その疾(とき)こと陽炎(かぎろひ)の登(のぼ)るがごとく、雷電(いなづま)の閃(ひらめく)に似(に)て、人間技(にんげんわざ)ともおぼえねば、これを見るもの酔(えへ)るがごとく、嘆賞(たんせう)あまりて声(こゑ)だに得(え)-揚(あげ)/ず。為朝(ためとも)は取(とり)たる矢(や)を、左右(ひだりみぎ)へ掻遣捨(かいやりすて)、「いでその法師(ほふし)首(くび)給はらん」といひもあへず、御階(みはし)の上(うへ)に跳上(とびあか)り、信西(しんせい)に掴(つか)みかゝらんとする/を、父(ちゝ)の