ブログ記事3,672件
収録の時には、もう出血も収まって腫れもなかったから、メンバー以外は知らない秘密になった。帰り支度をしていたら、当然のように松本が智君のところに来て〔このあと、すぐに行ける?〕って聞いていた。自分で撒いた種とはいえ、こんな時にアルコールはダメだろ「それは、やめた方が良いんじゃないかな?」思わず本音が口をつく〔へぇ、そんなこと言えた義理かな?誰がそうしたんだよ〕松本は即、挑んでくるような眼をしてきた。殴りたかったのは、お前の方なのに……『やめてよっ!もうっ……翔君だってやりたくて
このお店、中は少し迷路のようになってる奥の机は見えているのにすんなりその場所に辿り着けない気がするなのに、実体化した古の翔様はあっさりと大きな机の前に着いた「何をオロオロしてんだか?」翔兄が横目で俺の顔を凝視する「オロオロと言うか・・・相当無礼な事したからあの時の費用は全てお支払い済みだったそれも当然と、お礼する言わなかった」翔兄は長い指先で額掻きながら苦笑いを浮かべる「じゃあ、先ずはお詫びだなそんなこと気にする人ではないけど礼儀は
ゆったりと流れる時間の中で二人きりの時間を過ごした古の二人茜色に染まり始めた空を手を繋いだまま眺める「夏の空は陽が沈んでもまだ明るくて・・・早く帳が下りないかと心待ちにしたものだだが、今は瑠璃に染まるのを待って欲しいと願ってしまう」「夏の夜は更けるのが遅いからな・・・私も姿を隠してくれる瑠璃の空を心待ちにしていたふふ・・・お前の温もりを感じながら陽が沈むのを見られるとは・・・私も一緒に願うよ・・・」陽が沈み静まり返った都に虫の音と牛車
最後の花火が上がり気が付いたら離宮とは違う場所「ここはどこ?」「離宮ではないようだね」「あの場所でもない」「ああ、あの建物ではないな」4人で顔を見合わせて首を傾げていると「こちらはサクライ侯爵家のお城です私は最初からこちらに居ましたので」綾野君が真面目な顔で答えを教えてくれる「侯爵家・・・今でもいるんだな」現在の日本には貴族制度はない故に爵位を持ってる人はいない「侯爵家・・・それは何かの位か?」「翔様の時代で云う、
ずっとお兄ちゃんの傍に居たいその気持ちは今も変わらない子ども妖精になりたての頃僕を見つけてくれたお兄ちゃん何も考えずに通った部屋あの頃に戻れるなら戻りたいって思う時がある大好きだけで傍に入られた頃に・・・緋の妖精の核がお兄ちゃんの中に戻ったら何が起きるんだろう?お兄ちゃんは妖精になる?それともどっちらかを選択するの?僕は・・・どうすればいいんだろう?人として生きるって言ったら蒼の花の核は蒼の森に帰るそんな気がするんだ・・・そしたら・・・僕は
花が咲く庭に大きなテーブルとイスが用意されてたさっきは無かったのに・・・テーブルの側まで行くと其々の始まりの5人の姿はなかった「大ちゃん・・・始まりの皆はどこ?」「実体化できるのは此処にいる間だけ邪魔しない方が良いと思って教会の方に移動して貰ったよ積もる話は沢山ある」「5人で帰るって言ってた・・・」きっと蒼の森の中にある楽園かもしれない「記憶だけあるべき場所に戻るここを出る時はちびちゃん達の中に」「昨日言ってたね・・・ゆっく
紅玉からの帰り道運転席には俺が座った後部座席に並んで座る二人「翔兄・・・あの方々は一体何者?」ずっと疑問に思ってた事を口にするとこめかみ辺りを指先で触りながら苦笑いを浮かべた翔兄(ミラー越しに見える)「どう表現すればいい?」画伯さんに顔を寄せて確かめてる「そのまま言えば良いんじゃないチーフは妖精、蒼ちゃんはエルフ大ちゃんは神様」どこのおとぎの国の話?揶揄われてるような気がして大きく咳払いをする「ううん・・・おとぎ話の世界じゃ
眩い光を通り抜け(まさにそんな感じ)着いた場所はよくテレビで見る、海外の城の大きな広間「えっ?・・・サクちゃんここは何処?」いくら動じない俺でもこれは些か動揺するさっきの洋館もかなり豪華な部屋だったけど比べ物にならないくらい歴史も古そうだしその上、荘厳な感じがする「大ちゃん、お待ちしていました」目の前に気品が溢れる人が立ってたどこぞの王子様みたいな感じ色素の薄い肌と瞳の色はブルー「王子、ご配慮ありがとうございます彼がサクちゃんでこちらが暁さ
