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ピーッピーッピーーッ・・・授業中突然鳴り出したその音に俺はハッとしてまわりを見渡す。探偵バッジ。博士につくってもらった俺達少年探偵団の通信メカ。元太、歩美、光彦、灰原。本来これを持っている人間はみな、この教室の中にいて、前に立つ小林先生の話に耳を傾けている。だとすると、他にこの探偵バッジを持っているのはあと他に二人。黒羽快斗。怪盗キッドと呼ばれ、今は俺の一番の親友であるあいつと、その彼女の中森青子。二人にはある事情があって、数か月前に、特別に博士に頼み込んだ特別仕様の探偵バッジ
「中森さん。ちょっといいですか?」落ち着いた雰囲気で、女性たちが談笑している輪の中で、僕は中森さんの肩をトンと叩きました。「白馬君?」「至急お伝えしたい事があります。」僕はそう言うと、踵を返して歩き出し、教室の後方の隅へと向かいました。そこで彼女を手招きします。中森さんは不思議そうな顔で小首を傾げながらも、チラリとまわりをみわたし一瞬目を丸くすると表情を一変させました。おそらくその瞬間気づいたのでしょう。彼がこの場にいない事に。少し小走りに駆けてきた彼女に僕は言いま
気配を消し壁際に隠れながら、そっと職員室の中をうかがう。すると、予想通り。幾人かのカーキ色の隊服のようなので身を包んだがたいの良い男達が数人、教師に猿轡(さるぐつわ)をして座らせながら、後ろ手に回したう腕を縄で縛りつけて拘束していた。その動きは無駄がなく、物凄く手馴れていて、明らかに一般人とは思えない。それを見ながらオレは静かに舌打ちすると、耳にワイヤレスのイヤホンを掛けて、手早く手許のスマホを操作しコールボタンを押した。「はい。」ワンコールで出た相手に尋ねる。「そっち
それから2週間ほど。時間はとても穏やかに過ぎていった。アミちゃんはクラスメイトとも打ち解けて、昼休みは青子達と机を並べて談笑しながら笑顔で過ごしていて、とても楽しそうに見えた。アミちゃんは時期が来れば元の学校に戻る。元々いたアヌシー学園は女子校だから、女の子達の輪の中でとこれから先生活していく事も想定して、オレは学校ではあえて少し距離を取りながらアミちゃんを見守り続けた。このまま何事もなく、時が平和に過ぎる様に・・・って。オレは心から願っていた。だけど、必ず終わりの
「警部、いいですか?」その夜、オレは青子とアミちゃんが寝室に上がった後、警部の書斎の扉をノックした。「ああ、かまわないよ。入りたまえ。」「はい。」その声にオレは応えると、書斎の奥にあるデスクへと向かった。「やっぱり・・・。」呟いたオレに警部が顔を上げる。「うん?」「警部、ホントは仕事めちゃめちゃ忙しくて、上がれる状況じゃなかったでしょ。」オレは警部のデスクを一瞥するとそう言って苦笑した。「こんないっぱい仕事持ち帰ってきて。朝までに終わらないんじゃねぇ?」そう言っ
その日の夕方家に帰ると、先に帰宅していた警部がエプロン姿で夕食の準備をしていた。「やあ、お帰り。」警部はそう言いながら、キッチンで包丁を手に持ったまま顔を上げた。「ただいま、お父さん。」「警部、お帰りなさい、早いですね。」そう言ってそれぞれ手を洗ったり、荷物を片づけたりしながら声を掛けたオレ達に、警部は再び手許の食材に視線を落としつつ応える。「ああ、今日は珍しく早く終わったのでね。たまには夕食でも作ろうかと。」「へぇ~、でもお父さん、この材料って・・・もしかして鍋?」
「おはよー、青子!!」「おはよう、恵子!」夏休み明け、9月1日。長い休みを終えて、昇降口で顔を合わせた二人は、その場で軽くハグをしてからお互い向かい合い笑みを浮かべる。「ちょっと焼けた?青子。」「やっぱりわかる?少し・・・。日焼け止め足りなかったかな。」「いやいや、この暑さじゃどんなにガードしても、限界でしょ。」「やっぱそうだよね。」苦笑して溜息を吐く青子の肩を恵子は叩いた。「でも、青子が元気そうでよかったよ。」恵子はそう言うと、青子の隣にいたオレの背中をポンと叩
