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「おい、そこの無茶ぶりウエィター。」快斗が部屋を出てから10分ほど経過して。ラウンジに一人で歩いてきた新一が、そばかす顔のウエイターとして招待客に飲み物を運んだりと忙しく走り回っている快斗に呼びかけた。「これはお客様、何が御用ですか?」新一に近寄ると、快斗は小声で話始める。「蘭ちゃんは?」「蘭のおじさんに預けてきた。」「そうか。」「そっちは?あいつと彼女は?」頷いた快斗に新一が問い返すと、快斗は少し離れた場所にいる阿笠博士に目を向けた。「名探偵は阿笠博士に預けてきたよ。それと
「新一・・・。」呼びかけた蘭に新一が顔を上げた。「ゴメン、忙しかったよね。また何か事件なんでしょ?」そう言って蘭が踵を返し足早に部屋を出ていこうとする。「蘭、待てって!!」新一は急いで立ち上がると蘭の腕を掴んだ。「まだ・・・何も言ってねぇだろ?」「でも・・・。」言いかけた蘭の腕を引き寄せると、新一は蘭の背中に手を伸ばした。蘭はそんな新一の顔を見上げる。「新一・・・。」「なんだよ?」「ちょっとゴメンね。」そう言うと蘭は新一の頬を横に引いた。その瞬間新一が顔を歪めて、蘭が
快斗は蘭を連れてエレベーターに乗り込むとガラス張りの窓から下を見下ろした。暗闇の中で良く目を凝らすと人が動いているのがわかる。そして、拳銃やライフルで撃ちあいをしているのか発砲音や弾が金属に着弾して跳ね返る音も快斗の耳はしっかりとすべて捉えていた。快斗はその光景を蘭に気づかれない様に、あえて蘭の目の前に立ち壁に背中を預ける。しばらくするとラウンジ階に到着したエレベーターが停止して扉が開いた。快斗は蘭に先に出る様に促すと、周囲に目を配りながら小声で新一と通信しながら、待ち合わせ場所を青子
「アレキサンドライト、黄帝の宝石・・・か。」呟くと、その頬にそばかすのある男はフッと息を吐きポケットに手を入れ踵を返した。「たくっ・・・。毎度毎度、大枚はたいて良くやるぜ、あの爺さんも。」それにしても・・・と。その男は心の中で呟く。ここはスカイデッキと呼ばれる、鈴木次郎吉氏肝いりの宝石の展示室。だというのに、警備といえば、入り口に一人警官が配置されているだけで、中には誰もいない。その状況に、男はフッと息を吐いた。(それだけ防犯システムに自信あり・・・っていう事か。)声に出さずに
先ほどの展望デッキから蘭と園子たちは子ども達と別れて、一旦それぞれの個室へと向かった。蘭は、ドアを開けた瞬間大きく目を見開いて立ち止まった。「うわぁ、すごいね、園子。」「でしょ?」応えると園子はフフフッと胸を張り蘭に視線を向ける。内装が豪華になったとの事前の喧伝通り、クラシックな色調の壁紙に天井からはシャンデリアが吊り下げられており、ベッドやソファーなども以前より調度品がとても豪奢なものとなっている事に蘭は気づいた。「この部屋は特にスイートとして使われる部屋だから、ビクトリア朝時代の
『BellTree一世号の搭乗準備が整いました。搭乗をお待ちのお客様は、搭乗デッキまでお越しください。繰り返しご案内申し上げます。』館内に放送が流れると、ラウンジの隅で俯いていた蘭は顔を上げた。「行かなくちゃ・・・ね。」そう口にした蘭の目の前には気がつくと快斗と青子がいた。「黒羽・・・君、青子ちゃん。」「蘭ちゃん。大丈夫?」「うん、ゴメンね。心配かけて。」心配そうに隣に立ち声を掛ける青子に蘭は微笑むと快斗の方を向いた。「黒羽君・・・。」「蘭ちゃん、時間だから飛行船の搭乗デッ
