夜半からの雨で紫陽花が濡れている。シトシトと降り続く雨は天の流す涙。杉村の家の近くには紫陽花の名所「あじさいロード」がある。季節になると、色とりどりの紫陽花が咲き誇り、市民の目を楽しませていた。数年前まで杉村も家族とともに何度もこのあじさいロードを通った。ここで撮った写真はどれくらいあるのだろう。「今年もまたこの季節がやってきたか。」しみじみと語る。切ない思い出がよみがえる。当たり前だと思っていた日常なんてあっという間に崩れ去る。あれほど大事にしたかったのに……守りたくて仕方なかったのに……どん