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★★★7-8何がそんなに難しかったのかと思うほど鍵はいとも簡単に開き、水色のリボンで固く結ばれた束を手に取ったキャンディは、懐かしそうにそれを見詰めると、そっと胸に抱いた。「象嵌細工の宝石箱にしまおうかな」「・・これを?」黄ばんだ記事の切り抜きと封筒。ハガキも混じっている。ふさわしい収納場所とは思えない。「だって、テリィの手紙だもの・・。宝石箱は私の好きに使っていいんでしょ?持ち歩いていたデビュー当時の切り抜きが、既に王様のように収まっているのよ?これも仲間に入れてあげないと不公平だわ
★★★7-7「へぇ~、大親分は牛乳を搾ったことがないのか」「イギリスは牧羊の国だから、羊ならあるけどね。乳搾り勝負だったら、俺が負けてたな。ハハっ」「せっかくだし、体験してみる?子供たちと来ればいいよ。荷車をつなげば小さい子も来られる」「荷馬車で?楽しそうだな。・・う~ん、でもこの服じゃ我が家の闘牛に怒られそうだ」「裾上げしようと思っていた新品のジーンズがあるよ。大親分なら直しなしでいけると思うぜ?・・それよりこれ、どうしたらいい?」「発酵させるから、布をかぶせて放っておい
★★★7-6テリィが小脇に抱えていた本に気付いたキャンディは、針仕事をするからと先にポニーの家に戻った。一人の時間を作ってあげるのも妻の大事な役目。陽も大分暮れてきたというのにテリィはまだ戻ってこない。さすがに本の文字は見えないだろう。「ジミィ、テリィをよんできてくれる?ポニーの丘かその辺りにいると思うわ」夕食の準備で手が離せないとジミィを使うキャンディ。親分気取りは継続中だ。親分にそう言われると、子分もまた従順だった。「分かったよ、親分」気は乗らないが、逆らわない。「お
★★★7-5「皆がお昼寝している間に、ポニーの丘に散歩に行かない?」そろそろお疲れかしら?と思ったキャンディは、三時のお茶が済んだ頃テリィを誘った。キャンディの好意を即座に察し、「いいよ」と答えると、テリィは一冊の本を手に取った。「・・この木?君が木登りの練習をしたっていうのは」テリィは大きなナラの木を見上げた。全ての葉が落ちた今の季節、空に高く突きだす煙突のようだ。「そうよ。お父さんの木って呼んでいるの」「へえ、お母さんの木もあるのかい?」辺りを見回すテリィに、キャンディはそん
★★★7-4「ただいまー!」ぎしぎし鳴る古い木の扉を思いっきり開いて、キャンディは全員に聞こえる様に大声を上げた。奥からジミィと子供たちが飛び出してくる。ジミィはキャンディを見るや否やタックルに近い状態で飛びついた。「ひどいよ、親分!!黙って遠い所に行っちまって!!」半べそで恨みつらみを捲くし立てる。「ごめん、ごめん、ジミィ、、、本当にごめんねっ」少し遅れてポニー先生とレイン先生が小走りでやってくる。その様子を一歩下がったところからテリィは見ていた。(親分・・?)その斬新な
★★★7-3「テリィ、あなたさっきからバレバレじゃない。せめて伊達メガネでもかけたら?」キャンディはテリィに帽子をかぶせ、包帯でも巻くようにぐるぐると青いマフラーをまきつける。「メガネは動きが制限される。いやだね」「制限って何よ。木登りの邪魔だとでも言いたいの!?」キャンディは腰に手をあて鼻息を荒くした。テリィはキャンディの膨らんでいる頬に片手を添え、「例えばこういう時・・」と言って、自分のマフラーを人差し指でわずかに下ろし、キャンディの低い鼻に自分の鼻をゆっくりと近づける。キャン
★★★7-2「なんだか不思議―」見慣れた無人の駅舎に降り立った時、キャンディは言った。「村を出る時はジョルジュに重いトランクケースを運んでもらったのに、今回は手ぶらなんて」「手ぶらって、俺に持たせているだけだろ」「まぁっ!イギリスへ行く時、あなたの巨大なトランクケースを持ってさし上げたのは誰?持参したトランクケースの数、忘れたわけじゃないでしょうねっ」「あれは商売道具。それに比べこの中は何だ?お土産のチョコ、クッキー、絵本にパズル、そして君の衣類。ニューヨークの家にジャムの瓶を置いて
