忠国(たゞくに)は喜(よろこ)びに堪(たへ)ず。為朝(ためとも)とともに彼(かの)猴(さる)を見るに、猴(さる)は脊(そびら)より胸(むな)さかをいたくつらぬかれて死(しゝ)たるが、目鼻(めはな)の間(あはひ)に夥(おびたゝ)しく砂(すな)のかゝりてありしかば、忠国(たゞくに)掌(たなそこ)を拍(なら)していふやう、「はじめ彼(かの)鶴(つる)が、いづ地(ち)ともなく飛(とび)ゆきしは、この砂(すな)を銜来(ついばみき)て、猴(さる)の眼(め)つぶしにせんが為(ため)なり。飛禽(ひきん)といへど