その頃蘭は、園子と共に、VIP専用の待合室で出発を待っていた。蘭の右隣には快斗が足を組んで腰かけていて、左隣りには小五郎が深い溜息を吐きつつ、窓の外に見える飛行船に目を向けていた。そして、テーブルの挟んで向かい側には青子と園子が並んで座っている。「園子、私やっぱり子ども達と一緒に並んでるよ。あの子達心配だし。」そう言って席を立ちかけた蘭の腕を快斗が引いた。「蘭ちゃん、大丈夫だよ。向こうには博士がいるし。心配ないって。」その言葉に蘭は一瞬唇を引いてから困ったように小首を傾げつつ笑みを返
「快斗、キッドからテレビ局に『OK』の返事があったって。」「そうみてぇだな。」無言で前を見据えたままの快斗の横顔を見つめながら青子が言うと、快斗は唇を強く引いて応えた。それから後ろを振り返り、中森警部に視線を向ける。「警部がオレに話がある・・・っていってたのも、これの事ですか?」「ああ、その通りだよ。」警部は頷くと溜息を吐いた。「昨晩、鈴木次郎吉相談役から連絡があってね、今回の計画を明朝の朝情報を解禁してキッドに挑戦状を叩きつけるのだと息巻いてたよ。」「まあ、そうでしょうね、あの
翌朝、快斗と青子はキッチンで二人で朝食の支度をしていた。つけたままにしたテレビからは、今日の天気、ニュースなどが流れて来て、快斗はそれを聞き流しながら、朝食を作る青子の横でコーヒー豆をコーヒーメーカーに入れて目盛りを確認しながら水を入れた後、スイッチを入れようとした。その時だった。玄関のドアがガチャリと開き、その後まもなく、キッチンの扉が開かれる。「お父さん!!おかえり。」「早いですね、警部。コーヒー飲みますか?」快斗はそうたずねながら、水を足しコーヒー豆の分量を調節した。それから
「青子・・・。」快斗と青子は、快斗の自室のベッドの上で二人で向かい合って座っていた。名前を呼んでそっと顔を寄せた快斗の声に青子が顔を上げて、その唇が触れ合うかに思えた。その瞬間。一瞬だけ躊躇うように息を止めた青子に気づいて快斗が動きを止める。「青子?」そう名前を呼んで顔を覗き込んだ快斗の顔をまっすぐ見つめたまま青子が快斗の腕を掴んだ。「どうした?」問い掛ける快斗に青子が少しだけ泣きそうな顔をして顔を伏せる。そのまま何も言えずにいる青子に快斗は小さく息を吐き出すと、青子を優しく胸
事の発端は、二週間ほど前の事。学校の帰り道、蘭はいつも通り園子と二人で歩いていた。その時。「蘭、またおじ様とガあのガキンチョに例の件お願いする事になるのでよろしくね。」そう笑顔で言われた蘭は首を傾げた。「例の件・・・って、何の事よ?」溜息まじりにたずねた蘭に園子が目をキラキラさせながら両手を頬にあてて応える。「例の件ていったら、例の件よ。私がおじ様とあのガキンチョを指名するんだから。わかるでしょ?」「わかるでしょ・・・って、もしかして!?」立ち止まり大きく目を見開いた蘭に園子が
蘭はゆっくりと目を開いた。「ここは・・・。」呟いた蘭は大きく目を見開く。そこは、蘭にとっては良く見覚えのある場所だった。空を悠然と飛ぶ大きな船の最上部。蘭の親友である鈴木園子の親族が経営する鈴木財閥。その鈴木財閥が社の威信を掛けて造り上げた超大型飛行船。『BellTree(ベルツリー)一世号』その中でも蘭が今いるのは、『スカイデッキ』と呼ばれる、園子のおじである鈴木次郎吉が、キッドを捕まえる為に特別にしつらえた自慢の場所だった。「どうして・・・。」再び呟いた蘭は、すぐに目の
アイのシナリオ快斗(以下快斗):Ladies&Gentleman!!!アイのシナリオコナン(以下コナン):いきなりなんだよ。いつも通り、プラレボの新作が完成したから、毎度おなじみでするんじゃねぇのか?快斗:その前に・・・。ハッピーバースディ!!誕生日おめでとう!!名探偵♪コナン:なんだ、そっちか。快斗:なんだ・・・って。名探偵・・・。反応薄いなぁ。コナン:別に、誕生日なんて毎年来ることだし。しかも、この体じゃ誕生日も何も。快斗:その体だってなんだって、名探偵が生まれた日だろ?
