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去年の暮れに亡くなった。73歳だった。私は明けても暮れても中島みゆきを敬愛しているので、自分でも意外なのだが、八代亜紀が好きだったことをしみじみと思っている。好きさ加減はどれほどのものだったのかと思って、試みに、たくさんのベストアルバムの中から、あまり高価でない、2021年リリースの「八代亜紀ゴールデンベスト桜」を購入して聴いた。驚くことに16曲収録された全てを知っていて、カラオケでも歌えるほどに馴染んでいた。なぜか。彼女は、私が弁護士になった頃とほぼ同時期に、「なみだ恋」な
2023年11月、私は、ソウルで開催された労働者大会に参加するため、訪韓した。労働者大会は、当時22歳だった全泰壱(チョン・テイル)青年が、縫製工場における劣悪な労働環境の改善を求めて焼身決起をした1970年11月13日を記念して催される、全国の労働者たちが一堂に会する大規模集会である。韓国には、労働組合の全国組織として韓国労働組合総連盟(韓国労総)と全国民主労働組合総連盟(民主労総)の二つの組織があり、両労総が各集会を執り行う予定であったところ、私が参加した労働者大会は後者が主催した
若い真面目な消防士が火事現場で取り残され救助されましたが、死に直面した恐怖によりPTSD(心的外傷後ストレス障害)を発病し、公務災害を申請されました。私はご相談を受け、正に命が脅かされる出来事に遭遇をしていることから、当然、公務災害が認められるものと手続の推移を見守っていましたが、驚くべきことに公務災害は認定されませんでした。その理由は要するに「消防士なんだから訓練もしてるし、過去に火災現場で相当な経験を積んでるんだから、そんなことで大きな精神的負担は感じないだろう」というものでした
上岡龍太郎さんが5月19日、肺がんと間質性肺炎のため死去した。残念でならない。上岡さんとは、都住創を通じて知り合った。1975年に創設されたコーポラティブハウス運動の先導車と言える都住創の創設以来の顧問弁護士だった私、上岡さんはその1号館、松屋町プロジェクトに入居したのだった。都会に土地を見つけて、仲間を募って、相談・議論しながら自由設計マンションを作る運動を、上岡さんはいたく気に入った。1977年に完成し、自慢の都市空間を獲得した。社会現象ともなったコーポラティブはマスコミ
普通の日本人へのあたたかい人間讃歌である。第167回直木賞受賞作。5本の短編集。ベガをはじめ、たくさんの星たちが登場する。それぞれの星座は、夜それを眺めている人の心を投影しつつ、ともかく生きようねと、仰ぎ見る人を励ます。子どもも、老人も、男も、女も、懸命に生きている。登場人物に悪意など誰もないが、一人として典型的な幸せの中にはいない。描かれる愛の形は、切ないものばかりで、すべて今社会に現実に起こっていることに通奏する。現代日本の鳥瞰図として胸に迫る。登場人物間の関係性、内面
新年は、元旦の群馬のニューイヤー駅伝(有力企業対抗)で始まり、2日3日の箱根駅伝になる。箱根は関東の大学の対抗である。私は、ずっとではないが、かなりの時間、箱根の駅伝を、若い時から見ている。見ながら、中年の頃は、友人や家族と彫刻の森美術館などで楽しみ、温泉に浸かったことを思い起こした。歳をとると、学生の走りを見ながら、戦争の時代を偲ぶようになった。偲ぶといっても、私はまだ生まれていないから、文献上での印象深い記憶なのであるが。戦時下で、東京の空襲が激しくなると
紀元前550年頃にあった中央アジアの遊牧民マッサゲタイ族の伝説。ヘロドトスの「歴史」に依拠したストーリーとなっている(細部はだいぶ異なる)。2019年のカザフスタン映画。監督はアカン・サタイエフ、トミュリスを演じたのはアルミラ・ターシン(1990年生まれの女優、他の出演作品を検索したが今のところ出てこないが、魅力的な役者だ)。アマゾンプライムで視聴。amazonprimeビデオ画面を撮影マッサゲタイはカスピ海の東、アラル海の西にいたとされるから、今