じりじりと照り付ける太陽庭の樹々の葉の隙間から陽の光が零れ落ちて風に揺れるまるで眩く輝く光のシャワーみたいだそれに合わせて鳴きだす蝉それだけで汗が出てくる気がするこんな暑い日が続くと思いだすのは彼奴と初めて花火を見に行った日の事やたら豪華な船でクルージングしながら花火を見る当日まで秘密にしておいて驚かせるつもりだったようだけど俺が女だったとしても喜ばない(キッパリ)絶対引くだろ(あんなクソ高い船)海の上の高級ホテルって形容がピッタリだったセレブって奴はって思ったけど
勾玉を手にした大ちゃんが向かった先は長(智)も烏帽子(翔)も見たことがない場所木漏れ日が地上を照らし庭先には青と赤の花が咲いている建物も見たことのない物「翔、ここは何処なんだ」小さい声で話しかけると翔も同じように怪訝な声で返事をする「私もよく分からない」花火を一緒に観たいとは言ったそれはあの二人と一緒にという意味我々の浴衣も拵えたと嬉しそうに話してくれたが現実的にそれを着ることなど出来ない気持だけで十分嬉しいと思っていた「大ちゃんという人は・・
頂いた珈琲(アイス)を飲んですぐ後部座席に座った画伯の寝息が聞こえてきた「ふふ・・・寝ちゃったな」ハンドルを握る翔兄がミラー越しに画伯を確認して愛おし気な眼差しを向けた人はここまで変われるのかな?と思いながら自分の事を顧みた考えたら、俺も相当冷徹な人間だったそれを変えたのが智君だ・・・「寝顔も愛しいって事でしょ?」「当然、どんな顔も愛おしい寝顔って無防備だろ俺の隣でスヤスヤ寝てる顔見てると愛しくて愛しくて」「翔兄・・・蜂蜜よりも甘い
仕事場に戻りインスタントの珈琲を淹れる椅子に座って窓の外を見ると青い空にぼんやりと月が浮かんでた気が付かなければ見過ごしてしまう半分欠けた月物事も同じなのかもと思えてきた知っている事、知らない事実は見えているのに気が付いていないだけなのかもと珈琲カップに口をつけた時ドアを開けて二人が入ってきた「ああ、径君だけずるい!」入ってきた第一声がそれ?まあ、和也らしいと言えばらしいか「この部屋はセルフだぞ飲みたければご自分でどうぞ」「まあ君も飲むでしょ?
分室の朝は早い(笑)来客は来ないけどチーフとなれば紅玉が開く時間には椅子に着席しキリリとした顔で和さんが扉のプレートをひっくり返すのを眺める戻ってきた和さんに必ず挨拶「おはようごじゃいますきょうもよろちくおねがいちます」助手に対するチーフとしての心得らしいその姿が可愛くて仕方がないに面々緩んだ顔のまま返事をする「チーフ、今日も良いお天気ですよ一日頑張りましょう」「がんばりましょう!」分室のメンバーが揃うのは夜それまで何をするのか思案中のチーフ
最低限の荷物を用意してソファーに座って彼が来るのを待つ綾野君がいまだ信じられないという顔をして部屋の中をきょろきょろと見回した「長・・・本当にお見えになるのでしょうか?」これで来なかったら俺達はピエロになる来もしない相手をずっと待ち続ける(笑)それはそれで面白いかも知れないけど『智・・・誰か来るぞ』長が警戒した様な声で呟く俺には全く分からないけど長には分かるらしい「大丈夫、この前の方です」『承知した』「どうかされましたか?」怪
携帯から聴こえてくる貴方の声いつもより優しい気がした「ごめん直ぐに電話出来なくて親父さんとの話、大丈夫だったか?」自分の事は後回しで俺の心配ばかりしてくれる親父との話を伝えると少しだけ安堵した声になった「一族の当主になる覚悟か…縁を切るって事は絶縁って事だよな」「俺とは別の次期当主が養子にくるらしい」どこから養子を取るんだろう…一族の誰かなのはわかるが「そう言うことか…」貴方が少しだけ口ごもる「心当たり有るの?」
