「とかく婿については、こちらより財産が少ない方が都合良い。なぜなら年中の付け届けは相手から鏡餅に平樽[1]、鰤が高ければ目黒[2]一本、暮れの祝儀を集めて下男に持たせて送り、半紙二折銭二十ほど持たせて、お疲れさん茶でも飲んで行けと言えば済む話です。うちより金持ちからは一番男を揃えて進上台[3]の定紋[4]が書いてある大風呂敷をかけて持たせましょう。光林染の模様ものを着て腰元に祝儀の目録、惣梨地[5]に高蒔絵の長文箱に入れ、唐房で色を飾り立てて、これをつけた綿入れを着て仲居以上の女中に口上を言わせ