「それじゃ、また明日ね、快斗。」そう言って青子の家の玄関で手を振りにこやかに微笑む青子に手を伸ばすと、オレは一瞬だけ指先で頬に触れて唇を重ねる。すぐに顔を上げた青子が顔をわずかに赤く染めながらオレを見つめる。「快斗・・・。」「すっげぇ我慢してんだから。これくらいいいだろ?」少し拗ねた顔で視線を逸らしたオレに、青子がクスリと口許に手をあてて笑みを浮かべる。「うん。快斗・・・。」「なんだよ。」「あのね、今日はすっごく楽しかったよ。ありがとね。」満面の笑みで笑い掛けてくる青子をオ
「快斗、観覧車に行こう!!」そう、鶴の一声・・・というか、青子の一声で決まった次の行き先は、世界初の二輪観覧車がある『東都水族館』。数か月前にある事件の被害により、観覧車が崩落して、遊園地エリア全体が休業中になっていたけど、先日やっと復旧を終えて営業再開したばかりのその場所をオレ達は目指す事になった。その途中で、あんみつ屋さんに寄ったり、有名なパンケーキの店に寄ったり。とにかくこれでもかというくらい青子がスイーツの店巡りを楽しんで。それからショッピングモールでフラッと店に立ち寄りな
それから数日後、青子の家でテレビを見ていた時の事。「快斗、あれは何?」目を輝かせて画面を指差すアミちゃんにオレは「ああ・・・。」と息を吐いた。そこはいろいろな意味でオレには思い出深い場所だから。数瞬だけ瞼を伏せると微笑して応える。「ベルツリータワーだよ。」「ベルツリータワー・・・。」「そう。高さは634m、今現在日本で一番の高層建築物っていわれてるんだ。」応えたオレに青子が笑顔で頷く。「そういえば、今ベルツリータウンで超人気のかき氷屋さんがあるらしいよ。」青子が言うと
翌日、オレと青子はアミちゃんを連れていつもの阿笠邸へと向かった。アミちゃんを先頭にしてリビングの扉を開けると、子ども達がいっせいに集まってきた。「すっげぇキレイなねぇちゃんだなぁ。」「外国人の方ですかね。」「お姉さん、誰?」口々に問い掛ける子ども達にアミちゃんは表情を変えないまま、少し視線を下げて言った。「アミ・エナンよ。」「アミ・・・お姉さん?」小首を傾げた歩美ちゃんにアミちゃんは首を横に振る。「アミ、じゃなくてアミ。日本語の網(あみ)に近い発音・・・っていえばわかる
「快斗~!!」コナンがいなくなった後、早足で駆け寄って来た青子に名前を呼ばれて快斗は振り返る。次の瞬間。「きゃっ・・・!!」声を上げると同時によろめいた青子に快斗はサッと手を伸ばした。そしてふわりと青子を抱き上げて、その場に立たせると心配そうに青子を見つめる。「大丈夫か?」「うん、大丈夫だよ。」応えた青子に快斗はほっと息を吐いた。「危ないだろ?慣れないヒール履いてるんだし。船の甲板なんだから溝に引っかかって転んだりする事だってあるんだから、もっと気をつけねぇと・・・。」
「お前・・・。」マジックショーを終えて、船の舳先にいるコナンの元に向かった快斗。それに気づいたコナンが後ろを振り返り、歩いて来る快斗にジト目を向けた。「『いつか、月下の下でお会いしましょう。』・・・って。どっかの怪盗のセリフだろ?」そう言って溜息を吐くコナンに快斗が苦笑する。「ノリだろ?ノリ。誰もマジで聞いてねぇって。」心配性だなぁ、名探偵は・・・と。呟いた快斗にコナンはもう一度これ見よがしに大きな溜息を吐くと、次の瞬間、真顔で顔を上げる。「それで・・・。お前は、もう大丈
それから数時間後。コナンは後から来た子ども達と合流して、船上のデッキに出ていた。水平線上には沈みかけた太陽が紅く燃える様に輝き、空に浮かぶ雲を茜色に染めあげる。西の空には満月が淡く光り、静かな波間にキラキラとその光を反射させて、絵画の様な風景を映し出していた。そして、デッキに一直線に敷かれた鮮やかな青色の絨毯。その直後、ヴァイオリンの生演奏と共にその場に現れたのは・・・。「うわぁ!!!」ピンクのレースをふんだんにあしらった可愛らしいドレスに身を包んだ歩美が一番に感嘆の声
荷物を置いた後客室のソファーでくつろいでいた蘭と園子と青子。だが、次の瞬間扉をノックする音が聞こえたと同時に園子がニヤリと口許を上げた。「来たわね。予定通りだわ。」園子はそういうと、立ち上がり歩いていって入口の扉を開けた。それから小声で何事かをひそひそと話し込むと、後ろを振り返り、声が響く様に口許に掌をあてる。「青子ちゃん~!!」「はい、何?」呼ばれた青子が来ると、園子はそばに控えていたメイド姿の女性二人に視線を向けてニヤリと笑いかける。「それじゃ、頼んだわよ。」その言