母は我が子を手放すことが絶えられないと思ったのだろうだから、俺以外の子を成さなかった父も母の気持ちを考えてその意向を受け入れたそもそも、耀の一族の役割とは何だろう?「サクちゃん、ご飯を食べる時は考え事はしない」画伯がキーマカレーを口に運びながらチラッとこっちを見た「そうだぞ、眉間に皺寄せて食ってたら味も何もわかりゃしない作ってくれた人にも失礼だ」翔兄がチクリと針を刺す「すみません・・・」「まあ、誰にでもそう言う日はあるそこは気にし
花火大会の当日、翔兄たちは朝早く出掛けて行ったコスプレ仕様と言うのか特殊メイクと言うのかそれをしなきゃいけないらしい画伯はアニメの主人公の怪物君大きな耳と青と赤の帽子がトレードマーク漫画のイラストに浴衣姿があるからイケるだろうと浴衣着用に決定翔兄はお付のドラキュラ黒マントとシルクハットに杖これはマストだと言い張るから大変浴衣を持参してメイクして貰う間に決めると話しは落ち着いた翔兄、ちゃっかり浴衣を新調した画伯に止める様にと依頼されたが俺が止めたところで止まる訳
いつも時間に電話を入れる携帯から聞こえてきた声は清々しい声をしてたもう迷いはないのだと確信する「何時帰るの?」「どうして分かったの?今話そうと思ってたのに」驚きの声を上げるけど気持ちが一番声に表れる特にお前は隠し事が出来ないから(笑)「声が教えてくれた」「誰の?」「お前のに決まってるだろが(笑)」訳の分からない事を目を大きく見開いて吃驚した顔をしてるのが見えるようだ「俺の声ってそんなに変わる?」心外だと言わんばかりの声それが
飯を作るということがこんなに大変だとは知らなかったレタス一つちぎるのも食べる人の口の大きさに合わせ(ちょっと大きかったような気もする)プチトマトのヘタを取り方だってやってみないと分からないヘタを取りながら思い浮かんだのが苺のヘタ苺のヘタも取らなきゃいけないのか?ケーキとかヘタ付の苺乗ってるしトマトとは違うのだろうか?「智君、苺のヘタには雑菌とかついてないのかな?ケーキとかに乗ってるよね」考えたらお弁当とかトマトのヘタは取って有るけど苺のヘタが取ってあるの
車を車庫に入れて玄関に向かうここに戻るのは何年振りだろう大学を卒業して直ぐにマンションに移った理由が何だったかは思い出せない此処での暮らしが窮屈だったのかただ『一人暮らしがカッコいい』と思ったのかまあ、大した理由ではなかったはず玄関に着くと執事が出迎えてくれる「翔様、お帰りなさいませ」そう言って一礼する「ただいま・・・母は?」「広間でお待ちでございます」「ありがとう」その言葉に驚いた表情を浮かべそれからゆっくりと柔らかい笑みに変わった
ご両親とお会いする為の準備は想像以上に難航した先ず一番最初に立ちはだかったのはご両親の暮らす場所長の正家なのだからトップシークレットそれは当然だと理解していたがそれだけではなかった長就任の際、里(長老家)主導の元新居が用意され引っ越しをさせられていたそれも慣習と言われれば拒否できず慣れ親しんだ思い出深い家を後にしたようだ(その事は智君には知らされていない)綾野君ですら特定するのに時間がかかったその為、綾野君との連絡も念には念を入れる必要があった長老家も長に関わる方
鮫ちゃんとか蒼ちゃんとか・・・言われても分からない間の抜けた顔をしてると画伯さんがクスクス笑う「鮫ちゃん、知らなかったっけ?」翔兄に向かって聞いてるのか俺に聞いてるのか分からないけどフニャフニャっとした笑みが場の空気をいっそう和らげて行くような気がした「鮫ちゃんとは?」聞いた事もない相手「鮫ちゃんは鮫島グループの会長」鮫島グループの名前は知っているが会長には逢った事もない「存じ上げないです」「そうか・・・夏フェスに出てないから知ら