💛前回までのあらすじ披露宴の為、シカゴにやってきた二人。そこでキャンディはテリィにある疑問を抱いた。スザナと婚約し結婚秒読み状態にあったテリィは、父親の承諾など無くても結婚できたのに、何故突然やめたのか。時同じくして開かれたアードレー一族の集まる夕食会で、スザナとの婚約記事は全てデマだとテリィは言ってのけた。それはアルバートが描いた台本だったが、アルバートは事実に基づくと言ってキャンディを諭した。テリィに何も訊けず悩むキャンディ。一方テリィも、事実を話したらキャンディを傷つけると躊躇していた。
「男アルバート①②」の検証から、ブログ主の意見を書きます。ハイ、主観ですファイナルに描かれていない部分あのひと考察に於いては、漫画とファイナルで異なる部分はファイナル優先なのは当たり前ですが、ファイナルに描かれていない部分はどうするのか?🙄ファイナルでは、シカゴ編が描かれていません。漫画のシカゴ編のアルバートのグイグイ発言があったと仮定するのとしないのとでは、妄想に大きな差が生まれそうです。個人で妄想するには自由でしょうが、「考察」としては、漫画の表現をどこまで採用したら
丘の上のカムアウトはいつか?丘の上の王子さまのカムアウトのシーンは、漫画とファイナルでは違います。漫画ではアーチー、アニー、パティと一緒にポニーの家を訪問し、その後丘の上のシーンになります。ファイナルのアルバートは「ある日突然・独りで(正確にはジョルジがいる)」ポニーの家にやってきてカムアウトします。下巻291~ですから2年後とも3年後とも解釈できそうなのです。実際そのように解釈する人もいるようです。そこで、検証してみました。キャンディとアルバートの往復書簡は、手
漫画の後半を読むと、確かにアルバートさんはキャンディに恋心のようなものが芽生えているようです。しかし残念なことに、旧小説やファイナルではそのくだりはバッサリと欠落し、揺れ動く微妙な男心と、プロポーズかと思わせるセリフは全てカットされています。本筋と関係ないから切り捨てることができる、という解釈もできますが、少なくとも旧小説まではページの都合上だと個人的には思います。そこでまずは漫画に登場する、アルバートさんの感情を軸に時系列にしてみました。記事内では、老眼の負担軽減の為(笑)アルバ
SONNET6章の中書き6章お読みいただきありがとうございました一番苦労したのはアルバートさんはキャンディをどう思っていたか?これにつきます。テリィファンだからとテリィの都合の良い様に解釈したくはなかったので、FINALSTORYを中立の立場で読んだ時、アルバートさんの存在はどう描かれているのか必死に探り、この6章になりました。FINALSTORYでは残念ながらアルバートさんとの恋を予感させるシカゴ編がカットされています。―とはいえ、アルバートさんがキャンディに恋心があ
★★★6-14「何ですって、二人はもう出発した!?」四階のラウンジでモーニングコーヒーを飲んでいたアルバートの前で、アーチーは声を荒らげた。「村に移動するならお昼すぎでもいいのにっ、相変わらず勝手な奴だな!!」口ではそう言いつつも、テリィとろくに話ができなかったことを、アーチーは心残りに感じた。「テリィは最初からそのつもりだったようだ。ここに迷惑はかけられないって。――これを読みたまえ」アルバートは届いたばかりの新聞をアーチーに渡した。電撃結婚!テリュース・グ
★★★6-13「遅いぞ、二人とも」自慢の一眼レフを首からぶら下げ、アルバートは玄関のエントランスで二人を待っていた。「すみません、キャンディが駄々をこねたので―」「なんだい?今頃マリッジブルーなのか?」「ま、似たようなものです。・・な?」テリィに引っ張られるように付いてきたキャンディは何も言い返せず、気まずそうに話しをそらす。「・・このカメラ、すごく小型ね。そんなサイズで撮れるの?」「去年アフリカに行った時に持参したカメラなんだ。すごく高性能で、遠くにいる猛獣もぶれずに撮影できる
★★★6-12支度部屋ではようやく花嫁の支度が整った。花嫁衣装を意識したボリュームのあるアイボリーの裾の長いドレス。少女の憧れである腰の大きなリボンが、花嫁の後ろ姿を可憐に彩る。白雪のようなキャンディの肩や鎖骨のラインは相変わらず美しい。「きれいよ、キャンディ・・!」支度を見守っていたアニーの目は既に潤んでいる。「・・ねえ、アニー、私の背中のホクロ・・見えてない?」アニーは変な事を気にするキャンディを不思議に思いつつも、「・・無いわよ。ホクロひとつないきれいなお肌よ。まさに