「快斗、ほんとうにここでいいのかな?」青子は目の前の船を見上げながら呆然とした口調で快斗にたずねた。「ああ、確かに、約束した場所は間違ってないぜ。」ポケットに手を入れたまま応えた快斗に青子が頷く。「園子ちゃんて、本当にすごいお金持ちなんだね。青子達の為に、こんなすごい船を用意出来るなんて。」「そうだな。」(まあ、あれでも・・・。鈴木財閥の社長令嬢、しかもあの爺さんのお気に入り・・・・だからな。)心の中で呟いた快斗は、口許で苦笑いを浮かべる。その時。「よぉ、さすが、時
「快斗。具合はどう?」部屋の入口の扉を開けると、オレがいるベッドまで歩み寄り顔を覗き込んでくる青子。青子が持つトレーの上には、透明なグラスにお茶が注がれていて、その脇にはクッキーが添えられていた。「うん、大丈夫。」応えたオレに青子はほっと息を吐いた。組織に連れ去られた後、拷問といっても過言ではないほど過酷な日々を送り、あのライバルである名探偵に助け出された。それからずっと。家も学校も。オレ達の居場所すべて奪われたオレ達は。今は、名探偵工藤新一の邸で匿われている。
「快斗君!」快斗がヘリの扉を開けて外に出ると、真っ先に銀三が駆け寄ってきた。「大丈夫かい?ケガはないかい?」心配そうに肩に手をおいてたずねた警部に快斗は微笑む。「大丈夫です、警部。青子も無事に元に戻りました。」そう言って目を細める快斗に銀三は大きく息を吸って胸を撫でおろす。「ヨハネスも元に戻り、サラさんの魂は天国に還りました。パンドラの問題も無事に解決しました。」「そうか、そうか。万事解決だな!!」ガハハハッと豪快に笑いながら肩を叩く銀三に快斗は苦笑しながら頭を振る。
「大丈夫かな?カイト達・・・。」「そうだな。」不安そうに呟いたギュンターに、コナンは手許で時間を確認して表情を険しくした。ヨハネスの後を追って、ギュンターが快斗を青子の中に送り出してからもう既に3時間以上が経過していた。そもそも、人の心の中というまったくの異世界で、同じ時間が流れているのかどうかすらもコナンにはわからないのだが、それでも、目の前で親友がピクリとも動かないまま、それほどの長時間にわたり意識を失っている状態を心配するなという方が、ムリな状況だった。だからといって、今の
「やっぱり・・・こんなこったろうと思ったぜ。」快斗は呟くようにそう言うと、パンドラを頭上にかかげたままのヨハネスに鋭い視線を向けた。「お前・・・。」「いったろ?ぜってぇお前をそのままじゃいかせないって。」そう言いながら快斗はヨハネスに向かい歩き始める。「どんな事情があったとしても、お前がたくさんの人を傷つけてきたのは事実だ。だから、お前は絶対に生きてその償いをしなきゃならない。それをこんなところで・・・。」快斗が言い掛けたその時。「快斗!!」目の端に涙を滲ませながら青
「青子、青子。」呼び掛ける声に、青子はゆっくりと瞼を上げた。そうして、横たわる青子を真上から心配そうに見つめる快斗に目を細める。「快斗・・・。」「青子、良かった。気づいて。」そう言いながらホッと胸を撫でおろしてシルクハットを外すと、その場で足を投げ出して息を吐いた。「青子・・・あれ?ここは?どうして?」「ヨハネスに眠らされたんだよ。ヨハネスが青子の中に入る為に。」応えた快斗に青子は頷く。「それで、快斗はどうしてここに?」「ああ、ギュンターが、心配だからオレが青子を
「ヨハネス・・・。」呼び掛けるとサラは、口許に手をあてながら顔を伏せた。そして、目の端を涙で滲ませる。「どうしてこんな事を・・・。」その言葉に、青年のヨハネスが歩み寄り肩を抱いた。「ゴメンね、サラ。すべて僕のせいなんだ。僕の弱さが・・・みんなをこんなところへ導いてしまった。」「ヨハネス・・・。」サラは顔を上げると、無表情に自分を見つめるヨハネスに目を向けた。「ヨハネスから事情は聞いたわ。」「そう。」頷いたヨハネスにサラは話し続ける。「私が死んだあと、あなたが
