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2019.6.5一日一季語時計草(とけいさう)【夏―植物―三夏】新宿の町外れなる時計草岸本尚毅*2019.6.2江東区芭蕉記念館近くにて季語である時計草。新宿という都会のなかの町外れという場所。これ以外に、何があるとか、全く語っていない句。新宿というめまぐるしい時間の動きのある都会に対し、ここから少しずれた町外れに咲いている時計草を、実景として表現しているというのではなく、時計草の持つ、季語以外の時間のようなイメージを対比させているように思いまし
一日一季語2018年4月29日都忘れ(みやこわすれ)【春-植物-晩春】都忘れみかど遠流の御所の跡岡部六弥太岡部六弥太(オカベロクヤタ)大正15年5月福岡県生まれ。初心を河野静雲に学び、高浜虚子、野見山朱鳥、福田蓼汀に師事。福岡市で俳句結社「円」主宰。菜殻火賞、蓼汀賞、福岡市文学賞、福岡俳人協会賞、福岡市文化賞、福岡県教育文化表彰受賞。平成22年逝去。著書に句集『道化師』『土漠』『神の竪琴』『鰤雑煮』『夜須野』『松囃子』『厚
2019.5.9一日一季語茗荷の子(みょうがのこ《めうがのこ》)【夏―植物―初夏】隣り家へ抜ける近道茗荷の子水島とみ子子供の頃、現在実家のある地に引っ越しをした。それまでは、都内のアパートで、銭湯通いの住まいだったので、庭など無かったが、小さくても一軒家、狭庭があり、庭木もあった。小学校の同級生の家に遊びに行くと、隣家との境には塀など無く、蕗や茗荷が植えてあった。いや、自然に生えていたようにも思う。缶蹴りや、かくれんぼをして、遊んだ日を思い出します。この句
2018.04.09一日一季語諸葛菜(しょかつさい《しよかつさい》)【春―植物―仲春】島脱けの荒磯につづく諸葛菜毛塚静枝毛塚静枝[ケヅカシズエ]俳人/1920-/茨城県生まれ。1937(昭和12)年から市川市在住。中山、八幡、中山と市内転居し現在に至る。1994(平成6)年7月、本阿弥書店。「本阿弥女流俳句叢書Ⅳ」として刊行。第二句集。【傍題季語】むらさきはなな、おおあらせいとう、ひそくさい、はなだいこん【季語の説明
2017.12.18一日一季語年の市(としのいち)【冬―時候―仲冬】山雀の芸こぞり見る年の市真下喜太郎*これらは、スーパーでの写真です。1888-1965大正-昭和時代の俳人,歌人。明治21年6月9日生まれ。俳句を祖父自順軒真水に,短歌を与謝野鉄幹(よさの-てっかん)・晶子(あきこ)にまなぶ。大正6年高浜虚子(きょし)の長女真砂子と結婚。【傍題季語】破魔矢売(はまやうり)節気市(せつきいち)暮市(くれいち)師走の市(しはすのいち
2020.5.12一日一季語新樹(しんじゅ《しんじゆ》)【夏―植物―初夏】新樹の夜猫の集会あるらしき清水基吉猫の集会というと、ミュージカル、キャッツを想像しました。就職した80年代に就職先の先輩に誘われてみたのと、昨年の二回観たことがあります。昨年観たのが5月だったので、正に新樹の夜でした。『CATS(キャッツ)』は、世界で興行的に最も成功したミュージカルのひとつ。初演はイギリス・ウエストエンド。その後、アメリカ・ブロードウェイにて公演。人間が一切出
2020.4.28一日一季語燕の巣(つばめのす)【春―動物―晩春】今つけし泥濡れてをり燕の巣棚山波朗*2020.4.20栃木にて写生の目の確かな一句だと思います。日本のツバメは地表から木の枝や泥を材料に巣をつくるので、その巣は茶色っぽい色をしています。先日私も雨の中、泥を咥えて一生懸命巣を造っている燕を見つけました。【傍題季語】巣燕(すつばめ)【季語の説明】三~五月に飛来した燕は泥・藁などで人家の梁や軒先などに椀形の巣を営む。
