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1月の記事でアップした小面が完成しました。今まで掛かりきりなわけではなく、合間に手を入れていたものです。彫刻の本面は昨年11月の記事に載せた江戸中期?に作られた小面で、その面から採取した型紙を使っています。ちなみに武蔵野市の教室で最初に打って頂く手本はこの小面です。彩色は金春本面の小面、いわゆる雪の小面を写した河内や近江、洞白など江戸期の名工の作品を参考にしています。わたしにとっては龍右衛門などといっても現実味がありません。(申楽談義に龍右衛門は尉や男面の作者と書かれており、女面の作者
ほぼ彫刻の仕上がった是閑の小面の写し。同じもの作って何が楽しいのかと問われると、答えに窮しますが、面白いことばかりです無いのは事実です。どんな名人が打った写しでも必ず個性は出てしまうので、経験の浅い拙作は当然同じ顔にはなりせん。それを承知で挑戦することに面白さと怖さを感じるのがこの仕事を続ける動機です。色の感覚が弱い自覚があるので、写真や記憶で色を写すことには自信がありません。是閑独特の白く研ぎ上げられ古色が殆どない肌は、河内のように刷毛目や古色に工夫を凝らしたそれとは対照的な表現。
珍しい部類に入る面。癖が強く使われる曲も少ないため、鼻瘤悪尉や鷲鼻悪尉に比べて江戸期に作られた写しは少ないように思われます。この型で有名な古作は観世宗家や大聖寺前田家旧蔵(文化庁保管)などでしょうか。今回の直接の手本は無銘ですが江戸中期の洞水打と思われる面。技術の高さは現代作家と比較になりません。。その時代の美意識が反映されたのか、上記の古作より皺を少なくし、瞳脇の朱を胡粉の白に変えるなど、異様な雰囲気を和らげようとした工夫がみられました。しかし異様怪異な相貌こそ持ち味と考え、能面調
「三日月」というと武将の怨霊を品位ある姿で表現するに相応しい面という認識ですが、この面を打っていて、神の顔として生まれた理由がわかったような気がしました。恨みというより威容というか。面幅が広くエラが張って見えますが、顎先は細く尖っているので、端正な印象もあります。大きな目は包容力と力強さを表すためでしょうか。生反りで仕上げた裏。江戸期の並の作程度の雰囲気にはなったでしょうか…彩色の工程です。上は胡粉下地が完了した段階に目の金具を仮置きした状態。ここまでは頑張れば何方でもできる普
月一回の更新を目標にしていましたが、二ヶ月空いてしまいました…完成した「小面」天下一是閑在印の写し。直に写す機会を頂き印象に残ったのは、彫刻彩色ともに江戸時代から現代まで最も多く写されてきた「雪の小面」の系譜を持つ面とは大きく異なっていたということです。下膨れが強めであることは一見して気づくのですが、下瞼の作りは直線的で雪系?の面のような技巧的な表現はされておらず(1月の記事のあり)一種古様な印象。曇らせたらときにその違いは顕著です。鼻幅は特に大きいわけではないのですが、小鼻の縦の長さが
大童子の面裏。ほぼ全面を生反りを用いて削り、砥の粉で目止め、生漆とマコモで擦り漆としました。胡粉下地の研ぎ。この状態で的確に照明当てると形のおかしな箇所がわかりやすいので、ペーパーで意識的に削るなどして修正することもあります。大江山の酒呑童子の面として創作されたためか、本面は赤っぽい肌色です。しかし今回はご依頼の能楽師さんの意向により、赤みを抑え黄土も効かせた色にしています。キャラクターが限定されすぎると使い難く劇画的になる傾向があるので、説明的な赤い肌にする必然性はないのかもしれま
ずっと読んでいる私のお能のバイブル、成田美名子「花よりも花の如く」、22巻が出ました。花よりも花の如く22(花とゆめコミックス)Amazon(アマゾン)${EVENT_LABEL_01_TEXT}ネタバレ含む感想です。いよいよ道成寺の披きが近づいてきた憲人。帯にある「すれ違いと別れ」ですが、「別れ」は隆生先生の別れ。隆生先生、好きでしたので(もちろん、泰一先生も好きですし、高則じいさまも好き、ご年配の方々が皆しぶく、素敵です)、今回のお別れ、退場は寂しい。最後に、憲人
相変わらず外出が憚られる昨今ですが、能面教室の説明会と体験会を実施しました。会場は東京都武蔵野市。地元羽村市よりは都心から便利が良い立地の個人宅一階。元画家さんのアトリエなので天井が高く、採光も良し。仮面をモチーフにした油絵が掲げられています。男性1人お休みの女性4名がご参加。皆様椅子に座って頂き、プリントをお配りして先ずは簡単な説明から。他には上の画像のような制作工程の見本をお見せしながら、実物を手に取りつつ段階ごとの作業内容や要点など交えつつお話ししました。途中積極的にご質問
今日は、宝生会日本全国能楽キャラバンを観に名古屋能楽堂へ行ってきました。解説金子直樹〔能楽評論家〕能「鷺」衣斐正宜/飯冨雅介/佐藤友彦ほか仕舞「鶴亀」曲佐藤耕司「自然居士」玉井博祜「采女」キリ衣斐愛舞囃子「野守」内藤飛能ほか狂言「杭か人か」松田髙義/伊藤泰(藤波徹)能「道成寺」和久荘太郎/橋本宰/野村又三郎ほか〔鐘吊後見〕井上松次郎/鹿島