人は狂気を嫌う。自分のうちに物狂おしい気持ちが生じることを嫌う。これは狂人とて同じことなのである。狂人とて物狂おしくはなりたくない、平然としていたいのだ。ところである統合失調症の患者が病識を持っているとする。病気の自覚というのはある意味、不自然な意識でありさらには病識即ち狂気の自覚であるから、これほど物狂おしい気持ちを起こさせる意識もないであろう。一面から言えば、物狂おしく感じるからこそ狂気を自覚できるとも言えるのだが、他面から言えばそんな異常な意識など持ちたがらないがゆえに、病識を持つことが難