2019.5.1一日一季語柏餅(かしわもち《かしはもち》)【夏―生活―初夏】男の子あり並に育ちて柏餅ふけとしこカシワの葉は新芽が出るまで古い葉が落ちません。そこで家計が途絶えないというところとかけているそうです。家計を継ぐのは代々、男の子であり、端午の節句は、男の子のための行事でした。この句でも、そんな男の子への期待をこめているからこそ、並、という表現ができるのでしょうね。【季語の説明】粳米の粉で作った皮の間に餡(あん)を入れ、柏の葉で包
2020.4.15一日一季語満天星の花(どうだんのはな)【春―植物―晩春】朝森に点き満天星の豆ラムプ楠本憲吉*20204.12板橋区赤塚公園にて壷形の花の形。この形を豆ランプと見立てたのは写生。別名の灯台(どうだん)との取り合わせ的にも面白いと思います。春の朝、森に朝日がさして、明けてくる様子を、朝森という省略した言葉で表現していることも良いと感じます。杜の中に小さな満天星の花の白さが浮かび上がってきます。【傍題季語】満天星躑躅(どうだん
2019.6.27一日一季語結葉(むすびば)【夏―植物―初夏】祝・春燈800号結葉や脈々と継ぐ師の余情小局昭夫歴史有る句誌の一つ、「春燈」の800号(平成25年7月号)に対する挨拶句。季語の持つ、力強い生命力が結社の繁栄をと継続をたたえている。「春燈」は、安住敦(あずみ・あつし)と大町糺(おおまち・ただす)が、久保田万太郎(くぼた・まんたろう)を擁立し、戦後の混乱のさなかの昭和21年1月1日に創刊されました。久保田万太郎、安住敦、成
2020.7.16一日一季語蜜豆(みつまめ)【夏―生活―三夏】蜜豆や美女といはれし婆二人清水保甘味処へは、老いも若きも女性の姿なら似合いますね。私にとっての、蜜豆の記憶は、缶詰を開けて食べた子供の頃の思い出。姉と半分づつにして食べるくらいの、めったに食べられない贅沢品。さくらんぼは一つしか入っていない。色の付いた寒天とともに、いつも取り合いになったように思います。*2020.7上野にて【傍題季語】餡蜜(あんみつ)【季語の説明】賽(さい)
2019.4.11一日一季語雪の果(ゆきのはて)【春―天候―晩春】なほ油断ならざることも雪の果稲畑汀子*2019.4.10栃木県(FB友にいただきました)暑さ寒さも彼岸まで。などと一般に言われているのだが、今日(4月10日)の関東甲信越では雪が積もった地域もでた。なほ、には、このような、彼岸を過ぎても油断ならぬという感じを秘めているように思いました。【傍題季語】名残の雪(なごりのゆき)雪の別れ(ゆきのわかれ)別れ雪(わかれゆき
2020.4.30一日一季語母子草(ははこぐさ)【春―植物―晩春】菩提寺へ母の手を引き母子草富安風生母子草は何処にでも咲いている雑草である。菩提寺への墓参に、母の手を引いて足元を気遣っているのでしょうね。そんな足元をみると、この母子草が、春の陽を浴びて咲いている。黄色が鮮やかに見えることでしょうね。【傍題季語】鼠麴草(ほうこぐさ)、ははこ、父子草(ちちこぐさ)ほうこ、御形蓬(ごぎようよもぎ、おぎようよもぎ)【季語の説明】路傍や田畑で
2018.06.29一日一季語青嵐(あおあらし《あをあらし》)【夏―天候―三夏】青嵐おとうといもうと剥落す田中亜美田中亜美(たなかあみ、1970年10月8日-)明治大学文学部卒、新聞社勤務を経て、東京大学大学院人文社会系研究科修了。1998年、「海程」入会、金子兜太に師事。2001年、海程新人賞受賞。2006年、現代俳句新人賞。2010年、邑書林のアンソロジー『新撰21』に100句入集。「はつなつの櫂と思ひし腕かな」「いつ逢へば河いつ逢
2019.4.1一日一季語四月馬鹿(しがつばか《しぐわつばか》)【春-行事―仲春】舌を出す夢の三鬼や四月馬鹿桂信子*2019.3.31赤塚公園にて4月1日は、西東三鬼(さいとうさんき)の忌日。歯科医として勤める傍ら30代で俳句をはじめ、伝統俳句から離れたモダンな感性を持つ俳句で新興俳句運動の中心人物の一人として活躍したという、モダンな三鬼にエイプリルフールは似合う。萬愚節半日あまし三鬼逝く石田波郷波郷の句も、そんな三鬼にふさわしい、