「青子、大丈夫か?」「うん、大丈夫。快斗は?」目の前にキッドの姿のまま立膝をつくオレに青子が問いかけた。「大丈夫、問題ないよ。」応えるとオレは青子に右手を差し出した。その手を青子が目を細めて見つめると、微笑して握り返す。「良かった。」「青子も。」オレはそう応えると、青子の腕をて引き上げた。あいつに最悪の事態が訪れる。そう教えてくれた紅子の魔法で向こうの世界に行ったオレ達は、まさにギュンターの心理作戦にはまりかけていたあいつを危機から救ったり、向こうの世界のギュンターと対峙した
名探偵が部屋を出ていってからオレはずっと目の前に並ぶモニターをじっと見つめていた。それからしばらくしてからの事。扉をノックする音が聞こえた。「快斗、入ってもいい?」「ああ、今開けるよ。」応えるとオレは立ち上がり扉を開いた。すると、目の前に立つ青子は両手にトレーを持っていて、その上にはサンドイッチが並んだ皿があるのが目に入って。思わず大きく目を開いたオレに青子が笑いかける。「快斗、おなかすいたんじゃないかなぁと思って。」問いかけた青子にオレは頷く。「うん。そういえば・・・。」
「ちゃんと休んでこいよ。」あいつにそう言って、子どもみたいに脇の下を持ち上げられて椅子から下ろされた後、俺は仕方なく部屋を出てキッチンに向かった。(どうすっかなぁ?)そう思いながら、左手にマグカップの取っ手を掴んだまま右手で頭を掻いた。実際のところ、昨日から眠っていない。だから、自分の体に多少なりとも休息が必要だという事はわかっている。だけど、今この目まぐるしく事態が移り変わる状況の中で、頭はフル回転したままで。こんな状態でベッドに入ったって絶対に眠れるわけがない。そんなわかり切
青子はゆっくりと目を開いた。すると、カーテンの隙間から差し込んでくるおひさまの光に青子は目を細める。ずっと、シャッターが閉じられて、陽光さえも届かない様な場所にいたから、そんな当たり前な事にさえもすごく懐かしく感じた。思わず立ち上がろうとしたところで、自分が何も身に纏っていない事に気づいた。(そういえば・・・。)昨晩の事を思い出し、青子は顔が一気に熱をもち、顔がほてるのを自覚すると、改めて毛布を体にぐるぐると巻き付けた。そして、ベッドの上にぺたりと座り込む。『青子・・・。』そうし
それからしばらくして戻ってきたあいつは、手に2つのマグカップを持っていた。「おかえり。」そう、声を掛けるとあいつは一瞬驚いた様に目を大きく開いてからはにかむように微笑む。「ああ。」応えると、手に持っていたマグカップの一つを俺の前に置いた。「コーヒー。名探偵はブラックでいいか?」その問いに俺は頷く。「ああ、サンキュー。」「そっか。良かった。」そう言うと、あいつは自分のもう一つのマグカップを横に置いて、部屋の隅にある椅子を引いてくると俺の横に置いた。それから、ポケットからビニール
オレはその部屋の前で立ち止まると数瞬息をのんだ。それから、先ほど名探偵から預かった鍵を回し開錠すると、扉の取っ手を下に引き下げる。そして、そのまま扉を開けるとそこには何もない部屋の中央にあの男が手足を縄で縛られた状態で転がっていた。後ろ手に内側から鍵を掛けたオレは立ち止まりそいつを見つめる。するとあいつは転がったままオレを見上げ、口許をわずかに引き上げた。「やあ、怪盗キッド。いや、今は黒羽快斗君と呼んだ方がいいのかな?」手足を拘束された状態で。それでもあいつは口許に笑みさえ湛えなが
しばらくして目を覚ましたオレは、腕の中の青子を見つめる。青子は気持ちよさそうに寝息をたてて眠っていた。「からだ、大丈夫かな?」そう言いながらオレは青子の柔らかい髪を撫でる。すると、眠っているはずの青子が、猫の様に背中を丸めて気持ちよさそうに口許に笑みを浮かべる。青子の中にもきっといろいろ、積もり募ってきた想いがあったのだろう。ここに来たことで、青子が少しでも安心できるなら。そして、青子らしく、元気な青子で。笑顔でいてくれるなら・・・と。オレは、心から願った。青子のぬくもりが名
「青子、入ってもいいか?」「うん、いいよ。」部屋の前でノックをしてたずねたオレに青子は応えると、すぐに内側からドアを開けてくれた。「どうだ?新しい部屋は。」部屋の中に入りながらたずねると青子が笑顔で応える。「うん、すっごく素敵な部屋で。でも青子にはちょっともったないないかなぁ・・・って。」そう言いながら青子は苦笑して頭をかいた。「そんな事ないよ。」応えるとオレは青子の目の前に立って言った。「ていうか、やっぱりここでも、青子の自由が制限されてる状況は変わらないし、その元凶は、オレ
「おい、着いたぞ。」「あっ・・・わりぃ。」その声に目を覚ましたオレは少し目許をこすり顔を上げた。そして、その直後大きく目を開いた。「これって・・・!!!」「まさか、本当にあるとはな。」半ば苦笑気味にオレが座っている後部座席を開いて目の前に立つ名探偵が上を見上げる。「なかなか立派なお屋敷ですね。」運転席から降りて外に出た昴さんもポケットに手を入れると、細い目を更に細くして。その、あいつが『キッドの隠れ家』といっていた建物に目を向ける。。オレも車の中でいまだ眠り続ける青子を膝にのせ
