僕はもう知識の上で、フランスをもっと複雑に知ろうという気持はなくなった。それはきりのないことだし、またその知識は時が経てば古びてしまうだろう。そうではなくて僕の仕事そのものが、内面的に、文明ということの水準に相応しく、活動しなければならないという自覚である。この自覚は僕に絶望と前途へのはげみを同時にあたえてくれる。僕は外界をもっと落ちついて、余裕をもって見ることができるようになった。絶望といったが、これは外の硬質のものが、僕の情熱にもかかわらず、努力にもかかわらず、また誠意にもかかわらず、依然僕