電話室の外に出ると小瀧が待っていた「径さん、紀之さんがお帰りになられます」里(屋敷)で働くことは一族の者にとっては行動に制約が掛かろうとも名誉であり特別なことらしい「分かった、直ぐに行く」「お見送りは結構ですとの事です」「そんな訳にはいかないだろう?」「いえ、お忍びでお見えですし・・・滅相もないと仰っていらっしゃいました綾野さんもそれに賛成されましたので」「剛君が?」「はい、裏口からお帰りになられます」確かに玄関から帰る訳にはい
翔様のゆかりの物・・・何処に有る?当主に受け継がれる物なのだから知っているいのは親父だけ(母は知らないと思う)だけど千年以上も前の物が残ってるのか?残ってたら国宝級の物そんな物が我が家にあるか?里に関する日記が残っているのだから家に残っていても不思議ではないが・・・あるとしたら金庫の中そうなると調べられないあの部屋は親父だけが入れる場所(当主のみが入れる部屋だ)先ずは親父と話すこと探すのはその後になる話してすぐに見せて貰えるとは思えないがなるべく早
王子が用意してくれた客間は外国映画に出て来るようなヨーロッパのお城の一室煌びやかな部屋ではないが全ての物が最高級の物で作られたアンティークの調度品ばかり天蓋付きベッドはキングサイズでまるで王侯貴族になったような気がした「すげえな・・・」サクちゃんの腕の中ですっぽり納まった智が天蓋付きベッドの内側を見てその豪華さに思わず溜息思わずが漏れた「確かに・・・王宮だけあって豪華だね」「信じられる?一瞬でO国に来てその国の王子の離宮にいるそれ
部屋に戻ってソファーに座ると綾野君が珈琲を持って来てくれた「お疲れ様でございました御簾をお上げになるとは思っておりましたがあまりに早い合図でしたので正直戸惑いました」「おっちゃんに会っているのに紀之さんとは会わないのは不自然」「確かにそうですね・・・茂さんは控えの間でお待ちでした」「そうだろうと思った・・・あの人が中心になって新しい長老会を作って貰いたい」「あの方ならすぐに動かれると思います」紀之さん・・・どこかで会ってる
ヨーロッパの至宝と呼ばれるだけるO国小国と言えども王位継承の離宮は目を見張るものがある決して煌びやかではないが品の良い華麗さを纏っている「なあ、これって何て呼ぶの?」「どれ?」「今、俺達が寝転がってる場所海外の高級ホテルとかに有るんだろ?テレビで観たことある」「ガゼボのこと?」「そんな名前なんだどこでも、こんな至れり尽くせりなの」「な訳ないでしょそもそも、こんな豪勢ではない(笑)シャンパンに食べ物も最高級流石、王族の離宮」
仕事部屋で修復をする文化財のリストを眺めながらどれを最優先にすべきか考えてた所にドアを少しだけ開け顔を覗かせた小瀧が手招きしながら俺の名を呼んだ「俺?」人差し指で自分の顔を指さすと黙ったまま何度も頷く「小瀧君、どうかしたの?」それを隣で見ていた和也が怪訝な声を上げる「何でもないです径君の用があって」「径君、用だって」聴こえてるから通訳はいらないがそう言われた方が席を立ちやすい見ていた資料を机の上に戻しゆっくり席を立って小瀧の側に「何?」
冷気を纏い始めた風が庭の枝葉を揺らし葉擦れの音が風の歌を伝え枝葉の隙間から射し込む光がその歌に合わせて、眩い光のダンスを見せてくれる季節は少しずつ冬に向かって歩き始めているようだ翔は定職に就くための就活を始めた京都に来るとき勉強していた文化財保護の仕事に就きたいらしいあの時、この仕事の必要性を雄弁に語ってたのを思い出すどうやら親父さんの関連会社に私設美術館があるようでそこを第一希望に考えているみたいだ輝の一族を束ねるのならそこに勤めるのがベスト親父さんとも少し
リビングと言うと現代風なのでこの家で言う広間に入って行くと俺が着る服がハンガーに掛けられていた「気持ちは分かるよ(笑)」画伯が笑みを浮かべる「身だしなみの事?・・・」「そう、暁さんのご両親に会う訳だから結婚のご挨拶みたいなものでしょ?粗相があってはいけないからと緊張もするし着る物にも気を使うだけど、向こうはそれを知らない」そうだった、二人の事は話していない今回はあくまで、智君とご両親の再会が目的「それでも、スーツはこれで良いと思うんですが」