いでわれ傷(きず)のつかぬやうに射(い)はなして、重季(しげすゑ)等(ら)が供養(けうよう)に、放生会(ほうじようゑ)するを見候へ」と仰(おふせ)も果(はて)ず、ねらひ-済(すま)して丁(ちやう)と射(い)給ふに、鶴(つる)は忽地(たちまち)枝(えだ)をはなれて、渓川(たにがは)へ落(おち)たりしが、左右(さう)なくも飛(とび)-あがら/ず。紀平治(きへいぢ)はこの光景(ありさま)を見て、〓竹(くまざゝ)に手繰(たぐり)つき、藤蔓(ふちかずら)に携(すがり)つゝ、からうじて渓底(たにそこ)に至(