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著者の本は何冊か読んでおりますけれど読み進めていくうちに、いつも手を引かれて知らない土地へ連れていかれてしまうような不思議なストーリーというのが素直な感想です。特異な作家であることは間違いない。昭和初頭のミステリー浪漫なのですが、ミステリーそのものをエンターテイメントに楽しませてくれるかというとそうではなくて昭和初期風の文体使いと表現を屈指してあたかも純文学かと思える静かなる流れるような展開でストーリーが構築されています。昭和初頭の時代を、文章も併せて表現することに拘ったのでしょう
講談社文庫2019年6月第1刷発行解説・大森望822頁時は21世紀の終わり2029年に出所不明のコンピュータウィルスが蔓延しパンデミックにより全世界で多くの人命と膨大な量のデータが失われますこの未曽有災厄から数十年がかりでどうにか立ち直った人類はあまねく浸透した高度な人工知能の管理のもと、台頭した多国籍超巨大企業群に支配され、それなり繁栄を享受しています主人公は女性ジャズピアニスト・フォギーこと木藤桐、34歳ピアノだけでは食べていけないので音響設計士で生計をたててお
シューマンの指(講談社文庫)|奥泉光|本|通販|Amazonという作品をご存知でしょうか。芥川賞/谷崎潤一郎賞受賞作家・奥泉光氏の著した、長編ミステリー小説です。「音大のピアノ科を目指していた私は、後輩の天才ピアニスト永嶺修人が語るシューマンの音楽に傾倒していく。浪人が決まった春休みの夜、高校の音楽室で修人が演奏する「幻想曲」を偶然耳にした直後、プールで女子高生が殺された。その後、指を切断したはずの修人が海外でピアノを弾いていたという噂が……。」(講談社文庫)
自分が大絶賛している「クワコー」シリーズの第3作目。確か2019年だったか?単行本として発売されたが、最近文庫化もされたようだ。自分としては、その2019年の単行本発売以来の読み返し。この「クワコー」シリーズ、第1作目と第2作目は文句のつけようがない出来栄えで、本当に面白く、どなたにも自信を持ってオススメ出来たのだが、この第3作目はちょっと問題あり。『ゆるキャラの恐怖』と『地下迷宮の幻影』といった2つの短編が収録されており、1つめの『ゆるキャラの恐怖』は従来通りの面白さがキープされている。し
日本の現役作家の中で(ミステリに限らず)自分がナンバ-ワンと考えているのは、ずばり「奥泉光」である。奥泉光の作品ってかなり多様性を持っており、「気軽に読んでも楽しめる」ものもあれば、かなり堅苦しい純文学的作品もある。後者の「かなり堅苦しい」作品だと自分も気軽に読めず、途中で挫折してしまったものも過去に幾つかある事は正直に言っておく。しかし「気軽に読んで楽しめるもの」に関しては、本当に超一級だ。この作家、とてつもない実力の持ち主だと思う。「お話」も「独特の文体」も見事と言う他ない。例えば最近読み始
集英社文庫2017年5月第1刷459頁解説・原武史舞台は東京地中に潜む「地霊」が歴史の暗黒面を生きた鼠や人間に憑依して、自らの来歴を軽妙洒脱に語りだします唯一無二の原理は「なるようにしかならぬ」明治維新、第二次世界大戦、バブル崩壊から福島第一原発事故まで首都・東京に暗躍した「地霊」の無責任一代記史実の裏側で、滅亡に向かう東京を予言します2020年予定だったオリンピッック開催地決定について実に喜ばしい話ですなんといっても廃墟にこそ浮かれ騒ぎはふさわしいから
奥泉さんの文章は堪えますなぁ。良い意味で。手に取ることに気合いが必要な重厚感。好きなタイプ♥️私はとある事件を書いたものが読みたくて始めたので、そこにどうやって向かっていくのか楽しんだんだけど、知らなかったら、え!そこなのか!て思えて、また良さそうです。そう、そこよ。途中、ん?そっち系?と思わせておいて、あ、なるほど、壁は越えていない、てところが素敵でした。越えちゃってたら、ちょっとがっかりだった。例えそうだとしても、前編に渡って素敵ですけれど♥️凝った文章なのに、人物
このミス2021死神の棋譜[奥泉光]楽天市場1,925円12位、ということ、将棋のお話ということで、随分久しぶりの、奥泉光、作品。ミステリであり、ファンタジー?ちょっと、難解なイメージのある奥泉作品。本作もちゃんと読み切れたかのか?読了日:2020年12月16日
今朝は6:20に起床するボーッとしながら身支度を急ぐラジオ体操が始まる〝あと、20分で出なきゃ…!〟🎵チャンチャ~チャチャチャチャチャチャンチャ~チャチャチャチャチャ………🎵ハタ!っと気がつくのですよ✨『今日は日曜日!お休みだぁ~(笑)』って家族のラジオ体操の音楽が、勘違いさせたんですよね。いつもの日曜日ならば、7時過ぎまではゴロゴロ寝ているのに、今朝に限って早起き過ぎるのです(笑)もう少しで、出勤する鞄を持って玄関に向かう所でしたよ✨時間が出来たから、ご飯を炊き上