サッカー界で、伝統ある大阪ダービーが5月21日に金鳥スタジアムでおこなわれた。今年3回目となるガンバとセレッソの対戦。4半世紀にわたる歴史の中で、ガンバが圧倒しているが、ここ3年はセレッソの分がいい。youtubeより過去2回のルヴァン杯予選の対戦ではサポーター同士の衝突が起きたので、両チームは、「フェアでクリーンな大阪ダービー開催に向けて」というお願いを出していた。試合は3対1でセレッソが勝利したが、後味の悪いものと
今日(6月10日)の朝日新聞、首都キーウ北部の近郊30キロのデミディフ村で、ウクライナ軍が川の水門を破壊し、わざと洪水を起こし、ロシアの進軍を止めたことが、首都を守った要因の一つという記事を載せた。村の4分の1は水没し、水深2メートルにまでなった。村長らによると、3カ月以上が経っても水は引いておらず、排水のめども立っていない。建物、農作物などの代償は大きかったものの、住民の多くには「首都を守った」という気持ちが共有されているという。この川こそ、私が4月11日のブログ「『リラの花咲く
中島みゆきのアルバム「常夜燈」を久しぶりにかけて、「リラの花咲く頃」という曲を聴き始めた途端に、突然ウクライナの人々を思った。曲の歌詞は、リラは咲く祖国を離れてリラは咲く忘れもせずに・・・時が来れば花は香る長い闇に目を塞がれても灼けつく砂にまみれても時が来ればきっとリラは咲く祖国を追われてリラは咲く忘れもせずに祖国で今咲く日にリラの花は咲くと続く。札幌出身の彼女が、大通公園で5月に開かれる「さっぽろライラックまつり」を思いながら、こ
今回の「みゆき」さんは、宮部みゆき。四半世紀前(1997年)の作品である「長い長い殺人」(光文社文庫)を取り上げたい。取り上げる理由は、最近とみに目立つ一連の事件を予測していたかのような内容であるからである。一連の事件とは、思い込みや、世間・特定の相手・自分への不満を理由に、多くの人の殺傷に至る類の事件である。2016年相模原知的障害者施設事件、2019年の京都アニメーション放火、2021年末の大阪での心療内科放火、同年に起こった複数の鉄道内切りつけ、放火事件などである。この
中島みゆきの動静が、1月27日のNHK「SONGS」で伝わったので、安心して、映画になっている「ライヴヒストリー」を体験してきた。SONGSでニヤリとさせられたのは、コロナで途中中止となった2020ラスト・ツアーに関する彼女の表現ぶりだった。ラストというから中島引退かと方々で言われているが、ラストなのはツアーであり、個別コンサートはあっちもこっちも行くつもりで、騙しのようなことなのだと。彼女らしい健在宣言。さて、映画である。私は、音楽ライヴを映像にしたものを劇場に見にい
朱戸アオのコミック(全3巻)である。新型コロナ(COVID-19)大流行の相当前の2017年3月から「イブニング」(講談社)に連載され、6月10月翌年3月と単行本化された「ペスト」による地方都市封鎖物語だが、COVID-19がパンデミックになってみると、感染状況、医療崩壊、そのもとでの国民生活、生死の描写が、2020年2021年に起こっている現実とあまりに類似していることで、静かにネットを中心に大ブレイクした。緊急事態宣言が出され、町は自衛隊により封鎖され、いわゆる野戦病院的施設、また農
保育士派遣等の事業をするベルサンテスタッフ株式会社が設置していた「たんぽぽの国東三国園」へ平成28年4月4日に預けられた1歳2か月のお子さんが、預けられて2時間足らずの内にうつ伏せ寝のまま心肺停止状態であるところを発見され、搬送先の病院にて低酸素血症で死亡した事案について、ご両親がベルサンテスタッフ株式会社やその代表取締役らを被告として平成30年4月4日に提起した損害賠償請求訴訟の和解が、先日成立しました。和解の内容はベルサンテスタッフ株式会社の代表取締役と、当時現場にいた保育士と保育従事