2018.04.17一日一季語松の緑摘む(まつのみどりつむ)【春―生活―晩春】緑摘む池の中より梯子立て青柳志解樹青柳志解樹(あおやぎしげき、1929年1月24日-)は、長野県出身の俳人。。1953年、林邦彦を知り、加藤楸邨の「寒雷」に投句。1957年「鹿火屋」に入会、原コウ子に師事。1979年「山暦」を創刊・主宰。1992年、句集『松は松』で第32回俳人協会賞、2014年『里山』で第3回与謝蕪村賞を受賞。2018年『冬木の桜』で第5
2019.4.4一日一季語花疲れ(はなづかれ)【春―生活―晩春】膝に来る猫もうとまし花疲本谷尚子花見の時期、花を見上げ、缶ビールなど片手にそぞろ歩きをするのも楽しい。しかし、都内では、上野、目黒川など、多くの人出で、歩くのもままならぬほどです。今年の都内での桜の開花日は3月21日。しかし、花冷が続いていて、今週末は、花筏になってしまうかもしれませんが、まだ満開の桜を楽しめるところが多いようです。この句の作者は、愛猫家。花見から帰ってきた主に甘えたいの
2020.3.25一日一季語海棠(かいどう《かいだう》)【春―植物―晩春】問ふ人に花海棠と又答へ稲畑汀子*2020.3.21板橋区赤塚公園にて野や山への吟行では、植物の名前を知っている方は、これは経験があると頷くと思う句です。先日は植物園への吟行だったので、ほとんどの植物には名札がつけられているため。改めてこれがあの花か、などと納得しました。とりわけ、海棠の花の美しさには目を見張りました。【傍題季語】花海棠(はなかいどう《はなかいだう》
2019.4.22一日一季語葱坊主(ねぎぼうず《ねぎばうず》)【春―植物―晩春】居酒屋のコップに挿せる葱坊主小山尚子葱の収穫時を過ぎてしまい、葱の花が開いてしまう。市場価値は低いとは思いますが、ねぎぼうずは実はすごくおいしく食べることが出来るそうです。天麩羅や味噌汁、味わい方は様々のようです。ほとんどの人は食べたことがないでしょう。当然、スーパーなどでは、葱坊主だけを売っているところは無いでしょう。しかし、この居酒屋さんでは、葱坊主の愛嬌のある姿
2019.02.14一日一季語杉の花(すぎのはな)【春―植物―初春】桜咲き杉の花粉もしづまれり右城暮石*2019.2.12NHKより近年は、「花粉症」が春の季語として認められ始めました。しかし、花粉症は、杉の花粉だけでなく、人によっては、ヒノキの花粉、カモガヤの花粉、更に、秋のブタクサの花粉にも悩まされる方もいるようです。イネ科やイチョウ科の植物の花粉は厳寒期以外はほぼ通年飛んで花粉症を発症させているようですから、季節感はないことになってしまいます。
2019.4.29一日一季語昭和の日(しょうわのひ《せうわのひ》)【春―行事―晩春】男らが乳母車押し昭和の日出口善子平成19年になってから、名称が変わった季語。そのせいか、例句、歳時記の掲載などが極めて少ない。この句では、乳母車という表現になっているが、この言葉自体が、昭和を感じる。現代では、ベビーカーであろう。男らが押す景は、現代の景でもあるようだ。【季語の説明】四月二十九日。昭和天皇の誕生日だったが、平成元年に「みどりの日」に変わり、平
2019.02.17一日一季語馬酔木の花(あしびのはな)【春―植物―晩春】馬酔木咲く金堂の扉(と)にわが触れぬ水原秋櫻子*2019.2.16六本木ヒルズにて主宰誌「馬酔木(あしび)」で虚子の写生観を批判,新興俳句運動の口火をきった秋桜子。俳句に、みずみずしい抒情世界、短歌的抒情を導入,感動を調べで表現する清新典雅な自然諷詠に新風を樹立しました。夜行列車を利用し、たびたび奈良・京都へ吟行に出かけたそうです。この句は、大和の秋篠寺での句ということになっています。
2021.2.22一日一季語蕗の薹(ふきのとう《ふきのたう》)【春―植物―初春】アルプスの雪のつきたる蕗の薹武井美代子雪解けを待たずに顔を出す春の使者。一番早くでてくる山菜です。この句のアルプスの雪を実際につけて売られていたわけではなく、俳句特有の誇張とは思いますが、説得力のある表現に思います。虚ばかりでは無い説得力のある表現だと思います。⇒画像をクリックするとブログ記事が読めます。*2018年3月勝浦にて【傍題季語】蕗の芽(ふきのめ)蕗の