先日ブックオフで衝動買いした小説2冊のうちの1冊。実は再度の購入となる。作家・奥泉光(1956-)が2010年に執筆したミステリー作品。シューマン生誕200年記念でもある。どうでもよいことだが、奥泉氏とは僕と同じ誕生日、2月6日生まれである―。「指を失ったはずのピアニストが、なぜ、シューマンのコンチェルトを弾いているのか?」「ラスト20ページに待ち受ける、未体験の衝撃と恍惚―。」「大反響!話題沸騰の音楽ミステリ」…と表紙にはある。思えば、僕はミステ
【十年前に起きた学友の不可解な死。深夜の大学図書館屋上からの墜落は事故か自殺か、それとも他殺だったのか?恩師の葬儀をきっかけに再会した当時の関係者たちの推理が、やがて不気味な謎を浮かび上がらせる。「犯人」はこの中にいるのか?死の真相をめぐり、物語ることによって歪み始める記憶の迷宮。第十五回野間文芸新人賞、瞠目反・文学賞をW受賞した傑作メタ・ミステリがついに復活。(「BOOK」データベースより)】1993年に刊行された作品です。奥泉光さんは好きな作家のひとりで10冊くらいは読んでます。こ
小説「雪の階」上下巻奥泉光中公文庫「このミスベスト10入り」等で注目され、いろんな書店で積まれていたので買ってみました。なかなかにストーリーに触れることが難しい小説ですが、いわゆる「226事件」に絡みながら、上下巻という長尺を感じさせなかったのは、主人公のキャラクター設定の秀逸さでしょう。ただ、結末、というか、小説の終わらせ方が、個人的にはいまいちに感じました。60点
【Q16789】「吾輩は猫である。名前はまだ無い。吾輩はいま上海に居る。」という書き出しで始まる、夏目漱石の文体を模倣し、溺死したはずの猫がフランス猫の「伯爵」、ドイツ猫の「将軍」、ロシア猫の「マダム」、イギリス猫の「ホームズ」たちと苦沙弥先生殺害の謎に迫るというストーリーの、芥川賞作家・奥泉光のパロディ小説は何?【「吾輩は猫である」殺人事件】【Q16790】江戸時代初期から栽培され、現在の青首大根の品種の祖先にあたる、原産地の西春日井郡春日(はるひ)村(現・清須市)の集落名が付いた愛知県特
【昭和十年。華族の娘、笹宮惟佐子は、富士の樹海で陸軍士官とともに遺体となって発見された親友・寿子の心中事件に疑問を抱き、調べ始める。富士で亡くなったはずの寿子が、なぜ仙台消印の葉書を送ることができたのか。寿子の足どりを追う惟佐子と探偵役の幼馴染、千代子の前に新たな死が…。二・二六事件前夜を舞台に描くミステリーロマン。柴田錬三郎賞、毎日出版文化賞ダブル受賞!(「BOOK」データベースより)】上記の柴田錬三郎賞、毎日出版文化賞以外にも「ミステリが読みたい」「週間文春ミステリーベスト10」「このミ
奥泉光著「東京自叙伝」読了しました。なんと言ったらいいのやら…今までに読んだことがない、奇想天外な作品でした。幕末から現代までの江戸~東京で起こった様々な事件や災害等々に深くかかわる主人公。主人公?というのも変なんですが…時代を超えて次々と人を乗り換えて続く物語。東京が大好きで、東京をむやみに歩き回る様子が面白い。幕末や明治、戦争中や戦後すぐまでは、なんだか不思議な勢いで面白く読んでいたのですが、昭和の終盤あたりからは自分にとってもリアルすぎてざわざわとした気持
今年17冊目。将棋を題材としたミステリー小説です。ここ数年、藤井聡太王位棋聖の活躍で盛り上がりを見せる将棋界旬な題材で新聞に紹介されていたので読んでみましたプロの一歩手前まで行った元三段の将棋ライターが主人公で、小説のあちらこちらに将棋用語が散りばめられ、将棋ファンを楽しませることを考えて書かれたのではないかと思わせる内容でした龍神棋という謎の将棋や麻薬組織など、あらゆる要素が複雑に絡み合って、すごく頭を使って推理しながら読ませていただきました。最後に真相が分かるところは、ちょっと尻
1994年「石の来歴」で芥川賞を受賞した奥泉光氏の将棋エンタテインメントです。<帯>名人戦の夜、不詰めの図式を拾った男が姿を消した。幻の「棋道会」、美しい女流二段、盤上の磐、そして将棋指しの呪いとは---。圧倒的引力で読ませる前代未聞の将棋ミステリ。物語は実在の出来事である第六九期名人戦七番勝負と並行して描かれていきます。実名で登場する棋士の方々も多数に上ります。「負けました」これをいうのは人生で何度目