中島みゆき研究は深く広いものがあるから、私などはそれらの研究書を読むたびに、自分の理解は浅く狭いと感じるのであるが、今回のコロナパンデミックを彼女はどのように歌にするかに多大な興味がある。コロナ禍で傷ついた多くの人々を慰め、励まして欲しいと願うのである。私のような小ファンが、彼女の社会観を論じるのは恥ずかしい限りだが、少し述べたい。デビュー曲、「時代」(1975年)は、死の床にある父の回復を願った曲と言われるが、客観的価値は巨大であった。悲しい経験を人は多くするけど、人
東京地検が猛反発した「弁護士ブログ」の記録見えないカルロス・ゴーン被告の取り調べ実態https://toyokeizai.net/articles/-/326642
野村萬斎が東京オリンピックの開会式閉会式の演出総合統括になった。そして、新春のNHKや読売新聞のインタビューで、自らの演出のコンセプトの一端を狂言の特徴に求めたいとの趣旨を述べていた。それは、狂言が「このあたりのものでござる」という第一声で始まることの意味である。身分、地位、職業も、場所も特定しない。東京に集う日本と世界の人々を、この精神で歓迎し、交流したいというのである。萬斎がこれまでも講演などで、狂言の本質を表すとして、随所で述べてきたことである。このような哲学の萬斎を、オリ
私は、007、スターウォーズのシリーズを偉大なルーティーンと評したことがある。邦画であれば寅さんであり、釣りバカもその仲間といえよう。ターミネーターも映画として6作目で、その仲間に入る。1984年にジェームス・キャメロン監督が生み出したターミネーターは、実に偉大な作品であったと私はつくづく思う。テーマは、近未来における機械と人間の対立、その結果としての核戦争により地球は壊滅的破壊を受ける、という点である。審判の日と呼ぶ核戦争の予告、機械が人間を上回る能力に進化し人間を抹
香港について一国二制度を標榜している中国が、その標榜は全くのご都合主義であることを示した。それは香港の高等法院が11月18日、デモ隊がマスクなどを着用するのを禁じた「覆面禁止法(規則)」の効力を停止したことから起こった。この法律(規則)は、香港政府が超法規的措置を定めた「緊急状況規則条例」を半世紀ぶりに発動し、立法会(議会)の議決を経ずに施行され、違反者には最高1年の禁錮刑などを科すもの。法院は、そのような法律は憲法である香港基本法に違反すると断じた。これに対し、中国の全国人民代表大会(全人代
2019年11月20日で、総理大臣として憲政史上最長期を担うということは、よほどの力を持った人だと見なければならない。このことを認めないことは客観的事実を認めないことになり、認めない人の方の問題点が浮かび上がるであろう。そこで、我々は安倍晋三という人のどこにそのような力があるのかを考察する必要がある。その点で、好個の事例を見つけたように思った。それは11月6日の衆議院予算委員会での出来事である。朝日新聞が翌日の朝刊で囲み記事を書いたので知った。萩生田文科大臣が、野党の今井雅人議員
狂犬病予防を忘れてしまった!罪になるって本当!?いいねを押したい弁護士ブログ【記事公開日】2017年6月27日【最終更新日】2019年7月2日https://avance-media.com/minji/2017062601/2/【ANSWER】引越しに伴い飼い犬の所在地が変わった場合の届出と、毎年1回の狂犬病の予防接種はどちらも狂犬病予防法という法律に定められている飼い主の義務です。狂犬病予防法は、どちらについても罰則を設けており、違反すれば罰則の対象になりますので、
THEWALLSTREETJOURNAL紙はウォルター・ラッセル・ミードの「トランプ化する日本外交」というオピニオンを掲載し、日本のIWCからの脱退、商業捕鯨の再開と韓国への事実上の制裁としての輸出規制が示唆するトランプ化現象を指摘した。トランプは中国、イラン、北朝鮮などに「制裁」を多用している。また、「脱退」「破棄」としては、世界貿易機構WTOを脱退すると何度も言明しNATO脱退も示唆し、ユネスコ、地球温暖化防止の国際枠組みパリ協定から脱退し、イラン核合意から脱退し、国連人口