オレにとっては忌まわしい存在でしかないあの男を背負いながら、オレは自宅の地下から外へと続く隠し通路を通り外へと出ると、少し離れた場所に車を止めて待っていたあの人。謎の自称大学院生、沖矢昴さんの待つ車へ青子と名探偵と共に駆け足で向かった。オレが背負ってきた男はとりあえず拘束したままの状態でトランクに寝かせた。あの名探偵の麻酔銃を撃ち込まれているのだから、そう簡単に目を覚ます事はないだろう。名探偵は助手席で昴さんの隣に座り、後部座席にオレと青子が二人で並んだ。青子は疲れたのだろう。車に乗
「だめ。この青子を傷つけたら絶対にダメだよ。」青子ちゃんは立ち上がると、青子を守る様に両手を広げて、あの人の目の前に立った。そんな青子ちゃんを嘲るかの様に、あの人は口許に手をあててクスリと笑う。「まさか君まで来てるとはね。」そう言って青子ちゃんに向かい右手を差し出す。「異世界よりようこそ。中森青子さん。」その言葉に、青子ちゃんは少しもひるむ事もたじろぐ事もなく、差し出された手を取る事もせず、まっすぐあの人を見つめた。青子はやっぱりその人がこわいと思う。だって、顔は笑ってるけど、目
俺は彼女にいわれたとおりに昴さんの車の助手席に座りながらあいつの家に向かっていた。「もうすぐですね。」「ああ、この大通りから曲がって、後は・・・。」そう掌を握りしめた。その時だった。突然、再び俺の探偵バッジの呼び出し音が鳴った。(何かあったのか!?)発信元は彼女だろう。そう思い、急いで探偵バッジを取り出し通話ボタンを押した。すると・・・。『ああ、名探偵。公園に怪しげな男達を30人ばっかし捕まえといたから、警察に通報しといてくれ。』前置きも何もなく、それだけ告げられて通信は途
人気(ひとけ)のない真っ暗な公園で背中を向かい合わせに立つオレ達を取り囲む黒服の男達は、ざっと数えただけでも30人くらい。だが、背後にいるあいつは、ポケットに指先を入れたまま口許を引き上げ余裕の笑みを浮かべる。「これだけの人間に囲まれるなんて。どこにいっても人気者だな、怪盗キッドは。」「そういう問題かよ。」オレは思わずその言葉に苦笑した。それから、この公園で初めて青子にキッドの正体を知られて、青子が攫われた日の事を思い返す。あの時は、たった一人。やはり、今と同じ様に周囲を拳銃を構え
青子はまどろみの中で聞こえてくる声に耳を澄ませた。『快斗からコナン君に伝える様にいわれたの。あのね、青子とこっちの世界の青子は快斗の家の快斗の部屋にいるから迎えに来てくれる?』『うん、眠ってるよ。泣き疲れて疲れちゃったみたい。』『青子の家の近くの公園。快斗達が悪い人達をそっちに引きつけるから、コナン君達は別のルートを使って来て欲しいって快斗が言ってたよ。』優しい声。でも、聞こえてくる柔らかい響きの中に、青子は芯の強さを感じた。この子はきっと、優しいだけじゃなくて、ちゃんと快斗のそばに
昴さんに車を出してもらい、家を出てからしばらくすると、探偵バッジの呼び出し音が鳴った。俺は探偵バッジをポケットから取り出しつつ首を傾げた。「誰だ?」呟いた俺に運転席でハンドルを握る昴さんが問いかける。「どうしましたか?」「いや・・・。探偵バッジを持っているのは探偵団のあいつらと灰原くらいで。探偵団の子ども達には俺はしばらく連絡が取れなくなるからって事を伝えてあるんだ。それに、灰原だったら、よほどの事がない限り携帯で掛けてくると思うんだけど。」「そうですか。しかし・・・先ほどの二人目の
公園の中央に降り立つと、そいつは微かに目を細めた。「やっぱ同じなんだな、ここは。」ものすごく感慨をこもっている様に聞こえるその言葉にオレは小首を傾げる。「何が?」「いや・・・。」応えると軽く息を吐いて、そいつは改めてオレの方を向いた。「それじゃ、あいつらが来る前に。改めまして。オレは黒羽快斗。ヨロシクな。」そう笑いかけると右手を差し出したあいつにオレはその手をとり頷く。「ああ、オレも・・・黒羽快斗。」「知ってる。」応えると、あいつ。もう一人のオレが口許を上げて笑った。「本
阿笠博士の家からまっすぐハンググライダーで飛んできたオレは、自宅の家の屋根に降り立つと静かに翼を下ろした。「さすがだね、怪盗キッド。」屋根の上に立ち、風にブロンドの髪をなびかせる男にオレは鋭い視線を向ける。「青子はどこだ?」「この中にいるよ。」その言葉に即座に動き出そうとしたオレの動きを遮るように高速で足元に銃弾が2発撃ちこまれた。「もう遅いよ。彼女は死んでる。」その言葉にオレは愕然とした。「まさか・・・。」呟いたオレにそいつが笑みを浮かべる。「30分以内に来なけれ青子の命は