急勾配の屋根にレンガ造りの建物。そんな街の中にしんしんと雪が降り積もる。その雪は世界を真っ白な純白の世界へと変えていく。悪意もすべて覆い隠す、純白の世界へ。「これは・・・。」呟いたヨハネスは目を細めた。「おかえり。」その声に顔を上げると目の前に立つ人物に目を向ける。「お前は・・・。」「何十年・・・。本当に、久しぶりだね。」そう笑い掛けた男に、ヨハネスはニコリともせずに頷く。「ああ。この景色は・・・。」「覚えてる?サラを喪ったあの日の・・・。僕達の街さ。」その
「お前達にも手伝ってもらうぞ。」そういうとヨハネスは、快斗の隣にいた青子の手を取り、握っていた快斗の手に重ねる。「えっ・・・?」「かい・・・と・・・?」言い掛けた青子がそのまま快斗の胸に倒れ込み、スースーと寝息を立て始める。「おい!!お前、青子に何を!?」「眠らせただけだ。早くヘリの中にでも、彼女が休めるところに運んで連れて行け。」ヨハネスはそう言うと、微かに目を細めて青子を見つめる。「彼女にはしばし眠っていてもらう。その間に私は彼女の中に入り、もう一人の私と話をする
「皆既月食っていえば、2か月後、ボレー彗星が地球に最接近する頃に、何百年ぶりに皆既月食と惑星食が観測できるって。そういえばテレビで騒いでたぜ。」ゆっくりと近づいて来たコナンに頷きながらも快斗は浮かない顔をする。「ああ。それはそうなんだけど・・・。」そう言いながら手の中にあるパンドラを見つめる快斗にコナンはフッと息を吐いた。「納得いかねぇ・・・って顔だな。」そういわれて快斗は顔を上げた。「名探偵・・・。」「まっ・・・なんとなく、わかる気もするけど。」その言葉に息を吐くと快斗は苦
一年に一度の、オレの誕生日。その日は、博士の家に行って。そしたら、青子と名探偵はもちろん、哀ちゃんや博士、探偵団の子ども達。それに、蘭ちゃんや園子ちゃん。服部に和葉ちゃんに京極さんまでオレの誕生日を祝ってくれて。それで家に帰ったら、警部も誕生日ケーキを買って待っててくれて。みんなに誕生日を祝ってもらって、すげぇ幸せな気分で眠りについた。すると、夢の中にいたんだ。もう一人のオレ。少し前に、オレの世界にやってきて、たった一日だけ行動を共にしたあいつ。すげぇ暗い
「誕生日、おめでとう!快斗!」その声に導かれる様にオレは、ゆっくりと瞼を開く。「たん・・・じょうび?」問い掛けたオレに、目の前の人物はフフフッと口許に掌をあてて笑みを零す。「そうだよ。忘れたの?」そして、後ろから大きな赤いバラの花束を取り出して、オレの目の前に差し出した。「すっげぇ・・・。」「でしょ?100本のバラの花束は100%の愛情なんだよ。」その言葉にオレはなぜか少し胸が締め付けられるような息苦しさを感じて胸許に手をあてた。「それは・・・いいのかな?オレが受け取っ
「それで親父、パンドラを使う・・・ってどういう事だ?パンドラは命の石。一万年に一度ボレー彗星が地球に近づく時、満月に石をかざすと、石が涙を流し、不老不死が得られる・・・っていう伝説なんだろ?」「ああ、その為に彼はずっとこのパンドラを狙っていた。」そういって盗一はもう一度ヨハネスに視線を向ける。ヨハネスはそんな盗一を鋭い視線で見返す。無言のままお互いを見据えるふたりを、快斗は唇を強く引いたまま張りつめた表情で見つめた。「それじゃ、親父。パンドラを使うってのはやっぱり・・・。」言い掛
「親父。」快斗はそう呼び掛けてゆっくりと顔を上げると、目の前にいる盗一を見つめる。「まだ解決出来てない問題があるんだ。」そういうと快斗は振り返り、ヨハネスと隣にいる青子に視線を向ける。「ヨハネスの人格はふたつに分裂したままだし、しかもその一つは青子の中にいる。それにヨハネスが呼び出したサラさんの魂も・・・。だから・・・。」その言葉に盗一は深く頷くと、一瞬だけ瞼を閉じた後で、微笑して快斗を見つめる。「ならば、これを使うといいよ。」盗一はそう言って快斗の手を取ると、自分の手の中にあ
「ぼっちゃま!!」「寺井ちゃん!!」ヘリの停めてある方向から大きな声で呼びかける寺井の声が聞こえた。快斗は声のする方向に顔を向ける。「ぼっちゃま、よくぞご無事で・・・。」寺井は快斗のところに辿り着くと、そう言いながら目許をハンカチで拭った。そんな寺井に快斗は苦笑する。「たくっ・・・・。大袈裟なんだから。」「いいえ。大袈裟な話などではありませんぞ。ぼっちゃま!!すぐにこちらにお越しください。」寺井はそう言って、力強く快斗の手を引いて、ズンズンドンドン歩き出すと、夜の砂浜に停ま