「光の山」(新潮文庫、2016年。初出は2011〜2014年)。私がこの人を読むのは、2001年の芥川賞受賞の「中陰の花」で読み評論して(おおさかの街49号)以来である。同作品を真剣に読み、私は最後にこう書いている。「人が『成仏』すること、言い換えれば生者が死者の成仏を確信する心情の重要性を臆面もなく描いている。明るい筆致、登場人物の明るさが救いである。筆者は福島県の人だが、奥さんが大阪の人のようで、実生活でも、本作品でも、奥さんが大阪弁でユーモアとゆとりを生み出し、明るさを作っているよ
重松清は、純文学から成人小説まで幅広く描き、映画、テレビ、ラジオ、舞台の原作として用いられる作家である。2002年、私が発行していた雑誌「おおさかの街」の52号に巻頭言に書いてもらったのは「懐かしい未来」と言う太陽の塔の話で、このような随筆も多く手掛けている。この度、私は震災文学と言われる重松の2作品を静かに、度々涙を流しながら読んだ。「希望の地図」(幻冬社文庫、2015年、単行本は2012年)。作者が作中に田村章という名のフリーライターで登場し、頼まれて親友の男の子・光司(有名
次の元号が令和と決まった。令は麗しいという意味もあるが、律令での用いられ方からすると、律が刑法であるのに対し令は行政の法という意味であることも認識しておかねばならない。それはともかく本題に入ろう。我が国では、裁判所の事件は、元号で各年の何号と表記され(例えば大阪地裁平成31年(ワ)第○号)、判断である判決や決定も元号で表記される(例えば東京地裁平成31年3月29日判決)。元号制度に異論のある高名な法学者は、かつて著書や論文で一切元号を使わず、西暦だけで判例を引用され
2月16日に死去した中国共産党の長老李鋭が、習近平中国国家主席を「こんな文化水準が低いとは思わなかった」、「小学生なみ」とこき下ろしていたそうだ(日経「春秋」2月19日付)。習近平へのこのような批判が共産党内にあることは、ほとんど報じられない。報じられない理由について、興梠一郎神田外語大学教授が、中国では、指導者や共産党に対する批判を完全に報道から排除する体制がとられていると語っていた(2月18日のBSフジプライムニュース)からのことであろう。なお、習近平は、清華大学化学工程部を卒業し
池江璃花子選手の白血病公表に驚いた。早く回復し、あの笑顔を私たちに見せて欲しい。2月17日のサンデーモーニングで、張本勲さんは、声を詰まらせて、18歳の乙女がどれ程の衝撃、不安であろうかと案じ、親御さんにも励ましを表明したが、今の国民的感情を代表していよう。このニュースに、日本骨髄バンクへのドナー登録が急増しているという。国民の優しさの噴出として嬉しい限りである。私は若き日を思い出した。大学生の頃のことだったと思うので、遥か昔の記憶であるが、人生の誇り高い体験の一つである。千葉に
経済同友会代表幹事の小林喜光さんが朝日新聞で歯に衣着せぬ平成論を述べている(1月30日付)。平成の30年は敗北の時代と発言し、またアベノミクスの6年は時間稼ぎをしただけで独創的な技術や産業の結果は出ていないと断定している。株価時価総額で80年代は日本企業がトップ10の8割方占めていたのに、今ではトヨタの40位が最高。テクノロジーはもっと悲惨で、引っ張る技術はない。次世代5Gは中国が先行し、北欧が追随するが日本はごくわずか。AIもサイバーセキュリティーも然り。国民にも政治家にも危
髙村薫「冷血上・下」(新潮文庫。2018。単行本は2012年)。久しぶりに髙村作品をじっくり読んだ。私にとっては、最高の髙村作品となった。歯科医一家4人強殺事件を題材とする犯罪心理劇である。合田雄一郎刑事を通して作者の人間観がほとばしる。犯罪事実と犯罪を冒した人間の真実発見を徹底する捜査である。類型や同種の概念は入り込まない。生い立ちの影響が強く書き込まれている。作品としては、被害者たちの生前の生活描写も豊かである。このような捜査をする刑事が現実にいるとは考えられず、作者が生み出し