2019.4.16一季語芝桜(しばざくら)【春―植物―晩春】芝桜若きカメラマン沈思金子兜太*2019.4.5秩父羊山公園にて秩父の狼(おおかみ)に象徴される産土(うぶすな)の地霊との交感のなかに自己の原点を探求した兜太。この句も、秩父の武甲山を背景にした、秩父の芝桜の丘(羊山公園)であろう。秩父市街地を一望できる羊山公園に秩父の春の名所「芝桜の丘」芝桜の植栽面積は、関東でも有数の規模を誇り、色とりどりの芝桜がデザイン化され植栽される。植栽面積は
2019.3.9一日一季語鷹化して鳩と為る(たかかしてはととなる)【春―時候―仲春】鷹鳩と化して横綱稀勢の里今瀬剛一*2019.3.2横濱にて「対岸」2017年4月号今瀬剛一氏は、自他共に認める「水戸っぽ」江戸の昔より、力士の番付には出身地が書いてあり、場内放送で高らかに出身地、所属の部屋名が詠み上げられる幕の内はTV画面でもおなじみとなっている。怪我を押して新横綱として優勝決定戦を制した直後の句でしょうね。土俵では鬼、鋭い視線だ
2020.4.18一日一季語春キャベツ(はるきやべつ)【春―植物―仲春】奈良井宿雪に届いて春キヤベツ小澤實*2020.2月居酒屋にてトンカツなど、洋食につき物の生キャベツは「日本の洋食」の現象らしい。西欧では生のキャベツはもっぱらウサギの餌だという(ちくま文庫『身近な野菜のなるほど観察録』)。句にある、奈良井宿は、中山道六十九次の中で、東海道と共有する草津・大津宿を抜いた純粋な中山道六十七宿中(板橋から守山まで)、奈良井宿は江戸側の板橋宿から数え
2020.4.29一日一季語春暑し(はるあつし)【春―時候―晩春】週末は検温のみや春暑し宮崎高根*気象庁より引用新型コロナウイルスの影響で4月中旬から、5月6日まで全国で緊急事態宣言が出ています。外出は自粛、海外旅行などもってのほか山形県は18日、高速道路のパーキングエリア(PA)などで来訪者の検温を始めた。発熱(37・5度以上)が判明した場合、自宅や訪問先での待機を要請するという。かつて流行したインフルエンザ対策で、2006/2007シーズンから、
2018.05.11一日一季語勿忘草(わすれなぐさ)【春―植物―晩春】藍微塵みそらのいろと誰が言ひし深谷雄大*2018.05.09横浜赤レンガ倉庫の近くにて多分、勿忘草だろうと・・・深谷雄大[フカヤユウダイ]1934年生まれ。石原八束門。「秋」創刊同人。1978年、「雪華」を創刊・主宰。「雪の雄大」と言われるほど、雪の句に多くを費やし、北方の風土と深く斬り結び、述志の詩・生存の詩の表白を貫いている。著書に、句集『定本裸天』『白瞑』『雪月
2021.2.7一日一季語薄氷(うすらい《うすらひ》)【春―地理―初春】会ひたくて逢ひたくて踏む薄氷黛まどか会いたくて逢いたくてしかたないのに、会いに行けない人がいました。早春、水たまりに張った薄い氷を靴先で戯れに踏みながら、会いたいという思いを持て余すばかり。好きになれば、その想いのまま、何のためらいもなく会いに行ける人もいるのでしょうが、私には、どうしても会いに行く勇気が持てず、その薄氷の手前でとどまったまま。春先にうっすらと張った氷のように、ほんの少し
2020.4.9一日一季語春の鴨(はるのかも)【春―動物―晩春】こちら向けわれもひとりぞ残り鴨清水基吉*2020.4.7山中湖にてなぜ、残るのか。山中湖などのように、人間の餌付けなど、餌に不自由しないためなのか。この句の鴨は、群れでいるのではなく、一羽だけ、寂しげに残ってしまったようですね。この鴨は横着なのか、旅立ちの決断のできない、お尻の重い人のように、優柔不断なのか。句の中で、われもひとりという呼びかけから、同じような身の上、同情する作者の