△不題(さても)八町礫紀平治(はつてうつぶてのきへいぢ)は、旧〓山(きう<ざん)にて主君(しゆくん)を見うしなひ、驚(おどろ)きまどひて彼此(をちこち)を索(たづね)まゐらせつれど、たえて逢奉(あひたてまつ)らず。むなしく旅館(りよくわん)に立(たち)かへりて、夜(よ)とゝもに待(まて)ども+4、終(つひ)にかへり給(たま)はざりし程に、心ます<安(やす)からず。しかるにわが主従(しゆうじう)の便船(びんせん)したりし舶(つくのふね)は、この暁(あかつき)に纜(ともづな)を解(とく)とて、みな旅