本日予定していました「肝入りの回」は・・少しお待ちください。―というか、あ、明日に、明日にしていいですか??朝起きたら、大変なことになっていました。た・・ただいま動揺のあまり手が震え、何も考えられません・・・からの~詳しくは「ロミジュリさんにラブコール」のコメント欄をご覧ください。こちら―というか、あなたがた夜中に何やってるんですか・・・💧小説・次へ
★★★6-11昨日アルバートの仕事部屋でキルトを試着していた時の出来事だ。「これは鷹ですか?それとも鷲?」テリィはバックル中央に刻印された紋章に気が付いた。「鷲だよ。スコットランド移民である先々代が好きだったようだ」「スコットランド移民?(ああ、それでキルトなのか・・)」「鷲も鷹も同じタカ科なんだが、一般に鷲の方が大きくて、翼を開いて飛ぶ姿がとても美しいんだ。飼いならすこともできるほど頭が良くて、食物連鎖の頂点に君臨しているとも言われている」「だから貴族がこぞって紋章に使いたがるわ
番組の途中ですがニュースです。👨⚖️ロミジュリさんをご存知ですか?おそらくこのサイトをご覧になっている殆どの皆さんが、ロミジュリさんのイラストに触れ、癒された経験をお持ちだと思います🎵キャンディ連載当時のいがらし先生そっくりなイラストを描く方です当初このサイトでも挿絵として何枚かお借りしていましたが、ご本人様との連絡ツールが無く、今は差し替えております。ロミジュリさんの新作を見られなくなって、何年が経つのでしょうか。令和にキャンディの世界に戻ってきたブログ主がそのイラストに
★★★6-10「キャンディ、いつまでのんびり食べているの!?もう切り上げないと支度が間に合わないわ・・!」ノミの心臓のアニーはしびれを切らし、キャンディの口に食べかけのオレンジを押し込んだ。「たくさん食べておかないと倒れちゃうわ。どうせ宴会中はろくに食べられないもの―」口をもごもごと動かしながら、アニーに引っ張られるようにダイニングルームから出て来た時「ハニー?食べ物を口に入れながら歩いてはいけないよ」クックと笑う声がした。「――え・・?」階段から下りてきたテリィ
★★★6-9小鳥のさえずりが聞こえてくる。時折コンコンと窓をつつく。空がしらじらと明け始めた頃、不意に目を覚ましたテリィは、勢いよくとび起きた。「やばい、大おばさまの起床時間ぎりぎりだっ」「もう戻るの?あれはひばりの鳴き声じゃないわ」まだ大丈夫よと、急いでシャツを着るテリィの袖をキャンディは引っ張った。「ジュリエット・・、あれはナイチンゲール(小夜鳴鳥)だとでも言いたいのかい?」「ん~もう、ひばりじゃないって言っただけ、あれは鳩よ」尚も着替えの邪魔をするキャンディの手に、テリ
★★★6-8広いルーフバルコニーに出たキャンディはしばらく顔を覆うように泣いていた。頬を伝う涙が、キーンと鳴るような真冬の冷気にさらされ、顔が凍るように痛い・・。全ての感情が凍りついたように、何も考えられなくなってしまった。天上には冬の星座が一面に広がっている。本宅の上に広がる雄大な星空。遮るものは何一つない。キャンディは白い息を吐きながら、夜空を見上げた。――あの時も星がきれいな夜だった。別荘からなんとか脱出したところを、探しに来てくれたアルバートさんに助けてもらった。
★★★6-7時計の針が二十二時を半分まわった頃だった。ラフなガウン姿で部屋から出てきたテリィを待ち伏せするように、アーチーは四階の廊下に立っていた。「テリュース、部屋を出るなよ。見たところ就寝準備も終わっているじゃないか。明日に備えてさっさと休んだらどうだ」対峙した二人の顔は大人の紳士とは程遠く、まるで学院時代に戻ったかのようなトゲトゲしさだ。「君こそ、何故未だにタキシード姿なんだ?監視当番なのかい?ここはセントポール学院の寮じゃなかったよな。就寝時間の規則などなかったはずだが」足を
