら、今月のミステリマガジンの新保博久さんの新訳レビューで初訳の文庫化とわかったけれど、このあたりデータがほしいとちょっと思ってしまった。そのレビューを読んでいたら同時期に別の出版社から新訳が出たけれど、このあたり特に著作権が切れたりなどのも
2022年読書評15物部太郎とフロスト警部|預言者のコラム3:ヤシャス|note「朱漆の壁に血が滴る」都筑道夫、再読。物部太郎もの第3作目。これは前作「最長不倒距離」よりは読みやすかったです。章区切りがされていたためでしょう。物語は:冒頭で太郎の助手の片岡が殺人容疑で投獄されるシーンが描かれる。次章では事件の発端が描かれる。推理作家の紬(つむぎ)志津夫が小説のネタとして妻の故郷で起きた過去の事件の取材に行くのに片岡を同…note.com「朱漆の壁に血が滴る」
読書を趣味としていると、その季節になると読みたくなる本だったり、作家だったりがあります。夏になると必ず読みたくなるのが、井上ひさしさんの「偽原始人」。これは小学生たちの夏休みの冒険物語だから。もう何回読んだことでしょう。そして師走、年が押し詰まってくると必ず、向田邦子さんが読みたくなるのです。これは何故か理由がわかりません(笑)。都筑道夫先生の「吸血鬼飼育法」を、何十年か振りに読みました。私の好きな作家TOP5に入る都筑先生を初めて読んだのが、この本だったのです
8月3日(水)夜に再読終了。初めて読んだのは2011年だったか?集英社文庫からの初文庫化は1980年だったらしいが、自分はこの2011年の文庫復刊時に購入して初読。当時は「なんか変な小説だな‥‥」と感じた程度で、特に凄い傑作という印象は持たなかった。「お話」とかもすっかり忘れてしまっていたため、今回改めて再読しようとしたところ、自宅の本の山の中から探し出すのは困難であるため、図書館で借りてしまう事にした。さて、今回再読しても特別「面白いっ!」とまでは感じられなかったものの、しかしこの作品
本日2つ目のブログ。今日は連投です。『カ-タ-・ディクスン/九人と死で十人だ』(創元推理文庫)と並行して読み進めている『都筑道夫/怪奇小説という題名の怪奇小説』(集英社文庫)の再読だが、こちらも昨夜の時点で順調に120ペ-ジまで進む。全部で200ペ-ジほどの本なので中間点は折り返した。以前のブログでも書いたが、初読の時の印象が全然残っていない。裏表紙の解説には「謎めいた女の正体を追ううちに、作者は悪夢のような迷宮世界へと入り込んでいく」と書かれているが、なるほど、主人公が「悪夢
相変わらず既所有&既読のものを、改めて図書館から借りての再読。都筑道夫といえば、あの子供向けミステリの大傑作たる『蜃気楼博士』の作者。その都筑道夫が書いた怪奇小説という事で、当時は飛びついた。2011年に文庫版が出た際、購入して読み上げている。しかし、全然印象に残っていないんだよな‥‥。『蜃気楼博士』を書いたあの都筑道夫の「大人向け」怪奇小説‥‥という事で結構期待して読み始めたのだが、とにかく全く印象に残っていない。覚えているのは「なんか不思議な感じの小説だったよな‥‥」とい
6月中頃にこんな記事を書きました。未読の方は、まずこちらからお読みください。自分がこのブログに於いて『都筑道夫/蜃気楼博士』を最初に取り上げたのは2017年5月26日の記事。もう5年以上昔の事ですな。それから年に一度くらいのペ-スでこの作品を何度も何度も繰り返し取り上げてきた。「子供向けミステリではこれが歴代最高!」と繰り返し繰り返し主張し、時には「なんとか創元推理文庫あたりから復刊してもらえぬものか?」なんて事も書いた記憶がある。最新記事が今年2022年の6月17日で、通算7回目の取り
ホラー・ミステリアンソロジー。著者は宇佐美まこと、小野不由美、京極夏彦、高橋克彦、都筑道夫、津原泰水、道尾秀介。ホラーというカテゴリに読む前からびびりすぎて怖くなかった。貞子みたいなのが出てきたらどうしようかと思った。これなら「オゾミス」と呼ばれる作品のほうが怖いし『残穢』の怖さがわからない人なので実はホラー読めるのかもしれない。いやだなと思ったのは小野不由美「雨の鈴」。飛びかかったりしないがちょっとずつ近づいてくるのがいやだ。でもここで推したいのは津原泰水「カルキノス」。カ
当初はSNS、ツイッターの単文ですませるつもりが夜勤明けのテンションで書機、頭が回っていないのでかなりまとまっておらず文章も崩れがちなのはご了承ください…三日間にわたって、NHKBSにて出演者の録画から復元された少年ドラマシリーズの「蜃気楼博士」が放送されたけれど、何度か書いているように自分は世代ではないけれど、子供の頃に通っていた図書館(図書室という狭さだったけれども)にSFベストセラーズと題した行書が並んでいて子供心に好きで読んでいた。そして既刊案内での「NHK少年ドラマシリーズで次