幽魂は自分の鎮しずまるべき石碑建設の場所の選定に就つきて大変気きを揉もみまして、『国法もあることなれば、公辺おおやけの煩わづらいを掛けることは不本意ながら、相叶う儀ならば、成るべく清浄なる社地に鎮まりたし』というのでした。其処そこで一同評議の上で当地の社家しゃけ山本參河みかはという人を呼びにやることになりました。其時そのとき吉富医師は気をきかせて幽魂に向い『斯かく長らくの問答に退屈もあるべし。暫時しばし休息ありては如何』と申しますと、幽魂もそれに賛成して、『我は宿望の叶う折なれば憩いこうに及ばね