ある所に「城所(きどころ)藩」という小さな藩があり、その藩主は「田丸徳之進(たまる・とくのしん)」と言った。徳之進にはとても優秀な息子の「重治朗(じゅうじろう)」が居て、行く行くは父の後を継ぎ、名君主になるだろうと思われていた。あの時までは……重治朗は才気煥発、学問に加え武芸にも秀で、「文武両道」を地で行く様な好青年。おまけにスラリとした体躯に男前な容姿。と天は二物も三物も与えた。ある日、重治朗は誰にも見つからない様にこっそりと城を抜け出し、町外れまで足を伸ばした。「やはり、この辺まで来ると空気