写真はないですが、猫の小説もそれなりに読んでます。去年、紹介した作品を再度紹介するのはは(-ω-;)ウーンということで。『NNN(ねこねこネットワーク)からの使者』シリーズ矢崎在美著『ぶたぶたシリーズ』も楽しい、矢崎さんのねこねこネットワークの都市伝説を素敵な小説にされています。癒されます♪*ねこねこネットワークとは「猫民の猫民による、猫民のための組織」です。その活動内容は、主に「猫を世間に広める」というもの。調査員(猫)や工作員(猫)を派遣し、人を猫のとり
さて、下巻です何かもう、のっけからエライことになってますやん、みたいな笑惟佐子の弟惟浩(これひろ)は、素行に問題ありの不良学生になってるし、肝心の惟佐子は、父の決めた見合いを粛々とこなすのと並行して「ご乱行」を重ね、すっかり魔性の女まぁ、どちらもストーリー展開に必要な要素にはなってるのですが、少々面食らいました(^^;ただ、探偵役実働部隊の千代子のロマンスは、障害がありつつ進展しそうでちょっと安心宇田川寿子の心中事件の真相解明については、少しずつ少しずつピースが見つかり、全体像が見え
夜が明けての✴[追記]あり雪の階奥泉光疲れました。長かった。漢字弱くて情けないことにタイトルからまず読めなかった(><)厚い。587ページ評価は💮情景描写が際立っている作家さん。これでもかという感じです。しかしそれが物語の主題なので仕方ない。と私は思いました。まず、最初のページの破壊力が半端ない。なんなの?この作家さん!と衝撃でした。最初のページを読むのに時間がかかりました。あの文体というか調子に慣れるのにも頭を慣らすのに時間を要しました。サラッと読
この作品、単行本が刊行された時から気にはなっておりましたが、なかなか行き当たる機会が無いままでしたが、この度文庫化のタイミングで読むことができましたひとまず上巻を読み終えたレビューです。時は1930年代の後半。第二次世界大戦の足音が遠くから忍び寄り始めた時代。伯爵家令嬢の笹宮惟佐子が、富士青木ヶ原の樹海で陸軍士官と心中したとされる友人宇田川寿子の死の真相を探るため、調査に乗り出す物語です。前半部は、主に主人公笹宮惟佐子の日常が描かれます。父親の後妻である義理の母や腹違いの弟との関係
〇死神の棋譜奥泉光新潮社〇紫式部日記の世界へ小谷野純一新潮社新書〇されど星は流れる創元日本SFアンソロジー3東京創元社〇日本史サイエンス播田安弘講談社BLUUEBACKS〇まほり高田大介角川文庫〇なぜ日本だけが成長できないのか森永卓郎角川新書〇美しき愚かものたちのタブロー原田マハ文藝春秋〇世界とびある記兼高かおるビジネス社〇略奪美術館佐藤亜紀平凡社"
死神の棋譜[奥泉光]楽天市場1,925円将棋は全くわかりませんが、タイトルに惹かれました。普通に現実の有名な棋士の名前が出てくるので、ドキュメンタリーかと思いましたが、違いました。棋譜が分かれば、謎解きのワクワクがもっと楽しめるのかもしれません。それでも、将棋の魅力に取り憑かれた人の危うさが伝わってきて、タイトルにつながります。魅入られた人の狂気が、将棋の世界の魅力なのかもしれません。
著者:奥泉光内容:女性ジャズピアニストが世界的ロボット工学者から受けた奇妙な依頼。それが人類の運命をゆるがす事件の始まりだった。電脳内で生き続ける命、迫り来るウイルス大感染の危機―ヴァーチャル新宿から近未来の南アフリカまで、AI技術による人間観の変容を通奏低音に奏でる、類のないエンタテインメント小説!(「BOOK」データベースより)久々にまたブックレビューです笑。最近は映画鑑賞もめっきりサボっております笑。まあ、そんなに期待されている物でもないでしょうが笑、もちろん、ぼ
YA本「14歳の世渡り術」シリーズの一冊です。漱石大好き著者が、漱石の作品を例に、小説の読み方を指南します。第1章『吾輩は猫である』小説は全部読まなくてもいいのである第2章『草枕』小説はアートだと思うといいよ第3章『夢十夜』「夢十一夜」を書いてみよう第4章『坊ちゃん』先入観を捨てて呼んでみたら第5章『三四郎』脇役に注目するといいかも第6章”短編集”作者の実験精神を探ってみよう第7章『こころ』傑作だなんて思わなくていい第8章『
奥泉光さんの新作「死神の棋譜」を読みました将棋をメインテーマに据えたミステリで、奨励会を年齢制限で退会し、2011年現在は将棋ライターをしている30歳過ぎの男性が主人公ですちょっと複雑なストーリーなだけに、あえてすごくネタバレになる感想を記載しておきますので、これから本作を楽しもうとする予定の方は絶対にこの先を読まないでくださいなお、奨励会については次のブログ参照です『瀬川晶司/泣き虫しょったんの奇跡』瀬川晶司さんの「泣き虫しょったんの奇跡」読了将棋のプロ育成機関である奨励会