★★★6-6夕食会も終わり大御所たちが引き上げたタイミングで、イライザの金切り声が長い廊下に響いた。「あなたたちが何と言おうと、私は騙されないわよっ!」部屋に戻ろうとしていたキャンディとテリィの足は、階段を数段上った所でピタリと止まった。「――どうぞご勝手に」まだ言い足りないのかと内心舌を打ちつつテリィが振り向くと、イライザの三白眼がキラリと光った。「キャンディ、あんたって本当に卑しい泥棒猫ね。スザナが死んで傷心極まるテリィの心の隙間に押し入るなんて、図々しいったらないわ!」「イラ
★★★6-5キャンディと一緒に現れた人物を見て、椅子から勢いよく立ち上がったのはイライザだ。「―!!テリィっ!!・・・どういうこと!?」「イライザ、まぁ座って。今から紹介するから」アルバートは間髪入れずに一声掛け、着席を促した。大きなテーブルを囲むように親族十数人が座っている。上座に今夜の主役である二人が、その両隣にアルバートとエルロイ大おばさまが着席していた。「僕の大切な養女キャンディスとテリュース君のお披露目会へようこそ。既にお気づきの方もいるようですが、彼は私などより遥かに名
★★★6-4テリィが客船でプレゼントしてくれた緑色のイブニングドレス。イギリスから持参して今夜の席に着たかったのに、何故かテリィは置いていけの一点張りだった。アメリカでなら着ていいと言われた記憶があるが、そんな意味じゃないと言うだけで、ろくに説明してくれない。そして一言、花嫁の父に最後の花を持たせるべきだ、と言ったので、仕方なく従うことにした。テリュース・グレアムの結婚の事実は、不思議なことにアメリカでは全く報道されていなかった。数か月前に新恋人と会っているところをゴシ
★★★6-3「・・・ここは仕事部屋だとジョルジュから聞いたのですが?」数歩足を踏み入れたところでテリィはぼう然と立ち尽くす。「はは、趣味の部屋と言った方が良かったかな」アルバートがそう説明するその部屋には、あまりに多くの物が溢れていた。木彫りの大きな象や鷲のブロンズ像、クリスタルの蛇に松ぼっくりで作った―・・何かの動物。壁に貼ってある大きな世界地図、デスクの上にも地球儀がある。本棚には動物の写真集や図鑑、冒険家の紀行文、偉人の伝記、アメリカの文学書、経済の本、法律の本が目につく。
★★★6-2「本当に結婚したのね。キャンディおめでとう!!」二人きりになったアニーは、緊張が解けたようにいつものやわらかな笑顔を向けた。四階にあるコーンウェル家専用の応接間での事だ。気の置けない女同士の会話がとめどなく続く中、不意にアニーがキャンディの手を見て気が付いた。「結婚指輪は?」「あるわよ。でも役者とイギリス男子は指輪がNGなんですって。テリィがしないから私もしないの」あっけらかんとした口調でキャンディは答える。「テリィはしていたように見えたけど?」さす
💛前回までのあらすじ公爵家から結婚を許されたキャンディだったが、公爵と話をしている内に、テリィとスザナの婚約は偽装ではないことが分かった。両親から反対され結婚を断念したと知り、キャンディの心はざわついた。追い打ちをかけるように、劇団員のジャスティンからテリィとスザナは結婚式を挙げたと聞かされた。何も語ろうとしないテリィの態度や言動から、二人は深い仲だったのだと認識したキャンディは、嫉妬にかられながらも胸の奥にしまい込んだ。後に挙式はしていないと分かったが、直前にキャンセルしたという情報を、ジ
手紙に前文がある?この手紙は一部に過ぎない、という見方もあるようです。通常、手紙は『キャンディへ』であり、一行あけて「変わりはないか」の本文に入ります。しかしテリィの手紙は「キャンディ」「変わりはないか?」の二文が連続し、まるで全体の一部を抜粋したかのような入り方になっています。向って左がテリィからの手紙・右がアルバートさんからの手紙ファイナルに登場する手紙は「一行空ける形式」を守っているので、このテリィの手紙は例外です。・・・という事は、ここにも原作者の意図があるので
キャンディの「今」をろくに調べもせずに出したようなテリィの手紙の文面。短いながらもテリィらしさ全開の文面は、突っ込みどころ満載です。再現度100%の全文に登場してもらいましょう。キャンディ変わりはないか?……あれから一年たった。一年たったら君に連絡しようと心に決めていたが、迷いながら、さらに半年がすぎてしまった。思い切って投函する。――ぼくは何も変わっていない。この手紙が届くかどうかわからないが、どうしてもそれだけは伝えておきたかった。T・G書いたのはいつ?